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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English

論文〜地球温暖化〜

最終更新日:2016/8/29

地球温暖化(人為起源のCO2排出に伴う全球平均気温の上昇とその副次的影響)に関する最近の重要な、興味深い論文などをまとめます。

論文に限らず、科学雑誌の紹介・解説記事なども紹介したいと思います。こちらは短く、より分かりやすいかと思います(ただし、アクセス権が必要なものがほとんど)。

☆コンテンツ
  • 地球温暖化(人為的気候変化)
  • 地球温暖化のハイエタス
  • IPCC第5次報告書
  • 北極の気候変化
  • 南極の気候変化
  • 南大洋・南半球の気候変化
  • 永久凍土・メタンハイドレートの不安定性
  • 海水準上昇・氷床の安定性
  • 大西洋子午面循環
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地球温暖化(人為的気候変化)

[論文]
Late Holocene climate: Natural or anthropogenic?
W. F. Ruddiman, D. Q. Fuller, J. E. Kutzbach, P. C. Tzedakis, J. O. Kaplan, E. C. Ellis, S. J. Vavrus, C. N. Roberts, R. Fyfe, F. He, C. Lemmen, J. Woodbridge
Reviews of Geophysics 54, 93–118 (2016)
➡︎完新世後期には大気中のCO2とメタンの濃度が増加傾向に向かうが、これはこれまでの間氷期とは全く異なる変動様式である。過去の間氷期との比較(特にMIS19)を通じて、これらの温室効果ガスの変動が自然変動を逸脱したタイミングを森林破壊や農耕の始まった「約6000年前」に定めた。人間活動が全球に与えた影響は従来考えられていたよりも早かったという意見。

The Anthropocene is functionally and stratigraphically distinct from the Holocene
Colin N. Waters et al.
Science 351, DOI: 10.1126/science.aad2622 (2016)
➡︎地質学記録と照らし合わせても、近年の堆積物・アイスコアの堆積環境は後期完新世のものとは全く異なったものである。様々な地質記録をもとに"Anthropocene(人類世)"を特徴付ける変化(放射性核種・地表気温・海水準上昇・温室効果ガス濃度)をレビュー。anthropoceneの層序学的な定義づけが議論されており、定義にはある厳密な指標が必要だが、1950年頃を開始時期とするのが良いのではないかと提案。

Continental-scale temperature variability during the past two millennia
PAGES 2k Network
Nature Geoscience 6, 339–346 (2013).
➡︎過去2,000年間の各大陸において得られた古気候記録をコンパイルし、それぞれの過去の気温を復元。AD1971-2000の近年の温暖化は長期的な寒冷化を打ち消すように寄与しており、平均気温は過去1,400年間で最も高い。
[論文概説]

Global warming in an independent record of the last 130 years
Anderson, D. M., E. M. Mauk, E. R. Wahl, C. Morrill, A. Wagner, D. R. Easterling, and T. Rutishauser
GEOPHYSICAL RESEARCH LETTERS, doi:10.1029/2012GL054271 (2013)
➡︎全球のあらゆる地域の気温の間接指標(木の年輪、サンゴ、アイスコア、鍾乳石、海洋堆積物、歴史文書)をまとめた研究で、「1880 - 1995年における有為な上昇傾向」と「1980年以降の温暖化の加速」とを強く示唆。

Recent temperature extremes at high northern latitudes unprecedented in the past 600 years
Martin P. Tingley & Peter Huybers
Nature 496, 201–205 (11 April 2013).
➡︎観測記録・間接指標(木・アイスコア・堆積物)による過去600年間の温度記録から、近年の温度が異常であることを示した。ロシア西部・グリーンランド西部・カナダ北極圏では2010年の夏が過去600年間では最も温度が高かったことを示唆。

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地球温暖化のハイエタス
最近地球温暖化の進行が鈍っていること(小休止;ハイエタス)の説明をめぐる一連の研究。

[記事]
Has there been a hiatus?
Kevin E. Trenberth
Science 349, 691–692 (2015) 
➡︎Karl et al. に対する批判.地表気温は主に太平洋を起源とする数十年規模の変動によって大きく影響されており,1950年代を基準として温暖化を議論するのは問題があると指摘.

Robust warming projections despite the recent hiatus
Matthew H. England, Jules B. Kajtar and Nicola Maher
Nature Climate Change 5, 394–396 (2015)
➡︎ハイエタスが気候モデルでうまく再現できていないことが将来予測に対する不信感を生んでいる。ハイエタスを再現しているモデルのみのアンサンブル結果を使用しても21世紀の温暖化という結論は変わらないことを指摘。

Lost and found: Earth's missing heat
Carolyn Gramling
Science 348, 1066–1067(5 June 2015).
➡︎Karl et al. (in press)の解説記事。

近年の地球温暖化の停滞
渡部 雅浩
Japan Geoscience Letters 10 (2014)

The cause of the pause
Isaac M. Held
Nature 501, 318–319 (19 September 2013).
➡︎Kosaka & Xie (2013)の解説記事。

Increasing wind sinks heat
Yu Kosaka
Nature Climate Change 4, 172–173 (2014).
➡︎England et al. (2014)の解説記事。

Reconciling warming trends
Gavin A. Schmidt, Drew T. Shindell and Kostas Tsigaridis
Nature Geoscience 7, 158–160 (2014).
➡︎太陽活動・火山活動・大気-海洋の熱分配のすべてが温暖化のハイエタスに関係していることをモデルシミュレーション結果から考察。

Pacific puzzle
Olive Heffernan
Nature Climate Change 4, 167–169 (2014).
➡︎Kosaka & Xie (2013)とEngland et al. (2014)の結果を受けて書かれた”温暖化のハイエタス”に関するまとめ。ENSOが全球気温に与える影響がレビューされており、とても分かりやすい。

The case of the missing heat
Jeff Tollefson
NATURE NEWS FEATURE (15 Jan 2014)
➡︎地球温暖化のハイエタスに関する科学ジャーナリストによるまとめ。オープンアクセス。

Hiatus in context
Nature Geoscience 7, 157 (27 February 2014) "Editorial"
➡︎地球温暖化のハイエタスに関するNature Geoscience編集部によるまとめ。オープンアクセス。
[名言・格言集]

The Tropical Pacific Ocean—Back in the Driver's Seat?
Amy Clement, Pedro DiNezio
Science 343, 976-978 (28 February 2014).
➡︎最近の温暖化のハイエタスの原因をめぐる研究を簡単にレビュー。様々な可能性の中で、赤道太平洋の熱分配に原因がありそうであることを示唆するものの、放射強制力に対する地球システムの応答をより理解するためには、まだまだ観測を継続する必要があることなどを指摘しています。
[名言・格言集]

Is Atlantic holding Earth’s missing heat?
By Eli Kintisch
Science 345, 860-861 (22 August 2014)
➡︎地球温暖化のハイエタスに対する新たな説明をめぐる最新の研究を紹介。1つ目は大西洋・太平洋の熱吸収、2つ目は大西洋がきっかけとなった大気-海洋フィードバック、3つ目は太平洋の数十年規模振動。

[論文]
Decadal modulation of global surface temperature by internal climate variability
Aiguo Dai, John C. Fyfe, Shang-Ping Xie & Xingang Dai
Nature Climate Change 5, 555–559 (2015)
➡︎1920年以降の全球平均気温の変動の原因は、太平洋数十年規模振動であることを観測記録の解析から示唆。2000年以降のいわゆる温暖化のハイエタスもその一環。今後、地球温暖化は加速の方向に進むと予測。

Recent hiatus caused by decadal shift in Indo-Pacific heating
Veronica Nieves, Josh K. Willis, William C. Patzert
Science 349, 532–535 (31 July 2015).
➡︎地球温暖化の停滞は地球表層と海洋内部の熱のやり取りが原因だと指摘されている。Argoフロートの観測記録の解析から、近年太平洋の100 m深までの水温が低下しており(ちなみにインド洋と南大洋の表層水温は上昇傾向)、それが太平洋西部とインド洋東部の100〜300 m深の温暖化と拮抗していることが分かった。

Possible artifacts of data biases in the recent global surface warming hiatus
Thomas R. Karl, Anthony Arguez, Boyin Huang, Jay H. Lawrimore, James R. McMahon, Matthew J. Menne, Thomas C. Peterson, Russell S. Vose, Huai-Min Zhang
Science DOI: 10.1126/science.aaa5632
➡︎これまでの地表気温・海水温の記録を再検討したところ、1998年以降の地球温暖化の鈍化は見られず、10年間で「0.086℃」の速度で温暖化していることが分かった。この数字はIPCCの報告している数字の2倍であり、1950-1999年の「0.113℃/10年」と大差がなく、温暖化の停滞はデータ補正の産物である可能性を指摘。北極のデータが不足していることも、温暖化の過小評価に繋がっているとも。

Quantifying the likelihood of a continued hiatus in global warming
C. D. Roberts, M. D. Palmer, D. McNeall and M. Collins
Nature Climate Change 5, 337–342 (2015)
➡︎地表気温は数年〜数十年といった自然変動を持っている。GCMのアンサンブル結果を用いて気温変動にハイエタスが現れる確率を見積もったところ、10年間・20年間のハイエタスが生じる確率はそれぞれ10%・1%以下であることが分かった。現在15年間続いているハイエタスがあと5年続く確率は25%と推定。

Recent global-warming hiatus tied to equatorial Pacific surface cooling
Yu Kosaka & Shang-Ping Xie
Nature 501, 403-7 (2013).
➡︎最近の温暖化のハイエタスの原因が赤道太平洋がラニーニャ的状態にあることを気候モデルから示唆。こうした数十年スケールの温暖・寒冷フェーズの変動を伴いながらも、将来的には温暖化が進行してゆくことを指摘。

Recent intensification of wind-driven circulation in the Pacific and the ongoing warming hiatus
Matthew H. England, Shayne McGregor, Paul Spence, Gerald A. Meehl, Axel Timmermann, Wenju Cai, Alex Sen Gupta, Michael J. McPhaden, Ariaan Purich & Agus Santoso
Nature Climate Change 4, 222–227 (2014)
➡︎観測結果と気候モデルから、貿易風の強度が増していることがハイエタスの原因である可能性を示唆。貿易風の強化→赤道湧昇の強化→比較的冷たい亜表層水の上昇→全球の平均気温の低下というフィードバック・プロセス。
温暖化を吹き飛ばす太平洋貿易風(Nature姉妹紙 ハイライト)

Strengthening of ocean heat uptake efficiency associated with the recent climate hiatus
Masahiro Watanabe, Youichi Kamae, Masakazu Yoshimori, Akira Oka, Makiko Sato, Masayoshi Ishii, Takashi Mochizuki, Masahide Kimoto
Geophysical Research Letters 40, 3175–3179 (2013).
➡︎GCMを用いてそのハイエタスの原因を調べたところ、海洋の熱吸収が原因であることが示された。海洋の熱吸収効率(κ)が低下していることが分かり、それがモデルが地表温度の上昇を高く見積もっていることの原因であることも分かった。じきにハイエタスが終了し、温暖化に向かうと予測される。

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IPCC第5次報告書
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)による第5次報告書に関する一連の記事のまとめ。WG1(第1作業部会)は2013年9月、WG2・3はそれぞれ2014年3月・4月に公表。

[記事]
In New Report, IPCC Gets More Specific About Warming Risks
Eli Kintisch
Science 344, 21 (4 April 2014) "NEWS & ANALYSIS".
[名言・格言集]

IPCC report under fire
Quirin Schiermeier
NATURE NEWS (15 April 2014)
[名言・格言集]

More Sophisticated Forecasts Yield Glimmer of Hope in Climate Gloom
Eli Kintisch
Science 344, 6181 (18 April 2014) “NEWS & ANALYSIS
[名言・格言集]

Rethink IPCC reports
Thomas F. Stocker& Gian-Kasper Plattner
Nature COMMENT (10 September 2014)
➡︎次のIPCC第6次報告書に向けて、IPCCに必要な変更点を指摘。特に、科学者の負担軽減と報告書のサイクルを伸ばすこと(10年に1回など)を提唱。

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北極の気候変化

[記事]
Long-range linkage
James E. Overland
Nature Climate Change 4, 11–12 (2014).
➡︎Tang et al.の解説記事。

[論文]
Extreme summer weather in northern mid-latitudes linked to a vanishing cryosphere
Qiuhong Tang, Xuejun Zhang & Jennifer A. Francis
Nature Climate Change 4, 45–50 (2014).
➡︎北極海の海氷の後退が主たる原因で、ジェット気流がより北方に位置していることが、気象配置の固定の期間を長くし、北半球中緯度地域の最近の極端な気象現象の発生確率を高めていると推定しています。

Observed changes in the albedo of the Arctic sea-ice zone for the period 1982–2009
Aku Riihelä,  Terhikki Manninen &  Vesa Laine
Nature Climate Change 3, 895–898 (2013).
➡︎1982-2009年にかけて行われた海氷の観測から、晩夏の海氷のアルベドが次第にくすんでいることを報告しています。加えてそのアルベド低下の速度が加速度的に増加していることも示唆しています。

Reducing spread in climate model projections of a September ice-free Arctic
Jiping Liu, Mirong Song, Radley M. Horton, and Yongyun Hu
PNAS 110, 12571–12576 (2013).
➡︎CMIP5の30のモデルシミュレーション結果を用いて、高い排出シナリオのもとでは2040年代中頃には夏の海氷範囲が170万平方kmまで低下し、2054-58年には消失することが示されました。中程度の排出シナリオのもとでは2060年代初頭に170万平方kmに達し、その後そのままの状態が維持されることも示唆されています。

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南極の気候変化

[記事]
Cooling in the Antarctic
Eric J. Steig
Nature 535, 358–359 (21 July 2016)
Turner et al.の解説記事。

The heat is on in Antarctica
Eric J. Steig & Anais J. Orsi
Nature Geoscience 6, 87–88 (2013).
Brownwich et al.の解説記事。
➡︎南極半島だけでなく、西南極も同様に温暖化していることを示しました。

East Antarctica's Achilles' heel
Claus-Dieter Hillenbrand
Nature Geoscience 6, 680–681 (2013).
Cook et al.の解説記事。
➡︎東南極氷床は地球の氷床の中でもっとも安定だと信じられてきましたが、氷床の縁辺部が5.3-3.3Maの間に350-550kmにわたって繰り返し後退していたことを示し、従来考えられていたよりも不安定である可能性を示しました。

Brief but warm Antarctic summer
Eric J. Steig
Nature 489, 39–40 (06 September 2012).
➡︎南極のJames Ross島で掘削された氷床コアの酸素・水素同位体の測定から近年自然変動とは考えにくい異常な温暖化が生じていることを示しています。

[論文]
Absence of 21st century warming on Antarctic Peninsula consistent with natural variability
John Turner, Hua Lu, Ian White, John C. King, Tony Phillips, J. Scott Hosking, Thomas J. Bracegirdle, Gareth J. Marshall, Robert Mulvaney & Pranab Deb
Nature 535, 411–415 (21 July 2016)
➡︎南極半島は南半球で最も急速に温暖化している地域だと考えられてきたものの、1990年後半以降、むしろ寒冷化に転じていることを示しました。原因はWeddel海の大気循環の大規模な変化の可能性が高いことを示しました。南極半島の気温の自然変動は極めて大きいことが浮き彫りに。ただし、このことは南極全体が寒冷化に転じていることを必ずしも意味しないことに注意が必要です。

Central West Antarctica among the most rapidly warming regions on Earth
David H. Bromwich, Julien P. Nicolas, Andrew J. Monaghan, Matthew A. Lazzara, Linda M. Keller, George A. Weidner & Aaron B. Wilson
Nature Geoscience 6, 139–145 (2013).
➡︎西南極中央部に位置するByrd基地における古い記録などをもとに、1958年から2010年にかけて同地の気温が「2.4 ± 1.2 ℃」上昇したことを示しました。西南極氷床の融解は海水準上昇に大きく寄与すると考えられているため、観測をより強化する必要性を訴えています。

Dynamic behaviour of the East Antarctic ice sheet during Pliocene warmth
Carys P. Cook et al.
Nature Geoscience 6, 765–769 (2013).
➡︎IODP318が東南極のAdélie Landで採取した堆積物コアから、5.3-3.3MaにWilkes Subglacial Basinの浸食が強化されており、氷床が数100m内陸に後退していた可能性を示唆しました。鮮新世の温暖期には東南極氷床は温暖化に対して敏感であった可能性を指摘しています。

Recent Antarctic Peninsula warming relative to Holocene climate and ice-shelf history
Robert Mulvaney, Nerilie J. Abram, Richard C. A. Hindmarsh, Carol Arrowsmith, Louise Fleet, Jack Triest, Louise C. Sime, Olivier Alemany & Susan Foord
Nature 489, 141–144 (06 September 2012).
➡︎James Ross島から得られたアイスコアの水素同位体から過去14kaの気温を復元し、現在の温暖化のペースが明らかに自然の変動を逸脱していることを示しました。気温が将来も上がり続けると、棚氷を不安定化させ、さらなる溶解へと導く可能性に対し警鐘を鳴らしています。

Important role for ocean warming and increased ice-shelf melt in Antarctic sea-ice expansion
R. Bintanja, G. J. van Oldenborgh, S. S. Drijfhout, B. Wouters & C. A. Katsman
Nature Geoscience 6, 376–379 (2013).
➡︎棚氷の融解が近年の南極周辺の海氷範囲の拡大に最も大きく寄与していることを観測から示しました。特に表面を覆う密度の軽い融水が下層で棚氷を融かしている暖水との混合を遮断している可能性を指摘しています。

Boundary condition of grounding lines prior to collapse, Larsen-B Ice Shelf, Antarctica
M. Rebesco, E. Domack, F. Zgur, C. Lavoie, A. Leventer, S. Brachfeld, V. Willmott, G. Halverson, M. Truffer, T. Scambos, J. Smith, E. Pettit
Science 345, 1354-1358 (12 September 2014).
➡︎2002年の南極半島ラーセンB棚氷の崩壊後行われた堆積物コアの解析から、棚氷の崩壊の原因が接地面の不安定性ではなく、表面の温暖化による融解であったことを示唆。堆積構造・年代測定・音響探査・珪藻群集など、複数の証拠を提示しています。

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南大洋・南半球の気候変化

[記事]
The Psst That Pierced the Sky Is Now Churning the Sea
Richard A. Kerr
Science 339, 500 (1 February 2013). "NEWS & ANALYSIS
➡︎Lee & Feldstein (2013)とWaugh et al. (2013)の解説記事。
[日本語要約]

Shifting westerly winds
Nature Climate Change 3, 182 (2013) "RESEARCH HIGHLIGHTS"
➡︎Lee & Feldstein (2013)の解説記事。南半球の偏西風は特に南半球の秋(北半球の春)に極側にシフトしつつあることが知られている。その原因を究明すべく、観測データの解析を行ったところ、温暖化よりもむしろ南極の成層圏のオゾン濃度が減少していることが原因であることが示された。

[論文]
Regional rainfall decline in Australia attributed to anthropogenic greenhouse gases and ozone levels
Thomas L. Delworth & Fanrong Zeng
Nature Geoscience 7, 583–587 (2014).
➡︎近年、オーストラリア南西部(パースなど)の秋・冬の降水量が低下しつつある。モデルシミュレーションから、オゾン層の減少と温室効果ガスによる放射強制によって(大気循環場の変化と)降水量低下が再現された。21世紀を通じて乾燥化が続くと予測。

Increase in Agulhas leakage due to poleward shift of Southern Hemisphere westerlies
A. Biastoch, C. W. Bo ̈ning, F. U. Schwarzkopf & J. R. E. Lutjeharms
Nature 462, 495-498 (26 November 2009).
➡︎近年、南半球の偏西風が極側にシフトしており、その結果、インド洋と大西洋とを結ぶアガラス海流の熱塩輸送が強化されていることを大気-海洋循環モデルから再現。

Detecting Ozone- and Greenhouse Gas–Driven Wind Trends with Observational Data
Sukyoung Lee and Steven B. Feldstein
Science 339, 563–567 (1 February 2013).
➡︎モデル研究から南極のオゾン濃度が低下し、温室効果ガス濃度が増加すると、南半球の夏における偏西風が極側へわずかにシフトすることが示されている。しかし観測からそれら2つの効果を分けて見積もることは従来難しいと考えられていた。観測記録の解析から7日、11日の風のクラスターが見つかり、それぞれモデル研究で示されているオゾンと温室効果ガスの影響と類似している。さらにクラスターの周期解析から、オゾンの影響が温室効果ガスの影響に比べて2倍程度であることが示された。さらに温室効果ガスの影響には熱帯域の対流が大きく寄与している可能性が示された。

Recent Changes in the Ventilation of the Southern Oceans
Darryn W. Waugh, Francois Primeau, Tim DeVries, Mark Holzer
Science 339, 568–570 (1 February 2013).
➡︎ここ数十年間に南半球の偏西風は強化されつつあり、それは南極のオゾンホールの形成が原因と考えられている。しかし大気循環の変化が南大洋の海洋循環や大気とのガス交換に与える影響についてはよく分かっていない。海水中のCFC-2の分布から、SAMWが若くなっており、CDWが逆に古くなっていることを示唆。南極オゾンホールが南大洋のガス交換に影響を与えている結果と解釈。

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永久凍土・メタンハイドレートの不安定性

[記事]
High risk of permafrost thaw
Edward A. G. Schuur & Benjamin Abbott
Nature 480, 32–33 (01 December 2011)
[論文概説]
➡︎永久凍土の融解が長い間保存されていた炭素の大気中への放出に繋がれば、さらなる温暖化を招きかねないことを警告。

A permafrost carbon bomb?
Claire C. Treat &  Steve Frolking
Nature Climate Change 3, 865–867 (2013)
➡︎Elberling et al.の解説記事。

Signs of instability
Juergen Mienert
Nature 490, 491–492 (25 October 2012).
➡︎Phrampus & Hornbachの解説記事。

Methane uncovered
Giuseppe Etiope
Nature Geoscience 5, 373–374 (2012).
Anthony et al.の解説記事。
➡︎天然のガス放出場はこれまでかなり見過ごされてきました。雪氷圏における有機物分解由来のメタン放出場が発見されたことで、全球の温室効果ガスの収支に大きく影響する可能性を指摘しています。

[論文]
Climate change and the permafrost carbon feedback
E. A. G. Schuur, A. D. McGuire, C. Schädel, G. Grosse, J. W. Harden, D. J. Hayes, G. Hugelius, C. D. Koven, P. Kuhry, D. M. Lawrence, S. M. Natali, D. Olefeldt, V. E. Romanovsky, K. Schaefer, M. R. Turetsky, C. C. Treat & J. E. Vonk
Nature 520, 171–179 (09 April 2015).
➡︎北半球高緯度に広がる永久凍土層の気候変化に対する安定性に関するレビュー論文。気候変化-微生物による有機物分解-温室効果ガス排出といったフィードバックプロセスの理解は不足している。最近の知見をまとめると、温室効果ガスの排出はゆっくりと、しかしだらだらと続くことが示唆される。

Significant contribution to climate warming from the permafrost carbon feedback
Andrew H. MacDougall, Christopher A. Avis & Andrew J. Weaver
Nature Geoscience 5, 719–721 (2012)
➡︎気候モデルによるシミュレーションから、永久凍土から2100年までに68 - 580 PgCの炭素が放出され、それによって起きるフィードバック過程によって、2300年までにさらに0.13 - 1.69 ℃温暖化する可能性を示唆しています(ただし、人間活動による今後のCO2放出については考慮していない)。

High Arctic wetting reduces permafrost carbon feedbacks to climate warming
M. Lupascu, J. M. Welker, U. Seibt, K. Maseyk, X. Xu & C. I. Czimczik
Nature Climate Change 4, 51–55 (2014).
➡︎グリーンランド北西部で行われた長期的な気候操作実験から、北極圏高緯度の半砂漠地帯の炭素の吸収能力は、温暖化と湿潤化が組み合わさると増加することを示唆。将来地球が温暖化してもこれらの地域は依然として大きな炭素の吸収源として振る舞う可能性を指摘しています。

Recent changes to the Gulf Stream causing widespread gas hydrate destabilization
Benjamin J. Phrampus & Matthew J. Hornbach
Nature 490, 527–530 (25 October 2012).
➡︎ノースカロライナ州の沖の大陸斜面におけるメタンハイドレートの観測から、約10,000km2の範囲でメタンハイドレートが不安定化していることを推定。さらに過去5,000年間に湾流(Gulf Stream)に起きた変化によって2.5Gtに相当するメタンハイドレートが現在不安定化していることを示唆。「世界のメタンハイドレートの安定性」、「大陸斜面崩壊の可能性」を評価する必要性を訴えています。

Geologic methane seeps along boundaries of Arctic permafrost thaw and melting glaciers
Katey M. Walter Anthony, Peter Anthony, Guido Grosse & Jeffrey Chanton
Nature Geoscience 5, 419–426 (2012).
➡︎アラスカやグリーンランドで発見された放出場のメタンの放射性炭素や同位体から、これらが非常に古く、地下で熱分解により生成されたメタンであることを示唆。温暖化によってこうした古いメタンがより出やすくなる環境になると指摘しています。

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海水準上昇・氷床の安定性

[論文]
Consequences of twenty-first-century policy for multi-millennial climate and sea-level change
Peter U. Clark, Jeremy D. Shakun, Shaun A. Marcott, Alan C. Mix, Michael Eby, Scott Kulp, Anders Levermann, Glenn A. Milne, Patrik L. Pfister, Benjamin D. Santer, Daniel P. Schrag, Susan Solomon, Thomas F. Stocker, Benjamin H. Strauss, Andrew J. Weaver, Ricarda Winkelmann, David Archer, Edouard Bard, Aaron Goldner, Kurt Lambeck, Raymond T. Pierrehumbert and Gian-Kasper Plattner
Nature Climate Change 6, 360–369 (APRIL 2016).
➡︎最終氷期以降の気候変動復元と将来の気候変化予測とを合わせて、過去2万年から将来1万年間の気温変化・海水準上昇の予測とそれが社会に与える影響を示した論文です(記事に近い)。海外の気鋭の古気候研究者が、先日パリで行われた気候変化に関する国際会議を受けて、気候変化に関する新たな視野(perspective)を提供することを試みています。

Sea-level rise due to polar ice-sheet mass loss during past warm periods
A. Dutton, A. E. Carlson, A. J. Long, G. A. Milne, P. U. Clark, R. DeConto, B. P. Horton, S. Rahmstorf, M. E. Raymo
Science 349, DOI: 10.1126/science.aaa4019 (10 July 2015)
[論文概説]
➡︎過去の温暖期の海水準と氷床量に関するレビュー。特にPliocene・MIS11・MIS5e・Holocene thermal optimumに着目。最近の知見のアップデートと今後の課題。

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大西洋子午面循環

[記事]
Fresh news from the Atlantic
Didier Swingedouw
Nature Climate Change 5, 411–412 (2015)
➡︎Rahmstorf et al.の解説記事。

Atlantic overturning in decline?
Jon Robson, Dan Hodson, Ed Hawkins & Rowan Sutton
Nature Geoscience 7, 2–3 (2014)
➡︎2004年以降大西洋の26ºN線などでRAPID-MOCHAと呼ばれるAMOCの強度のモニタリングが行われており、2004年〜2012年にかけてAMOCに衰退の傾向が見られていることを示唆しています。

Atlantic Current Can Shut Down for Centuries, Disrupting Climate
Richard A. Kerr
Science 343, 831 (21 February 2014) 
➡︎温暖化のアナログとして考えられている地質時代の一つ、最終間氷期(MIS5)において、大西洋子午面循環が突如一時停止状態に陥っていたことが堆積物コアの記録から示された。Galaasen et al. (201x, Science)の結果に対する、科学ジャーナリストによる要約。

[論文]
Exceptional twentieth-century slowdown in Atlantic Ocean overturning circulation
Stefan Rahmstorf, Jason E. Box, Georg Feulner, Michael E. Mann, Alexander Robinson, Scott Rutherford & Erik J. Schaffernicht
Nature Climate Change 5, 475–480 (2015)
➡︎1970年代の大西洋子午面循環は過去1,000年間で異例の弱化を示しており、北大西洋周辺の寒冷化の原因であったことを観測とプロキシ(サンゴなど)から示唆。

Observing the Atlantic Meridional Overturning Circulation yields a decade of inevitable surprises
M. A. Srokosz and H. L. Bryden
Science 348, 6241 (19 June 2015)
➡︎全球気候に多大な影響を及ぼす大西洋子午面循環(AMOC)のレビュー。人工衛星・係留ブイ・Argoフロート・観測船を用いた密な観測から、モデルで再現できていない大きな季節変動や年々変動が明らかに。過去10年間の観測からは年間0.5SvでAMOCが弱化していることが分かっており、これが温暖化によるものなのか自然変動の一環なのかが議論を呼んでいる。また2009-2010年には予想外の大きな弱化が起きたものの、その原因も特定されていない。

Rapid Reductions in North Atlantic Deep Water During the Peak of the Last Interglacial Period
Eirik Vinje Galaasen, Ulysses S. Ninnemann, Nil Irvalı, Helga (Kikki) F. Kleiven, Yair Rosenthal, Catherine Kissel, David A. Hodell
Science 343, 1129-1132 (2014).

A stagnation event in the deep South Atlantic during the last interglacial period
Christopher T. Hayes, Alfredo Martínez-García, Adam P. Hasenfratz, Samuel L. Jaccard, David A. Hodell, Daniel M. Sigman, Gerald H. Haug, Robert F. AndersonScience 346, 1514-1517 (19 December 2014).
➡︎南大洋で採取された堆積物コアの分析から、最終間氷期の大西洋子午面循環の変動を議論。
[論文概説]