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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English

2016年12月18日日曜日

2016年総括

ちょっと早いけど、2016年の総括。
今年はこれまでで一番、日本にいる時間が短かった年。
国内でも出張に明け暮れ(野外調査、実験、学会)、正味で研究室にいたのは半分くらいだろうか。。
実験内容も地学試料(貝殻・堆積物)〜水産試料(ヒラメ・貝・マグロ)と多岐にわたり、学生時代とまったく違うことをした一年間だった。

◎1月
IODP乗船前に実験ラッシュ。やっていたのはヒラメの筋肉試料の微量元素の分析。毎日ヒラメを乾燥させては酸に溶かす実験に明け暮れる。試薬を添加するたびに逐次質量の変化を記録する必要があったので、秤量が一番時間を取られた作業だったかな。

◎2月〜3月
IODP第361次航海に乗船。いろんな意味で人生観・研究者観に影響を受けた今年最大の出来事。あまりに多くのことが起こりすぎてここには書ききれない。
モーリシャスの街の汚れっぷりに衝撃を受け、IODPの研究航海のシステムの良い面/悪い面を垣間見、そして様々な国の素晴らしい友人ができ、自分の英会話能力の拙さに情けなくなり(何度か友人に当たってしまったことも)、今後数年間の研究計画の半分くらいが白紙になって打ちひしがれ、2ヶ月間の禁酒生活後(公式には)南アフリカのビールの安さに衝撃を受けて飲みすぎた。

◎4月
IODP航海中に出した名古屋大学・宇宙地球環境研究所の公募に通り、引っ越し。
帰国が4/2なのに、4/4には学会発表(Isoecol)、名古屋大の赴任日が4/18という何とも言えない感じ。下船したケープタウンで休暇、帰国後休暇を取ると言っていた海外の友人からは「日本人はクレイジーだ」と言われカルチャーショックを受ける。
とりあえず先に名古屋入りして大学の宿泊施設に寝泊まりしながら新たな環境に体を慣らす。
後半には早速東北の野外調査に参加。

◎5月
柏から名古屋に引っ越し。新居は生活のしやすい川名駅周辺。今思うととても良い選択だったと思う。教えてくれた名古屋大学出身の友人に感謝。
IODPの憂さを晴らすため、イタリア旅行(ミラノ〜ヴェネチア)。
学振PDの書類作成に研究助成(のちに受かるクリタ水・環境科学財団)の書類作成。
後半はさっそく古巣の柏に出張。地球惑星科学連合大会開催中の研究機関フットサル対抗戦にも古巣チームで参戦。

◎6月
またもや東北の調査に参加し(念願の二枚貝試料が得られた!)、高知コアセンターに出張。そこで得たKR05-15堆積物コアを今年いっぱい処理することに。
東北の調査で得た二枚貝の殻の放射性炭素年代測定の実験に名古屋大で取り組むも、加速器は止まったまま。。
後半は国際学会Goldschmidtのため横浜へ。

◎7月
ひたすら放射性炭素年代測定の実験。途中柏に出張し、6月に採れた二枚貝の削り。
暑い名古屋の夏は実験室内で回避。
伊勢志摩で初の日帰りスキューバ・ダイビング(ボート2本)。
名古屋在住の小〜中学校時代の同級生とプチ登山〜下呂温泉日帰り旅行。

◎8月
前半に宇宙地球環境研究所・年代測定研究部の地域貢献事業で水月湖へ。下見もし、水月湖の年縞堆積物について色々と詳しくなった。
残りはひたすら放射性炭素年代測定の実験と浮遊性有孔虫の拾い出し。
プライベートではお盆に三河湾の佐久島へ。アートの町を推す観光地であり、サービスの悪さ、人の多さ、暑さに辟易。
またまた柏に出張。クリタの助成金謹呈式に参加(周りがスーツの中、ポロシャツで浮く)。
宇宙地球環境研究所で一部の研究者・学生がやっているフットサルにも参加。

◎9月
放射性炭素年代測定の実験と浮遊性有孔虫の拾い出し。
日本海洋学会@鹿児島大学〜日本地球化学会年会@大阪市立大学にハシゴ。はじめて基調講演の機会をいただいた。
海洋学会ではフットサル交流会に参加。
後半はまた東北の野外調査(水温がもっとも高くなる重要な時期)。

◎10月
放射性炭素年代測定の実験と浮遊性有孔虫の拾い出し。
途中10日間、IODP第361次航海のサンプリング・パーティーのためテキサスA&M大学へ。

◎11月
柏に出張し、クロマグロを捌く。
2週間名古屋で過ごし、また東北の野外調査に参加。名古屋にいる間はひたすら浮遊性有孔虫の拾い出し。
ニューイヤースクール(地球科学若手の会)と地球環境史学会に参加。

◎12月
11月の野外調査の直後、学振PDの面接のため四ツ谷の本部ビルへ乗り込む。
その次の週は柏に出張し、クロマグロを捌く。
浮遊性有孔虫の拾い出し(KR05-15コア)はひと段落したけど、まもなくIODPの堆積物コアが到着するので、今年度の残りはひたすらこちらを捌く。
金沢大学に出張し(初の金沢!)、有孔虫の殻の洗浄法について、教えていただいた(来年度、いよいよ浮遊性有孔虫のホウ素同位体分析をスタート!)。
名古屋大学の加速器も動き始めたので、東北の二枚貝殻と海水の放射性炭素年代測定も少しずつ、データが出ることを期待(卒論・修論の時期が過ぎたら、かな?)。
出張中に学振PDの面接の結果が開示され、無事合格(三度目の正直!)

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これまでいた柏の大気海洋研究所は、学生・ポスドクも多く、昼にはフットサル・サッカーで教職員・学生くんずほぐれつ交流し、月に一回は必ず飲み会(研究所主催のふらっとアワー、私主催の七輪の会など)をしていた。
一方、今いる宇宙地球環境研究所では同じ部署の人ともあまり顔を合わせることがなく、交流会みたいなものも特にない(同世代のポスドクがいない)。
ギャップの大きさに寂しさを覚える日々を過ごしていたけど、新たな環境で学ぶことはとても多かった。今後の研究者人生を考える上で、重要な一年間を過ごすことができたと思う。
来年こそは論文用のデータをたくさん取る、飛躍の年にしたい。

2016年12月11日日曜日

気になった一文集(English ver. No. 29)

Regardless of any particular political target, the work can shed light on what deep decarbonization might mean for both human societies and the natural environment.
政治的な目標が何であれ、そうした試み(1.5度温暖化の影響評価)は徹底した脱炭素が人間社会と環境にとってどういった意味を持つのかを浮き彫りにする。

This wouldn’t staunch their use much unless all governments participated — which is hard to imagine — but in theory it could help to drive up the price of oil, gas and even coal, making renewable energies a bit more competitive.
すべての政府が参加しない限り、こうした施策(これから供給される化石燃料を制限する)が化石燃料の使用を大幅に止めることはないだろう(そしてそれは想像しがたい)。しかし、理論的には、石油、ガス、さらには石炭の価格を上げることで再生可能エネルギーが少しでも競争的になることの助けにはなるだろう。

As it stands, there is minimal evidence that humanity will commit to its maximum climate ambition, but that could change as the impacts of global warming come into better focus.
現状では、人間社会が気候変化に対する野心的目標の約束を最大限に果たすことを示す証拠は極めて少ない。しかしながら、地球温暖化の影響により注目が集まるにつれて状況が変わる可能性は残されている。

The maximum climate ambition needs a firm research backingNature 537, 585–586 (29 September 2016)

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Methane is the second-largest contributor to climate radiative forcing — the change in energy trapped in the atmosphere as a result of greenhouse-gas emissions — and has a global- warming potential 28–34 times that of carbon dioxide (by equivalent mass) over a 100-year time frame. So although average atmospheric methane concentrations are about 200-fold smaller than those of CO2, understanding the causes of increases in global methane concentration is just as important as understanding those for increasing CO2 levels, to aid climate prediction and inform emissions-reduction policy.
メタンは2番目に大きく気候の放射強制(温室効果ガス排出の結果として大気に捕獲されるエネルギーの変化)に寄与している。そして100年間の時間尺度においては二酸化炭素の28〜34倍の温暖化ポテンシャル(同じ質量比で)を有している。そのため、メタンの大気中の濃度は二酸化炭素の約200分の1でしかないが、全球的なメタン濃度の上昇の原因を理解することは、気候変化の予測を助け、排出削減政策に情報を与えることにおいて、二酸化炭素濃度の上昇を理解することと同じくらい重要である。

The relatively short lifetime of methane in the atmosphere (about 12 years) means that measured global patterns of the gas’s carbon- isotope composition faithfully represent the average of recent inputs from the various sources, therefore allowing emission rates to be quantified by source type. 

However, such thermogenic emissions might currently be 60–110% higher than previous estimates, and might have been so for the past 30 years. After accounting for geological seepage, emissions attributable directly to the global fossil-fuel industry (natural gas, oil and coal production) are 20–60% higher than in current global inventories.

Second, the infrastructure for natural-gas production has become less ‘leaky’ over time, which has implications for emissions-weighted policies aimed at mitigating climate change. 
第二に、天然ガス生産のインフラはよりメタンを”漏らしにくくなりつつある”ことを意味し、排出に応じて重み付けがなされる、気候変化緩和政策に対して重要な示唆を与える。

Such convergence will probably come from both directions: more-extensive sampling at sources would help to update the isotopologue database, improving box modelling; and better ambient sampling in key source regions such as the tropics would better constrain fluxes derived from flux-inversion models.

Rebalancing the global methane budgetNature 538, 46–48 (06 October 2016)

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All hypotheses share the basic principle that climate affects resource richness, which, in turn, sets the ‘carrying capacity’ — the human population that can be supported in a given region. This then guides human dispersal.

Today, the Sahara and Arabian deserts form an effective barrier to faunal dispersals out of Africa. But in the past, changes in the orientation of Earth’s axis of rotation at that time invigorated the monsoonal climate and established wetter conditions in the Arabian and Sinai peninsulas, enabling migration paths out of Africa along vegetated, resource-rich corridors.

Climate and the peopling of the worldNature 538, 49–50 (06 October 2016)

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Temperature thresholds have not served well in this respect. They can be useful as environmental quality objectives: science-based, long-term benchmarks for the world to aspire to. But in order to make progress in this direction, we need a set of policy targets that will inspire action.
温度の閾値(温暖化を2度以下に抑えるというパリ合意)はこの観点からはうまく働いていない。そうした数字は環境の質の定義としては役に立つかもしれない。すなわち、世界が目指す科学に基づく長期的目標という意味では。しかし、その目標に向けて前進するには、行動を促すような一連の政策を打ち立てる必要がある。

Unfortunately, in climate policy most governments choose a more progressive stance when talking and deciding, but a more modest one when acting. The Paris Agreement itself provides a striking example: it established a 1.5 °C target while agreeing on a largely voluntary system of nationally determined contributions whose aggregated emission level would result in a temperature increase of 3 °C at best.
不幸にも、気候政策のもとではほとんどの政府が、対話や意思決定の場ではより前進的なスタンスをとっているが、実際に行動するときにはより控えめなスタンスをとっている。パリ合意がその好例である。1.5度目標を制定したにもかかわらず、それぞれの国家が貢献度を決めるという全くもって自由意志のシステムに対して合意している(それらを合算した場合、少なくとも3.0度の温暖化にはなるだろう)。

Wherever the new norm of zero emissions might find acceptance, all new infrastructures powered by fossil fuels would be subject to scrutiny: if the goal is to reach net zero eventually, why still build this and risk further carbon lock-in?
受け入れられる排出ゼロに向けた新たな水準がどこにあろうと、化石燃料によって電力を賄われるすべての新インフラは監視の対象になるだろう。もし目標が総排出量ゼロに最終的に達することであるなら、なぜ依然としてそうしたインフラを建設し、さらなる炭素依存のリスクを負うのだろう?

Of course, a zero emissions target is not immune to failure. But its main purpose would initially be to provide clear direction while not dictating a strict and detailed timetable.
もちろん、排出ゼロ目標は失敗を免れるわけではない。しかし、排出ゼロの第一目標は厳しくて詳細なタイムテーブルを指示することではなく、もともとは明確な道筋を与えることのほうにあるだろう。

On the one hand, researchers will have to accept their relatively limited role in the process of policy formulation and even more limited role in policy action. On the other hand, they should not feel pressured to make pragmatic concessions when formulating long-term environmental objectives that are worth pursuing, as happened with the 2 °C temperature target.
研究者は政策の定文化において比較的限定的な役割しか担わないことを受け入れる必要があるし、さらに政策施行となるとより限定的である。一方で、追い求めるべき長期的な環境目標を定文化する際には、2度温暖化目標に表わされるように、研究者は無理に現実的な譲歩をするべきでもない。


An actionable climate targetNature Geoscience 9, 340–342 (2016)