Main contents


☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English

2015年6月18日木曜日

気になった一文集(English ver. No. 25)

Ocean data are expensive to collect. Ships are costly to build, equally so to run. But to neglect the oceans because it is cheaper to get good results on land is foolish.

Deep mysteriesNature 517, 244 (15 January 2015). "EDITORIAL"

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

If scientists want to bolster their credibility on the subject of global warming, the authors say, then they must harness the power of the Internet and reduce the time they spend in the air.

But the Tyndall Centre is right to point out that senior researchers probably do not need to fly halfway around the globe simply to present a paper at a conference.

In some ways, the working paper opens the door to questions that are even harder to answer. Do scientists have a responsibility to stop eating meat, given what we know about the greenhouse-gas intensity of beef production and to a lesser extent that of pork and chicken? Should we expect them to park their cars and take the bus or train instead? The fact is that these are personal choices that academics, like everybody else, must grapple with.

... scientists have a key role in making that happen, even if it means hopping on a flight to the next United Nations climate summit.

A clean, green science machineNature 519, 261  (18 March 2015) "EDITORIAL"

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

“The real question is whether or not the high-income countries, the big polluting countries, are willing to pay loss and damages to countries that bear the brunt of the impacts,” she says. “Vulnerable countries have no other leverage within this political process.”
”真の疑問は、果たして大きな排出国でもある高収入国が、影響の矛先を向けられている国の損失・損害に対して快く賠償するかどうかということである。”と彼女は言う。”脆弱な国はこの政治的なプロセスの中でも影響力がないのである。”

At the same time, a growing body of research suggests that ecological and economic impacts are already occurring with the 0.8 °C of warming that has already occurred. These impacts will increase in severity as temperatures rise.
同時に、ますます多くの研究が、すでに起きた0.8℃の温暖化でも生態学的・経済学的な影響が生じていることを示唆している。こうした影響は温度が上昇するにつれてますます増加するだろう。

In both cases, governments must take immediate and aggressive action to start to steer the global emissions curve away from its upward trajectory.
いずれのケースでも(2℃もしくは1.5℃の温暖化に抑制する目標)、全球の排出曲線をいまの上向きの軌道から修正し始めるためにも、各国政府は迅速かつアグレッシブな行動を起こさなければならない。

Global-warming limit of 2 °C hangs in the balance」Nature News (27 March 2015)

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

The negotiations’ goal has become what is politically possible, not what is environmentally desirable.
(温室効果ガス削減に関する)交渉の目標は環境学的に望ましいものから、政治的に可能であるものになりつつある。

The climate policy mantra — that time is running out for 2 °C but we can still make it if we act now — is a scientific nonsense. Advisers who shy away from saying so squander their scientific reputations and public trust in climate research.

「2℃の温暖化目標を達成する時間はあまり残されていないけれど、もし私たちが今行動すれば、まだ間に合う」という気候政策の教義は科学的にはナンセンスである。そう言うことを避けるアドバイザーは気候研究分野における科学的な評判と公に対する信頼を損ねるだろう。

Climate advisers must maintain integrityNature 521, 27–28 (07 May 2015) "Comment"

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

It has been clear for some time that climate change is a defining social, and therefore political, issue for the twenty-first century. (…) But the core science is solid, and policy-makers at all levels have a responsibility to engage with it.
21世紀を通じて常に気候変化は典型的な社会問題、それゆえ政治問題であり続けてきた。(中略)しかし、中心にある科学は揺るぎないものであり、すべてのレベルの政策決定者はそれ(温室効果ガスの削減)に従事する責任がある。

(…) 63% of Americans believe that global warming is happening and 52% think that it is mostly caused by humans; just 18% think that it is not happening, with 32% believing that it is mostly due to natural environmental factors.
63%のアメリカ人は温暖化が起きていると信じており、52%はそれが人類によって起きていると考えている。一方で18%の人だけが起きていないと考えており、32%が主として自然変動によるものと信じている。

The rest of the world has moved beyond questions about whether climate change is real and is focused on how best to address it.
世界の国々は「気候変化が真実かどうか」に関する疑問を超えて動き始めており、どのように対処するのが最善かを考えることに集中している。

The right climateNature 522, 255–256 (18 June 2015) “Editorial

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

The representation of biogeochemical processes in the CESM is advanced, but many feedbacks to those processes are uncertain or not represented. These include the impacts of ocean acidification, warming, increased levels of dissolved CO2 and a potential increase in the volume of low-oxygen zones on marine ecosystems, biological productivity, the production of the greenhouse gas nitrous oxide, the export of biogenic particles from the surface to the deep ocean, and their sinking velocity and decomposition rate.

Data for past variations in CO2 levels and climate can help us to avoid relying exclusively on models to project future trends. Although palaeoclimatic information cannot be directly used to assess how climate change affects the flow of anthropogenic carbon, it does reveal how the natural carbon cycle alters.

A long-standing research challenge is to develop Earth system models that perform seamless simulations from the past to the future, consistently integrating palaeoclimatic and modern instrumental information in projections.

(…) carbon emitted today will change our environment irreversibly for many generations to come, and these changes increase hand in hand with cumulative carbon emissions. Sea level and the ocean’s acidity and carbon and heat content — and the associated adverse effects — will continue to increase long after atmospheric CO2 levels have stabilized, underscoring the need for near-term emission reduction.
(中略)現在排出される炭素は今後数世代にわたって不可逆的に地球環境を変え、そうした変化は積算の炭素排出量と密接に関係している。海水準・海の酸性度・熱容量(およびそれに付随する有害な影響)は大気の二酸化炭素濃度が安定化してからも長きにわたって変化し続けるため、短期的な排出削減の必要性を強調するものである。

(…) carbon-emission reductions are urgently needed if we are to limit global warming and ocean acidification to moderate levels. Any delay will narrow and eventually close the currently available window to meet stringent climate targets.
(中略)もし我々が温暖化と海洋酸性化を中程度のレベルに抑えるつもりがあるのなら炭素排出の削減は急を要する。いかなる遅れも厳しい気候目標を達成するために現在利用可能な窓を狭め、最終的に閉じることになるだろう。

Growing feedback from ocean carbon to climateNature 522, 295–296 (18 June 2015)

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 (…) during recent interglacial periods, small increases in global mean temperature and just a few degrees of polar warming relative to the preindustrial period resulted in ≥6 m of GMSL rise.

emerging geochemical and geophysical techniques show promise for identifying the sectors of the ice sheets that were most vulnerable to collapse in the past and perhaps will be again in the future.

Addressing outstanding questions and challenges regarding rates, magnitudes, and sources of past polar ice-sheet loss and resulting sea-level rise will continue to require integration of ice-sheet, sea-level, and solid Earth geophysical studies with good spatial distribution of well-dated RSL records to capture the magnitude of RSL variability across the globe.

Sea-level rise due to polar ice-sheet mass loss during past warm periods
Dutton et al. (2015, Science)

2015年6月2日火曜日

シンポジウムメモ(日本地球惑星科学連合大会 2015.5.24-28)

去年は特例的にパシフィコ横浜での開催だったが、今年は幕張メッセに戻った。

次第に規模が大きくなっているらしく、隣のアパホテルの会議室も利用しての開催だった。

私自身は石灰化のセッションで招待講演があり、他には古海洋・南大洋のセッションを中心に回った。以下はそのメモ。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「Biocalcification and the Geochemistry of Proxies -Field ecology, Laboratory culture and Paleo」
▶︎氏家由利香さん@高知大
G. ruberには6種ほどが確認されている。土佐湾には4種が確認されている。
(G. sacclierは少なく2種ほど。少ない理由はまだよく分かっていない。)
過去2年間ほどの毎月のサンプリングから季節性を見たところ、種の割合が周期的に変化することが分かった。その理由はおそらく黒潮の流路の変動に伴う栄養塩・温度の変動だと思われる。

▶︎石谷佳之さん@AORI
サンゴ礁に生息する底性有孔虫カルカリナ(Calcarina)の殻の突起が光透過器官としてどのように機能しているか。電子線後方散乱解析法(EBSD)を用いて光の方向性を調べたところ、レジン比で50倍もの光が殻内部に集まっていることが分かった。
こういった採光機能はクモヒトデや植物でも確認されている。

▶︎大野良和さん@琉球大学
蛍光染色で底性有孔虫(Amphisorus kudakajimensis)の細胞内のpHを可視化(共焦点顕微鏡)。
小胞内pHは9以上、液胞内pHは6以下と細胞内で大きな変化が見られる。

▶︎Jelle Bijmaさん@AWI
無機的に沈殿させたカルサイトと生物が作るカルサイトとでは微量元素の取り込みが全く異なっている。ゆえに大きな生体効果が働いていることが分かる。
多くの古気候プロキシが作成されているものの、メカニズムについてはブラックボックスであることが多く、一つの環境因子(水温・塩分・pHなど)で記述するのは難しいことが多い。

▶︎Nehrke Gernotさん@AWI
ラマン分光でカサガイ(Patella caerule)の殻を分析。部位によってアラゴナイト・カルサイトでできている。LA-ICPMSで計るとMgはアラゴナイトにはほとんど入っていないことが分かる。
イタリアのCO2湧出域においてはカサガイの殻のアラゴナイト/カルサイトの比率が変化している。アラゴナイトがカルサイトに比べて熱力学的には溶解しやすいと分かっているものの、むしろカサガイの殻ではカルサイトの比率が減っている。

▶︎駒越太郎さん@北海道大学
沖ノ鳥島で採取されたシャコガイの微細分析。若い部分は成長速度が大きいので、半日くらいの解像度で測定可能。
Ba/Caと成長阻害線が台風の指標になりそう。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「福島原発事故により放出された放射性核種の環境動態」
▶︎青山道夫さん@福島大学
福島第一原発から放出された(今も放出が継続している)Csの太平洋の分布について。
単なる壊変やスカベンジングでは説明できないほど海洋表層のCs濃度の低下が遅く、インプットがないと説明できない。
すでに放出されたもののうち80%は海洋内部に沈み込んでおり、400m深のモード水となっている。30年後には北西太平洋に再度湧き上がると思われる。
水塊の移動速度は東北沖だと7 km/dayだが、太平洋中央部では3 km/dayとやや遅い。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ユニオンセッション」
▶︎佐野有司さん@AORI
ナノシムスを利用したシャコガイのSr/Ca分析について。
石垣島で飼育されたシャコガイの殻を微細分析したところ、Sr/Caは水温ではなく日射との対応が良いことが分かった(水温とは2ヶ月の位相差がある)。
成長速度の大きい昼に対応しているため、日射が褐虫藻の光合成を介して石灰化に関わるCa2+ ATPaseを駆動しているものと予想される。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「南大洋・南極氷床が駆動する全球気候・生態系変動」
▶︎川村賢二さん@極地研
アイスコアの火山灰を利用した年代同期は、
(1)地域的な気候変動を明らかにする
(2)年代モデルの確度を確認する
上で重要。
海水に溶けやすい希ガス(KrやXeなど)の濃度は全球の平均的な海水温の指標になる(特に中層〜深層を代表)。

▶︎小林英貴さん@AORI
氷期の炭素リザーバー問題について。
AABWが強化していたことがプロキシから指摘されている。これはモデルで再現できるようになってきた。しかし、一方でAABWの形成が強いと、南大洋の深層水が若くなり、プロキシと合わなくなる。
一般にモデルでは南大洋の対流・混合をうまく再現できていないため、モデル依存の可能性も。

▶︎阿部彩子さん@AORI
プロキシからは氷期のNADWは弱かったことが分かっているが、ほとんどのモデルが強いNADWを再現している。
プロキシと整合するのは強いAABWの沈み込みの再現。
最近掘削された西南極氷床のアイスコアの分析結果も、AABWが重要であることを示唆している。
北大西洋への淡水流入(ハインリッヒ・イベント)がNADW形成を弱め、AMOCに影響するというのは間違い?

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「東アジア‐北西太平洋域高解像度古気候観測網」
▶︎味岡拓さん@産総研
湖の堆積物コア中のGDGTの分析。シクロペンタンやメチル基の数が異なるGDGTを利用したインデックスを利用することで温度・pHの復元が可能。
気温・降水が化学風化(アルカリ度・リン)に影響し、湖内の生物生産に影響しているためと思われる。

▶︎山本正伸さん@北海道大学
TEX86温度計のメカニズムの検証のため、太平洋の低緯度〜高緯度の深度別海水サンプルを分析。
一般に水塊の水温を反映すると言われているものの、必ずしも現場の水温に合っていない。
「スカベンジングの速度」や「GDGTを生成するアーキアそのものの変化」が重要である可能性。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「古気候・古海洋変動」
▶︎佐野雅規さん@地球研
屋久島で採取された複数のスギのδ18Oから過去2,000年間の相対湿度・降水量を復元。
いわゆるホッケースティック状の変化曲線が得られ、中世温暖期は乾燥、小氷期は湿潤状態だった。20世紀以降、乾燥化が続いている。
おそらく梅雨前線の緯度方向の移動で説明できるが、降水現象は気温にも影響されるため、低緯度の影響もあると思われる。

▶︎加三千宣さん@愛媛大
苫小牧沖の堆積物コア中のクロロフィルの分析。マイワシの変動ともよく合っており、PDOが原因と思われる。
近年栄養塩が低下傾向にあり、温暖化の影響が指摘されているが、数100年スケールの大きな変動の一部を見ているにすぎない可能性も。

2015年6月1日月曜日

「海底ごりごり地球史発掘」(須藤斎, 2011年)

海底ごりごり地球史発掘
須藤斎
PHPサイエンス・ワールド新書

名古屋大学の須藤さんの著書。
自分自身IODPに初めて乗船することもあり、何か予習しておかなければと思っていた折、たまたま図書館の特設ページにて本書を見つけた。

中を覗いてみるとIODPの乗船体験について事細かに書かれている!ということで迷わずレンタル。

IODPにおける2ヶ月に渡るジョイデス・レゾリューションでの船内生活の様子をはじめとして、
堆積物コアとはなんぞや、
海外から見た日本人・異文化交流、
外国人とのコミュニケーションとその大切さ、
研究を支えてくれる人たちへの感謝・畏敬の念
など、多くの話題が堅苦しくない「ふつうの」研究者の視点から語られる。