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1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
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2014年1月25日土曜日

新着論文(Nature#7484)

Nature
Volume 505 Number 7484 pp453-580 (23 January 2014)

RESEARCH HIGHLIGHTS
Climate change spawns bigger waves
気候変化がより大きな波を生み出す
Geophys. Res. Lett. http://doi.org/q2c (2014)
将来の気候変化のモデルシミュレーション結果から風の変化を抽出した研究から、特に南半球で風が強化される結果、チリやBaja半島において10年に一度起きる高波の頻度が2〜3倍になることが示された。特に沿岸域では海水準上昇が高波の被害をさらに高めると予想されている。

Strong storms shift landwards
強い嵐が陸側にシフトする
Environ. Res. Lett. 9, 014008 (2014)
1977-2010年にかけて東アジア地域で得られた嵐の記録から、ここ数十年間の間に、嵐の活動がより陸側へとシフトしており、より強い嵐へと繋がっていることが分かった。ただし、北部(中国・韓国・日本)では強い嵐が有為に増加していることが分かったが、南部(ベトナム・台湾など)では有為な変化は確認されなかった。大気循環の変化によって西赤道太平洋の温暖化が嵐の発達する地域をより北西へと押し上げている可能性が指摘されている。

SEVEN DAYS
今回は省略

NEWS IN FOCUS
Polar drilling problems revealed
極の掘削の問題が明らかに
Quirin Schiermeier
南極の氷底湖Ellsworth湖を掘削する計画が直面する問題について。

Rock’s power to mop up carbon revisited
炭素を掃討する石の力が再検討された
Daniel Cressey
かんらん岩は風化を通して大気中のCO2を炭酸イオンに変換することが知られている。その化学反応を利用して気候変化を打ち消す目的で、大気中のCO2を減らす試み(地球工学)がなされている。しかしながら、まだ分からないことも多い。

Yellowstone grizzlies face losing protected status
イエローストーン・グリズリーが保護対象の地位を失いつつある
Lauren Morello
グリズリーが絶滅危惧種のリストから除外することを推奨するパネルに対して環境保護主義者たちが抗議している。

Sea drilling project launches
海洋掘削計画が始まる
Jane Qiu
国際深海掘削計画によって、世界の地質学的に重要な海の一つである南シナ海の謎が解き明かされようとしている。

COMMENT
Ecology: Protect the deep sea
生態系:深海を保護する
Edward B. Barbierらは商業によって脅かされている深海生態系を保護するためのガバナンスと基金の必要性を訴えている。

CORRESPONDENCE
Peer review: Payback time for referee refusal
Dan Graur

Land management: Resolving soil pollution in China
Ruishan Chen & Chao Ye

Land management: Weighing up reuse of Soviet croplands
Johannes Kamp

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RESEARCH
NEWS & VIEWS
Ecology: Good dirt with good friends
生態学:良い友人と良い土
Mark A. Bradford
Averill et al.の解説記事。
全球の森林を対象にしたデータの解析から、樹木の根に付く有益な真菌の種類によって、土壌中に蓄えられる炭素の量が決まることが明らかに。

Solar system: Evaporating asteroid
太陽系:小惑星を蒸発させる
Humberto Campins & Christine M. Comfort
Küppers et al.の解説記事。
セレスは水をふんだんに含むと考えられている。ハーシェル宇宙望遠鏡を用いた観測から、セレスの地表から水蒸気が漏れ出していることが分かった。

Climate science: A resolution of the Antarctic paradox
気候科学:南極のパラドクスの解決
John King
Li et al.の解説記事。
近年極域は極端で急速な環境変化を経験しているが、特に南極の冬期の海氷量がわずかに増加しつつあることが話題を呼んでいる。その原因が大西洋の熱帯域と北部地域の長期的な温暖化にある可能性が示唆された。

LETTERS
A millisecond pulsar in a stellar triple system
三重星系におけるミリ秒パルサー
S. M. Ransom et al.

Localized sources of water vapour on the dwarf planet (1) Ceres
準惑星(1)ケレス表面にある局在化した水蒸気発生源
Michael Küppers et al.
準惑星(1)ケレスの地表には含水鉱物が発見されており、この準惑星の内部はケイ酸塩のコアと氷のマントルに分化していると考えられている。ケレス周囲における水蒸気が初めて検出された。彗星と同様の「昇華」か、「氷火山」が原因かもしれない。
>Nature ハイライト
小惑星ケレス表面の水蒸気

Impacts of the north and tropical Atlantic Ocean on the Antarctic Peninsula and sea ice
北大西洋と赤道大西洋が南極半島と海氷に与える影響
Xichen Li, David M. Holland, Edwin P. Gerber & Changhyun Yoo
南極半島は世界で最も早い温暖化を経験している。その結果、南極周辺の海氷にも影響が生じているが、単に減少しているのではなく、その位置が再編されており、結果的にわずかに増加している。赤道太平洋の気候変動の影響は良く知られているが、大西洋の影響はこれまで評価されてこなかった。
 大西洋数十年規模振動(Atlantic Multidecadal Oscillation; AMO)の影響が海氷の分布の変化と南極半島の温暖化に寄与していることが観測とモデルから示された。
>Nature ハイライト
南極の気候に対する大西洋の影響

Mycorrhiza-mediated competition between plants and decomposers drives soil carbon storage
菌根が仲介する植物と分解者の間の競合が土壌炭素の保存を駆動する
Colin Averill, Benjamin L. Turner & Adrien C. Finzi
土壌中では、温度・降水・粘土量・一次生産量などよりも、菌根類生態系のタイプが炭素の保持力により強い影響を持っていることが明らかに。エリコイド型の方が、アーバスキュラー型に比べて単位窒素あたりの炭素量が70%多いことが示唆された。
>Nature ハイライト
土壌炭素量のカギを握る菌根菌

CORRIGENDUM
Corrigendum: Deglacial pulses of deep-ocean silicate into the subtropical North Atlantic Ocean
A. N. Meckler, D. M. Sigman, K. A. Gibson, R. François, A. Martínez-García, S. L. Jaccard, U. Röhl, L. C. Peterson, R. Tiedemann & G. H. Haug
堆積物コアの年代モデルに間違いがあった模様。結果には影響せず。