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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English

2013年9月27日金曜日

新着論文(Science#6153)

Science
VOL 341, ISSUE 6153, PAGES 1421-1548 (27 SEPTEMBER 2013)

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Special Issue
〜Curiosity at Gale Crater〜

INTRODUCTION
Analysis of Surface Materials by the Curiosity Mars Rover
John P. Grotzinger

Research Articles
Soil Diversity and Hydration as Observed by ChemCam at Gale Crater, Mars
P.-Y. Meslin et al.

X-ray Diffraction Results from Mars Science Laboratory: Mineralogy of Rocknest at Gale Crater
D. L. Bish et al.

Volatile, Isotope, and Organic Analysis of Martian Fines with the Mars Curiosity Rover
L. A. Leshin et al.

The Petrochemistry of Jake_M: A Martian Mugearite
E. M. Stolper et al.

Curiosity at Gale Crater, Mars: Characterization and Analysis of the Rocknest Sand Shadow
D. F. Blake et al.

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EDITORIAL:
Mercury and Health
水銀と健康
Marcia McNutt
環境中の水銀汚染が人に与える健康被害やその規制の取り組み(水俣条約)などについて。

Editors' Choice
Banding Together
団結する
Sci. Rep. 3, 2633 (2013).
通常、鍾乳石をはじめとする洞窟内の二次生成物の縞は年縞と考えられている。300年の記録を有する鍾乳石を高精度にU/Th年代測定したところ、縞が必ずしも1年に1枚刻まれておらず、最大で数年間の誤差が生じることが示された。
>話題の論文
Testing the annual nature of speleothem banding
Chuan-Chou Shen, Ke Lin, Wuhui Duan, Xiuyang Jiang, Judson W. Partin, R. Lawrence Edwards,  Hai Cheng & Ming Tan
しばしば鍾乳石は年縞を形成すると仮定されている。中国の仙人洞(Xianren Cave)から得られた鍾乳石の過去300年分の縞一つ一つを年代決定の精度±0.5年でU/Th年代測定したところ、その仮定が成り立っていないことが示された。偽の縞の存在や縞が消えていることによって、絶対年代が数年ずれることが分かった。

News & Analysis
U.S. Carbon Plan Relies on Uncertain Capture Technology
アメリカの炭素計画は不確かな捕獲技術に依存している
Eli Kintisch
先日オバマ政権が公表した提案書によると、新設の石炭燃焼型の発電所は排出されるCO2のいくらかは捕獲することが必要とされることになっている。しかし、それに必要な科学技術は不確かなままである。

Will New Government Overcome 'Symbolically Challenged' Start?
新たな政府は”象徴的に欠けた”始まりを克服できるだろうか?
Leigh Dayton
オーストラリアの新政府は80年間で初めて科学部門のポストをなくし、気候変化に関する種々の計画を解体し始めた。
>関連した記事(Nature#7468 "SEVEN DAYS")
Climate closures
気候の閉鎖
オーストラリアの新政府はClimate Commissionを閉鎖しようとしている。2011年に設立された独立機関で、気候変化に関する情報を提供していた。機関の代表であるTim Flanneryは私的基金によって運営を継続すると言っている。他にも炭素の価格や排出削減をアドバイスする機関であるClimate Change Authorityも閉鎖しようとしている。

News Focus
Taming a Mercurial Element
水銀元素を制御する
David Malakoff
水銀汚染を削減するという国際的な合意によって違いは生まれるだろうか?

With Pact's Completion, the Real Work Begins
取り決めが完成することで、本当の仕事が始まる
Naomi Lubick and David Malakoff
水銀の規制に関する水俣条約は水銀の利用を削減或いは止める道を模索している。多くの研究が必要とされている。

In Minamata, Mercury Still Divides
水俣では、水銀が未だに隔てている
Dennis Normile
化学プラントが世界でも最大級の水銀汚染を引き起こしてからおよそ60年が経過したが、水銀の脅威で象徴される水俣市はいまだその余波に苦しんでいる。

Gold's Dark Side
金の暗黒面
Lizzie Wade
小規模な、職人技の金の精錬は水銀汚染の世界でも有数の原因となっており、大気、河川、そして人々を毒している。

Letters
L'Aquila's Aftershocks Shake Scientists
ラクイラの余震が科学者を揺らす
Enzo Boschi

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Research
Perspectives
Global Change and Mercury
全球的な変化と水銀
David P. Krabbenhoft and Elsie M. Sunderland
大気-海洋中の水銀濃度は人為起源の排出だけでなく、気候や生態系の変化によっても影響される。

Research Articles
Electromagnetic Energy Conversion at Reconnection Fronts
再結合フロントにおける電磁気エネルギー保存
V. Angelopoulos, A. Runov, X.-Z. Zhou, D. L. Turner, S. A. Kiehas, S.-S. Li, and I. Shinohara
地球の磁気尾部の観測から、どこで・どのように電磁気が保存されているのかが分類された。

Reports
In Situ Observations of Interstellar Plasma with Voyager 1
ボイジャー1号による星間プラズマの現場観測
D. A. Gurnett, W. S Kurth, L. F. Burlaga, and N. F. Ness
ボイジャー1号の電子密度の観測記録は、星間プラズマの中にいることを物語っている。

Distances, Luminosities, and Temperatures of the Coldest Known Substellar Objects
これまで知られている中で最も冷たい準恒星の距離・明度・温度
Trent J. Dupuy and Adam L. Kraus
スピッツァー宇宙望遠鏡を用いた準恒星の観測から、もっとも冷たい褐色矮星と巨大ガス惑星との関連が強まった。

Near-Complete Extinction of Native Small Mammal Fauna 25 Years After Forest Fragmentation
森林の断片化から25年経過した後の固有小型ほ乳類のほぼ完全な絶滅
Luke Gibson, Antony J. Lynam, Corey J. A. Bradshaw, Fangliang He, David P. Bickford, David S. Woodruff, Sara Bumrungsri, and William F. Laurance
タイの森林において固有のほ乳類が急速にいなくなったという事実は、森林が断片化すると生物多様性が維持できなくなることを示唆している。

2013年9月26日木曜日

新着論文(Nature#7468)

Nature
Volume 501 Number 7468 pp461-584 (26 September 2013)

EDITORIALS
Counting the cost
コストを計算する
海洋科学に対する予算はオペレーションやメンテナンスのコストによってますます食い尽くされている。アメリカ科学財団は大型プロジェクトに投資をする際には長い視点を持つようになるべきだ。

RESEARCH HIGHLIGHTS
Cool eggs make for longer legs
冷たい卵がより長い足を作る
Am. Nat. http://dx.doi. org/10.1086/673299 (2013)
熱帯に棲息するトカゲの一種(Carlia longipes)を異なる温度で孵化させたところ、足の長さが変化することが分かった。森林土壌(28.5℃)や岩の上(~23.5℃)などを想定した温度区に設定したところ、より低い温度で孵化したトカゲはより足が長く、より素早く跳ねたり登ったりする能力が備わっていた。また生息地の好みも自らが適する環境に偏ることが分かった。

Waiting to reduce emissions is costly
排出を削減するために待つことはコストが高い
Environ. Res. Lett. 8, 034033 (2013)
温暖化を産業革命前の2℃上昇に抑えるという政策が達成されたとして、モデルを用いてその後数年間のコストが推定された。政策の開始時期が2030年よりも遅くなった場合、エネルギーのコストは80%増加するのに対し、世界の経済成長率は7%低下するため、結果として2015年に政策が開始された場合に比べ、3倍にもコストが膨れ上がることが示された。

SEVEN DAYS
Climate closures
気候の閉鎖
オーストラリアの新政府はClimate Commissionを閉鎖しようとしている。2011年に設立された独立機関で、気候変化に関する情報を提供していた。機関の代表であるTim Flanneryは私的基金によって運営を継続すると言っている。他にも炭素の価格や排出削減をアドバイスする機関であるClimate Change Authorityも閉鎖しようとしている。

US power plants
アメリカの発電所
アメリカのEnvironmental Protection Agencyによって提案された規制によって、アメリカ国内において新たに建設される発電所においてはCO2排出が制限されることになる(炭素捕獲貯留設備の設置が義務化される)。現行の発電所についても2014年7月までに規則が準備される予定となっている。

Arctic ice low
北極の氷が少ない
アメリカのNational Snow and Ice Data Centerによると、北極の海氷量が9/13に最低値に達した。今回は2012年の記録的な低下と比べると小さいが、それでも1979年以来では6番目に小さいと報告されている。
>より詳細な記事(NATURE NEWS BLOG)
Arctic sea-ice minimum is sixth smallest on record
北極の海氷の最大値は観測史上6番目に小さい
Lauren Morello

NEWS IN FOCUS
Drilling hit by budget woes
掘削が予算的困難にぶち当たる
Alexandra Witze
先日アメリカが所有する大型掘削船Joides Resolution号が日本海の掘削を終え、韓国の港に入港した。国際統合深海掘削プログラム(Integrated Ocean Drilling Program; IODP)の再編成を受けて、JRに対してアメリカが今後も資金援助するかどうかが不確かとなっている。

FEATURES
Marine science: Oceanography's billion-dollar baby
海洋科学:海洋学のビリオン・ダラー・ベイビー
Alexandra Witze
AUVやグライダーなどの投入を含む、北米・南米沖の海洋観測の大型プロジェクトがアメリカにてまもなく始まり、大量のデータが海洋学者にもたらされることになる。しかし、中にはそれほどの観測体制が大量の資金をかけるに値するかどうか疑うものもいる。

COMMENT
Ecology: Gene tweaking for conservation
生態系:保全のための遺伝子の微調整
「生物種を絶滅から守るために、賛否両論ある遺伝子工学技術を考慮する時かもしれない」と、Michael A. Thomasほかは言う。

CORRESPONDENCE
Global hunger: Food crisis spurs aid for poverty
世界的な飢餓:食料危機が貧困の救済に拍車をかける
Mara P. Squicciarini, Andrea Guariso & Johan Swinnen

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SPECIALS <Open>
〜AGRICULTURE AND DROUGHT〜
〜農業と干ばつ〜
Climate change means the coming decades are likely to bring more frequent episodes of severe drought, with potentially devastating impact on the world's ability to feed a growing population. We therefore need a sustainable agricultural system that makes the most efficient use of water and reduces expensive and environmentally challenging inputs such as fertilizer and pesticides.
気候変化が意味するのは、今後数十年間にわたってひどい干ばつが頻発化すること、それが増え続ける人口を養うための我々の能力に破壊的な影響を与える可能性が高いことである。そのため、水の利用効率を最大化し、肥料や農薬といった高価で環境に影響を与える添加物の使用量を減らすことで、持続可能な農業システムを構築する必要がある。
※最近の’干ばつと農業’関係でNature関連誌に掲載された論文も多数紹介されています。

Agriculture and drought
農業と干ばつ
Michelle Grayson
各記事の紹介とまとめ。

The dry facts
乾燥の事実
Olive Heffernan
干ばつは、作物を破壊し、飢饉を引き起こし、暴動を誘発するなど、歴史を通して悲惨な出来事をもたらしてきた。そしてそれは今後も悪化する可能性がある。図や年表を通して説明。
※出典
Global hot-spots of heat stress on agricultural crops due to climate change
Edmar I. Teixeira et al.
Agricultural and Forest Meteorology 170, 206-215 (2013).

Water: The flow of technology
水:技術の流れ
Katherine Bourzac

Plant breeding: Discovery in a dry spell
植物の品種改良:乾燥期の中の発見
Michael Eisenstein

Modelling: Predictive yield
モデリング:予測的な生産量
Neil Savage

Perspectives: Legislating change
観点:変化に備える

Crop pests: Under attack
作物害虫:攻撃の最中
Amy Maxmen

Microbiome: Soil science comes to life
微生物:土壌科学が息を吹き返す
Roger East

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Research
NEWS & VIEWS
Biodiversity: Temperate hotspots
生物多様性:温帯域のホットスポット
Derek P. Tittensor
Stuart-Smith et al.の解説記事。
礁に生息する魚の全球的調査で得られた大量のデータを取り込むことで、生物の機能的多様性の新たなホットスポットが明らかになった。こうしたホットスポットは、必ずしも種数が豊富というわけではない。この発見は、保全の優先度に影響を与えるかもしれない。

Earth science: A resolution of the Archaean paradox
地球科学:太古代のパラドックスの解決
Louis Moresi
Moore & Webbの解説記事。
地球内部の熱が火山を介して表層へともたらされていたような、地球の初期のモデリングから、40億年前の地球は木星の衛星イオとの共通点が多数あったことが示唆される。

ARTICLES
Heat-pipe Earth
ヒートパイプ地球
William B. Moore & A. Alexander G. Webb
地球のヒートパイプモデル(地球内部の熱がある地域の流路を通して表面へともたらされる)から、これまでの観測事実をうまく説明するような予測結果が得られた。
>Natureハイライト
初期地球の大陸ダイナミクス

LETTERS
Swings between rotation and accretion power in a binary millisecond pulsar
連星系のミリ秒パルサーにおける回転による駆動と降着による駆動の間の揺れ動き
A. Papitto et al.
>Natureハイライト
ミリ秒パルサーの交互に入れ替わるエネルギー源

Atmospheric oxygenation three billion years ago
30億年前の地球大気の酸化
Sean A. Crowe, Lasse N. Døssing, Nicolas J. Beukes, Michael Bau, Stephanus J. Kruger, Robert Frei & Donald E. Canfield
 地球大気は地球が誕生してからおよそ20億年間はほとんど酸素を含んでいなかったが、約23億年前に急に上昇したと考えられている(GOE; Great Oxidation Event)。
 南アフリカから得られた地層中のクロム同位体と還元状態に敏感な金属の濃度の分析から、30億年前にすでに酸素が現在の0.0003倍の濃度で存在し、酸化的な風化が起きていた可能性が示唆される。この値はこれまで考えられていたGOEよりも6億年ほど古いものであり、別の地球化学的な証拠が示唆する年代よりもさらに3-4億年ほど古い。

Integrating abundance and functional traits reveals new global hotspots of fish diversity
豊富さと機能的な種とを統合することで新たに全球的な魚類の生物多様性のホットスポットが明らかに
Rick D. Stuart-Smith et al.
 これまで生物多様性というと種数ばかりが着目され、それによって保全の対象が設定されてきた。しかし、今では生態的機能(ecological function、バイオマス生産量や栄養塩循環など)もまた重要な構成要素であるという認識が広まりつつある。
 全海洋における豊富なデータをもとに生物多様性の評価をやり直したところ、温帯域や太平洋東部もまた新たなホットスポットとして認められた。また種数が圧倒的に多い熱帯域においては、温帯域に比べて、それぞれの種がコミュニティー・レベルでの生態学プロセスに対して均等に関与していることが示された。こうした知見は保全努力に役に立つと思われる。
>Natureハイライト
温帯海域にも見つかった生物多様性ホットスポット

2013年9月22日日曜日

新着論文(PNAS, Ncom, SR)

PNAS
17 September 2013; Vol. 110, No. 38
Commentaries
Observational evidence supports the role of tropical cyclones in regulating climate
Ryan L. Sriver
Mei et al.の解説記事。
地球温暖化と熱帯低気圧の関係について。

Reports
Origin and provenance of spherules and magnetic grains at the Younger Dryas boundary
Yingzhe Wu, Mukul Sharma, Malcolm A. LeCompte, Mark N. Demitroff, and Joshua D. Landis
YDの原因として隕石衝突説が挙げられている。北米大陸各地で採取したYD境界の堆積物のオスミウム同位体(187Os/188Os)を報告。アリゾナ州・ミシガン州・ニューメキシコ・ニュージャージー州・オハイオ州は大陸地殻の値をとるが、ベルギーとペンシルベニア州のものは地球外物質と大陸地殻の混合した値を示す。ベルギーのものは怪しいが、ペンシルベニア州のものは2-5mm径のスフェリュールも含んでおり、イジェクタによるものと思われる。アメリカ北東部のGrenville Provinceが起源?

Sea surface height evidence for long-term warming effects of tropical cyclones on the ocean
Wei Mei, François Primeau, James C. McWilliams, and Claudia Pasquero
熱帯低気圧が通過した跡の海水の熱膨張(海面高度)を直接観測することによって、熱帯低気圧が海水温に与える影響を評価。1993-2009年にかけて熱帯域の温暖化の23倍という大きさで単位面積あたりの海表面を暖めていると考えられ、大気-海洋系の熱輸送(つまり気候)に影響していると思われる。温暖化によってサイクロンの強度は増すと思われ、それとサイクロンの位置のシフトによって、ますます海は暖まると思われる。

Model projections of atmospheric steering of Sandy-like superstorms
Elizabeth A. Barnes, Lorenzo M. Polvani, and Adam H. Sobel
地球温暖化とともにSandyのような大型熱帯低気圧がより頻発化するかどうかはまだはっきりとしていない。CMIP5のモデルから、Sandyをアメリカ東海岸へ押しやったような大気循環のパターンは頻度・持続期間ともに低下することが予測された。

End of the Little Ice Age in the Alps forced by industrial black carbon <OPEN>
Thomas H. Painter, Mark G. Flanner, Georg Kaser, Ben Marzeion, Richard A. VanCuren, and Waleed Abdalati
19世紀中頃以降ヨーロッパの山岳氷河は急速に後退しているが、その始まりにおいて産業から排出されたブラックカーボンが大きな役割を負っていたことが、アルプス山脈から得られたアイスコアから示された。ブラックカーボンによる放射強制力と氷河の質量収支のモデリングから、1900年には15m、1930年には30mに相当する量の水が失われたと推測され、氷河後退の観測事実とも整合的である。

Future reef decalcification under a business-as-usual CO2 emission scenario <OPEN>
Sophie G. Dove, David I. Kline, Olga Pantos, Florent E. Angly, Gene W. Tyson, and Ove Hoegh-Guldberg
 温暖化や海洋酸性化がサンゴ礁の脅威になると予測されているが、それは主に実験室で得られた知見をもとにしており、実際のフィールドで複数の変動要因が日周期・季節変動を伴ってどのようにサンゴ礁に影響するかを研究した例は多くない。
 グレートバリアリーフの生物を対象としたメソコスモCO2添加実験から、すべての変数を考慮すると、高い排出シナリオのもとでは石灰化速度は低下するが、軽減された排出シナリオのもとでは石灰化速度が増加する可能性があることが示された。どちらの場合も、サンゴの死亡率は増加し、一次生産量はほとんど変わらない可能性がある。


Nature Communications
18 September 2013
The tiger genome and comparative analysis with lion and snow leopard genomes <OPEN>
Yun Sung Cho et al.
>Nature姉妹紙 注目のハイライト
トラのゲノムに示された捕食への適応
>関連した記事(ナショナルジオグラフィック ニュース)
絶滅危惧種、シベリアトラのゲノム解読

Osmium isotope evidence for a large Late Triassic impact event <OPEN>
Honami Sato, Tetsuji Onoue, Tatsuo Nozaki and Katsuhiko Suzuki
>関連した記事(Yahooニュース)
巨大隕石落下の証拠発見=2.1億年前、岐阜と大分で―カナダにクレーター

Advection shapes Southern Ocean microbial assemblages independent of distance and environment effects
David Wilkins, Erik van Sebille, Stephen R. Rintoul, Federico M. Lauro and Ricardo Cavicchioli
南大洋の主要な水塊を採取し、微生物群集分布に対する移流の効果を推定。移流の距離と種の分別との間に正相関が確認され、移流が確かに微生物に影響を与えていることが示唆された。

Time-calibrated Milankovitch cycles for the late Permian <OPEN>
Huaichun Wu, Shihong Zhang, Linda A. Hinnov, Ganqing Jiang, Qinglai Feng, Haiyan Li and Tianshui Yang
 ミランコビッチ・サイクルで代表される地球の軌道要素については新生代と中生代のものしか分かっていない。軌道要素は年代決定の手法としても近年重要度を増してきている。
 中国南部で得られたペルム紀末の岩石に対するU-Pb年代と磁化率の変動で表される軌道要素との関係が調べられた。

Carbon precipitation from heavy hydrocarbon fluid in deep planetary interiors
Sergey S. Lobanov, Pei-Nan Chen, Xiao-Jia Chen, Chang-Sheng Zha, Konstantin D. Litasov, Ho-Kwang Mao and Alexander F. Goncharov
惑星内部の高温高圧状態に置ける炭素-水素基の化学反応性について。


Scientific Reports
17 September 2013
Testing the annual nature of speleothem banding <OPEN>
Chuan-Chou Shen, Ke Lin, Wuhui Duan, Xiuyang Jiang, Judson W. Partin, R. Lawrence Edwards, Hai Cheng & Ming Tan
しばしば鍾乳石は年縞を形成すると仮定されている。中国の仙人洞(Xianren Cave)から得られた鍾乳石の過去300年分の縞一つ一つを年代決定の精度±0.5年でU/Th年代測定したところ、その仮定が成り立っていないことが示された。偽の縞の存在や縞が消えていることによって、絶対年代が数年ずれることが分かった。

One hundred years of Arctic surface temperature variation due to anthropogenic influence <OPEN>
John C. Fyfe, Knut von Salzen, Nathan P. Gillett, Vivek K. Arora, Gregory M. Flato & Joseph R. McConnell
モデルを用いて1900年以降の数十年規模の北極圏の気温変動の原因を推定。温室効果ガス・エアロゾル・火山噴火による放射強制力でほとんどの変動を説明できることが示された。また感度実験から、自然の変動だけではそうした変動が生まれないことも分かった。

Size matters: implications of the loss of large individuals for ecosystem function <OPEN>
Alf Norkko, Anna Villnäs, Joanna Norkko, Sebastian Valanko & Conrad Pilditch

Glyphosate applications on arable fields considerably coincide with migrating amphibians <OPEN>
Gert Berger, Frieder Graef & Holger Pfeffer

Worldwide isotope ratios of the Fukushima release and early-phase external dose reconstruction <OPEN>
Kittisak Chaisan, Jim T. Smith, Peter Bossew, Gerald Kirchner & Gennady V. Laptev
福島第一原発事故の直後に世界中の大気へと拡散した放射性物質の挙動について。

新着論文(Science#6152)

Science
VOL 341, ISSUE 6152, PAGES 1313-1420 (20 SEPTEMBER 2013)

Editors' Choice
Reconstructing Plate Tectonics
プレートテクトニクスを復元する
Earth Planet. Sci. Lett. 373, 93 (2013).
プレートテクトニクス(大陸の離散・集合など)は時代とともに変化し続けているが、予測は可能なのだろうか?過去20億年間のプレートテクトニクスのモデリングから、大きなプレートは1億年の時間スケールではサイズに応じて均質或いは不均質な状態のいずれかを形成する傾向があることが分かった。

Historic Hg Legacy
歴史的な水銀の名残
Environ. Sci. Technol. 10.1021/es401352n (2013).
金属の精錬や石炭発電によって大気中へと放出される水銀は2年間は大気に滞留し、その後地面に落ちると考えられている。2013年10月からそうした排出は環境への影響を考慮して、水俣条約のもと規制されることになる。カナダ・マニトバ州の銅の製錬所付近(2010年に閉山になるまでカナダ最大の水銀の排出源だった)の調査から、鉱山が閉まってからも大気と降水の水銀濃度が他の観測所よりも高いことが示された。地表から舞い上がる塵が放出源と考えられている。

News of the Week
Early Cichlids Traversed the World’s Oceans
初期のシクリッドが世界の海を横断した
様々な色と形を持つシクリッド(カワスズメ)は世界中の淡水に棲息し、その種数は1,600種を超えると考えられている。従来、ゴンドワナ大陸が分裂した1億3,500万年前に様々な大陸に移ったと考えられていたものの、最古の化石は4,500万年前からしか得られておらず問題となっていた。新たな化石研究から、シクリッドの起源は6,500-5,700万年前であり、はるかに最近であることが分かった。決死の覚悟で海を渡り世界中へと拡散したものと思われる。
>より詳細な記事(Science NOW)
Tracing Cichlids Through the Seas
海中のシクリッドを追跡する

News & Analysis
Kenyan Find Heralds New Era in Water Prospecting
ケニアの発見が水探査における新時代の前触れを告げる
Carolyn Gramling
ケニアにおける大量の地下水の発見は、水探査法の進展を表している。
>関連した記事(Nature#7467 "SEVEN DAYS")
Kenya strikes water
ケニアが水に当たる
人工衛星と地震波を用いた探査によって、ケニア北部で2,500億立方メートルの莫大な地下水貯蔵庫が発見された。うち持続利用が可能なものは34億立方メートルと推定されており、ケニアが利用可能な持続性の水資源が17%増加したことになる。

India Aims a Probe at Mars—And at Earthly Prestige
インドは火星に探査機を送ろうとしている−地球の威信をかけて
Pallava Bagla
インドは来月、火星の大気中のメタン(生命存在の兆候となる)を探るための探査衛星を打ち上げる予定となっている。

What Happens When Weed Killers Stop Killing?
除草剤が雑草を殺すのをやめたとき何が起きるのだろう?
Robert F. Service
アメリカ化学会のシンポジウムがインディアナポリスで開かれ、北米の農業において大きくなりつつある脅威に焦点が当てられた。科学者が効果的な新たな除草剤を開発し、農業従事者にそれを供給するよりもはるかに早く、雑草の除草剤に対する耐性が進化し続けているからである。

News Focus
Predators in the 'Hood
近所の捕食者
Virginia Morell
クーガー・コヨーテ・熊などが人家に出没しているが、科学はどのようにして人と捕食動物が共存できるかを示す助けとなる。

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Research
Perspectives
Causes of the Cambrian Explosion
カンブリア爆発の原因
M. Paul Smith and David A. T. Harper
カンブリア紀初期の動物種の急速な多様化は、多種多様な生物・非生物プロセスの結果かもしれない。

Reports
Linear Structures in the Core of the Coma Cluster of Galaxies
かみのけ座銀河団の中心の線形構造
J. S. Sanders, A. C. Fabian, E. Churazov, A. A. Schekochihin, A. Simionescu, S. A. Walker, and N. Werner
宇宙からのX線の観測から、地球のすぐ近くの銀河団の融合の歴史に関する知見が得られた。

Deep-Focus Earthquake Analogs Recorded at High Pressure and Temperature in the Laboratory
室内の高温高圧実験によって記録された深発地震のアナログ
Alexandre Schubnel, Fabrice Brunet, Nadège Hilairet, Julien Gasc, Yanbin Wang, and Harry W. Green II
マントル中の鉱物の相転移によって生成されるヒビが深部地震に似た音波を放出することが室内実験から確かめられた。

Energy Release of the 2013 Mw 8.3 Sea of Okhotsk Earthquake and Deep Slab Stress Heterogeneity
2013年のマグニチュード8.3のオホーツク海における地震のエネルギー放出と深部のスラブの圧力の不均質性
Lingling Ye, Thorne Lay, Hiroo Kanamori, and Keith D. Koper
沈み込みスラブの強度が高い・低い場所の分布がこれまで記録された最大の深部地震の範囲をコントロールしていた。

2013年9月19日木曜日

新着論文(Nature#7467)

Nature
Volume 501 Number 7467 pp282-454 (19 September 2013)

The final assessment
最終評価
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が政策決定者に向けての大きな価値のある証拠を提示するが、その報告書は極めて分厚いもので、また近年ますますページ数が増え続けており、研究者にしか簡単には理解できないだろう。その内容が一般に知れ渡る頃には時代遅れになっている可能性すらある。
IPCCの取り組みは23年前に始まったが、その最新版である第5次報告書は来週ストックホルムにて第一グループ(WGⅠ)のものが公表される予定となっている。第2・第3グループの報告書の公表は来年を予定している。
残念なことに気候感度(CO2倍増で何℃温暖化するか)に関する推定値は「1.5 – 4.5 °C」となる予定で、このばらつきは前回の報告書や1990年の最初の報告書のものよりも大きい。
[以下は引用文]
Most importantly, the panel has increased its confidence in the underlying message — that greenhouse gases are altering Earth’s climate. No serious politician on the planet can now dispute that.
もっとも重要なことに、パネルはその下に潜む「温室効果ガスが地球の気候を変えている」というメッセージの信頼度を増してきた。地球上においてそれに異を唱える熱心な政治家はもはやいない。

The governments of the world, to whom the IPCC reports, have made precious little headway in reducing emissions. And they appear in little hurry to do so. For all of these reasons, it would seem that a little reform is in order.
IPCCが報告書を提出する先の世界中の政府はほんのちょっとしか排出量を減らす方向へと向かっていない。またそれを急いでいるようにも見えない。こうしたすべての理由から、ほんのちょっとの改革しか準備ができていないように思われる。

>Natureハイライト
地球の行く末:IPCCが発表する気候予測の次期報告書

WORLD VIEW
The Himalayas must be protected
ヒマラヤは守られなければならない
「気候変化と人間活動によって、壊れやすい生態系がこれまででもっとも不安定な状態へと追い込まれている」とMaharaj K. Panditは警告する。

RESEARCH HIGHLIGHTS
Another killer fungus hits amphibians
別の殺人菌が両生類を殺す
Proc. Natl Acad. Sci. USA http://doi.org/nrz (2013)
オランダのファイアサラマンダー(Salamandra salamandra)の個体数は過去3年間で96%も低下した。新種のツボカビ(chytrid fungus; Batrachochytrium salamandrivorans)の感染がその原因と特定された。他のツボカビ類とは異なるホストを持ち、また生息に適した温度も異なっているらしい。

Fertility smells like preen spirit
妊娠は毛繕いの熱意のように匂う
Anim. Behav. http://doi.org/nr3 (2013)
ユキヒメドリ(dark-eyed juncos; Junco hyemalis)が毛繕いをする際に発する脂っこい分泌物を分析したところ、オスとメスとで異なることが示された。またより多くの物質を分泌するメスほどより多くの卵を産むことも分かった。身体の大きさや羽の美しさよりも、匂いが生殖の成功を現しているらしい。

Ancient bear bone yields a sequence
古代の熊の骨がシーケンスを生む
Proc. Natl Acad. Sci. USA http://doi.org/nr4 (2013)
30万年以上も昔のホラアナグマ(Pleistocene cave bear; Ursus deningeri)の骨から抽出されたDNAのシーケンスがなされた。30の塩基配列という極めて短いシーケンスであるが、これまで続成・劣化作用で分析が難しかったものも測定できるようになるかもしれない。

Fruits shrink diabetes risk
果物が糖尿病のリスクを小さくする
Br. Med. J. 347, f5001 (2013)
フルーツジュースではなく、果物(リンゴ・ナシ・ブドウ・レーズン、とりわけブルーベリー)を丸まる食べる人は糖尿病のリスクが軽減されることが示された。ジュースの場合、果物に比べて果物起源の化学物質が少なく、より多くの糖分が血液へともたらされることが原因かもしれない。

Eruption sent microbes flying
噴火が微生物を飛ばす
Geology http://doi.org/nr8 (2013)
ニュージーランドにおける火山噴火の噴出物の特定に、かつて湖に生息していて、噴火の際に湖ごと吹き飛ばされた珪藻の骨格が使えることが示された。

SEVEN DAYS
More protection for endangered rhinos
絶滅危惧のサイをもっと保護せよ
アメリカのFish and Wildlife Serviceはミナミシロサイ(southern white rhinoceros; Ceratotherium simumsimum)を絶滅の危機に瀕する種の保存に関する法律(Endangered Species Act)に基づいて保護するようリストに加えた。角の売買の規制に繋がることが期待されている。

Biofuels overhaul
バイオ燃料の修理
ヨーロッパ議会は、化石燃料よりも多くの温室効果ガスを排出する可能性があり、さらに森林破壊や食料価格の上昇に繋がる可能性があるとして、作物から生産されるバイオ燃料を制限することに関する投票を行った。2020年までにエネルギー全体に占めるバイオ燃料の割合は6%以下になると思われる。
>より詳細な記事(NATURE NEWS BLOG)
European Parliament votes to limit crop-based biofuels
ヨーロッパ議会は作物に基づいたバイオ燃料を制限するように投票した
Richard Van Noorden
>関連した記事(Nature#7456 "NEWS IN FOCUS")
EU debates U-turn on biofuels policy
EUがバイオ燃料政策に関するUターンを議論している
Richard Van Noorden
バイオ燃料は種類によっては化石燃料よりも多くのCO2を排出する。

Voyager breakaway
ボイジャーが離脱
ボイジャー1号が打ち上げから36年経って、太陽系外の星間へと突入した。プラズマ密度の分析から太陽の影響圏を抜けたことが分かった。
>より詳細な記事(NATURE NEWS)
Voyager 1 has reached interstellar space
ボイジャー1号が星間宇宙に到達
Ron Cowen
>関連した記事(ナショナルジオグラフィック ニュース)
ボイジャー1号の太陽系外到達を確認

Kenya strikes water
ケニアが水に当たる
人工衛星と地震波を用いた探査によって、ケニア北部で2,500億立方メートルの莫大な地下水貯蔵庫が発見された。うち持続利用が可能なものは34億立方メートルと推定されており、ケニアが利用可能な持続性の水資源が17%増加したことになる。

Flash flooding
急に現れる洪水
9/11-17の間に起きた前例のない大雨がもたらした洪水によってコロラド川が氾濫し、1,500棟の家屋が破壊され、少なくとも8人が死亡した。11,750人が避難している。

Fracking laws
フラッキングの法律
カリフォルニア州はフラッキングを行う石油・ガス会社に対して、「フラッキングを行う際には認可が必要とされ、使用するすべての化学物質の開示が求められる」という法律を通した。カリフォルニア南部のサンホアキンとロサンゼルスにはアメリカが採掘可能なシェール・オイルの64%が眠っていると推定されている。

NEWS IN FOCUS
Grass gets greener
草原をより緑化する
Nicola Jones
植物の分泌によって、土壌からの温室効果ガスの放出が抑制されている。

ALMA strike stirs up Chilean labour unions
ALMAのストライキがチリの労働組合をかき回す
Alexandra Witze
他の観測所も次第に強まる労働者の要求を監視している。

Progress stalled on coronavirus
コロナウイルスに対する進展が失速
Declan Butler
徹底的な研究の不足がソースを特定する努力を妨げている。

FEATURES
Global warming: Outlook for Earth
地球温暖化:地球の見通し
IPCCが次の大きな評価書を最終提出することを受けて、Nature誌がこの監視機関の歴史と今後の見通しを語る。

Climate assessments: 25 years of the IPCC
気候アセスメント:IPCCの25年間
Nicola Jones
IPCCの歴史とその下を支える科学を図解する。

Climate science: Rising tide
気候科学:上昇する潮位
Nicola Jones
研究者はどれくらい早く・どれくらいの大きさで・どれくらいの範囲、海の潮位が増加するかを予測しようと苦心している。

IPCC: The climate chairman
IPCC:気候の委員長
Quirin Schiermeier
数百人にわたる専門家の同意を得ることは決して簡単なことではない。

COMMENT
Climate change: A patchwork of emissions cuts
気候変化:排出削減のパッチワーク
「もし各国が規則に同意し、信頼を築くことができれば、気候変化緩和に向けたホームメイドの国家的取り組みも効果的になる可能性がある」と、Elliot Diringerは語る。

History: Pushing the climate frontier
歴史:気候のフロンティアを押す
「アメリカの乾燥地で行われた最初の大規模な環境調査は今日でも役に立つ、政策決定に関する科学的な教訓を持っている」と、K. John Holmesは説明する。

CORRESPONDENCE
Ecuador: Yasuní oil plans call for vigilance
エクアドル:Yasuní 石油計画は警戒に値する
Kelly Swing

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RESEARCH
NEWS & VIEWS
Climate science: The cause of the pause
気候科学:一時停止の原因
Isaac M. Held
Kosaka & Xieの解説記事。
全球気候モデルを用いた海洋表層水温の再現から、東赤道太平洋の変動が最近の温暖化のハイエタスの原因を担っていることが示された。
>関連した記事(Nature#7464 "EDITORIALS")
Hidden heat
隠れた熱
近年、赤道太平洋はラニーニャ様のフェーズに入っており、全球の温暖化を寒冷化させている(温暖化のハイエタス)。1980年代は逆にエルニーニョ様であったが、1999年以降ラニーニャが卓越している。
>関連した記事(Science#7464 "News of the Week")
Slower Warming Tied To Pacific Cooling
遅い温暖化は太平洋の寒冷化と関係している
温室効果ガスが上昇しているにもかかわらず過去15年間に地球の気温はそれほど上昇していない(温暖化のハイエタス)。研究者によってはそれと太陽活動の弱化やエアロゾル量の増加とを結びつけるものもいるが、スクリップス海洋研究所の小坂優(東大 地球惑星科学専攻OB)らはモデルシミュレーションから赤道太平洋のラニーニャ様の状態がハイエタスの原因である可能性を指摘している。
>より詳細な記事(Science NOW)
A Reprieve From Warming, Thanks to the Pacific
温暖化の執行猶予、太平洋のおかげ

Oceanography: Mountain waves in the deep ocean
海洋学:深海の山岳波
Jennifer MacKinnon
内部山岳波は深層水の混合過程において重要な役割を果たしている。こうした波を次世代の気候モデルに組み込むことを真剣に考慮しても良いかもしれない。

LETTERS
A strong magnetic field around the supermassive black hole at the centre of the Galaxy
銀河中心の超巨大ブラックホール周辺の強い磁場
R. P. Eatough et al.
>Natureハイライト
銀河系中心の強力な磁場

Recent global-warming hiatus tied to equatorial Pacific surface cooling
赤道太平洋の表層水の寒冷化と繋がった最近の温暖化のハイエタス
Yu Kosaka &  Shang-Ping Xie
21世紀における温暖化の停止の原因については複数の案が提示されているものの、それぞれの寄与については定量化されていない。気候シミュレーションと観測から、原因が東赤道太平洋の寒冷化(ラニーニャ)にあることを示す。モデルでは相関関数(r)が0.97という精度で全球の気温の変動をうまく再現できている。またウォーカー循環の強化、アメリカ北西部の寒波、アメリカ南部の干ばつといった現象も再現できている。同様のハイエタスは赤道太平洋の自然現象であり、将来も起きる可能性があるが、温室効果ガス濃度が上昇し続けることで温暖化が進行する可能性が高い。
>Natureハイライト
太平洋の寒冷化が地球温暖化を休止させる

Rapid cross-density ocean mixing at mid-depths in the Drake Passage measured by tracer release
トレーサーの放出によって測定されたドレーク海峡の中層における等密度面を横切る急速な海洋混合
Andrew J. Watson, James R. Ledwell, Marie-José Messias, Brian A. King, Neill Mackay, Michael P. Meredith, Benjamin Mills & Alberto C. Naveira Garabato
南極と南米大陸を隔てるドレーク海峡にけるトレーサー(五フッ化トリフルオロメチル硫黄)の放出・追跡観測から、海底の荒い地形によって、1,500m深における内部混合が20倍ほど増加していることが示された。

2013年9月18日水曜日

Nature Geoscienceからリジェクト、その反省と分析

昨晩、先生から「残念です」とのメールが。

僕が筆頭で書いていた論文のリジェクト(掲載拒否)の知らせでした。
Nature Geoscience誌に投稿してから10日以上が経過し、「便りがないのは逆にいい知らせ…これはreviewに回るかも…」と先生や他の共著者の方々と期待に胸を膨らませていたのですが、残念ながら今回は力及ばず。

反省の意味もこめて、編集者からのコメントを振り返って、どこがダメだったのか考えてみたいと思います。


メールの本文はここでは載せることはできませんが、非常に丁寧な文体で(おそらく数多くのリジェクトになった研究者に送るためのテンプレートだとは思いますが)、後半に少しだけ論文の内容に触れた部分がありました。
一応投稿された論文のほとんどにはきちんと目を通しているのかな?という印象を持ちましたが、後半の方で「最近は投稿数も非常に多く、また発行できる論文数にも限りがあることから…」などと、返答が遅れたことに関しても謝罪の文がありました。

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※補足
The paper trail
2014年1月号のNature Geoscience誌の社説で、投稿された論文がどのように査読プロセスを経たかを説明したもの。2013年には2,000件を超す投稿があり、うち受諾されたのはわずか「177」件。
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Nature誌(姉妹紙含む)の最大の特徴としては、
  • アクセプト(受理)率が非常に低いこと(目安14本に1本)
  • 科学的に飛躍的な進歩が期待され、より広い分野に影響を及ぼしうる研究結果であることが求められる

今回、僕らの研究がリジェクトになった理由は2つ目の特徴と大きく関係があります。

これは共著者であるPDからも投稿前に指摘されたことですが、「この研究結果がなくても、先行研究だけで話が作れて、科学的な進展はそんなに大きくない。驚きもそれほど大きくない」ということ。
  • 研究に使っている試料は世界でも指折りの一級品(特に統合深海掘削計画:IODPのものなので数億〜の国費が投入されている)
  • 国際的な交渉の席で先生が試料の取得にかなり腐心し、極めて良質な試料が得られた
  • 研究に用いた測定手法も世界最高水準
  • 分析そのものが困難であり、研究手法の開発には数年を要した(僕自身2年かけてようやく取得できた、なけなしのデータ)
この辺りが僕らの推しどころであり強みなのですが、ただ、それはもちろん論文には基本的には記載はされていませんし、雑誌の編集部にとってみれば判断材料にも挙がらないのかもしれません。

出版社はあくまで学会に影響を与える雑誌を多く掲載することでお金を稼ぐ営利団体なので、そのあたりの背景はほとんど意味をなさないということなのでしょう。
それは科学に厳しく、極めて広い読者層を持つNature誌だからこそ、ともいえます。

逆に大型プロジェクト(惑星探査計画など)が載りやすいScience誌などをはじめからターゲットにしておいた方が正解だったのかもしれない…仮定の話ですが。

ある意味で、測定値が得られた段階で、既にNature誌に載るかどうかの分かれ道が決まっていたとも言えます。
そう考えると、偶然性も関係してくるので、今回のリジェクトに対する悲壮感が多少軽減されます(いい地質学試料に巡り会うかどうかも、結局運次第…的な)。

結局のところ、考察や解析手法の新規性にはほとんど価値を見い出してもらえず(プロジェクト自体は僕が研究室に配属される以前から走り始めていたので、ここが僕の貢献できた箇所です)、共著者の懸念が正しく、我々が今回新たに得た結果がすべてだったわけです。

これがもし、「分析技術の飛躍的な向上によって初めて見分けることのできた新事実が浮かび上がった」
だったらどうだったのでしょうか?それはかなりいい推しどころです。
しかし、それを全面に押し出せるほどにはまだ手法そのものに不確実性が大きく、さらに大きな自然変動もそれを隠してしまうと思います。

或いは
「データそのものの新規性よりも、解析手法を変えて先行研究を否定する結果が得られた」
「別の独立した解析手法を用いて、先行研究で示唆された推定をいっそう補強する結果が得られた」
というのであれば?
これらは一番分かりやすいアピールの仕方だと思います。
ただし、今回僕らが得たデータは、’残念なことに’先行研究と非常に整合的な記録でした。
今回用いられた手法は、細部は厳密には違いますが、大きくは同じ同位体(δ11B)を用いた手法であって先行研究とほとんど変わりありません。

僕ら地球化学者は新たなデータを取得することが基本的な仕事であり、これまでのデータのコンパイルではあまり評価されません。
データが何を物語っているかを最終的に判断するのは人間ですが、結局のところ試料は自然物であって、真理との巡り会わせには先見の明だけでなく偶然性も大きく関与します(もどかしいことに)。

また2003年と2010年に似た研究手法、近い研究対象地で既に先行研究があったのも今回のリジェクトの原因の1つとコメントにありました(2003年のものはScience誌に論文が掲載)。
しかし逆にその2例が先に道筋を示してくれていなければ、僕が解釈を深めることが難しかったのも事実です。
でも結局それが編集部が僕らの研究を評価するに至らないと判断した最大の理由です。

解釈や書き方ももちろん重要。だけどもっと重要なのはデータそのもの。

今回得た教訓です。

引用文献の書き方(Elsevier編)

最近後輩に質問されたのと、自分でElsevier社の雑誌に向けた投稿論文を作成しようと思っているので、ここでElsevier社の引用の書式例などをもとに、引用の書き方(並べ方?)を解説しておこうと思う。

Elsevier社の場合、
著者名(単著or共著), 発行年. 論文タイトル. 論文掲載雑誌名 巻数, ページ始まり–ページ終わり.
という並び。

○具体例

通常の論文(単著):
Foster, G.L., 2008. Seawater pH, pCO2 and [CO32−] variations in the Caribbean Sea over the last 130 kyr: a boron isotope and B/Ca study of planktic foraminifera. Earth Planet. Sci. Lett. 271, 254–266.

通常の論文(共著): 
Yokoyama, Y., Lambeck, K., De Deckker, P., Johnston, P., Fifield, L.K., 2000. Timing of the Last Glacial Maximum from observed sea-level minima. Nature 406, 713–716.
Yokoyamaさん他が「Timing of the Last Glacial Maximum from observed sea-level minima」というタイトルで2000年のNature誌(第406巻の713–716ページ)に書いた論文の引用

  • 人名はイニシャルが前に来る場合もあるが(Y. Yokoyamaなど)、通常はLast name (Family name)が前で、コンマを挟んでFirst nameがあとの場合が多い。これは雑誌のスタイルによる。
  • 人名と人名の間は’コンマ’で区切る。
  • 「De Deckker, P.」だったり「De Pol-Holz, R」だったり「Bronk Ramsey, C」だったり「van de Flierdt, T.」だったり…どこまでがLast nameにあたるのか日本人には判断しかねる場合も。
  • 発行年は名前の直後に来る場合と、一番最後に括弧書きする場合がある。これもまた雑誌のスタイルによる。
  • 論文が掲載されている雑誌の名前はEarth Planet. Sci. Lett.  = Earth and Planetary Science Lettersのように略す場合も。雑誌のスタイルによるが、雑誌側が最後のプロセスで編集してくれるとの話も(※要確認)
  • 雑誌の名前のあと、雑誌の巻数:Volume、(まれに号:Issue)、掲載ページと続く。最近ではそのあとに「doi:」を続けることが推奨されているのだとか。
  • 通常は雑誌名は斜体(イタリック)、巻数は太字(ボールド)で記載する。Elsevierはそうはしないみたい
  • ページの間の棒は「–」(「-」ではない)。Macの場合「option」+「-」で表示できることをいま知った。

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他にも本や本の中のチャプターを引用したい時は以下のスタイルに合わせる。

本を丸まる一冊:
Strunk Jr., W., White, E.B., 2000. The Elements of Style, fourth ed. Longman, New York. 

本の中の一つのチャプターなどを引用するとき:
Mettam, G.R., Adams, L.B., 2009. How to prepare an electronic version of your article, in: Jones, B.S., Smith , R.Z. (Eds.), Introduction to the Electronic Age. E-Publishing Inc., New York, pp. 281–304.
JonesさんとSmithさんが2009年に書いた、「E-Publishing Inc.」というニューヨークに籍を置く出版社から発行された「Introduction to the Electronic Age」という名前の本の281–304ページにある、MettamさんとAdamsさんが執筆を担当した「How to prepare an electronic version of your article」という名前のついたチャプターの引用

  • チャプターのタイトルだけでなく、もとの本そのものの名称や編集者(Editor)の名前も記載する。
  • 通常、出版社とその本籍地も記載する。
  • 本の引用の場合、「第何版か」も重要なのでthird ed. (Edition)やfourth edなどと記載する。

2013年9月17日火曜日

新着論文(BG, CP)

◎Biogeosciences
Role of regression model selection and station distribution on the estimation of oceanic anthropogenic carbon change by eMLR
Y. Plancherel, K. B. Rodgers, R. M. Key, A. R. Jacobson, and J. L. Sarmiento
海水中の人為起源のDIC量を正確に推定することは自然変動のために難しい。eMLR法によって、経験的な重回帰分析を行うことでそうした自然変動の影響をなくすことができる(らしい?)。

Summertime calcium carbonate undersaturation in shelf waters of the western Arctic Ocean – how biological processes exacerbate the impact of ocean acidification
N. R. Bates, M. I. Orchowska, R. Garley, and J. T. Mathis
北極海の西部、チュクチ海では2009年〜2011年にかけて底層水の飽和度が季節的に不飽和状態になっていたことが分かっている。カルサイトとアラゴナイトに関する飽和度の季節変化はそれぞれ0.8と0.5で、一年のほとんどを通して底性生物殻や堆積物に影響を与えていると思われる。それを引き起こすメカニズムは大気とのCO2交換、植物プランクトンによる光合成、有機物生成+分解・融水の流入・石灰化などが複雑に関連していると考えられ、(まだ多くのことが不確かなままであるが)、将来も継続して監視する必要がある。
Bates et al.を改変。
様々なプロセスがΩの変動に関与しており、まだまだ観測も足りず、分からないことだらけ


◎Climate of the Past
Mid-pliocene Atlantic Meridional Overturning Circulation not unlike modern
Z.-S. Zhang, K. H. Nisancioglu, M. A. Chandler, A. M. Haywood, B. L. Otto-Bliesner, G. Ramstein, C. Stepanek, A. Abe-Ouchi, W.-L. Chan, F. J. Bragg, C. Contoux, A. M. Dolan, D. J. Hill, A. Jost, Y. Kamae, G. Lohmann, D. J. Lunt, N. A. Rosenbloom, L. E. Sohl, and H. Ueda
PlioMIPによる8つの気候モデルによるPlioceneのAMOCの復元結果を調べたところ、一つとしてプロキシから示唆されているような強化を再現していなかった。共通して確認されたのはAMOCの沈み込みの浅化で、原因としてはNADWの影響が弱くなったことが考えられる。また北向き輸送も現在と同程度と推定され、高緯度域の温暖化を説明するのに「AMOCが強化された」というのは当てはまらないと思われる。

An optimized multi-proxy, multi-site Antarctic ice and gas orbital chronology (AICC2012): 120–800 ka
L. Bazin, A. Landais, B. Lemieux-Dudon, H. Toyé Mahamadou Kele, D. Veres, F. Parrenin, P. Martinerie, C. Ritz, E. Capron, V. Lipenkov, M.-F. Loutre, D. Raynaud, B. Vinther, A. Svensson, S. O. Rasmussen, M. Severi, T. Blunier, M. Leuenberger, H. Fischer, V. Masson-Delmotte, J. Chappellaz, and E. Wolff
NGRIP・TALDICE・EDML・Vostok・EDCのすべてのアイスコアの共通年代モデル(AICC2012)を過去800kaまで延伸。大気中のδ18Oの測定によってアイスコア間の年代を繋ぐことが可能に。他の年代モデル(EDC3・Dome Fなど)との違いはそれほど大きくなかった(例えばMIS5でEDC3との違いが5400年)。

The Antarctic ice core chronology (AICC2012): an optimized multi-parameter and multi-site dating approach for the last 120 thousand years
D. Veres, L. Bazin, A. Landais, H. Toyé Mahamadou Kele, B. Lemieux-Dudon, F. Parrenin, P. Martinerie, E. Blayo, T. Blunier, E. Capron, J. Chappellaz, S. O. Rasmussen, M. Severi, A. Svensson, B. Vinther, and E. W. Wolff
南極アイスコア(TALDICE・EDML・Vostok・EDC)とグリーンランドアイスコア(NGRIP)の共通年代モデルを南極アイスコアをベースに作成(AICC2012)。特に120kaに焦点を当てると、氷期の開始(glacial inception)のタイミングが改善され、さらにδ15N測定によって大気捕獲深度(lock-in depth)が改善した。それによってMIS3のタイミングが改善し、グリーンランドアイスコアのピークよりも数百年先に南極アイスコアのピークが最大となることが示された。60.2kaまではNGRIPの年代モデルはGICC05とAICC2012と同一。

Tropical vegetation response to Heinrich Event 1 as simulated with the UVic ESCM and CCSM3
D. Handiani, A. Paul, M. Prange, U. Merkel, L. Dupont, and X. Zhang
HS1の際の大西洋熱帯域の植生の応答を調べるために、2つの気候モデル(UVic ESCM、CCSM3)を用いて再現実験。AMOCの弱化とITCZの南下がともに再現されている。モデル間の食い違いが確認されたものの、概ねアフリカ西部やブラジル北東部の花粉復元記録と整合的。

A reconstruction of radiocarbon production and total solar irradiance from the Holocene 14C and CO2 records: implications of data and model uncertainties
R. Roth and F. Joos
EMICsにIntCal09/SHCal04のΔ14C・アイスコアCO2・地磁気変動・黒点数などの変数を与え、過去21kaの14Cの大気生成量・太陽活動・総放射量(TSI)などを計算。完新世におけるTSIの変動は1W/m2のオーダーで非常に小さく、マウンダー極小期でも0.85±0.16W/m2程度にしか低下していなかった。また21世紀を通してTSIは完新世の平均値よりも低くなると思われる。


◎その他
Risks to coral reefs from ocean carbonate chemistry changes in recent earth system model projections
K L Ricke, J C Orr, K Schneider and K Caldeira
Environmental Research Letters 8 (2013)
CMIP5に参加した地球システムモデルを用いてアラゴナイト不飽和度の将来予測。産業革命前にはΩが3.5を超すサンゴ礁が99.9%であったものの、RCP8.5排出シナリオのもとでは21世紀末にすべてのサンゴ礁でΩが3を下回り、種ごとの応答の閾値にはほとんど関係がないことが示された。一方CO2排出が管理された場合、閾値を超すかどうかがサンゴ礁の命運を決めることが示された。Ωを3.5以上に維持するにはかなりアグレッシブな削減努力が必要となる。

A high-throughput system for boron microsublimation and isotope analysis by total evaporation thermal ionization mass spectrometry
Yi-Wei Liu, Sarah M. Aciego, Alan D. Wanamaker Jr., Bryan K. Sell
Rapid Communications in Mass Spectrometry 27, 1705–1714 (2013)
超微少量(<1ng)でホウ素同位体を測定する手法について。研究室のサンゴ試料で再現性が1.17‰(2STD, n=14)。

2013年9月16日月曜日

新着論文(NCC#Sep2013)

Nature Climate Change
Volume 3 Number 9 (September 2013)

Editorials
Carbon fix
炭素の修正
依存症から学ぶことのできる教訓(神経学・心理学的な意味において)が我々の多く炭素を放出するライフスタイルからの転換を助けるかもしれない。

Water forecasts
水の予報
気候変化が降水と洪水に与える影響が世界中の関心事となっている。

Correspondence
Field tests of solar climate engineering
太陽-気候エンジニアリングの野外実験
Stefan Schäfer, Peter J. Irvine, Anna-Maria Hubert, David Reichwein, Sean Low, Harald Stelzer, Achim Maas & Mark G. Lawrence
気候変化が人類共通の関心ごととなった今、気候工学のガバナンスに対して国際協力が必要とされている。鉄肥沃実験のように既に実行されたものもあれば、小さなスケールであれば太陽光反射の野外実験を行うべきだという意見も出てきている。しかしながら、国際的な同意が得られない限りは野外実験はなされるべきでない。

Commentaries
Overestimated global warming over the past 20 years
過大評価された過去20年間の地球温暖化
John C. Fyfe, Nathan P. Gillett & Francis W. Zwiers
最近の温暖化は気候モデルが予測していたものと比べるとはるかに小さい。それは外部強制力・モデル応答・気候そのものの変動性に伴う誤差の蓄積が原因と考えられる。

Uncertainty analysis in climate change assessments
気候変化アセスメントの不確実性分析
Richard W. Katz, Peter F. Craigmile, Peter Guttorp, Murali Haran, Bruno Sansó & Michael L. Stein
最新の統計法を用いることで、気候変化アセスメントに伴う不確実性の定量化を大きく改善できる可能性がある。

Powering Los Angeles with renewable energy
ロサンゼルスのエネルギーを再生エネルギーで賄う
Mayor Antonio R. Villaraigosa, Varun Sivaram & Ron Nichols
ロサンゼルスの街は「2020年までに電気の3分の1を再生エネルギーで賄う」という目標の3分の2を達成しつつある。世界のその他の大都市もロサンゼルスの例から技術的・経済的・政治的教訓を得ることができる。

News Feature
The pleasure principle
喜びの原則
Elisabeth Jeffries
依存症治療から学べる教訓から、人々の自然に対する姿勢を変える手助けが得られるかもしれない。

Snapshot
Flooding costs
洪水のコスト
Bronwyn Wake
近年、世界各地(東オーストラリア・インド・カナダ・中国など)で発生している洪水とそのコストについて。
>関連した記事(Nature#7445 "SEVEN DAYS")
The costs of storms
嵐のコスト
アメリカにおける巨大な雷雨(2億5千万ドル以上の被害をもたらすもの)の経済損失は1970年から2009年にかけて2倍に増加したことが、ドイツの保険会社Munich ReによってEGUにて報告された。雷雨へと繋がる気象状態の頻度が増していることが原因だと彼らは主張している。
>より詳細な記事(Nature NEWS)
Climate change brings stormier weather to the US
気候変化がアメリカにより嵐的な気象をもたらす
Quirin Schiermeier

Policy Watch
The nuclear paradox
原子力の矛盾
「低炭素エネルギー政策の一部としての、原子力発電所を新設するための補助金は果たして正当化されるのか?」をSonja van Renssenは評価している。

Research Highlights
Genetic pinch
遺伝的な苦境
Ecol. Lett. http://doi.org/ndr (2013)
環境変化を考える上で、遺伝的多様性(Genetic diversity)は耐性や適応にとって重要であるものの、見過ごされることが多い。ヨーロッパコウモリ(Plecotus austriacus)のニッチのモデリングと遺伝学的データについて。

Food miles debated
議論される食べ物のマイル
Environ. Resour. Econ. http://doi.org/ndv (2013)
食糧の輸送に伴うCO2排出(food miles)の削減が重要な関心事になっている。特に反芻動物に着目して世界中の食糧の消費に伴うCO2排出量が推定された。

Climate-driven conflicts
気候がきっかけとなる争い
Science http://doi.org/ncd (2013)
考古学・犯罪学・経済学・地理学・歴史学・政治学・心理学などの総合的な観点から、世界各国で気候変化と争いや政治的不信の発生頻度に関連があるかどうかが評価され、関連性が確認された。気候がより1σの範囲を超えてより温暖になったり、極端な降水現象が起きると、個人間の争いが4%、集団間の争いが14%増加することが示された。従って、2050年に期待される温暖化もまた人々の争いを増加させると思われる。
>話題の論文
Quantifying the Influence of Climate on Human Conflict
気候が人類の争いに与える影響を定量化する
Solomon M. Hsiang, Marshall Burke, Edward Miguel
気候変化が人類の争いの発生頻度に影響するかが関心を集めている。そうした関係性が確かに存在することの証拠が世界の主要な地域で得られた。気候が1σの範囲を超えてより温暖になったり、極端な降水現象が起きると、個人間の争いが4%、集団間の争いが14%増加することが示された。2050年には人類が住む場所の気候が2σ〜4σの範囲で平均値から逸脱すると予想されているため、人類の争いの発生頻度が増加すると思われる。

Soil in the wind
風の中の土壌
Glob. Change Biol. http://doi.org/nds (2013)
土壌の風化によって生じる塵が風によって運ばれることで、有機炭素が陸-大気-海の間を移動する。しかしながら、そうした塵の炭素循環はほとんど定量化されておらず、塵そのものの分解に伴うCO2排出もまた過小評価されている。シミュレーションでオーストラリアにおける塵の炭素循環をモデル化したところ、放牧地から放出される塵が大部分を占め、年間5.83 TgCO2相当の排出であることが示された。他の塵を多く排出する国においても正しく評価を行う必要がある。

State of knowledge
知識の状態
Bull. Am. Meteorol. Soc. http://doi.org/ndt (2013)
気候変化とともに異常気象の発生頻度も上昇傾向にあるように思われる。アメリカの冬季にそうした異常気象が沿岸部に与える影響が評価された。1950年代以降、熱帯低気圧をはみ出した嵐の発生頻度と強度とがともに上昇しており、さらにより沿岸部から離れつつあることが示された。物理的な原因の理解はまだ不足しているらしい。

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Research
News and Views
Game theory: Building up cooperation
ゲーム理論:協力を作る
Alessandro Tavoni
Vítor V. Vasconcelos et al.の解説記事。
危険な地球温暖化を避けるための野心的な排出削減目標は達成できるのだろうか?世界的な同意の達成に失敗した地域においては、ローカルな制裁機関の存在が成功に繋がることが新たな研究から示された。

Hydrology: Seasonal rain changes
水文学:季節的な降水の変化
Praveen Kumar
Xue Feng et al.の解説記事。
気候変化の結果、降水の異常や洪水・干ばつなどの極端な現象が増加することが示されている。新たな研究から、熱帯域の降水の季節性もまた変化しつつあることが示された。生態系と人間圏の両方に影響すると思われる。

Agricultural Impacts: Multi-model yield projections
農業への影響:複数のモデルが予測を行う
Timothy R. Carter
S. Asseng et al.の解説記事。
気候モデルを用いて将来の気候変化に対する作物生産の応答を調べ、予測することが可能であるが、それには国際協力体制と質の高いデータをモデル間で比較することが必要となる。

Perspectives
Coastal adaptation with ecological engineering
生態工学に対する沿岸部の適応
So-Min Cheong, Brian Silliman, Poh Poh Wong, Bregje van Wesenbeeck, Choong-Ki Kim & Greg Guannel
気候変化は沿岸部の管理に対して実用的・理論的問題を投げかけ、不確実性の大きな(だからこそリスクが大きいのだが)将来の問題に対して対処する計画を立てる必要性をもたらしている。塩沢・マングローブ・カキ礁における生態工学(ecological engineering)の3つの例を挙げて、この手法の相乗効果と利点とを示す。

First signs of carbon sink saturation in European forest biomass
ヨーロッパの森林バイオマスにおける炭素吸収飽和の最初の兆候
Gert-Jan Nabuurs, Marcus Lindner, Pieter J. Verkerk, Katja Gunia, Paola Deda, Roman Michalak & Giacomo Grassi
1950年代以降、ヨーロッパの森林は回復し、それまでの森林破壊によるバイオマス量の低下から炭素吸収源となっていた。それは今後数十年にわたって継続すると予測されていたものの、吸収能力が飽和に達している兆候が確認された。森林とその炭素吸収能力を持続させるためにも、政策決定者や森林管理者の迅速な対応が必要とされている。
>関連した記事(Nature姉妹紙 注目のハイライト)
重圧を受けているヨーロッパの森林

Letters
A bottom-up institutional approach to cooperative governance of risky commons
リスクの高い一般大衆の協力的ガバナンスに対するボトムアップ的な機関のアプローチ
Vítor V. Vasconcelos, Francisco C. Santos & Jorge M. Pacheco
気候変化に対する協力体制は、同意を守れない国家に対する制裁措置メカニズムがないことによって制限されている。新たな研究から、世界的な制裁機関を作るというこれまで通りのトップダウン的なアプローチではなく、”地域的な”制裁機関を作るというボトムアップ的なアプローチが広い協力体制を促進することが示された。

Future flood losses in major coastal cities
主要な沿岸都市部における将来の洪水の損害
Stephane Hallegatte, Colin Green, Robert J. Nicholls & Jan Corfee-Morlot
都市部の人口・資産増加が原因で、将来の沿岸部の洪水被害は増加すると思われる。136の地域に対する予測シミュレーションから、2005年には60億米ドルと推計されている被害額が、2050年には520億米ドルへと増加することが示された。この数値は社会経済的なものだけを考慮したものである。気候変化や土地沈降の影響をさらに考慮すると、許容可能な被害額を超えるため、護岸などを強化する必要がある。
>関連した記事(Nature姉妹紙 注目のハイライト)
世界の洪水損害の増加予測

Anthropogenic impact on Earth’s hydrological cycle
地球の水循環に対する人為的な影響
Peili Wu, Nikolaos Christidis & Peter Stott
陸上の降水量や河川流量は想像していたほど増加していないため、全球の水循環に対する人為的な影響ははっきりとしていない。モデルシミュレーションから、1950年代と1980年代の間には、対流圏のエアロゾル量の増加によって水循環が弱化したことが示された。1980年代以降は温室効果ガス濃度の増加によって逆に強化されているという。現在の傾向が続けば、将来も降水量は増加すると思われる。

Changes in rainfall seasonality in the tropics
熱帯域の降水の季節性の変化
Xue Feng, Amilcare Porporato & Ignacio Rodriguez-Iturbe
気候変化の結果、降水の年々変動や季節性が変化している。熱帯域の降水の観測記録から、変動の増加が季節間の振幅・開始時期・継続期間のシフトを伴っていることが示された。
>関連した論文
Patterns of the seasonal response of tropical rainfall to global warming
地球温暖化に対する熱帯域の降水の季節応答のパターン
Ping Huang, Shang-Ping Xie, Kaiming Hu, Gang Huang & Ronghui Huang
Nature Geoscience 6, 357–361 (2013)
地球温暖化に対する熱帯域の降水の変化予測は不確実性が大きい。現在2つの観点が存在する。一つは「湿潤な地域がより湿潤になる」、もう一つは「暖かい地域がより湿潤になる」である。CMIP5に使用されている気候モデルを用いて、両方のパターンが見られることを示す。

Global flood risk under climate change
気候変化の下での全球の洪水リスク
Yukiko Hirabayashi, Roobavannan Mahendran, Sujan Koirala, Lisako Konoshima, Dai Yamazaki, Satoshi Watanabe, Hyungjun Kim & Shinjiro Kanae
温暖化とともに洪水に対するリスクが増加すると考えられている。気候モデルを用いて今世紀末の全球の洪水リスクを推定したところ、ある地域は洪水の頻度が増加するが、他の地域は逆に減少することが示された。それぞれの地域がどれほど脆弱かどうかは、温暖化の規模と降水の年々変動に依存すると思われる。
>関連した記事(Nature姉妹紙 注目のハイライト)
将来の温暖化で洪水が激化する見通し

El Niño modulations over the past seven centuries
過去7世紀にわたるエルニーニョの修正
Jinbao Li, Shang-Ping Xie, Edward R. Cook, Mariano S. Morales, Duncan A. Christie, Nathaniel C. Johnson, Fahu Chen, Rosanne D’Arrigo, Anthony M. Fowler, Xiaohua Gou & Keyan Fang
ENSOは数十年から数百年の時間スケールで自然変動しているため、過去数十年に限られた観測記録からは、気候変化がそれに与える影響を理解することは難しい。2,222の木の年輪に基づく過去700年間のENSOの復元から(サンゴδ18Oとも整合的らしい)、ENSOの活動度が20世紀後半に過去700年間と比較して増加していたことが示された。多くの気候モデルでは再現されていないが、温暖化に対する応答を示唆している。また大きな火山噴火に対するENSOの応答も確認された。

Uncertainty in simulating wheat yields under climate change
気候変化の下での小麦生産量をシミュレーションすることの不確実性
S. Asseng et al.
モデル比較プロジェクトから、気候変化が穀物生産に与える影響が比較された。作物モデル間の違いが不確実性を生む原因らしい。

Woody plant encroachment facilitated by increased precipitation intensity
降水強度の増加によって容易となる木本植物の侵食
Andrew Kulmatiski & Karen H. Beard
気候変化の結果、多くの地域で降水が強まると予測されている。サバンナ地域における実験から、降水量の増加ではなく、降水の強度のわずかな増加によって、水が土壌に染み込む深さがより深まり、草よりも木がより成長しやすくなることが分かった。

Clouds and temperature drive dynamic changes in tropical flower production
雲と温度が熱帯域の花の生産の動的な変化を駆動する
Stephanie Pau, Elizabeth M. Wolkovich, Benjamin I. Cook, Christopher J. Nytch, James Regetz, Jess K. Zimmerman & S. Joseph Wright
熱帯雨林の生産性に対する温度・光・降水の変化の影響を分けることは難しい。2つの熱帯雨林を対象にした調査から、温度・雲・降水が花の生産に与える影響を評価したところ、特に温度が重要な変数であることが示された。

Risk maps for Antarctic krill under projected Southern Ocean acidification
予測される南大洋の海洋酸性化のもとでのナンキョクオキアミのリスク・マップ
S. Kawaguchi, A. Ishida, R. King, B. Raymond, N. Waller, A. Constable, S. Nicol, M. Wakita & A. Ishimatsu
南大洋の海洋生態系は漁業資源としても重要であるが、海洋酸性化に対して特に脆弱であると考えられている。ナンキョクオキアミ(Antarctic krill; Euphausia superba)は中でも食物網において重要な役割を占めている。オキアミは海水中を水平・鉛直方向に活発に移動しており、海洋酸性化に対する脆弱性はあまりよく分かっていない。またその卵は密度の影響で沈降し、700-1,000m深で孵化すると考えられており、そこはもとより酸性度が高く、さらに酸性化の影響も大きいところでもある(AAIWの沈み込みによる)。
 酸性化海水を用いた飼育実験とモデリングから、卵の孵化率が酸性化で低下すること、予測される大気中CO2濃度上昇シナリオの下では孵化が海洋酸性化の脅威にさらされることが示された。Weddell SeaとHaakon VII Seaが特にリスクが大きいと思われる。このまま排出が削減されないようなシナリオ(RCP 8.5)の下では、オキアミ生態系が崩壊し、さらにそれに支えられる上位生態系にも甚大な影響が生じると思われる。
>関連した記事(Nature Climate Change#October 2010 "Research Highlights")
Oceanography: High acid kills krill
Shanta Barley
>関連した記事(Nature Climate Change誌 リサーチハイライト)
海洋学:海洋酸性化でオキアミが死滅する

2013年9月15日日曜日

新着論文(JC, EPSL, CG, Radiocarbon)

◎Journal of Climate
Decadal freshening of the Antarctic Bottom Water exported from the Weddell Sea
Jullion, L., A. Naveira Garabato, M. Meredith, P. Holland, P. Courtois, and B. King
人為起源の気候変化に伴い、南極周回流が南極の氷を融解させていると考えられているが、その観測的な証拠はほとんど得られていない。南極半島の東部において、南極底層水(AABW)がより低塩分化していることが確認された。

If anthropogenic CO2 emissions cease, will atmospheric CO2 concentration continue to increase?
MacDougall, A., M. Eby, and A. Weaver
急激にCO2排出がゼロになったら何が起きるかを、最近永久凍土の炭素も組み込まれた地球システムモデル(UVic ESCM)を用いて評価。CO2排出が止まっても、CO2以外の温室効果ガスによる放射強制力、陸上生物圏からのCO2排出、海洋のCO2吸収が釣り合って、大気中のCO2濃度が少なくとも100年間は一定となることが示された。CO2以外の温室効果ガスによる放射強制力が大きい場合には、大気中のCO2濃度は増え続けることから、これらのガスの削減なしには永久凍土の正のフィードバックによって温暖化が進行し続けると思われる。

Drake Passage oceanic pCO2: Evaluating CMIP5 Coupled Carbon/Climate Models using in-situ observations
Jiang, C., S. Gille, J. Sprintall, and C. Sweeney
ドレーク海峡において観測されているpCO2変動がCMIP5の地球システムモデルで再現できているかどうかを評価。年平均はうまく再現できているが、季節変動の幅は大きく異なった。


◎Earth and Planetary Science Letters
Reconciling discrepancies between Uk37 and Mg/Ca reconstructions of Holocene marine temperature variability
Thomas Laepple , Peter Huybers
堆積物コアを用いた古水温復元で多用される円石藻アルケノンと浮遊性有孔虫Mg/Caの食い違いは、それぞれの生物種の生息環境を反映しているというよりは、プロキシ特有のものである可能性がある。補正の方法を提案。

The influence of kinetics on the oxygen isotope composition of calcium carbonate
James M. Watkins , Laura C. Nielsen , Frederick J. Ryerson , Donald J. DePaolo
炭酸塩のδ18Oは水のδ18Oと必ずしも平衡にない。無機カルサイト沈殿実験から、炭酸脱水酵素(CA)のもとでは各炭酸系構成イオン間の同位体非平衡が抑制されることが示された。天然状態ではこうした非平衡は稀であると思われる。

Cosmogenic nuclide enhancement via deposition from long-period comets as a test of the Younger Dryas impact hypothesis
Andrew C. Overholt , Adrian L. Melott
地球への隕石の飛来量の増加が、大気上層における銀河線フラックスと宇宙線生成核種(14C・10Be・26Al)の生成量を増加させる可能性がある。またその量はアイスコアなどから得られているYDにおける14Cや10Beの増加を説明できるかもしれず、YDが隕石衝突によって起きたとする説を検証できるかもしれない。

Glacial deep ocean sequestration of CO2 driven by the eastern equatorial Pacific biologic pump
Whitney Doss , Thomas M. Marchitto
パナマ海盆から得られた堆積物コア中の底性有孔虫(Cibicidoides wuellerstorfi)のB/Caを用いて過去50kaの東赤道太平洋の底層水(2.2 - 3.6 km)のカルサイト飽和状態を推定。完新世と比較して氷期にはΩが低下しており、鉄やシリカの濃度が変化したことによって、より生物ポンプが活発化していた可能性がある。またδ13Cも軽い値を示し、解釈を支持している。しかし、期待に反して、Globorotalia menardii殻の破砕度は逆に氷期に増加しており、底層水の化学と生物遺骸埋没フラックスの関係が単純でないことを物語っている。

The influence of water mass mixing on the dissolved Si isotope composition in the Eastern Equatorial Pacific
Patricia Grasse , Claudia Ehlert , Martin Frank
世界でも有数の酸素極小層(OMZ)が発達する海域である、東赤道太平洋〜ペルー沿岸部の水柱のケイ素の同位体(δ30Si)を測定。最も南の観測点でδ30Siが最小となり、また濃度も0.2μmol/Kgと小さいことから、生物によって活発に利用されていることを反映していると思われる。中層水のδ30Siは水塊混合・生物源オパールの溶解などによって複雑な挙動を示す。深層水のδ30Siは複数の端成分(NPDWやLCDWなど)の混合で説明できそう。


◎Chemical Geology
Structural limitations in deriving accurate U-series ages from calcitic cold-water corals contrasts with robust coral radiocarbon and Mg/Ca systematics
Marcus Gutjahr, Derek Vance, Dirk L. Hoffmann, Claus-Dieter Hillenbrand, Gavin L. Foster, James W.B. Rae, Gerhard Kuhn
南極Amundsen海から採取された深海サンゴ(Coralliidae spp.、カルサイトの骨格)のLi/Ca・B/Ca・Mg/Ca・Sr/Ca・Ba/CaをLA-ICPMSで測定。Mg/Caは水温計として使えるかもしれない。
また14CやU/Th年代なども併せて測定。14C年代は海水のΔ14Cを反映しているものの、U/Th年代はばらつきが大きく解釈が難しい。αリコイルによってサンゴ骨格内での拡散が起き、閉鎖系が保たれていないことが原因と思われる。従って、カルサイトの骨格を作る深海サンゴはU/Th年代には適さないと思われる。

Interlaboratory comparison of boron isotope analyses of boric acid, seawater and marine CaCO3 by MC-ICPMS and NTIMS
Gavin L. Foster , Bärbel Hönisch , Guillaume Paris , Gary S. Dwyer , James W.B. Rae , Tim Elliott , Jérôme Gaillardet , N. Gary Hemming , Pascale Louvat , Avner Vengosh
4つの異なる研究機関による様々な炭酸塩・海水試料に対するδ11Bの測定値を比較(N-TIMSとMC-ICPMS)。マトリックスがない綺麗な標準試料や海水については、報告されている誤差を大きく外れたような差異は認められなかった。一方でマトリックスの大きい炭酸塩試料については1.46‰(2σ)もの差異が確認され、サンプルサイズとB/Ca比の違いが原因かもしれない。従って、δ11Bの絶対値よりも、相対比のほうが信頼度が大きいと思われる。

Seasonal variability of rainfall recorded in growth bands of the Giant African Land Snail Lissachatina fulica (Bowdich) from India
Ravi Rangarajan , Prosenjit Ghosh , Fred Naggs
インドにおいて得られたカタツムリ(Giant African Land Snail)の殻δ18Oが降水量の指標になるかを検証。週〜月レベルで降水量を反映している可能性があり、観測のギャップを埋めることが可能かもしれない。

High resolution coral Cd measurements using LA-ICP-MS and ID-ICP-MS: Calibration and interpretation
Andréa G. Grottoli , Kathryn A. Matthews , James E. Palardy , William F. McDonough
パナマ湾で採取されたPorites lobataPavona giganteaPavona clavusの3種のサンゴのCdをLA-ICPMSで測定し、湧昇の指標になるかどうかを評価。同位体希釈法のデータと比較したところ、希釈法はCdを低く見積もっていたことが示された。LA-ICPMSの測定値の変動は大きいが、平均値は概ね海水の値を反映していると思われる。
P. clavusについては、湧昇のピークと骨格中のCdのピークには1ヶ月のラグがあり、おそらくCdは生体によって速やかに取り込まれるため、それが抑えられた時に海水のCd濃度が上昇するのかもしれない。P. clavusのCdは海水のCd変動の良い指標になりそうであるが、少なくとも3つのコロニーについて、最低3測線は測定する必要がありそう。

◎Radiocarbon
The Ocean Bomb Radiocarbon Inventory Revisited
Anne Mouchet
海洋の核実験由来14Cの取り込み量は観測とモデルとで大きく食い違っており、その理由はCO2のピストン速度の再現にあるかもしれない。

SHCal13 Southern Hemisphere Calibration, 0–50,000 Years cal BP
Alan G Hogg, Quan Hua, Paul G Blackwell, Mu Niu, Caitlin E Buck, Thomas P Guilderson, Timothy J Heaton, Jonathan G Palmer, Paula J Reimer, Ron W Reimer, Christian S M Turney, Susan R H Zimmerman
南半球の放射性炭素較正曲線(SHCAL)にYDのHuon Pineのデータを追加し、SHCAL13として公表。北半球と南半球の14C年代の違いは「43 ± 23年」と推定される。

2013年9月14日土曜日

氷期に氷結点近くまで下がっていた深層水の温度、そしてMPTのメカニズムとは?(Elderfield et al., 2012, Science)

Evolution of Ocean Temperature and Ice Volume Through the Mid-Pleistocene Climate Transition
H. Elderfield, P. Ferretti, M. Greaves, S. Crowhurst, I. N. McCave, D. Hodell, A. M. Piotrowski
Science 337, 704-709 (2012)

とその解説記事

Ice Sheets in Transition
Peter U. Clark
Science 337, 656-658 (2012) "Perspective"

より。

ニュージーランド沖のChatham Riseから得られた堆積物コア(ODP1123)の底性有孔虫δ18OとMg/Ca分析を通して、過去1.5Maの深層水の温度・氷床量の変動とその変動メカニズムを考察。

新着論文(Science#6151)

Science
VOL 341, ISSUE 6151, PAGES 1141-1312 (13 SEPTEMBER 2013)

Editors' Choice
Habitat Histories
生息地の歴史
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 110, 12715 (2013); Ecol. Lett. 16, 10.1111/ele.12160 (2013).
生物の保全には、対象となる生物がこれまでどのように地理的に散逸してきたのかまで考慮し、将来予測する必要がある。

News of the Week
New Curbs on Greenhouse Gases
温室効果ガスに関する新たな束縛
G20は1987年に採択されたモントリオール議定書に基づいて、温室効果の一種である、ハイドロフルオロカーボン(HFCs)の排出削減を行うことに同意した。HFCsはフロンガスの代替物質として近年排出量が増加しつつあり、オゾン層を破壊する化学物質である。
>関連した記事(Nature#7566 "SEVEN DAYS")
Gas phase-down
ガスの段階的縮小
9/6に、G20がモントリオール議定書のもとHFCsの排出削減に同意することを決定した。バンコクにおいて10月に開かれる会議にて条約の修正がさらに議論されることとなっている。

Seeking a Simpler Solar Cell
よりシンプルな太陽電池を探す
現在の太陽電池と同程度のコストで、さらに簡単に導入することができる新たな生産方法が開発された。非晶質シリコンの代わりにペロブスカイトを用い、発電効率は前者の10%から15%に、1Wあたりのコストも4分の1に改善した。Natureに論文が公表される。
>より詳細な記事(Science NOW)
A Flat-Out Major Advance for an Emerging Solar Cell Technology

News & Analysis
It's Official—Voyager Has Left the Solar System
これは公式です—ボイジャーが太陽系を離れる
Richard A. Kerr
ボイジャーが太陽系をついに脱したが、その所在が議論を呼んでいる。
>関連した記事(ナショナルジオグラフィック ニュース)
ボイジャー1号の太陽系外到達を確認
[以下は引用文]
「人工物を初めて星間空間に送り出したというのは途方もないことだ」
ドナルド・ガーネット(Donald Gurnett)

「このミッションのこれまでの40年間は本当にワクワクしたし、今後の10年も同様にワクワクするものになるはずだ。私たちがこれまで到達したことのない領域を探査しているのだ」
エド・ストーン(Ed Stone)

Researchers Wary as DOE Bids to Build Sixth U.S. Climate Model
DOEのアメリカの6つ目の気候モデルの製作の試みに対して研究者は慎重である
Eli Kintisch
アメリカエネルギー庁(DOE)が国内では6番目となる気候モデルを新たに制作しようとしているが、気候学者の中にはそれに対して慎重な姿勢を示すものもいる。より高解像度のものを開発することが目的で、エアロゾル-気候フィードバックやENSOなどもモデルに組み込むことが期待されている。これまでのモデルとしては、NSF-DOEが1つ(Community Earth System Model; CESM)、NOAAが2つ、NASAが2つ開発している。

Novel Craft Sets Out to Probe the Mysteries of Moondust
革新的な宇宙線が月のダストの謎を明らかにするために出発した
Yudhijit Bhattacharjee
NASAによる新たなロボミッションは、月に関する古い謎に対する答えを探す。
>関連した記事(Nature#7566 "SEVEN DAYS")
Lunar orbiter up
月の人工衛星が打ち上がる
月の大気分子とダストを観測するAtmosphere and Dust Environment Explorer(LADEE)が9/6にNASAによって打ち上げられた。30日後には月に到達し、地表から20-50kmを飛行し、試料を採取する。
>より詳細な記事(NATURE NEWS)
Moon mission to suck up lunar dust
Devin Powell

Letters
Turkey's Biodiversity Funding on the Rise
トルコの生物多様性に対する基金が増加しつつある
Anthony Waldron, Çağan Hakki Şekercioğlu, Daniel C. Miller, Arne O. Mooers, J. Timmons Roberts, and John L. Gittleman

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Research
Perspectives
EVOLUTION: What, Where, and When?
進化:何が、どこで、いつ?
Sandra Knapp
アルフレッド・ラッセル・ウォレス(Alfred Russel Wallace)が提唱した生物分布の科学が生物地理学(biogeography)の基礎を作り出した。

Research Article
Quantifying the Influence of Climate on Human Conflict
気候が人類の争いに与える影響を定量化する
Solomon M. Hsiang, Marshall Burke, and Edward Miguel
気候変化が人類の争いの発生頻度に影響するかが関心を集めている。そうした関係性が確かに存在することの証拠が世界の主要な地域で得られた。気候が1σの範囲を超えてより温暖になったり、極端な降水現象が起きると、個人間の争いが4%、集団間の争いが14%増加することが示された。2050年には人類が住む場所の気候が2σ〜4σの範囲で平均値から逸脱すると予想されているため、人類の争いの発生頻度が増加すると思われる。
>関連した記事(Nature Climate Change#Sep2013 "Research Highlights")
Climate-driven conflicts
気候がきっかけとなる争い
考古学・犯罪学・経済学・地理学・歴史学・政治学・心理学などの総合的な観点から、世界各国で気候変化と争いや政治的不信の発生頻度に関連があるかどうかが評価され、関連性が確認された。気候がより1σの範囲を超えてより温暖になったり、極端な降水現象が起きると、個人間の争いが4%、集団間の争いが14%増加することが示された。従って、2050年に期待される温暖化もまた人々の争いを増加させると思われる。

Reports
Slow Earthquakes, Preseismic Velocity Changes, and the Origin of Slow Frictional Stick-Slip
Bryan M. Kaproth and C. Marone

HONO Emissions from Soil Bacteria as a Major Source of Atmospheric Reactive Nitrogen
大気中の反応性の高い窒素の主要な放出源としての土壌微生物によるHONO排出
R. Oswald, T. Behrendt, M. Ermel, D. Wu, H. Su, Y. Cheng, C. Breuninger, A. Moravek, E. Mougin, C. Delon, B. Loubet, A. Pommerening-Röser, M. Sörgel, U. Pöschl, T. Hoffmann, M.O. Andreae, F.X. Meixner, and I. Trebs
非生物的な亜硝酸(HONO)の放出が大気中のHONOに占める役割と生物地球化学・窒素循環における役割について。

Channelized Ice Melting in the Ocean Boundary Layer Beneath Pine Island Glacier, Antarctica
南極Pine Island氷河の下の海洋境界層にけるチャネル化した氷の融解
T. P. Stanton, W. J. Shaw, M. Truffer, H. F. J. Corr, L. E. Peters, K. L. Riverman, R. Bindschadler, D. M. Holland, and S. Anandakrishnan
棚氷の特性は南極氷床の質量収支(つまり海水準)に影響する。棚氷は海水とも接しているため、海水温の影響もまた大きい。西南極氷床の主要な溢流氷河の一つであり、近年加速的に薄くなりつつあるPine Island氷河における現地調査から、氷河の下のチャネルの複雑な挙動が明らかに。

Marine Taxa Track Local Climate Velocities
海洋生物が地域的な気候の速度について行く
Malin L. Pinsky, Boris Worm, Michael J. Fogarty, Jorge L. Sarmiento, and Simon A. Levin
生物は気候変化に適応するか、或いは移動すると考えられているものの、観察されているシフトはあらゆる方向・速度を持っている。それらを説明するのに、”地域的な気候変化の速度(local climate velocities)の違い”という概念が役に立つかもしれない。1968-2011年にかけて北米沿岸部にて得られた、360種の海洋生物のデータベースを解析したところ、生物の緯度方向・深さ方向の移動がこの概念によってよりうまく説明できることが示された。

2013年9月12日木曜日

気になった一文集(English ver. No. 17)

a future without a GRACE mission in orbit would be an unfortunate and unnecessarily risky backward step for regional water management.
地球の軌道にGRACEが存在しない未来は不幸であり、地域的な水資源管理にとっては不必要にリスクの高い後退となるであろう。

Water in the BalanceScience 340, 1300-1301 (14 June 2013) "Perspective"

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Telling an optimistic story, by using the language of solutions, transitions and resilience, is more persuasive and more likely to promote useful action. Similarly, extreme weather events such as hurricanes and tornadoes capture the public’s attention in a way that decades of warnings about global warming have failed to do — notwithstanding that the connection between the two is complex.

If we want action on energy transition and combating climate change, we must offer concrete and viable solutions — no money goes to problems, only to fixes. We should advocate solutions in an upbeat, tractable way, tailored to particular world views.

Why have these local approaches worked? People like feeling that they are part of the solution, instead of being hostage  to intangible problems such as oil dependency  and  climate change. They seize on things that give them hope and optimism. Capitalizing on these feelings should be a common objective of those who seek sustainable solutions.

I believe that these local measures must be championed to move us away from dependency on fossil fuels and towards renewable energies, and away from personal vehicles to public transport. Instead of agitating for indirect and punitive policy mechanisms such as carbon taxes, we should be advocating feed-in tariff schemes that encourage renewable energy, better rail networks, bicycle-friendly streets, local-food production, and improvements to the efficiency of our built environment.

Messages about climate change and energy that use fear- and threat-based tactics have not mobilized responses.

Positive energyNature 498, 293–295 (20 June 2013) "COMMENT"

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The question of what drives changes in the deep ocean circulation is a fascinating and open research topic in modern oceanography and one where paleoclimate studies could help provide an answer in the future.  

The Role of Deep Ocean Circulation in Setting Glacial Climates」Jess F. Adkins, 2013, Paleoceanography
古海洋学と将来の気候変化

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In a world that strives for continued economic growth, moving the energy infrastructure away from fossil fuels is a challenging task.
依然として経済的な成長を望む世界においては、エネルギー・インフラを化石燃料から遠ざけることは難しい課題であろう。

Air capture could address automobile and airplane emissions inaccessible to point-source CCS. It could also remove residual emissions from point-source capture.
CO2の大気捕獲はある固定点の大気捕獲・貯留では手の届かない、自動車や飛行機からのCO2排出についても取り組むことが可能である。また捕獲を免れたCO2をも捕獲することができる。

The urgency of the development of CO2 capture from ambient air」Klaus S. Lackner et al. PNAS 109, 13156-13162 (14 August 2012) "PERSPECTIVE"
大気からCO2を直接捕獲する技術はもっとも安全に気候変化を緩和できる可能性がある

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Changes to the energy system depend on what re-election-oriented politicians are willing to do — they would not pass laws that are not supported by their constituents — and on what consumers in the marketplace are willing to accept: will they pay for hybrid cars or energy-efficient light bulbs? Therefore, when it comes to energy, the role of citizens is critical.
エネルギー・システムの変化は「再選に躍起になる政治家が何をしたいか(彼らは有権者が支持しないような法律を通そうとは思わない)」や「市場の消費者が何を容認するか(彼らはハイブリット自動車やエネルギー効率の良い電球のためにお金を払うだろうか?)」に依存する。従って、エネルギーということになると、市民の役割は重要である。

Consistent with the few previous studies on other topics such as affirmative action, hate group speech and urban sprawl, the researchers find that opposite and equally strong frames cancel out, therefore appealing to the economic or national security benefits of clean energy does nothing to increase support when countered by the opposing frame — economic or national security risks.

Stunted policy support」James N. Druckman, Nature Climate Change 3, 617 (2013) "NEWS AND VIEWS"
市民の意見もまた政治家の決断に影響

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In 2007, when the latest Intergovernmental Panel on Climate Change assessment was published, the global warming debate seemed to be over.Climate models simulated the observed warming of around 0.2 °C per decade, but only if the effects of greenhouse gases were included. The observations were well within the model uncertainties and a similar rate of warming was predicted for the future. However, it is now clear that the rate of warming has slowed substantially over the past 15 years or so and the observations are very much at the lower end of model simulations.

For example, a cooling could be caused by a downturn of solar radiation, or an increase in the radiation reflected back to space by aerosol particles in the atmosphere. Aerosols increase temporarily after volcanic eruptions, but are also generated by pollution, especially sulphur dioxide from industry. These factors are referred to as external because they are imposed on the climate system, which consists of the oceans, atmosphere, land and cryosphere. However, climate also varies internally without any changes in external factors. Examples of such natural internal variability include the El Niño–Southern Oscillation, which causes the tropical Pacific to warm and cool every few years, and decadal variations in the strength of the ocean currents in the Atlantic Ocean. Both of these affect the climate worldwide, including globally averaged temperatures.

Global warming will therefore not proceed monotonically; indeed, the historical record shows periods where temperatures rose rapidly, such as the 1920s to 1940s and 1970s to 1990s, and periods with little warming or even cooling, such as the early twentieth century and the 1940s and 1960s. Many of these historical periods can be explained by major volcanic eruptions, changes in solar activity or anthropogenic aerosol emissions, and are well simulated by models.
従って、地球温暖化は単調には進行しないのである。実際、歴史記録は温度が急速に上昇した時期(1920-40年代、1940-90年代)や、それほど温暖化しなかった・或いは寒冷化さえした時期(21世紀の初め、1940年代、1960年代)が存在したことを示している。これらの歴史的期間の多くは大きな火山噴火・太陽活動の変化・人為起源のエアロゾル排出などによって説明されており、モデルによってもうまく再現されている。

Has global warming stalled?」Doug Smith, Nature Climate Change 3, 618–619 (2013) "NEWS AND VIEWS"
近年温暖化の速度が低下していることの原因の考察

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The cost of natural disasters in terms of life and property is, by some measures, on the rise. Climate and weather variability in the form of droughts, floods and damaging storm effects, is regularly inflicting suffering around the world, often disproportionately affecting developing countries and possibly contributing to violent regional conflicts.
生命と財産という観点では自然災害のコストは幾分か上昇傾向にある。干ばつ・洪水・破壊的な嵐という形で現れる気候と気象の変動は世界中で日常的に苦しみをもたらしており、しばしば不釣合いに途上国に影響しており、おそらく地域的な暴力的争いにも関係している。

However, climate and weather are strongly influenced by chaotic processes, which subject predictions to errors and uncertainty. Moreover, whether by lack of proper institutions and procedures or simply because of human reluctance to act, the dire consequences of extreme events are often unavoidable even when they have been successfully predicted. Such constraints, amongst others, should be borne in mind particularly when contemplating intervention to prevent disasters through geoengineering.
しかしながら、気候と気象はカオス的な過程によって大きく影響されるため、その予測は大きな誤差と不確実性を伴う。さらに「適切な機関と手続きが存在しないか」、或いは「単に人が行動したくないか」が原因で、たとえ異常気象の予測が成功していたとしても、それがもたらす悲惨な結果はしばしば避けられない。特に地球工学を通して災害を防ぐために(地球システムへの)干渉を考える際には、そうした制約を、他の制約よりも特に意識すべきである。

Volcanic rain shift」Yochanan Kushnir, Nature Climate Change 3, 619–620 (2013) "NEWS AND VIEWS"
成層圏へ注入される火山灰の南北の非対称性が熱帯域の降水バンド・モンスーンに影響する

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The temperature differential is the engine that  drives  the  spectacular  summer  deluges  in  South Asia  known as  the  Indian monsoon—or  so  say textbooks. A  new  spate  of  research is  challenging  exist ing  dogma, sparking  a  debate  over  the Tibetan Plateau’s role in the Indian monsoon. How  it’s decided  could have  effects reaching  far  beyond  the  climate science community.

Monsoon Melee」Jane Qiu, Science 340, 1400-1401 (21 June 2013) "NEWS FOCUS"
「モンスーンの原因はチベット高原における加熱だ」という従来の考えに疑問が投げかけられている。

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The question arises, what is causing the Northern Hemisphere land biosphere, especially at high latitudes, to go into hyperdrive? Surely, the biosphere must be enjoying the warming. Satellite observations show  that from 1982 to 2011, the photosynthetic season has been lengthening over the past three decades: On average, the onset of greening of northern ecosystems (>45 N) has advanced by 1 day per decade  in  the spring, and  the seasonally  integrated  photosynthesis  has increased, consistent with the warming and thawing.

The authors hypothesize that observed changes in the structure of the biosphere—for example, northward migration of the tree line, increased shrub cover in the Arctic, and reestablishment of forests after fires—have enhanced carbon uptake to the extent necessary to explain the amplitude trend.

Permafrost  carbon  dynamics  is  just beginning to be incorporated into the next-generation models. Still, understanding of the transient carbon dynamics of a thawing Arctic  is  rudimentary. 
永久凍土の炭素動態は次世代のモデルに取り込まれ始めたばかりである。依然として、融けつつある北極圏の過渡的な炭素動態の理解は初期段階である。

The biosphere is changing, and changing rapidly. Currently it is a sink for a quarter of  the anthropogenic CO2 emissions. Will it continue to act as a sink for fossil fuel–derived CO2? Current  results,  including those reported by Graven et al., suggest that it will do so until microbial respiration overtakes photosynthetic uptake. The race is on. 
生物圏は変化しつつあり、急速に変化している。現在では人為起源CO2排出の4分の1を吸収している。生物圏は化石燃料由来のCO2の吸収源であり続けるのだろうか?Graven et al.いよって報告されたものを含む最近の研究結果は、微生物呼吸が光合成による炭素取り込みを上回るまで吸収源であり続けることが示唆されている。レースは始まっているのである。

A Hyperventilating Biosphere」Inez Fung, Science 341, 1075-1076 (6 September 2013) "PERSPECTIVE"
近年、大気中のCO2濃度の季節変動幅が大きくなりつつあり、その原因は北半球高緯度の陸上生態系に求められている。

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Asking nations to reduce their greenhouse-gas emissions is apparently asking too much: there is no sign of a downturn in global CO2 emissions. 

But judging from past developments, zero global emissions look unachievable, at least in the next few decades: so far, we haven’t even been able to stop rates of CO2 emissions from continuing to increase. In this situation, carbon capture and storage — the idea of stripping CO2 from exhaust fumes before they enter the atmosphere, and storing the gas in a safe place — could be the only solution.

Capacities for geological storage are uncertain, pilot projects for deep-ocean sequestration have been halted, and public acceptance of both options is at best questionable — not least because full risk assessments based on solid scientific data are scarce. These questions need to be addressed sooner rather than later, if carbon sequestration is to become the solution for the climate problem.

Saved by sequestration?Nature Geoscience 2, 809 (2009) "Editorial"
炭素捕獲・貯留技術が気候変化緩和の最善の・最終手段かもしれない。