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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English

2013年8月30日金曜日

新着論文(Science#6149)

Science
VOL 341, ISSUE 6149, PAGES 929-1032 (30 AUGUST 2013)

EDITORIAL:
Accelerating Ocean Exploration
海洋探査を加速させる
Marcia McNutt
海洋探査は従来型の船で行ってサンプルを採取して実験室に持ち帰る方法から、無人探査機(AUV)を活用した方法へとシフトさせるべきである。また衛星通信などの通信システムも最大限活用すべきだ。特に温暖化と海洋酸性化の影響が懸念されているサンゴ礁と北極海・南大洋などのホットスポットは優先して探査すべきなのだろうか?
[以下は引用文]
Recently, however, exploration has taken on a more urgent imperative: to record the substantial changes occurring in largely undocumented regions of the ocean. With half of the ocean more than 10 kilometers from the nearest depth sounding, ecosystem function in the deep sea still a mystery, and no first-order baseline for many globally important ocean processes, the current pace of exploration is woefully inadequate to address this daunting task, especially as the planet responds to changes in climate.
しかしながら、最近では海洋探査は喫緊の課題の様相を呈している。ほとんど記録されていない海域で起きている大きな変化を記録する必要がある。半分以上の海は深さ10km以内であるが、深海の生態系機能はいまだ謎であり、海洋の重要なプロセスの一次近似的な基礎も分かっておらず、特に地球が気候の変化に応答しつつある中、この難しい課題を解決するには現在の探査のペースは嘆かわしいほどに不適切である。

Although the southern oceans are still largely unexplored, and coral reef hot spots for biodiversity are gravely imperiled by ocean warming and acidification, there was much support by Long Beach participants for prioritizing the Arctic, a region likely to experience some of the most extreme climate change impacts. An ice-free ocean could affect weather patterns, sea conditions, and ecosystem dynamics and invite increases in shipping, tourism, energy extraction, and mining. Good decisions by Arctic nations on Arctic stewardship, emergency preparedness, economic development, and climate change adaptation will need to be informed by good science.
南大洋がいまだほとんど探査されておらず、サンゴ礁の生物多様性ホットスポットが海の温暖化と酸性化によって脅かされている一方で、北極海(最も極端な気候変化の影響を経験すると思われる地域)を優先することに対するLong Beach会合の参加者の支持は大きかった。海氷が消失した北極海は天気のパターン・海の状態・生態系動態に影響し、一方で航行・観光・エネルギー資源採取・鉱物資源採掘の増加を招くだろう。北極圏の管理・緊急時の備え・経済発展・気候変化に対する適応に対する北極圏の国家の優れた判断は優れた科学の情報に基づくべきである。

Editors' Choice
About FACE
FACEについて
J. Ecol. 101, 10.1111/1365-2745.12149 (2013).
 森林とその下の土壌には大気中のCO2濃度の2倍に相当する量の炭素が保管されているため、森林の大気中のCO2濃度増加に対する応答は全球の炭素循環にとって重要な要素となっている。
 成熟した森林における8年間にわたる野外のCO2添加実験から、「硝化の促進」や「根からの水吸収の低下」などの変化が確認された。単に炭素の保存量が増加するというよりは、土壌の過程や栄養塩循環に変化が生じると思われる。

Which Emissions to Reduce?
どの排出を減らすべき?
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 110, 10.1073/ pnas.1308470110 (2013).
 長期間大気中に残留して温室効果を発揮するCO2に対し、滞留時間が短いメタンやブラックカーボンといった放射強制力(すなわち気候)に影響する排出をどのように・どういった比率で削減するかといった議論が活発になされている。
 気候モデルシミュレーションから、メタンやブラックカーボンの排出削減が2050年の温暖化緩和に対して従来考えられてきたよりもそれほど大きな効果がない(従来の推定値の半分程度)ことが示された。削減の効果がすぐに期待でき、またコストも大きくないことで注目を浴びていたが、温暖化の特効薬にはならなさそうである。
>話題の論文
Near-term climate mitigation by short-lived forcers
Steven J. Smith and Andrew Mizrahi
比較的大気中の滞留時間が短い気候変化の要因(メタンやブラックカーボンなど)の削減による影響を評価。炭素質エアロゾル排出やエアロゾルのフォーシングの不確実性から、これらの削減が近未来の気候変化緩和(near-term climate mitigation)にそれほど大きく寄与しないことが示された(2050年で0.04 - 0.35 ℃の温暖化の緩和)。

News of the Week
Panel Picks Possible Collider Site
パネルが衝突型加速器の候補地をピックアップ
衝突型加速器(International Linear Collider; ILC)の建設に九州と東北が候補地として挙げられていたが、岩手県の北上山地が最有力候補となったことが8/23に公表された。
>より詳細な記事(Science Insider)
Japan Picks Tohoku Site for International Linear Collider

The Incredible Shrinking Springtail
驚くほど縮むトビムシ
実験から、トビムシ(springtail; Folsomia candida)が高温時に縮む能力があることが分かった。個体差はあるものの、最大で30%縮小した。高温だと代謝が活発となりエネルギーを多く使うため、小さい方がエネルギーを節約する上で有利なのかもしれない。

Reeling Them In
それらを引き込む
イカは通常1対の長い触手を持っており、それで獲物を捕らえている。しかし、深海に住むイカの一種(Grimalditeuthis bonplandi)の触手は非常に脆く、どのように獲物を捕らえているのかが分かっていなかった。ROVを用いたビデオ撮影から、それが生体発光によって低い振動数の振動を発し、獲物を引き寄せていることが明らかに。PROS Bに論文。
>関連した記事(ナショナルジオグラフィック ニュース)
トックリイカ、華奢な触腕の操り方

Slower Warming Tied To Pacific Cooling
遅い温暖化は太平洋の寒冷化と関係している
温室効果ガスが上昇しているにもかかわらず過去15年間に地球の気温はそれほど上昇していない(温暖化のハイエタス)。研究者によってはそれと太陽活動の弱化やエアロゾル量の増加とを結びつけるものもいるが、スクリップス海洋研究所の小坂優(東大 地球惑星科学専攻OB)らはモデルシミュレーションから赤道太平洋のラニーニャ様の状態がハイエタスの原因である可能性を指摘している。
>より詳細な記事(Science NOW)
A Reprieve From Warming, Thanks to the Pacific
>話題の論文
Recent global-warming hiatus tied to equatorial Pacific surface cooling
Yu Kosaka &  Shang-Ping Xie
Nature (advanced online publication)
21世紀における温暖化の停止の原因については複数の案が提示されているものの、それぞれの寄与については定量化されていない。気候シミュレーションと観測から、原因が東赤道太平洋の寒冷化(ラニーニャ)にあることを示す。モデルでは相関関数(r)が0.97という精度で全球の気温の変動をうまく再現できている。またウォーカー循環の強化、アメリカ北西部の寒波、アメリカ南部の干ばつといった現象も再現できている。同様のハイエタスは赤道太平洋の自然現象であり、将来も起きる可能性があるが、温室効果ガス濃度が上昇し続けることで温暖化が進行する可能性が高い。
>関連した記事(Nature#7464 "EDITORIALS")
Hidden heat
隠れた熱
近年、赤道太平洋はラニーニャ様のフェーズに入っており、全球の温暖化を寒冷化させている(温暖化のハイエタス)。1980年代は逆にエルニーニョ様であったが、1999年以降ラニーニャが卓越している。

>’温暖化のハイエタス’に関連した論文
Strengthening of ocean heat uptake efficiency associated with the recent climate hiatus
Masahiro Watanabe, Youichi Kamae, Masakazu Yoshimori, Akira Oka, Makiko Sato, Masayoshi Ishii, Takashi Mochizuki, Masahide Kimoto
Geophys. Res. Lett. 10.1002/grl.50541 (2013).
近年温暖化の進行速度は低下している。GCMを用いてそのハイエタスの原因を調べたところ、海洋の熱吸収が原因であることが示された。海洋の熱吸収効率(κ)が低下していることが分かり、それがモデルが地表温度の上昇を高く見積もっていることの原因であることも分かった。じきにハイエタスが終了し、温暖化に向かうと予測される。

>’温暖化のハイエタス’に関連した記事(Science#6129 "Editors' Choice")
Where’s Warming?
どこが温暖化している?
Geophys. Res. Lett. 10.1002/grl.50382 (2013).
地表温度は1975年頃から2000年頃にかけて急速に温暖化したが、ここ10年間は顕著には温暖化していない。問題は「温暖化が停止したかどうか」ではなく、「どこへ過剰の熱が吸収されたか」にある。1958年から2009年にかけての海水温の観測記録を解析したところ、表層よりも700mよりも深い部分での温暖化が顕著に起きていることが示された。従って、最近の温暖化は我々の知らないところで進行しているということになる。
>話題の論文
Distinctive climate signals in reanalysis of global ocean heat content
Magdalena A. Balmaseda, Kevin E. Trenberth, Erland Källén
1958年〜2009年にかけての海水温の観測をもとに、温暖化の傾向と2004年以降の表層水の温暖化の停止(the recent upper-ocean-warming hiatus)の原因を評価。ここ10年間は700mよりも深い部分で温暖化が起きており、風の変化に伴う海洋鉛直構造の変化が原因と考えられる。

>’温暖化のハイエタス’に関連した記事(Science#6143 "Editors' Choice")
Heating the Deep Ocean
深海を暖める
Geophys. Res. Lett. 40, 1754 (2013).
 温暖化による熱は大気と海の両方に取り込まれている。2000年代から海洋上層(~700m)の温暖化は停止しているが、700-2,000mの深層水に主として取り込まれていることが示された。貿易風の強化による表層風の変化が熱の分布を変えたことが原因として考えられている。1997-1998年のエルニーニョの際には全球的に寒冷化が起きていた。また大きな火山噴火の直後にも寒冷化が起きている。
>話題の論文
同上

>’温暖化のハイエタス’に関連した記事(Nature Climate Change#May 2013 "Research Highlights")
Warming seas
温暖化する海
Geophys. Res. Lett. http://doi.org/k5s (2013)
近年海洋表層水の温暖化が停止した(surface-warming hiatus)ことが話題を呼んでいた。1958-2009年における異なる深さの温暖化を再解析した研究から、海洋表層の温暖化は一時的に停止したものの、深層水が熱を吸収しており、過去10年間には30%を説明することが分かった。火山噴火や大きなエルニーニョも海の熱量を変える効果がある。
>話題の論文
同上

News & Analysis
Taking the Life Out of Titan
タイタンから生命を取り出す
Richard A. Kerr
土星最大の衛星である、もやで覆われたタイタンに生命はいるのだろうか?いないのだろうか?

European Hunter-Gatherers Dined on Domestic Pigs
ヨーロッパの狩猟採集民族は家畜化した豚を食べていた
Michael Balter
先史時代の豚のDNA分析から、8.5kaに中東の農夫がヨーロッパへと移動した際、ヨーロッパ土着の漁民は豚を飼うという中東の習慣を引き継いだらしい。
>関連した記事(ナショナルジオグラフィック ニュース)
中石器エルテベレ文化に家畜ブタ

Letters
Evidence-Based Environmental Laws for China
中国に対する証拠に基づいた環境法
Xiushan Li, Josef Settele, Oliver Schweiger, Yalin Zhang, Zhi Lu, Min Wang, and Juping Zeng

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Research
Perspectives
The Curious Behavior of the Milky Way's Central Black Hole
天の川銀河の中心のブラックホールの興味深い振る舞い
Jeremy D. Schnittman
Wang et al.の解説記事。
天の川の中心に存在する超巨大ブラックホールのX線の観測から、例になく効率の悪い周囲のガスの集積を説明する手だてが得られるかもしれない。

Minimizing Caribbean Tsunami Risk
カリブ地域の津波のリスクを最小化する
Christa von Hillebrandt-Andrade
カリブ地域の津波に対するリスクを理解し備えようとする努力が実り始めている。

Reports
Dissecting X-ray–Emitting Gas Around the Center of Our Galaxy
我々の銀河の中心付近のX線を放出するガスを分析する
Q. D. Wang, M. A. Nowak, S. B. Markoff, F. K. Baganoff, S. Nayakshin, F. Yuan, J. Cuadra, J. Davis, J. Dexter, A. C. Fabian, N. Grosso, D. Haggard, J. Houck, L. Ji, Z. Li, J. Neilsen, D. Porquet, F. Ripple, and R. V. Shcherbakov
ブラックホールと周囲のガスとの相互作用がX線の分析から明らかに。

Electron Acceleration in the Heart of the Van Allen Radiation Belts
ヴァン・アレン放射帯の中心部における電子の加速
G. D. Reeves, H. E. Spence, M. G. Henderson, S. K. Morley, R. H. W. Friedel, H. O. Funsten, D. N. Baker, S. G. Kanekal, J. B. Blake, J. F. Fennell, S. G. Claudepierre, R. M. Thorne, D. L. Turner, C. A. Kletzing, W. S. Kurth, B. A. Larsen, and J. T. Niehof
地球の放射帯であるヴァン・アレン帯における電子の加速の証拠が人工衛星観測から得られた。

A Uranian Trojan and the Frequency of Temporary Giant-Planet Co-Orbitals
天王星のトロイと巨大惑星の時間的共軌道の周波数
Mike Alexandersen, Brett Gladman, Sarah Greenstreet, J. J. Kavelaars, Jean-Marc Petit, and Stephen Gwyn
カナダ・フランス・ハワイの共同観測から、天王星と軌道をシェアする天体の存在が明らかに。

Paleofluvial Mega-Canyon Beneath the Central Greenland Ice Sheet
グリーンランド氷床中央部の下にある過去の河川性巨大渓谷
Jonathan L. Bamber, Martin J. Siegert, Jennifer A. Griggs, Shawn J. Marshall, and Giorgio Spada
グリーンランド氷床の底には中央部から北縁へと長さ750kmにわたる谷が伸びている。

Social Learning of Migratory Performance
渡り行動の社会的学習
Thomas Mueller, Robert B. O’Hara, Sarah J. Converse, Richard P. Urbanek, and William F. Fagan
アメリカシロヅルは毎年の渡りの道筋を隣の鳥から学んでいる。

2013年8月29日木曜日

新着論文(Nature#7464)

Nature
Volume 500 Number 7464 pp501-618 (29 August 2013)

EDITORIALS
Hidden heat
隠れた熱
 近年、赤道太平洋はラニーニャ様のフェーズに入っており、全球の温暖化を寒冷化させている(温暖化のハイエタス)。1980年代は逆にエルニーニョ様であったが、1999年以降ラニーニャが卓越している。
 それが温暖化理論を覆すことに繋がるわけではないが、最近になって気候感度(CO2が倍増した時に地球がどれほど温暖化するか)の見直しもなされている。前回のIPCC第4次報告書では気候感度は2.0-4.5℃と推定されたが、最新の政策決定者向けの草稿では1.5-4.5℃と、やや下向きに修正された。
[以下は引用文]
Although scientists understand the basic physics, nobody can know how the numbers will turn out, as shown by the various temperature projections. Plenty of other lines of evidence, including palaeoclimate data and modern modelling experiments, support the higher end of these.
科学者は基本物理を理解しているものの、温度上昇予測のばらつきに示されているように、誰にも正確な数字は分からない。古気候データや数値モデル実験を含む、豊富にある他の証拠は、こうした気候感度のうち高い方の値を支持している。

WORLD VIEW
A coordinated approach is key for open access
うまくコーディネートされた方法がオープンアクセスには重要だ
「ヨーロッパがオープンアクセスで世界を牽引するには協力と明確な目標設定が必要不可欠だ」、とChristoph Kratkyは言う。

RESEARCH HIGHLIGHTS
Australia’s record rains lowered sea level
オーストラリアの記録的な雨が海水準を下げる
Geophys. Res. Lett. http://doi.org/ngx (2013)
人工衛星と潮位計の記録から、2010年初頭から2011年後半にかけて、海水準が7mm低下しており(年間3mmの早さで上昇しつつある)、同時に特にオーストラリア大陸の水量が増加していることが示された。土地が平坦であることが海への水の流出を抑えているらしい。クイーンズランドで発生した大規模な洪水などはラニーニャの影響が大きいと考えられている。
>話題の論文
Australia's unique influence on global sea level in 2010–2011
John T. Fasullo, Carmen Boening, Felix W. Landerer, R. Steven Nerem

Whales hear the noise
鯨はノイズを聞く
Proc. R. Soc. B 280, 20130657 (2013)
カリフォルニア南部におけるシロナガスクジラ(blue whales; Balaenoptera musculus)の調査から、軍事ソナーを真似たノイズを発すると、特に深場にいる鯨が餌をとるのをやめ、泳ぎ去ることが分かった。ヒゲクジラもまたこうした人為的な影響を受けている可能性があるという。

SEVEN DAYS
Telescope strike
望遠鏡のストライキ
チリのALMA宇宙望遠鏡で働く労働者がストライキを起こし、稼働が停止している。195人の、現地で雇われた技術者や事務職員が中心となり、給料・ボーナスの値上げやシフトを短くすることなどを訴えている。
>より詳細な記事(Nature NEWS)
ALMA observatory halts work amid labour dispute
Alexandra Witze

WISE up again
WISEが復活
NASAのWide-field Infrared Survey Explorer (WISE)が月の近くにある小天体を追跡するためのミッションのために復活することに。

Old globe
古い地球儀

新大陸を描いた最も古い地球儀が発見された。グループフルーツほどの大きさのダチョウの卵に描かれたもので、放射性炭素年代測定からAD1504のものであると推定されている。これまで最も古いと考えられていたAD1510の銅製のLenox Globeはこれをモデルにして作られたと思われる。
>関連した記事(ナショナルジオグラフィック ニュース)
ダチョウの卵に描かれた小さな北米大陸

Fukushima leak
フクシマの漏れ

福島第一原発から汚染された冷却水が30万リットル漏れ出したことを受け、原子力規制委員会は深刻度のレベルを1から3へと引き上げた。汚染水は海水面より50m高いところに漏れたと考えられており、いずれ海へと流出することが懸念されている。

Wildfires rage
森林火災が猛威を振るう
8/23のヨセミテ国立公園のものを含め、40の大規模森林火災がアメリカ西部を襲っている。これを受けてカリフォルニア知事のJerry Brownは8/22に緊急事態宣言を発令した。アメリカ政府は森林火災に立ち向かうために今年で既に12億ドル以上を費やしているという。

Flood aftermath
洪水の余波
スーダンを襲った大雨と洪水によって48人が死亡し、70人以上がケガをした。洪水による衛生悪化が懸念されている。53,000カ所の野外トイレが破壊され、ここ二週間でマラリアの数も増加している。

NEWS IN FOCUS
Green fuels blast off
グリーンな燃料が噴出
Alexandra Witze
ヒドラジンよりも推進燃料を使用することによって人工衛星の効率が上がり、毒性も低くなる。

Summer storms bolster Arctic ice
夏の嵐が北極圏の氷を促進する
Lauren Morello
今年のサイクロンは北極圏の氷に執行猶予を与えた。

African genes tracked back
アフリカの遺伝子がトラックバックされる
Erika Check Hayden
初期人類の移動を追跡することで、考古学的・言語学的記録が広がりを見せる。

CORRESPONDENCE
Arctic: Speed of methane release
北極圏:メタン放出の速度
Frans-Jan W. Parmentier & Torben R. Christensen
Whitemanらは北極海が開けることは、50Gtものメタンが急激に大気へと放出されるため、恩恵よりも損失のほうが大きいと指摘しているが、北極海からのメタン放出はよりゆっくりしたものである可能性が高いため(Parmentier et al., 2013, NCC)、彼らの指摘は間違っている。
>話題の論文(Nature Climate Change#March 2013 "Review")
The impact of lower sea-ice extent on Arctic greenhouse-gas exchange
より少ない海氷範囲が北極の温室効果ガス交換に与える影響
Frans-Jan W. Parmentier, Torben R. Christensen, Lise Lotte Sørensen, Søren Rysgaard, A. David McGuire, Paul A. Miller & Donald A. Walker
2012年9月に北極の海氷範囲は記録的な減少を示し、1979-2000年平均の半分にまで減少した。海氷減少は人為起源の気候変動の結果と考えられているものの、それが大気-海洋間の温室効果ガスの交換にどのような影響をもたらすかについてはよく分かっていない。多くの研究が陸・海洋・大気の相互作用を見落としている。このレビュー論文では、現在の北極圏や高緯度の生態系に関する知識が、海氷後退が温室効果ガスの交換にどのような影響を与えるかの予測にどれほど役立つかについて評価する。

Arctic: Uncertainties in methane link
北極圏:メタンのリンクの不確実性
Dirk Notz, Victor Brovkin & Martin Heimann
Whitemanらが指摘するような、海洋底堆積物の温暖化が原因で起きる急激なメタン放出は地質学記録からは支持されない。最終退氷期に放出されたメタンは海からのものではないことが同位体記録から指摘されている。近年の大気中のメタン濃度増加も必ずしも北極圏の海から放出されるものとは限らない。確かに北極圏の大陸棚からメタンが放出されている証拠はあるが、温暖化が原因なのか自然変動かはまだ解決していない。

Gail Whiteman, Chris Hope and Peter Wadhams respond:
Gail Whiteman、Chris Hope、Peter Wadhamsの返答:
2005年以降、海氷後退は加速しており、シベリア沖の夏の海水温は0℃を数℃上回っている(Bates et al., 2013, BG)。それが原因となって大陸棚の永久凍土が急速に融け始めている。
>話題の論文
Summertime calcium carbonate undersaturation in shelf waters of the western Arctic Ocean – how biological processes exacerbate the impact of ocean acidification
N. R. Bates, M. I. Orchowska, R. Garley, and J. T. Mathis
Biogeosciences, 10, 5281-5309 (2013).

Arctic: Warming impact is uneven
北極圏:温暖化の影響は一様でない
Janis Hoberg & Francisco Ascui
Whitemanらが指摘するように、永久凍土の融解はコストの高いメタン排出に繋がる。しかし海氷の後退は新たな輸送航路、石油・ガス・鉱物資源を生み、それらの恩恵に浴する国は一様ではないだろう。先住民はますます困窮すると思われる。こうしたコスト/恩恵の不平等性は北極圏のガバナンスにおいて新たなアプローチを要請している。

>話題の記事(Nature#7459 "COMMENT")
Climate science: Vast costs of Arctic change
気候科学:北極圏の変化の莫大なコスト
「北極圏の永久凍土の融解によって放出されるメタンは将来への悪影響をもたらす」と、Gail Whiteman、Chris Hope、Peter Wadhamsは言う。

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RESEARCH
NEWS & VIEWS
Forum
Biogeochemistry: Ancient algae crossed a threshold
生物地球化学:古代の藻類は閾値を超えた
Richard D. Pancost, Marcus P. S. Badger & John Reinfelder
Bolton & Stollの解説記事。
過去700万年間にわたる堆積物コアから得られた円石藻の殻のδ13C記録から、大気中CO2濃度が低い時には、円石藻は石灰化よりも光合成に用いるために重炭酸イオンを取っておくことが分かった。

Climate lessons
気候の教訓
Richard D. Pancost, Marcus P. S. Badger

Sea changes
海の変化
John Reinfelder

Astrophysics: Radioactive glow as a smoking gun
宇宙物理学:動かぬ証拠としての放射光
Stephan Rosswog
Tanvir et al.の解説記事。
持続時間の短いγ線バーストに続いて赤外線放射が観測されたことは、コンパクトな連星系の合体が原因であり、宇宙で最も重い原子核が形成されるという2つの仮説を裏付けるものだ。

Astrophysics: A dark cloud unveils its secrets
宇宙物理学:自らの秘密を明かす暗い雲
Jonathan C. Tan
我々の宇宙では太陽の数十倍を超える質量を持つ星が支配的である。しかし、収縮している最中のガス雲と塵の観測から、このような星の形成理論に疑問が投げかけられている。

LETTERS
A ‘kilonova’ associated with the short-duration γ-ray burst GRB 130603B
短期間のγ線バースト(GRB 130603B)に伴う’キロノヴァ’
N. R. Tanvir, A. J. Levan, A. S. Fruchter, J. Hjorth, R. A. Hounsell, K. Wiersema & R. L. Tunnicliffe
>関連した記事(ナショナルジオグラフィック ニュース)
ハッブル、「キロノヴァ」の存在を確認

A rigid and weathered ice shell on Titan
タイタンに存在する硬く風化した氷殻
D. Hemingway, F. Nimmo, H. Zebker & L. Iess
土星最大の衛星タイタンには厚さ40kmもの厚い氷の地殻が存在する。

Late Miocene threshold response of marine algae to carbon dioxide limitation
中新世後期の海洋性藻類の二酸化炭素制限に対する閾値応答
Clara T. Bolton & Heather M. Stoll
 新生代を通して大気中のCO2濃度は低下してきたが、石灰化や光合成に炭素を用いる海洋の藻類はそれに併せて石灰化部位のCO2濃度を自発的に増加させることで適応してきた。
 化石殻のδ18O・δ13Cと石灰化のモデルシミュレーションから、CO2濃度が低下するにつれて、円石藻が石灰化に重炭酸イオンを用いる割合を低下させてきたことが分かった。特にCO2濃度低いときにのみ、大きな殻を持つものと小さな殻を持つものとの間で炭素同位体の大きな差が見られ、それは中新世後期から鮮新世初期(7〜5 Ma)にかけて見られ始めることから、ここに細胞の炭素獲得戦略の閾値が存在すると考えられる。またこのタイミングは陸上植生の低CO2濃度への適応や全球の寒冷化・氷河化のタイミングとも一致している。

Rapid, climate-driven changes in outlet glaciers on the Pacific coast of East Antarctica
東南極の太平洋沿岸部の溢流氷河における急速で、気候によって駆動される変化
B. W. J. Miles, C. R. Stokes, A. Vieli & N. J. Cox
グリーンランドと西南極氷床では海へと流出する氷河(ocean-terminating outlet glacier)の速度が加速し、海水準上昇を招いていることが知られているが、東南極の溢流氷河が前進しているのか後退しているのかははっきりとしていない。
 東南極沿岸部における175地点の溢流氷河の観測から、同期した変化が確認された。1974-1990年には63%の氷河が後退、1990-2000年には72%が前進、2000-2010年には58%が後退していた。こうした傾向は南太平洋に面したより温暖な地域で顕著で、逆により寒冷なロス海では有為な変化は見られなかった。太平洋に面した地域の変化はSAM(Southern Annular Mode)による大気の変動モードの影響が大きいと思われる。従来考えられてきたよりも、東南極氷床(世界最大の氷床)は外部強制力に対して脆弱である可能性がある。

Anaerobic oxidation of methane coupled to nitrate reduction in a novel archaeal lineage
新規古細菌系統における硝酸還元と共役した嫌気的メタン酸化
Mohamed F. Haroon, Shihu Hu, Ying Shi, Michael Imelfort, Jurg Keller, Philip Hugenholtz, Zhiguo Yuan & Gene W. Tyson

2013年8月26日月曜日

新着論文(PNAS, SR, Ncom)

PNAS
20 August 2013; Vol. 110, No. 34
Commentaries
Rapid accumulation of committed sea-level rise from global warming
Benjamin H. Strauss

Reports
Minimum of the order parameter fluctuations of seismicity before major earthquakes in Japan
Nicholas V. Sarlis, Efthimios S. Skordas, Panayiotis A. Varotsos, Toshiyasu Nagao, Masashi Kamogawa, Haruo Tanaka, and Seiya Uyeda

Time-dependent climate sensitivity and the legacy of anthropogenic greenhouse gas emissions
Richard E. Zeebe
気候感度は時間スケールに依存すること、それを考える上で考慮すべき早い・短いフィードバック過程を紹介。今回用いられたモデルでは温暖化によるCO2の海水への溶解度の低下が考慮されており、温暖化の正のフィードバックとして働くことで、よりいっそう温暖化が長期化すること(23 - 165 kyr)、その結果氷床の融解と海水準上昇がより大きくなることが予想された。

The multimillennial sea-level commitment of global warming <OPEN>
Anders Levermann, Peter U. Clark, Ben Marzeion, Glenn A. Milne, David Pollard, Valentina Radic, and Alexander Robinson
温暖化による海水準上昇は温室効果ガス排出がなくなったとしても、炭素循環システムにおける大きな慣性によって将来も続くと思われる。しかし、異なる温暖化シナリオでどれほど海水準が上昇するかは不確かなままである。過去の海水準記録と物理モデルを用いて将来の海水準上昇を予測したところ、海の熱膨張によるものが0.4 m/℃、南極氷床の融解によるものが1.2 m/℃と推定された。これからの2,000年間の間に、おおよそ2.3 m/℃になると思われる。

Release of arsenic to deep groundwater in the Mekong Delta, Vietnam, linked to pumping-induced land subsidence <OPEN>
Laura E. Erban, Steven M. Gorelick, Howard A. Zebker, and Scott Fendorf
>関連した記事(Nature#7462 "RESEARCH HIGHLIGHTS")
Sinking ground poisons wells
沈む土地が井戸を毒する
東南アジアのヒ素汚染は一般的には150m以下の浅い井戸において発生しており、深い井戸は安全だとされていた。しかし、ベトナムにおける調査から、汚染が確認された。汚染地では1988年以降、地下水のくみ上げによって土地が27cm沈降しており、その結果汚染された地下水がより深部へと移動したのではないかと推定されている。

Scientific Reports
20 August 2013
New evidence for early presence of hominids in North China <OPEN>
Hong Ao et al.

Changes in the taste and textural attributes of apples in response to climate change <OPEN>
Toshihiko Sugiura, Hidekazu Ogawa, Noriaki Fukuda & Takaya Moriguchi
>関連した記事(Nature姉妹紙 注目のハイライト)
気候変動によるリンゴの味と食感の変化

New insights into hydrothermal vent processes in the unique shallow-submarine arc-volcano, Kolumbo (Santorini), Greece <OPEN>
Stephanos P. Kilias et al.

Nature Communications
21 August 2013
Marine protected area improves yield without disadvantaging fishers
Sven E. Kerwath, Henning Winker, Albrecht Götz and Colin G. Attwood
>関連した記事(Nature姉妹紙 注目のハイライト)
海洋保護区設定がもたらす利益

Estimating the tolerance of species to the effects of global environmental change
Serguei Saavedra, Rudolf P. Rohr, Vasilis Dakos and Jordi Bascompte
生物が絶滅する前にどれほど適応できるかを調べたところ、耐性は変化の方向に強く依存することが示された。

2013年8月23日金曜日

新たな西南極氷床アイスコアから分かった最終退氷期の南極の温暖化史(WAIS Divide Project Members, 2013, Nature)

Onset of deglacial warming in West Antarctica driven by local orbital forcing
地域的な軌道要素フォーシングによって引き起こされる西南極氷床の最終退氷期の温暖化の始まり

WAIS Divide Project Members
Nature 500, 440-444 (2013).


>関連した記事(Nature注目のハイライト)
南極の退氷を駆動する局地的な条件

より。

南極から新たに得られた、西南極氷床区画のアイスコア(West antarctic ice sheet Divide ice Core; WDC)から分かった、最終退氷期の始まりにおける南極の温暖化の全球気候変動との前後関係について。

新着論文(Science#6148)

Science
VOL 341, ISSUE 6148, PAGES 813-928 (23 AUGUST 2013)

Editors' Choice
Megafloods from Tibet
チベットからの大洪水
Geology 41, 1003 (2013).
ヒマラヤ山脈とチベット高原の間にはYarlung-Tsangpo川が流れている。通常、大陸の隆起と河川による浸食によって山脈の高度はコントロールされているが、Tsangpo Gorge峡谷のU-Pb年代測定から、谷が大規模な洪水イベントによってできたものである可能性が示唆されている。そうしたイベントは稀であるものの、土地形成には重要であったらしい(1回の洪水が1,000-4,000年分の浸食に相当)。
>話題の論文
Erosion of the Tsangpo Gorge by megafloods, Eastern Himalaya
Karl A. Lang, Katharine W. Huntington, and David R. Montgomery

News of the Week
Tiger Mosquito Moves North in Europe
ヒトスジシマカがヨーロッパを北上する
オランダにおけるアジアヒトスジシマカデング熱チクングニア熱を運ぶ)の一連の大発生はヨーロッパへの熱帯病の伝播の始まりを告げることになるかもしれない。こうした蚊は中古のタイヤに付着した卵から孵化するケースが多いため、中古タイヤをよく乾燥した場所に保管するなどの措置がとられている。

Drought Forces Cutbacks On the Colorado River
干ばつがコロラド川の縮小を余儀なくさせる
コロラド川のGlen Canyonダムの放水量が来年までに9%カットされる。下流のLake Meadの貯水量にはそれほど影響がないため飲料・工業水にはそれほどの影響はないが、早ければ2015年には水不足に陥る可能性が懸念されている。
>より詳細な記事(Science Insider)
Warning Sign on the Colorado River

Opponents Vow to Block Amazon Drilling
反対者はアマゾンの掘削を食い止めることを誓う
エクアドルの大統領Rafael Correaはアマゾン熱帯雨林における石油掘削に着手することを公表したが、一方で国民投票によってそれを防ごうとする運動も見られる。Correaは2010年には掘削を我慢することを宣言していたものの、財政の不景気から今回の行動に踏み切った。
>より詳細な記事(Science Insider)
Ecuador Says It Will Launch Controversial Drilling in Amazon Park
>関連した記事(Nature#7463 "SEVEN DAYS")
Amazon drilling
アマゾンの掘削

The Science of a Falling Building
崩れる建物の科学
8/17にサンフランシスコの13階建ての建物Warren Hallの取り壊しの際、アメリカ地質調査所は半径2.5kmに600個の地震計を設置し、その地震波を解析して地下を走るHayward断層を調査した。断層の位置や弱い振動に対する応答を調べるのが目的であった。Hayward断層は2032年までに27%の確率で滑ると予測されている。

Out of Oil? Just Add Fungi
オイル切れ?ただ真菌を加えればいい
植物に共生する真菌類(endophytic fungi)はホストの植物が腐食する際に炭化水素を合成することができることが新たな実験から確かめられた。そうした真菌類の働きがシェールガスなどの生成を数千万年早めている可能性があるという。新たなバイオ燃料開発への道も模索されている。

News & Analysis
How NASA Tried to Save Its Prime Planet-Spotter
どのようにしてNASAが最初の惑星特定機を守ろうと苦心したか
Yudhijit Bhattacharjee
NASAのケプラー宇宙望遠鏡ミッションはこれまでに130もの系外惑星の存在を証明した。機械に不具合が生じてからは、天文学者は計画を継続させるためにあらゆる手を尽くした。
>関連した記事(Nature#7463 "SEVEN DAYS")
Kepler kaput
ケプラーのおしまい
NASAは故障したケプラー宇宙望遠鏡の復旧作業を中止することを公表した。方向を安定させるための車輪の故障が原因で、観測ができなくなっていた。本来は2012年までのミッションであったが、2016年まで延期されていた。
>関連した記事(ナショナルジオグラフィック ニュース)
修復不能のケプラー、成果はこれから

Half of All Papers Now Free in Some Form, Study Claims
すべての論文の半分は今や何らかの形で無料になっていると、ある研究は主張する
Jocelyn Kaiser
毎年発行されるすべての研究論文のうちの半分はオープン・アクセスになっていると新たな研究は主張している。出版界にとって大きな転換点となっている。
>関連した記事(Nature#7463 "NEWS IN FOCUS")
Half of 2011 papers now free to read
2011年の論文の半分は今は無料で読めるように
Richard Van Noorden

News Focus
The Save-the-World Foundation
世界を守る基金
Robert Irion
NASAがその職務を放棄したことを受けて、私的な基金が4億5,000万ドルを増額して地球を脅かす可能性のある小天体を探す宇宙ミッションを行おうとしている。

Letters
Archaeobotanical Archiving
考古植物学的な保管
Samad E. J. Golzari

Archaeobotanical Archiving—Response
「考古植物学的な保管」に対する返答
Mohsen Zeidi, Nicholas J. Conard, and Simone Riehl

Alleviating Poverty in India: Biodiversity's Role
インドにおける貧困を軽減する:生物多様性の役割
Robert Murray Lasley Jr., Anuj Jain, and Krushnamegh Kunte

Policy Forum
A Critical Crossroad for BLM's Wild Horse Program
BLMの野生の馬プログラムにとっての重要な分かれ道
Robert A. Garrott and Madan K. Oli
管理の方法が変わらなければ、野生の馬を保護するための費用は2030年には10億ドルになるだろう。

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Research
Perspectives
Megacity Megaquakes—Two Near Misses
巨大都市の巨大地震—2回のニアミス
Ross S. Stein and Shinji Toda
チリと日本で最近起きた巨大地震の後の地震のパターンから、地震災害は震源から遠く離れた地点でも急に起きる可能性があることが示唆される。

An Arsenic Forecast for China
中国に対するヒ素予報
Holly A. Michael
Rodríguez-Lado et al.の解説記事。
中国の水系におけるヒ素汚染マッピングによって、削減努力へと繋がるかもしれない。

Nucleation from Solution
溶液からの核形成
Allan S. Myerson and Bernhardt L. Trout
Wallace et al.の解説記事。
炭酸塩結晶の核形成のシミュレーションから2段階の核形成の証拠が示された。

Reports
Groundwater Arsenic Contamination Throughout China
中国全土にわたる地下水へのヒ素汚染
Luis Rodríguez-Lado, Guifan Sun, Michael Berg, Qiang Zhang, Hanbin Xue, Quanmei Zheng, and C. Annette Johnson
中国の地下水系のヒ素汚染の予測マップは、1億9,600万人の健康が脅かされていることを示している。

Mapping Tectonic Deformation in the Crust and Upper Mantle Beneath Europe and the North Atlantic Ocean
ヨーロッパと北大西洋の下の地殻と上部マントルのテクトニクス的な変形をマッピングする
Hejun Zhu and Jeroen Tromp
ヨーロッパの下の地殻とマントルの異方性は大陸形成の名残である。

Abundant Porewater Mn(III) Is a Major Component of the Sedimentary Redox System
豊富に存在する間隙水の3価マンガンは堆積物中の還元システムの重要な構成要素である
Andrew S. Madison, Bradley M. Tebo, Alfonso Mucci, Bjørn Sundby, and George W. Luther III
3価のマンガンは酸化剤・還元剤として堆積物中の物質循環を支配しているものの、間隙水における役割は見落とされている。カナダのケベック州のLaurentian海溝における半遠洋性の堆積物の表面近くの全マンガン・プールの90%近くは溶存態の3価マンガンが占めていることが明らかに。低酸素の堆積物から拡散する2価のマンガンの還元に由来し、MnO2の生物・非生物的な溶解の寄与は小さいと思われる。

Microscopic Evidence for Liquid-Liquid Separation in Supersaturated CaCO3 Solutions
過飽和のCaCO3溶液における液体-液体分離の非常に小さい証拠
Adam F. Wallace, Lester O. Hedges, Alejandro Fernandez-Martinez, Paolo Raiteri, Julian D. Gale, Glenn A. Waychunas, Stephen Whitelam, Jillian F. Banfield, and James J. De Yoreo
炭酸塩の結晶化の前の並び(preordering)は、液体-液体分離プロセスによるものであるかもしれない。

2013年8月22日木曜日

新着論文(Nature#7463)

Nature
Volume 500 Number 7463 pp377-496 (22 August 2013)

RESEARCH HIGHLIGHTS
Soil life predicts nutrient flow
土壌生物が栄養塩の流れを予測する
Proc. Natl Acad. Sci. USA http://dx.doi.org/10.1073/ pnas.1305198110 (2013)
小麦栽培などの激しい土地利用はあらゆる種類の土壌生物を減らすことが知られている。土地利用よりも、土壌中のバイオマスが栄養塩サイクルをよく予測できることがヨーロッパの野外調査から分かった。

Global heat waves on the rise
全球的な熱波が増加
Environ. Res. Lett. 8, 034018 (2013)
Potsdam Institute for Climate Impact ResearchとComplutense University of Madridによるモデルシミュレーションから、排出されるCO2の量がどうあれ、2040年には月々の地表面温度が平均値から3σの範囲を超えるものが20%に達することが示された。今の段階で既に5%に達している(2012年のアメリカ全土、2011年のテキサス州の熱波など)。排出量が抑えられた場合、2040年以降に温度は安定化するが、現在の排出が維持された場合は熱波はさらに頻発化すると考えられている。

Bone-eating worms in icy seas
凍える海に住む骨食いワーム
Proc. R. Soc. B 280, 20131390 (2013)
研究グループが南極の海底に置いた鯨の骨に対して巣食っていた新種のワーム(Osedax antarcticus)が確認された。同じところに置いたマツやオークの厚板は通常の場合と異なりほとんど手つかずのまま残されていた。
>より詳細な記事(Nature NEWS)
Bone-eating worms thrive in the Antarctic
Amanda Mascarelli

SEVEN DAYS
Amazon drilling
アマゾンの掘削
エクアドルの大統領Rafael Correaはアマゾン熱帯雨林における石油掘削に着手することを決定した。

Space dust trails
宇宙ゴミの足跡
2月にロシアのChelyabinskで空中爆発した隕石が成層圏にもたらしたダストの雲がどのように広がったかがNASAによって追跡された。爆発から数時間以内には40kmの高度に達し、その後数日間に渡って北半球の大気上層へと拡散したことが人工衛星観測と大気循環モデルから分かった。

Kepler kaput
ケプラーのおしまい
NASAは故障したケプラー宇宙望遠鏡の復旧作業を中止することを公表した。方向を安定させるための車輪の故障が原因で、観測ができなくなっていた。本来は2012年までのミッションであったが、2016年まで延期されていた。
>関連した記事(ナショナルジオグラフィック ニュース)
修復不能のケプラー、成果はこれから

Hydroelectric halt
水力発電の中断
7月に発生した洪水によって数千人が死亡した事件の要因が水力発電用のダム建設であるという環境団体の主張をうけて、インド最高裁判所は新たなダム建設を中断することを命令した。専門家による精査がなされる予定となっている。
>より詳細な記事(Nature NEWS BLOG)
Indian court halts projects in wake of calamitous monsoon
Davide Castelvecchi

Carnivore misidentified for decades
何十年ものあいだ特定されなかった肉食動物
オリンギート(olinguito; Bassaricyon neblina)と名付けられた新種のほ乳類がエクアドルのアンデス山脈にて発見された。100年以上の間、近縁のolingoと取り違えられていた。
>より詳細な記事(Nature NEWS)
Cute mammal is first carnivore discovered in Western Hemisphere for 35 years
Beth Mole
>関連した記事(ナショナルジオグラフィック ニュース)
新種の肉食哺乳類、オリンギート

NEWS IN FOCUS
Forecasts turn tide on silt
予報は泥を逆転させる
Jeff Tollefson
ハリケーン・アイリーンが2011年8月にアメリカ東海岸を襲ったとき、洪水がもたらした泥が飲料水を引いている河川水をひどく濁らせた。それを受けて、ニューヨーク州は飲み水を守る革新的なシステムを開発しようとしている。

Half of 2011 papers now free to read
2011年の論文の半分は今は無料で読めるように
Richard Van Noorden
オープンアクセスの研究論文の擁護を加速せよ。

Big horns clash with longevity in sheep
羊においては大きな角は寿命と衝突する
Ewen Callaway
小さな角の遺伝子は性的な適合度(sexual fitness)を低くするが、一方で寿命を伸ばす。

US regulation misses some GM crops
アメリカの規制がいくつかの遺伝子組み換え作物を見落とす
Heidi Ledford
遺伝子組み換え技術の監視システムに穴が見つかったことを受けて、科学者は特産物の予備調査を行う。

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RESEARCH
NEWS & VIEWS
Astrophysics: Twinkling stars
天文物理学:きらめく星々
Jørgen Christensen-Dalsgaard
Bastien et al.の解説記事。
>関連した記事(Nature注目のハイライト)
太陽類似星の表面重力の測定

LETTERS
An observational correlation between stellar brightness variations and surface gravity
星の光度変動と表面重力の観測的な相関
Fabienne A. Bastien, Keivan G. Stassun, Gibor Basri & Joshua Pepper
星の表面重力を正確に計測することは難しい。新たに見い出された相関関係から、可視光の光度変動から非常に良い精度で表面重力を推定することが可能に。

Onset of deglacial warming in West Antarctica driven by local orbital forcing
地域的な軌道要素フォーシングによって引き起こされる西南極氷床の最終退氷期の温暖化の始まり
WAIS Divide Project Members
 最終退氷期における南半球の温暖化の原因については2つの対立仮説がある。一つは「北半球の温暖化がきっかけとなり、熱が南半球へと伝播した」というもの(東南極氷床の温暖化は18ka頃で北半球より後であったことが観察されている)。もう一つは「ローカルな日射量変動がきっかけであり、北半球とは独立していた」というものである。
 西南極氷床から得られた1年ごとの解像度を持つアイスコアから、降水量の増加はCO2濃度や北半球の寒冷化・東南極氷床の温暖化と一致して18ka頃から増加し始めるが、温度はそれに2,000年先だって上昇していたことが示された。おそらく南極をとりまく海氷がローカルな日射量の増加によって減少したことが原因と思われる。
>関連した記事(Nature注目のハイライト)
南極の退氷を駆動する局地的な条件

Digit loss in archosaur evolution and the interplay between selection and constraints
主竜類進化における指の消失と、選別と制約の間の相互作用
Merijn A. G. de Bakker, Donald A. Fowler, Kelly den Oude, Esther M. Dondorp, M. Carmen Garrido Navas, Jaroslaw O. Horbanczuk, Jean-Yves Sire, Danuta Szczerbińska & Michael K. Richardson
進化には自然選択と発生的制約との相互作用が関与している(例えば、進化の過程で肢から指が失われる場合など)。ナイルワニおよび5種の鳥類の指の減少について。

2013年8月19日月曜日

新着論文(GPC, QSR)

Global and Planetary Change
Intermittent sea–level acceleration
M. Olivieri , G. Spada
潮位計などの過去200年間の観測記録から、近年全球の海水準上昇が加速していることが示された(0.01 mm/yr2)。ゆっくりとした加速と、急激な変動との二つが確認された。こうしたイベントが19世紀後半から断続的に起きており、過去40年間により頻発化している。

Pleistocene and Holocene Glacier fluctuations upon the Kamchatka Peninsula
Iestyn D. Barr , Olga Solomina
ロシアのカムチャッカ半島の最終氷期以降の氷河の前進・後退の記録について。最終氷期にはより氷河が前進していたことを示すモレーンが堆積しているものの、年代は不明瞭である。LGM以降には小さな規模の氷河の前進期が見られる。完新世にはおおよそ6.8ka以前に現在の位置から8km氷河が前進していた(ただし、もっと古いものである可能性も棄却できない)。また小氷期にも氷河は前進していた。千年スケールの変動は北米氷床とアリューシャン・シベリア高気圧が、数十年スケールの変動はPDOが支配的であると思われる。

Quaternary Science Reviews
A Last Glacial Maximum through middle Holocene stalagmite record of coastal Western Australia climate
Rhawn F. Denniston , Yemane Asmerom , Matthew Lachniet , Victor J. Polyak , Pandora Hope , Ni An , Kristyn Rodzinyak , William F. Humphreys
オースオトラリア西部のRange岬で得られた鍾乳石δ18Oは過去27kaがから現在にかけての水気候を復元することが可能である。最終退氷期のHS1にもっとも低い値を示す。原因としては偏西風の位置の変化がもたらす水蒸気のソースの変化が考えられる。またインド-オーストラリア・モンスーンがもたらす水蒸気の変化もまた、ITCZの南下を通して大きな影響をもたらしたと思われる。しかし、HS2にはδ18Oのアノマリは確認されていない。またδ13Cの変動は植生・土壌・降水の変動で説明できそうである。

Durations and propagation patterns of ice sheet instability events
Johan Kleman , Patrick J. Applegate
温暖化によって西南極氷床が不安定化し、大規模に崩壊する危険性が危惧されているが、氷床不安定に関する我々の知見は不足している。北半球の氷床(ローレンタイド・フェノスカンジアン氷床)の過去の不安定イベントに対して、ファースト・オーダーでの経験的なアプローチを用いて、集水域の範囲とイベントの継続期間の関係性の評価を行った。西南極氷床のうち崩壊の危険度が大きいのは一部で、負のフィードバックによって他の地域での氷河流出は遅くなると期待される。Pine Island氷河とThwaites氷河の将来予測についても紹介。

○Quaternary International
Introduction to the Proceedings of the 25th Pacific Climate Workshop
Scott W. Starratt
東赤道太平洋と北米大陸性部の気候(ENSOなど)を議論するワークショップ( Pacific Climate Workshops; PACLIM)の紹介。2011年に25回目のミーティングを行い、政府の科学者・教育者・学生などが活発な議論を交わしている。

Quaternary glacial chronology of the Kanas River valley, Altai Mountains, China
Jingdong Zhao , Xiufeng Yin , Jonathan M. Harbor , Zhongping Lai , Shiyin Liu , Zhongqin Li
中央アジア・アルタイ山脈の過去200ka(MIS7以降)の氷河の前進・後退をOSL法を用いた氷河性堆積物の年代決定から評価。既往研究の放射性炭素・ESR・OSL年代やアイスコアのδ18Oなどと比較。

新着論文(Ncom, PNAS)

Nature Communications
14 August 2013
Forecasting flowering phenology under climate warming by modelling the regulatory dynamics of flowering-time genes
Akiko Satake, Tetsuhiro Kawagoe, Yukari Saburi, Yukako Chiba, Gen Sakurai and Hiroshi Kudoh
>関連した記事(Nature関連誌 注目のハイライト)
【生態】気候温暖化による開花期間の大幅短縮

Population structure determines functional differences among species and ecosystem processes
Volker H. W. Rudolf and Nick L. Rasmussen

Proceedings of the National Academy of Sciences
13 August 2013; Vol. 110, No. 33
Letters (Online Only)
Toba supereruption: Age and impact on East African ecosystems
Richard G. Roberts, Michael Storey, and Michael Haslam

Reply to Roberts et al.: A subdecadal record of paleoclimate around the Youngest Toba Tuff in Lake Malawi
Christine S. Lane, Ben T. Chorn, and Thomas C. Johnson

Why climate change will not dramatically decrease viticultural suitability in main wine-producing areas by 2050
Cornelis van Leeuwen, Hans R. Schultz, Iñaki Garcia de Cortazar-Atauri, Eric Duchêne, Nathalie Ollat, Philippe Pieri, Benjamin Bois, Jean-Pascal Goutouly, Hervé Quénol, Jean-Marc Touzard, Aureliano C. Malheiro, Luigi Bavaresco, and Serge Delrot

Reply to van Leeuwen et al.: Planning for agricultural adaptation to climate change and its consequences for conservation
Lee Hannah, Patrick R. Roehrdanz, Makihiko Ikegami, Anderson V. Shepard, M. Rebecca Shaw, Gary Tabor, Lu Zhi, Pablo A. Marquet, and Robert J. Hijmans

Commentaries
Modeling sardine and anchovy low-frequency variability
Salvador E. Lluch-Cota

Reports
Seismic constraints on rotation of Sun-like star and mass of exoplanet <OPEN>
Laurent Gizon et al.

Oxygen, ecology, and the Cambrian radiation of animals
Erik A. Sperling, Christina A. Frieder, Akkur V. Raman, Peter R. Girguis, Lisa A. Levin, and Andrew H. Knoll

Unexpectedly high indoor hydroxyl radical concentrations associated with nitrous acid <OPEN>
Elena Gómez Alvarez, Damien Amedro, Charbel Afif, Sasho Gligorovski, Coralie Schoemacker, Christa Fittschen, Jean-Francois Doussin, and Henri Wortham

Reproductive aging patterns in primates reveal that humans are distinct <OPEN>
Susan C. Alberts, Jeanne Altmann, Diane K. Brockman, Marina Cords, Linda M. Fedigan, Anne Pusey, Tara S. Stoinski, Karen B. Strier, William F. Morris, and Anne M. Bronikowski

Agent-based Bayesian approach to monitoring the progress of invasive species eradication programs <OPEN>
Jonathan M. Keith and Daniel Spring

Community-level phenological response to climate change
Otso Ovaskainen, Svetlana Skorokhodova, Marina Yakovleva, Alexander Sukhov, Anatoliy Kutenkov, Nadezhda Kutenkova, Anatoliy Shcherbakov, Evegeniy Meyke, and Maria del Mar Delgado
97種の植物、78種の鳥、10種のは虫類・両生類、19種の昆虫類、9種の真菌類に対してロシアにて行われた40年間に及ぶ生物季節学的なモニタリングの結果について。それぞれの種は異なる早さで気候変化に対して季節学を変化させており、それはそれぞれが異なる気候要因(温度・降水・降雪など)に対して応答している結果であると思われる。鳥と昆虫は短期間の気候イベントに敏感に応答するが、植物・は虫類・両生類・真菌類の多くはより長い時間スケールの変化に影響を受けている。それぞれの年々変動は同調しており、従来考えられていたよりは季節学的な不一致は起きないかもしれない。

2013年8月16日金曜日

新着論文(Science#6147)

Science
VOL 341, ISSUE 6147, PAGES 689-812 (16 AUGUST 2013)

EDITORIAL:
The Road to Pollinator Health
花粉媒介者の健康への道
Catherine Woteki

Editors' Choice
Superorbital Variability
超軌道の変動
Astrophys. J. 773, L35 (2013).
多くの恒星が連星であるが、それらは時として不思議な連星系をなす。LS I +61o303は太陽の10倍質量の巨大恒星とその赤道面を周回する小さな恒星とで構成されている。Fermi宇宙望遠鏡の観測から、ガンマ線の放出に周期性のある変動が確認された。周回軌道や質量放出を反映しているらしい。

News of the Week
Return of the Wolf
オオカミが帰ってきた
オランダの側道で見つかった、車に轢かれた生物の死骸のDNA分析から、それが140年前に国内から姿を消したオオカミであることが明らかに。どうやら最近西へと移動しているらしい。カルパティア山脈かバルカン地方から彷徨ってきたと推定されている。

U.S. Blocks Import Of Beluga Whales
アメリカがベルーガの輸入をブロックする
海洋哺乳類保護の法律に違反するとして、National Marine Fisheries Service (NMFS)は18頭のオホーツク海産のベルーガ(Delphinapterus leucas)の輸入の申請を却下した。
>より詳細な記事(Science Insider)
U.S. Blocks Import Permit for Russian Beluga Whales
>関連した記事(ナショナルジオグラフィック ニュース)
批判が高まる水族館ビジネスの現状

Government Takes Role In Fukushima Cleanup
政府がフクシマの除染を担う
これまで東京電力に一任されていた福島第一原発の管理に日本政府が介入する。東京電力は最近になって汚染水(Cs・Sr・3H)が太平洋へと流出している事実を認めた。もう1年近くも前にKen Buesselerらは底性生物に見られる異様に高い放射線レベルの原因が汚染水の流出が完全に防がれていない可能性を提示していた。毎日300トンの放射性物質が海へと流出しているが、環境への影響は小さいと考えられている。ただし、Srは骨に蓄積するので、漁業への影響が懸念されるという指摘も。
>関連した記事(Science#6106 "Perspectives")
Fishing for Answers off Fukushima
福島沖の答えのための漁業
Ken O. Buesseler
福島沖の魚の放射性物質のレベルは変動が大きく、また事故後上昇したままである。それは放射の原因となる物質の流入が継続していることを示している。
>関連した記事(BBC NEWS)
Fukushima fish still contaminated from nuclear accident
>関連した記事(Scienctific American)
Radioactive Fish Near Fukushima Suggest Ongoing Contamination
>関連した記事(ウッズホール海洋研究所のプレスリリース)
Fishing for Answers off Fukushima

Neandertals Made Bone Tools, Too
ネアンデルタール人もまた骨の道具をつくっていた
フランス南西部の遺跡で発掘された骨でできた道具はネアンデルタール人が使っていたものであったことが判明した。ホモサピエンスから学んだわけではなく、独立に発明したようである。ネアンデルタール人の能力は過小評価されている可能性が指摘されているが、こうした技術と知能とを簡単に結びつけるべきではないという警告も。
>より詳細な記事(Science NOW)
Neandertals Were No Copycats

News Focus
The Women of the Cosmos Club
天文クラブの女性
Jeffrey Mervis
天文クラブへは1988年まで女性の会員は認められていなかったが、1990年代以降は毎月行われる夕食会に女性も参加できるように。

SOLAR SYSTEM EXPLORATION: Pluto, the Last Planetary First
太陽系の探査:冥王星、最後の惑星を最初に
Richard A. Kerr
NASAの探査機(New Horizons)は冥王星の真の姿を浮き彫りにするだろう。2015年7月に到達する予定。

ASTRONOMY: The Crab That Roared
天文学:うなるカニ
Yudhijit Bhattacharje
かに星雲はおおよそ1,000年前の超新星爆発の残骸であるが、ガンマ線の放射で有名である。初めてそれが観測されたとき、科学者たちは機器類の不具合ではないかと疑った。

Policy Forum
GLOBAL FOOD SUPPLY: Reevaluate Pesticides for Food Security and Safety
世界的な食糧供給:食品の安全と安心のために殺虫剤を見直せ
Philippe J. P. Verger and Alan R. Boobis
発展途上国におけるノーブランドの(ジェネリック)殺虫剤が評価を妨げている。

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Research
Perspectives
Gauging Greenland's Subglacial Water
グリーンランドの氷底水を測る
Martin Lüthi
Meierbachtol et al.の解説記事。
グリーンランド氷床の底を流れる水は内陸と縁辺部ではレジームが異なっている。

Earthquake Risk in Turkey
トルコにおける地震のリスク
Mustafa Erdik
最近の努力が高い地震のリスクがある地域において地震への備えを強化することを助けている。

Reports
Incision into the Eastern Andean Plateau During Pliocene Cooling
鮮新世の寒冷化の際のアンデス高地東部の切り込み
Richard O. Lease and Todd A. Ehlers
渓谷の形成はテクトニクス的な過程だけでなく、気候の変化によっても生じる。アンデス高地の東縁には1250kmにわたる深さ1.5-2.5kmの渓谷がある。(U-Th)/He法を用いた年代決定から、鮮新世における激しい下刻が全球の寒冷化と関連していることを示す。海水温の変化と輸送される水蒸気量が増加したことが下刻をコントロールしていたと思われる。

Basal Drainage System Response to Increasing Surface Melt on the Greenland Ice Sheet
グリーンランド氷床の増え続ける表面融解に対する底部の排水システム
T. Meierbachtol, J. Harper, and N. Humphrey
グリーンランド氷床の表面の融水が底部に達すると氷床底の動きにまで影響する。結果的に氷河の動くスピードは氷(水循環に支配される)と底面の基盤岩の結合度に依存する。氷床の23地点の掘削から、底面を流れる排水システムの姿が浮き彫りに。水を効果的に排出できる配管が内陸まで伸びるには適さない圧力条件であることが示された。近年増加している氷床からの融水の排水を妨げていると思われる。

Earliest Evolution of Multituberculate Mammals Revealed by a New Jurassic Fossil
新たなジュラ紀の化石から明らかになる多丘歯目哺乳類の最初期の進化
Chong-Xi Yuan, Qiang Ji, Qing-Jin Meng, Alan R. Tabrum, and Zhe-Xi Luo
化石記録から、げっ歯類に似ていた多丘歯目の多様な餌取りや歩行運動の適応の起源が明らかに。

Recurrent Insect Outbreaks Caused by Temperature-Driven Changes in System Stability
温度によって駆動される系の安定性の変化によって引き起こされる繰り返す昆虫の大発生
William A. Nelson, Ottar N. Bjørnstad, and Takehiko Yamanaka
温度の季節変化がチャノコカクモンハマキ(tea tortrix moth)の個体数サイクルを不安定化させ、大発生へと繋がることが示された。

2013年8月15日木曜日

新着論文(Nature#7462)

Nature
Volume 500 Number 7462 pp253-372 (15 August 2013)

EDITORIALS
In addition
追加して
興味の不一致とデータのギャップとがアメリカの食品添加物に対する監視に悪影響を及ぼす。

RESEARCH HIGHLIGHTS
Sinking ground poisons wells
沈む土地が井戸を毒する
Proc. Natl Acad. Sci. USA http://dx.doi.org/10.1073/ pnas.1300503110 (2013)
東南アジアのヒ素汚染は一般的には150m以下の浅い井戸において発生しており、深い井戸は安全だとされていた。しかし、ベトナムにおける調査から、汚染が確認された。汚染地では1988年以降、地下水のくみ上げによって土地が27cm沈降しており、その結果汚染された地下水がより深部へと移動したのではないかと推定されている。
>話題の論文
Release of arsenic to deep groundwater in the Mekong Delta, Vietnam, linked to pumping-induced land subsidence
Laura E. Erban, Steven M. Gorelick, Howard A. Zebker, and Scott Fendorf

Sand collisions kick up storms
砂の衝突が嵐を起こす
Phys. Rev. Lett. 111, 058001 (2013)
砂漠の砂嵐は砂粒同士の衝突によって強化されているらしい。砂粒が他の砂粒と衝突することでより高い場所へと巻き上げられていることが確認された。そうした砂粒の相互作用が砂漠の地形形成にも影響しているのかもしれない。

Climate tracking by smartphone
スマートフォンで追跡する気候
Geophys. Res. Lett. http:// dx.doi.org/10.1002/grl.50786 (2013)
スマートフォンによるアプリを利用して、世界8カ国の都市部に置ける気温をモニタリングする試験が行われた。各都市1日に800の報告値が得られた。ただしポケットなどに入っている場合、服や体温の温度補正が必要になる。現在の気象観測所における測定よりもより多くのデータを低コストで得られる可能性があるという。
>話題の論文
Crowdsourcing urban air temperatures from smartphone battery temperatures
A. Overeem, J. C. R. Robinson, H. Leijnse, G. J. Steeneveld, B. K. P. Horn, R. Uijlenhoet

SEVEN DAYS
Stormy Atlantic
嵐の多い大西洋
NOAAが8/8にアップデートした長期気象予報によると、今年のハリケーンは特に活発である可能性があるという。30年平均では12個(うち巨大なものが3個)であるが、今年は70%の確率で13-19個(うち巨大なものが3-5個)と予想されている。
>関連した記事(Nature#7451 "SEVEN DAYS")
Eye of the storm
嵐の目
NOAAが5/23に発表した大きなハリケーンのスパコンを用いた予測によると、7/1-11/30にかけて、7割の確率で7〜11回(うち3〜6回は巨大)のハリケーンの襲来が予想されるらしい。

Landsat woes
ランドサットの悲鳴
世界最長の運用年数を誇る地球観測衛星ランドサットの未来は危ういかもしれない。現在の管理と資金獲得の方法では立ち行かなくなるだろうと報告書の中で警告されている。

Astronomers image pink exoplanet
天文学者がピンクの系外惑星を撮影
地球から17.5パーセク離れたところにある、マゼンタ色の系外惑星(GJ 504b)がハワイのすばる望遠鏡によって直接撮像された。木星よりも4倍大きく、表面温度は237℃、1億6千万年前に生まれた時からピンク色をしていると推定されている。43.5AUというはるかに恒星から離れたところを周回している軽い部類の星と言うことで、現在の惑星形成理論に挑戦状を叩き付けている。
>関連した記事(ナショナルジオグラフィック ニュース)
ピンク色の系外惑星、すばるが直接観測

US biofuel quotas
アメリカのバイオ燃料の内訳
アメリカのEnvironmental Protection Agency(EPA)が2013年の国内のバイオ燃料製造目標の内訳を報告した。国内のエネルギー生産のうちバイオ燃料の占める割合を、9.74%以上にすることを目標と定めた(ちなみに2012年は9.23%)。

TREND WATCH
RECORD MEASUREMENT OF GREENHOUSE GASES
温室効果ガスの記録的な測定
NOAAによる報告によると、2012年における温室効果ガス(CO2・メタン・一酸化二窒素)排出量は観測史上最大となった。1990年以降、温室効果ポテンシャルとしてはCO2が80%を担っている。また今年5月には大気中CO2濃度が400ppmを超えた。
>関連した記事(Nature#7447 "NEWS IN FOCUS")
Global carbon dioxide levels near worrisome milestone
全球の二酸化炭素濃度が気がかりなレベルに近づく
Richard Monastersky
大気中のCO2濃度はまもなく400ppmに達する。少なくとも過去300万年間は経験したことのない濃度である(※補足すると、その上昇速度は地球史上前例がない)。海や陸上植生をはじめとする吸収源(sink)の吸収能が低下していると報告する研究者もいれば、それを否定する研究者もいる。
 予算削減などが原因で、主に熱帯域の観測は不足している。人工衛星からのモニタリングも試みられている。マウナロアにおける最長の観測もまた予算逼迫を受けて困窮しているという。
>関連した記事(Nature Geoscience#August2013 "In the press")
Troubling milestone for CO2
CO2に対する困った重要事件
Nicola Jones
2013年5月9日、大気中のCO2濃度がついに400ppmに達したことがハワイのマウナロア観測所にて報告され、人類が地上を歩き始めて移行もっとも高い数値となった(もっと言えば過去数百万年間でもっとも高い数値、鮮新世頃と同程度)。CO2は季節変動があるので、5月に最も高い値を取るが、年平均値は2017年には400ppmに達するだろうと見込まれている。
「450ppm」という数値が文明にとって危機的な気候変化へと繋がるCO2濃度の上限であると考える研究者も多いが、一方で元NASAの気候学者James Hansenらは350ppmが上限だと考えている。

COMMENT
Ecosystems: Climate change must not blow conservation off course
生態系:気候変化が保全の努力をを吹き消すわけではい
「地球温暖化を考慮して保全の優先度を再修正することはあまり役に立たないか、逆に害があるかもしれない」と、Morgan W. Tingley、Lyndon D. Estes、David S. Wilcoveらは言う。

CORRESPONDENCE
Environment: Curb clearance for oil-palm plantations
環境:パーム油プランテーションの認可を抑える
Finn Danielsen & Faizal Parish

Wildlife protection: Seize diplomats smuggling ivory
野生生物保護:象牙密輸をする外交官を捕らえよ
Kelvin S.-H. Peh

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RESEARCH
NEWS & VIEWS
Materials science: Composite for smarter windows
物質科学:よりスマートな窓の合成
Llordés et al.の解説記事。
電圧をかけると可視・近赤外線を選択的に吸収するようなガラスが開発されてきている。こうした素材が透明性を損なわずに熱を状況に応じて遮断するスマートな窓の開発に繋がった。
>関連した記事(Nature ダイジェスト)
窓をアップグレードする:ナノ結晶を埋め込んだスマートなコンポジットガラスは光と熱の透過の両方を調節できる

Microbiology: A weapon for bacterial warfare
微生物学:バクテリアの戦争のための兵器
Alain Filloux
Shneider et al.の解説記事。
バクテリアは他の微生物と争うために鋭い針を使った毒を使用していること、そのメカニズムがバクテリオファージと共に進化したことの2つの発見が、バクテリアの分泌系に対する新たな視点を提供している。

PERSPECTIVES
Climate extremes and the carbon cycle
気候の異常と炭素循環
Markus Reichstein, Michael Bahn, Philippe Ciais, Dorothea Frank, Miguel D. Mahecha, Sonia I. Seneviratne, Jakob Zscheischler, Christian Beer, Nina Buchmann, David C. Frank, Dario Papale, Anja Rammig, Pete Smith, Kirsten Thonicke, Marijn van der Velde, Sara Vicca, Ariane Walz & Martin Wattenbach
陸上の生物圏は全球の炭素循環における重要な構成要素であり、その炭素収支は気候によって大きく左右される。現在の気候変化は陸域の炭素取り込みを増加させると考えられているが、干ばつや嵐などといった極端な現象が地域的にはそれを打ち消し、期待される炭素取り込みを抑制するかもしれない。そうした極端な現象が陸域の炭素循環に与える影響とそのメカニズムを調査し、現在と未来の影響の理解をより良くするための方法を新たに提案する。

LETTERS
A variable absorption feature in the X-ray spectrum of a magnetar
マグネターのX線スペクトルに見られる変動する吸収特性
Andrea Tiengo, Paolo Esposito, Sandro Mereghetti, Roberto Turolla, Luciano Nobili, Fabio Gastaldello, Diego Götz, Gian Luca Israel, Nanda Rea, Luigi Stella, Silvia Zane & Giovanni F. Bignami
中性子星の一種である軟γ線リピーター(SGR 0418+5729)のX線スペクトルに関して。
>関連した記事(Nature ダイジェスト)
自転するマグネターのスペクトル解析

No increase in global temperature variability despite changing regional patterns
地域的な気温のパターンは変化しても全球的な気温の変動性は増大しない
Chris Huntingford, Philip D. Jones, Valerie N. Livina, Timothy M. Lenton & Peter M. Cox
 グリーンランドのアイスコアから気温の年々変動が大きくなっていた時期があったことが分かり、人為起源の気候変化において年々変動がどのように変化するかに注目が寄せられている。平均的な気候が変化すること以上に、異常気候へと社会が適応することが難しいからである。
 過去50年間の観測記録から、全球平均で見ると気温のアノマリの時間進化は安定していることが分かった。北米やヨーロッパなどの限られた地域では年々変動が見られる。しかし、多くの気候モデルが気温の変動性は小さくなると予測しており、温暖化によって気候の変動性が大きくなるという見方に疑問を投げかける結果となった。
>関連した記事(Nature ダイジェスト)
気温が上昇しても、気候は予測できる

The role of behaviour in adaptive morphological evolution of African proboscideans
アフリカのゾウ目の適応的形態進化における行動の役割
Adrian M. Lister
2千万年前から現在にかけて東アフリカに棲息する象の歯の化石の同位体分析をもとに形態学的な進化と生態の変化を調べたところ、象は現在のように牙が長くなる前は牧草を食べるために使われていたことが明らかに。行動の変化が形態学的な進化に繋がったと考えられる?

Oil palm genome sequence reveals divergence of interfertile species in Old and New worlds
アブラヤシのゲノム塩基配列から明らかになる旧世界および新世界での交配可能な種の分岐
Rajinder Singh et al.
パーム油は、世界で生産される植物油の33%および食用油の45%を占める。アフリカ原産のギニアアブラヤシ(Elaeis guineensis)のゲノム塩基配列を報告。今回得られた知見は、バイオ燃料や食用油の持続利用や、プランテーションによる熱帯雨林破壊の減少にも役立つかもしれない。
>関連した記事(Nature ダイジェスト)
アブラヤシのゲノムから明らかになったその栽培史

2013年8月14日水曜日

新着論文(GBC, PO, QSR)

Global Biogeochemical Cycles
Global trends in surface ocean pCO2 from in situ data
A. R. Fay, G. A. McKinley
近年の気候変動・変化に対して海の炭素吸収がどのように応答しているかを調べるために、全球を16の渦スケールのbiomeに分けてそれぞれ評価。1981-2010年に十年〜数十年の傾向が確認された。十年規模の傾向は、観測の始まりと終わりの年に強く依存した。より長い時間スケールでは熱帯・亜熱帯域のpCO2は大気と同じかやや遅い速度で上昇している(大気からの大きな取り込みと深層からのわずかな供給)。高緯度域はデータが不足しており長期傾向はよく分からない。気候変動に関連して大気pCO2よりもはるかに早く上昇する傾向を示すような海域もあった。南大洋ではSAMによって吸収能は2000年代初頭から強化されている。一方北大西洋の熱帯・亜熱帯域では温暖化によって2000年代半ば頃からpCO2は上昇傾向にあり(pCO2は温度と正相関するため)、このまま長期的に温暖化すると、炭素の取り込み能力が低下すると思われる。
>関連した記事(Nature Climate Change#August2013 "Research Highlights")
Ocean carbon
海の炭素

1981-2010年における海洋観測記録から、海水のpCO2が大気のCO2濃度とほぼ同程度の早さか、やや遅く上昇していることが示された。短い時間スケールでは上昇速度に地域性が大きいという。また北大西洋の温暖化に伴うCO2の溶解度低下によって海のCO2吸収力が弱まることが懸念されている。

Annual cycle of air-sea CO2 exchange in an Arctic Polynya Region
B. G. T. Else, T. N. Papakyriakou, M. G. Asplin, D. G. Barber, R. J. Galley, L. A. Miller, A. Mucci 
カナダ北極圏のCape Bathurst地域のポリニヤにてpCO2などの変動を観測し、2007-2008年のCO2フラックスを推定。総じて吸収源として寄与している。最も大きなCO2の取り込みは海氷の形成が始まる、風速が最大となる秋であった。観測期間の風速は平年値よりは25-35%強く、また東風が卓越しており、結氷時期が早まり、ポリニヤが開く時期がそれぞれ1ヶ月ほど早まったらしい。その結果、CO2の吸収能力は強まったと考えられる。冬のCO2吸収のうち50%はleadやポリニヤの小さな隙間から生じている。

The influence of net community production and phytoplankton community structure on CO2 uptake in the Gulf of Alaska
Hilary I. Palevsky, Francois Ribalet, Jarred E. Swalwell, Catherine E. Cosca, Edward D. Cokelet, Richard A. Feely, E. Virginia Armbrust, Paul D. Quay
海洋のCO2吸収能力は生物活動によって支配されているが、その力学はよく分かっていない。アラスカ湾にて行われたCO2フラックス・生産性・植物プランクトンの豊富度などの連続観測の結果について。「Alaskan GyreのHNLC海水」と「アリューシャン諸島の沿岸部からもたらされる海水」との境界でもっとも大きなCO2の吸収が確認された。境界では2つの小さな(<20μm)植物プランクトンが卓越していた。鉄に富んだ沿岸水と鉄に枯渇したAlaskan Gyre水との混合が生物活動やCO2吸収を刺激していると考えられる。

On the potential role of marine calcifiers in glacial-interglacial dynamics
Anne Willem Omta, George A. K. van Voorn, Rosalind E. M. Rickaby, Michael J. Follows
アイスコアから南極の気温と大気中CO2濃度変動とのきわめて良い相関が確認されており、ともにノコギリ型の変動を示す。生態学的プロセスが大きく寄与している可能性をモデルから示す。

A joint atmosphere-ocean inversion for the estimation of seasonal carbon sources and sinks
K. Steinkamp, N. Gruber
モデルの逆解析を利用して大気-海洋-陸域の炭素の1992-1996年の収支を推定。海洋の炭素吸収は年間1.8 PgCで、陸域の取り込みは1.3 PgCと推定された。熱帯雨林からの炭素放出は年間1.1 ± 0.9 PgCと推定され、森林破壊の速度からの推定値と整合的である。ただし、熱帯雨林ごとに吸収・放出の方向が異なる。

Paleoceanography
Planktonic foraminiferal area density as a proxy for carbonate ion concentration: A calibration study using the Cariaco Basin Ocean Time Series
Brittney J. Marshall, Robert C. Thunell, Michael J. Henehan, Yrene Astor, Katherine E. Wejnert 
カリアコ海盆にて行われた2005-2008年のセジメントトラップから、G. ruber (pink)とG. saccliferの断面密度(area density)が炭酸イオン濃度の指標になるかどうかを評価。種ごとに傾きは異なるものの、有為な相関が確認された。
※炭酸系そのものが他の変数(温度・栄養塩)などと似たような変動を示すため、本当に炭酸イオンだけが独立に石灰化プロセスに作用しているのだろうか??

What caused the long duration of the Paleocene-Eocene Thermal Maximum?
Richard E. Zeebe
PETMによる5℃を超す温暖化は少なくとも5万年間は継続したと推定されている。しかし従来の炭素循環・気候モデルはそうした長期的な温暖化をうまく再現できていない。堆積物への熱の伝播を考慮し、モデルにメタンハイドレートへの影響を取り入れたところ、1万年間以上にわたってゆっくりと炭素が放出される減少が確認された(bleeding)。深層水の温度上昇による、「海洋堆積物中の微生物活動の代謝過程の促進」と「メタンハイドレートが蓄積しなかったこと」の2つがPETMの温暖化の継続に重要だったのではなかろうか。

Agulhas salt-leakage oscillations during abrupt climate changes of the Late Pleistocene
Gianluca Marino, Rainer Zahn, Martin Ziegler, Conor Purcell, Gregor Knorr, Ian R. Hall, Patrizia Ziveri, Henry Elderfield
南アフリカ沖で採取された堆積物コアからMIS8-5(255-75ka)のAgulhas海流の塩分変動を復元。AMOCの変動に対応していると思われる千年スケールの塩分変動が確認された。AMOCが弱化することによってハドレー循環と南半球の偏西風の位置が変化し、それがAgulhus海流にも影響したと考えると整合的である。Agulhus海流の強化は北大西洋への熱塩供給を強化するため、一度弱化したAMOCの回復過程に重要であったと思われる。AMOCの調節器としてインド洋から大西洋への塩分輸送が重要であったと考えられる。

A record of the last 460 thousand years of upper ocean stratification from the central Walvis Ridge, South Atlantic
Paolo Scussolini, Frank J. C. Peeters 
大西洋南東部(南アフリカの西沖)で採取された堆積物コアの浮遊性有孔虫δ18Oを用いて過去460kaのAgluhas塩分流出を復元し、AMOCへの影響を評価。表層・温度躍層水に棲息する有孔虫のδ18Oの差を成層化の指標したところ、氷期-間氷期サイクルが確認された。風系かAMOCの変化が原因?またδ13Cも似た変動を示し、間氷期に差が最大値を示した。中層水の水塊構造の変化と生物ポンプの効率が増したことが原因?

Quaternary Science Reviews
Twentieth century sea-level rise inferred from tide gauge, geologically derived and thermosteric sea-level changes
Masao Nakada , Jun'ichi Okuno , Masayoshi Ishii
世界の検潮所の記録と塩沢の堆積物記録を用いて21世紀の海水準上昇の速度と原因を推定。地域ごとに異なる熱膨張的な海水準の変化と山岳氷河・氷床からの融水の影響も考慮している。IPCC AR4に整合的な結果が得られたが、グリーンランド氷床の融解はそれほど必要でない可能性が示唆された。山岳氷河と南極氷床の寄与が大きい?
※以前AORIでセミナーしていただいた内容の一部。

An alternative suggestion for the Pliocene onset of major northern hemisphere glaciation based on the geochemical provenance of North Atlantic Ocean ice-rafted debris
Ian Bailey , Georgia M. Hole , Gavin L. Foster , Paul A. Wilson , Craig D. Storey , Clive N. Trueman , Maureen E. Raymo
2.72Maの北大西洋高緯度域へのIRDの供給は北半球の氷河化(NHG)の証拠と考えられる。しかしNordic Seaで得られた堆積物記録と表面照射年代から復元された北米氷床の範囲との間には年代値の食い違いが確認されており、またIRDの起源も不確かなままである。IRD中の長石をLA-ICPMSで測定し、起源を推定したところ、北米氷床が2.52Maには拡大していたことが示された。最古のIRDの証拠は2.64Maとわずかに古く、グリーンランドやスカンジナビア氷床由来の可能性がある。
>関連した論文
Flux and provenance of ice-rafted debris in the earliest Pleistocene sub-polar North Atlantic Ocean comparable to the last glacial maximum
Ian Bailey, Gavin L. Foster, Paul A. Wilson, Luigi Jovane, Craig D. Storey, Clive N. Trueman, Julia Becker
Earth and Planetary Science Letters 341–344, 222–233 (2012).
北大西洋(52ºN)の堆積物コアから得られたIRDのfelspar(長石)中の鉛同位体をLA-ICPMSで測定し、IRDの起源となった母岩を推定。特に北半球の氷河化が始まった最初の頃に対応するMIS100(~2.52Ma)に注目。氷期初期と極大期とでIRDの起源が変化。LGMの時のIRDと似た性質のものが運搬されていたことが分かった。またMIS100には氷山が多く発生していたことが示唆される。

Responses of the deep ocean carbonate system to carbon reorganization during the Last Glacial–interglacial cycle
Jimin Yu , Robert F. Anderson , Zhangdong Jin , James W.B. Rae , Bradley N. Opdyke , Stephen M. Eggins
太平洋・大西洋熱帯域で得られた堆積物コアの底性有孔虫のB/Caを用いて氷期-間氷期サイクルの深層水の炭酸イオン濃度を復元。大西洋熱帯域の炭酸イオン濃度は~65μmol/kg変化し、原因としては北大西洋でNADWが形成される際の表層水の炭酸イオン濃度の変化(preformed)が考えられる。一方の太平洋の深層水にはあまり変化が見られない(<15μmol/kg)。LGMにおける炭酸イオン濃度と炭酸塩フラックスとの類似性は、深層水の炭酸塩の溶解が保存をコントロールしていることを強く物語っている。
>関連した論文
Loss of Carbon from the Deep Sea Since the Last Glacial Maximum
Jimin Yu, Wally S. Broecker, Harry Elderfield, Zhangdong Jin, Jerry McManus, Fei Zhang
Science 330, 1084-1087 (2010).
※この間、目からウロコが出た論文。

2013年8月13日火曜日

海洋酸性化に対して脆弱な極域、特に北極海(Shadwick et al., 2013, SR)

Vulnerability of Polar Oceans to Anthropogenic Acidification: Comparison of Arctic and Antarctic Seasonal Cycles
E. H. Shadwick, T. W. Trull, H. Thomas & J. A. E. Gibson
Scientific Reports 3: 2339, doi: doi:10.1038/srep02339

海洋酸性化の進行速度はサンゴなどが棲息する熱帯・亜熱帯域よりも、実は極域のほうが大きい。

本論文は第3回の国際極観測年(3rd International Polar Year)の一環で行われた、北極圏カナダの「Amundsen湾」と東南極の「Pridz湾」で測定された、初の年間を通しての海水炭酸系の測定結果を報告している。

>参考(以前書いた論文概説)
海洋酸性化の現状(レビュー)(Doney et al., 2009, Oceanography)

新着論文(Ncom, SR)

Nature Communications
24 July 2013
Distinct iron isotopic signatures and supply from marine sediment dissolution
William B. Homoky, Seth G. John, Tim M. Conway and Rachel A. Mills
 海水への鉄の供給は生物生産に影響し、さらには気候にも影響していると考えられている。大陸棚の堆積物における還元反応によって、かなりの溶存態の鉄が供給されていると考えられている。
 南アフリカのテクトニクス的に安定で、半乾燥地域で採取された堆積物コアの間隙水の鉄の同位体を測定。堆積物の還元からではない鉄の供給が明らかに。地質学的・水気候学的な要因を考慮する必要がある。

7 August 2013
Conventional tree height–diameter relationships significantly overestimate aboveground carbon stocks in the Central Congo Basin
Elizabeth Kearsley, Thales de Haulleville, Koen Hufkens, Alidé Kidimbu, Benjamin Toirambe, Geert Baert, Dries Huygens, Yodit Kebede, Pierre Defourny, Jan Bogaert, Hans Beeckman, Kathy Steppe, Pascal Boeckx and Hans Verbeeck
森林破壊に伴うCO2排出を削減するためにも、熱帯雨林の炭素貯蔵量を正確に見積もることは必要不可欠である。中央アフリカのコンゴ熱帯雨林における地上観測から、手つかずの古い熱帯雨林の地上の炭素量が「162 ± 20 MgC/ha」であることが示された。この値は縁辺の森林の推定値と比較すると小さく、従来の推定値が過大評価であることを示唆している。現在利用可能な木の高さと直径の経験式では正確な樹高を推定できず、コンゴの場合24%低く見積もっている可能性がある。

Nitrate formation from atmospheric nitrogen and oxygen photocatalysed by nano-sized titanium dioxide
Shi-Jie Yuan, Jie-Jie Chen, Zhi-Qi Lin, Wen-Wei Li, Guo-Ping Sheng and Han-Qing Yu
人為起源の硝酸塩は水生態系への影響をはじめとする様々な環境問題を引き起こしている。新たな研究から、コーティング素材として利用されている酸化チタンのナノサイズの粒子が空気中の窒素と酸素の光化学反応の触媒となり、硝酸塩を生成していることが分かった。

Scientific Reports
23 July 2013
Forcing of anthropogenic aerosols on temperature trends of the sub-thermocline southern Indian Ocean
Tim Cowan, Wenju Cai, Ariaan Purich, Leon Rotstayn & Matthew H. England
 20世紀後半にインド洋南部の熱帯・亜熱帯域は急速な寒冷化を経験し、その原因は人為起源のエアロゾルによって海洋のコンベアベルトが強化され、熱が北大西洋へと運搬されたことだと提案されている。
 CMIP5の気候モデルのシミュレーション結果から、それが人為起源のエアロゾルと温室効果ガスの影響であることを示す。エアロゾルが海洋循環に影響するという仮説を裏付ける結果が得られた。

High arsenic in rice is associated with elevated genotoxic effects in humans
Mayukh Banerjee, Nilanjana Banerjee, Pritha Bhattacharjee, Debapriya Mondal, Paul R. Lythgoe, Mario Martínez, Jianxin Pan, David A. Polya & Ashok K. Giri

Citizen Science: linking the recent rapid advances of plant flowering in Canada with climate variability
Alemu Gonsamo, Jing M. Chen & Chaoyang Wu
気候変化によって植物の生活サイクルの重要イベントのタイミングに影響が生じている。カナダにおける’市民科学’ネットワークによる植物季節学的な観測記録から、2001-2012年にかけて19のカナダの植物種の開花時期が約9日間早まっていることが分かった。うち73%は国内の年平均気温の変化で説明でき、温暖化の強い生物学的証拠になるという。

Forecasting large aftershocks within one day after the main shock
Takahiro Omi, Yosihiko Ogata, Yoshito Hirata & Kazuyuki Aihara

Seismic Evidence for a Geosuture between the Yangtze and Cathaysia Blocks, South China
Chuansong He, Shuwen Dong, M. Santosh & Xuanhua Chen

30 July 2013
Activity concentrations of environmental samples collected in Fukushima Prefecture immediately after the Fukushima nuclear accident
Masahiro Hosoda, Shinji Tokonami, Hirofumi Tazoe, Atsuyuki Sorimachi, Satoru Monzen, Minoru Osanai, Naofumi Akata, Hideki Kakiuchi, Yasutaka Omori, Tetsuo Ishikawa, Sarata K. Sahoo, Tibor Kovács, Masatoshi Yamada, Akifumi Nakata, Mitsuaki Yoshida, Hironori Yoshino, Yasushi Mariya & Ikuo Kashiwakura

Accelerated thermokarst formation in the McMurdo Dry Valleys, Antarctica
Joseph S. Levy, Andrew G. Fountain, James L. Dickson, James W. Head, Marianne Okal, David R. Marchant & Jaclyn Watters
 サーモカルストはツンドラ地域に発達する地下の氷の融解が引き起こすデコボコの大地を指すが、北極圏では重要な地形変化プロセスであることが認識されているものの、南極では稀だとされている。
 地上+航空観測から、南極のGarwood谷でのサーモカルスト形成が加速していること、その速度が完新世の平均の10倍もの早さであること、それが日射量の増加と堆積物/アルベド・フィードバックによって引き起こされていることが分かった。

Secondary organic aerosols over oceans via oxidation of isoprene and monoterpenes from Arctic to Antarctic
Qi-Hou Hu, Zhou-Qing Xie, Xin-Ming Wang, Hui Kang, Quan-Fu He & Pengfei Zhang

6 August 2013
Recognizing detachment-mode seafloor spreading in the deep geological past
Marco Maffione, Antony Morris & Mark W. Anderson

Vulnerability of Polar Oceans to Anthropogenic Acidification: Comparison of Arctic and Antarctic Seasonal Cycles
E. H. Shadwick, T. W. Trull, H. Thomas & J. A. E. Gibson
アルカリ度が小さく炭酸塩の緩衝能力が小さいことで、極域の海洋は特に海洋酸性化に対して脆弱である。北極と南極の沿岸部(それぞれAmundsen湾、Prydz湾)における海水炭酸系の測定から、北極が南極と比較して、大きな温度の季節変化(3℃に対して10℃)、淡水化(塩分2に対して3)、低いアルカリ度(2320に対して2220μmol/kg)、低い夏のpH(8.5に対して8.15)を示すことが分かった。北極海では夏に光合成によって無機炭素をより多く固定するものの、季節変化は比較的小さい。一方南極では融水がもたらす鉄と、もともと高い栄養塩濃度との相互作用によってCO2が固定され、海洋酸性化を緩和する能力がある。従って、北極海の方が南極よりもより気候変化に脆弱であると考えられる。

2013年8月12日月曜日

新着論文(NCC#August 2013)

Nature Climate Change
Volume 3 Number 8 (August 2013)

Editorial
Certain uncertainty
確かな不確実さ
7月に世界気象機関が最近10年間の異常現象を分析した報告書”The Global Climate 2001–2010: A Decade of Climate Extremes”を公表した。報告書によれば、2010年は観測記録上最も暖かかっただけでなく、同時に降水も多かったらしい。2001-2010年の間でもっとも洪水が起き、その傾向は今後も継続しそうである。
 気象と気候とは別物だが、密接に関連している。例えば、北半球のジェット気流は低気圧システムを駆動しているが、近年、北極圏が温暖化するに連れて低緯度・高緯度の温度差が小さくなることでジェット気流は弱まっている。その結果南北の蛇行が大きくなり、ヨーロッパをはじめとする北半球各地で例にない気象パターンが確認されている。
[以下は引用文]
Weather is often at the forefront of the general public’s mind, influencing their thoughts on climate change. But such anthropogenic effects cannot be considered in the short term. They are expected to manifest as changing patterns outside the normal range of variability, such as that associated with long-term natural climate cycles, and an increase in the frequency and intensity of extreme weather events. But attributing individual events, or even runs of such events, to climate change is ill advised without a deep understanding of underlying physical causes and an appreciation of the statistical probability of these events given long-term natural variability.
気象はしばしば一般市民の最重要事であり、気候変化に対する考えに影響を与えている。しかしそうした人為的な影響は短期的には認識されない。長期的な自然の気候サイクルとともに異常な気象現象の頻度や強度が増すなどして、自然の変動の範囲を変化のパターンが逸脱する事ではじめて明らかになることである。しかし、「その下に潜む物理的な原因の理解」や「長期的な自然変動を考慮した上でのそうしたイベントの統計的確率の認識」なしに、個々のイベント(或いは一連のイベントである場合も)を気候変化に結びつけるのはあさはかである。

Even armed with knowledge of the historical climate system and how driving mechanisms work, it is difficult to predict how it will behave on short and long timescales.
歴史的な気候システムやどのようにしてそれを駆動するメカニズムが働いているのかの知識で身を固めていても、短期的・長期的時間スケールで気候がどのように振る舞うかを予測することは難しい。

The only sure thing is that the climate and weather in the coming years will continue to have a degree of uncertainty and surprise us.
一つだけ確かなことは、気候と気象は将来ある程度の不確かさを持ち続けることであり、我々を驚かせ続けることである。

Correspondence
Transformation is adaptation
変革は適応
Lauren Rickards

US maize adaptability
アメリカのトウモロコシの適応可能性
Wolfram Schlenker, Michael J. Roberts & David B. Lobell

Reply to 'US maize adaptability'
’アメリカのトウモロコシの適応可能性’への返答
Ethan E. Butler & Peter Huybers

Commentaries
Triple transformation
3つの変革
Farrukh I. Khan & Dustin S. Schinn
「政治改革」「国内・国際間の資源の自由化」「資源へのアクセスの改善」の3つを可能にする新たなビジネスプランによって、Green Climate Fundが発展目標と気候変化に対する行動を統合することが可能になるだろう。

Loss and damage attribution
消失とダメージの原因
Christian Huggel, Dáithí Stone, Maximilian Auffhammer & Gerrit Hansen
もし異常気象の原因を探る研究が、顕在化しつつある気候変化の政策を一般に周知させることであるならば、リスクの構成要素すべてを診断する必要がある。

Interview
The scientist politician
科学政治家
Nicola Jones
Andrew Weaverへのインタビュー。

Market Watch
The city-sized lab in the sky
都市サイズの空中実験室
メキシコシティーは27年間にわたる大気の質のデータを有する、急速に発展するメガ都市の一つである。そこから学べるものは何だろうか?

Research Highlights
Ocean carbon
海の炭素
Glob. Biogeochem. Cycles http://doi.org/m6n (2013)
1981-2010年における海洋観測記録から、海水のpCO2が大気のCO2濃度とほぼ同程度の早さか、やや遅く上昇していることが示された。短い時間スケールでは上昇速度に地域性が大きいという。また北大西洋の温暖化に伴うCO2の溶解度低下によって海のCO2吸収力が弱まることが懸念されている
>話題の論文
Global trends in surface ocean pCO2 from in situ data
A. R. Fay, G. A. McKinley

Adapting at pace
ペースを合わせて適応
Ecol. Lett. http://doi.org/m6k (2013)
生物は環境の変化に応じて適応するが、気候変化の速度に生態系が追いつけるかどうかが大きな関心を呼んでいる。2100年に予想されている気候変化に対して主要な脊椎動物が適応できるかどうかを推定したところ、過去の進化速度と今後の変化との間に大きなギャップがあることが示された。うまく適応するためには通常の1万倍という例にない速度で進化する必要がある

Monsoon arrives early
モンスーンが早く到達する
Geophys. Res. Lett. http://doi.org/m6p (2013)
 アジアモンスーンは世界人口の3分の1ほどを占める多くの人々の暮らしに影響する。1950-1999年にかけてインドの中部・北部の夏の降水量が増加し、モンスーンの始まりが10-20日早まっていることが示されている。
 エアロゾル排出も考慮された気候モデルから、ベンガル湾やインドシナ半島上空のエアロゾルがその下のSSTを低下させており、大気を安定化させることでモンスーンを阻害していることが示された。結果として変化した大気循環によって、インド北西部の地表温度が上昇しており、6月の風の吹き込みを強めていることが分かった。こうしたエアロゾル-降水-大気循環の相互作用がモンスーン時期の早まりの理解に重要かもしれない。
>話題の論文
Earlier onset of the Indian monsoon in the late twentieth century: The role of anthropogenic aerosols
Massimo A. Bollasina, Yi Ming, V. Ramaswamy

Uneven benefits
不平等な恩恵
Proc. Natl Acad. Sci. USA http://doi.org/m29 (2013)
太陽光・風力発電などの自然エネルギーはCO2排出削減に効果がある。アメリカにおける33,000地点の風力発電タービン、900地点の太陽光パネルに関する分析から、そうした削減効果には地域性があることが分かった。健康・環境影響なども考慮すると、削減による恩恵は地域により異なり、高いエネルギー生産が必ずしも大きな社会的恩恵へと直結していないことが示された。
>話題の論文
Regional variations in the health, environmental, and climate benefits of wind and solar generation
Kyle Siler-Evans, Inês Lima Azevedo, M. Granger Morgan, and Jay Apt
>関連した記事(Science#6145 "Editors' Choice")
Renewable Benefits
再生可能な恩恵
太陽光発電や風力発電がCO2排出削減に大きく寄与することを疑う人はいないが、これらの発電には地域性が大きく影響することを知る必要がある。アメリカにおける従来型の発電所を風力・太陽光発電に置き換えた際の地域性・恩恵・健康被害などが評価された。

Usable science
使える科学
Glob. Environ. Change http://doi.org/m6m (2013)
社会に対する気候変化のリスクをカタログ化することにおいて'使える科学(Usable science)'が必要とされている。特に環境変化研究などで広く採用されつつあるが、現実の政策決定ではまだケーススタディが少ない。モデル研究から、その有用性が評価された。

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Research
News and Views
Policy: Carbon emissions in China's trade
政策:中国の貿易の炭素排出
Valerie J. Karplus
中国の大きな炭素排出は中国国内で発展した省内と海外における消費と関連がある。
>話題の論文
Outsourcing CO2 within China
中国国内におけるCO2のアウトソーシング
Kuishuang Feng, Steven J. Davis, Laixiang Sun, Xin Li, Dabo Guan, Weidong Liu, Zhu Liu, and Klaus Hubacek
中国の国内外のCO2排出量のうち、57%は生産された省とは別のところで消費されている商品に関連した排出であることが分かった。例えば、炭素排出量の大きい・低品位の商品が中国の富裕な沿岸部で生産され、中部・西部へと輸送されていることなどが示された。こうした省をまたいだ消費活動に関連した炭素の漏れ(leakage)に対しての注目が集まらないと、あまり発展していない地域が排出量を削減するのがより難しくなると思われる。

Climate projection: Refining global warming projections
気候予測:地球温暖化の予測を刷新する
Chris Huntingford
Roger W. Bodman et al.の解説記事。
温室効果ガスの排出シナリオに沿って地球がどのように温暖化するかを正確に決定することは気候モデリングの重要課題であり続けている。新たな研究は極端な温暖化予測はありそうになさそうなことを示唆している。

Ecological impacts: Variance and ecological transitions
生態学的な影響:変動と生態学的な移行
Guy Midgley
Milena Holmgren et al.の解説記事。
降水の変動が多種多様な熱帯域の森林被覆の空間パターンの重要な決定要因かもしれない。

Perspectives
The urgency of assessing the greenhouse gas budgets of hydroelectric reservoirs in China
中国における水力発電貯水池の温室効果ガス収支を評価することの緊急性
Yuanan Hu & Hefa Cheng
中国はすでに世界で最も水力発電を行っているが、今後もダム建設を加速させる計画を立てている。しかし、ダムから排出される温室効果ガス(特にメタン)は「地球温暖化の時限爆弾」になる可能性を秘めている。世界最大の三峡ダム(Three Gorges Reservoir)における排出の証拠をレビューし、そうした懸念が排除できないことを示す。
[Wikipediaより引用]
三峡ダム水力発電所は、70万kW発電機32台を設置し、2,250万kWの発電が可能。これは最新の原子力発電所や大型火力発電所では16基分に相当し、世界最大の水力発電ダムとなる。三峡ダム水力発電所の年間発生電力量は1,000億kWhであり、中国の電気エネルギー消費量が年間約1兆kWhであるから、三峡ダムだけで中国の電気の1割弱を賄えることとなる。
>関連した記事(Nature Geoscience, Dec 2012 "Correspondence")
Hydroelectric carbon sequestration
水力発電の炭素貯留
Raquel Mendonça, Sarian Kosten, Sebastian Sobek, Nathan Barros, Jonathan J. Cole, Lars Tranvik & Fábio Roland
水力発電用のダムはメタンの重要な放出源となっており、温暖化にかなり寄与していると考えられているが、一方でダムの底に溜まる大量の有機物は大気のCO2の吸収源としても寄与している。
>関連した記事(Nature Climate Change, June 2012 "Commentaries")
Greenhouse-gas emissions from tropical dams
熱帯のダムからの温室効果ガスの放出
Philip M. Fearnside &  Salvador Pueyo
熱帯域の水力発電用のダムから出てくる温室効果ガスの量は低く見積もりすぎており、時として数十年間の化石燃料燃焼による排出を上回っている。

Promoting interdisciplinarity through climate change education
気候変化教育を通して学術横断性を推進する
Aaron M. McCright, Brian W. O'Shea, Ryan D. Sweeder, Gerald R. Urquhart & Aklilu Zeleke
ほとんどのアメリカ国内の気候変化教育は資金援助を受けている。大学レベルの気候変化教育によって、学術横断性を推進でき、才能ある若者を科学・技術・工学・数学的パイプラインにつなぎ止めることができ、学生の科学的・定量的・気候リテラシーを養うことができる。

Letters
Projections of seasonal patterns in temperature- related deaths for Manhattan, New York
ニューヨーク・マンハッタンにおける温度に関連した死の季節パターンの予測
Tiantian Li, Radley M. Horton & Patrick L. Kinney
気候変化の結果、暑さや寒さがきっかけとなった死者数の割合が変化すると考えられるものの、年間の死亡率がどのように変化するかは不確かなままである。ニューヨーク・マンハッタンにおける温度に関連した死亡率の季節パターンが評価され、将来予測された。死亡率は暑い時期に増え、寒い時期に減り、年平均値は総じて増加すると予想された。

The social cost of CO2 in a low-growth world
ゆっくり成長する世界における社会的なCO2のコスト
Chris Hope & Mat Hope
CO2排出の主要国の経済が停滞すると気候変化削減は鈍化する。新たな研究から、景気が後退すると、貧困国への影響を通じて、追加のCO2排出に対するコストが上昇することが示された。遅い成長の際にも気候変化緩和を再重要項目として捉える必要があることを示唆している。

Uncertainty in temperature projections reduced using carbon cycle and climate observations
炭素循環と気候観測を用いることで減少する温度予測の不確実性
Roger W. Bodman, Peter J. Rayner & David J. Karoly
気候変化に対する炭素循環の応答(炭素フラックスを含む)が温暖化予測の際の2番目に大きな不確実性の原因であることが示された。1番目は気候感度、3番目はエアロゾルの影響と推定されている。
 温度とCO2濃度の観測記録を用いた単純な気候モデルは、それぞれを独立変数として扱うよりも、一緒に扱う方が不確実性をはるかに軽減できることを実証している。2100年までの2℃を越す可能性が高まり、逆に6℃以上になる可能性は軽減された。

Mitigation of short-lived climate pollutants slows sea-level rise
短寿命の気候汚染物質の削減が海水準上昇を遅らせる
Aixue Hu, Yangyang Xu, Claudia Tebaldi, Warren M. Washington & Veerabhadran Ramanathan
短寿命の気候汚染物質(short-lived climate pollutants; SLCPs)にはメタン、対流圏オゾン、フロンガス、ブラック・カーボンが含まれるが、それらを削減することで2050年までの温暖化を半減できることが示唆されている。温暖化に伴う海水の熱膨張が海水準上昇に与える影響をモデルを用いて評価したところ、これらSLCPsの削減によって、2100年までに海水準上昇速度を24-50%軽減でき、積算の上昇を22-42%軽減できることが示された。削減が25年間遅れると、軽減の程度が3分の1減少することも分かった。

Semi-empirical versus process-based sea-level projections for the twenty-first century
21世紀に対する半経験的 対 プロセス的な海水準予測
Mirko Orlić & Zoran Pasarić
 半経験的な手法と、プロセスに基づいた手法との2つを用いて21世紀の海水準上昇予測がなされた。しかし前者は後者よりも3倍ほど大きい見積もりをした。
 プロセスに基づいた手法の厳密さを評価したところ、モデルで考量される力学や陸上の水循環(地下水やダムの貯水量の変化など)に敏感であることが分かった。B1排出シナリオで半経験的手法の場合には、21世紀の海水準上昇の最小値は62 ± 14 cmと推定された。

Pace of shifts in climate regions increases with global temperature
気候区分のシフトの速度が全球の温度とともに上昇する
Irina Mahlstein, John S. Daniel and Susan Solomon
気候変化の結果、ケッペンの気候区分が今世紀末には変化すると予測されている。しかしそうした変化の速度や、変化の速度が加速するかどうかについてはよく分かっていない。RCP8.5シナリオの下では速度は2倍にも増加し、陸地面積の20%が気候区分の変化を経験すると予想される。これは生物が変化に適応する時間が徐々に失われることを意味し、絶滅のリスクが高まると思われる。

Springtime atmospheric energy transport and the control of Arctic summer sea-ice extent
春の大気エネルギー輸送と北極海の夏の海氷範囲のコントロール
Marie-Luise Kapsch, Rune Grand Graversen & Michael Tjernström
北極海の海氷範囲は気候変化の影響で年々急速に減少しているが、一方で年々変動も大きい。しかしそうした年々変動の原因についてはよく分かっていない。近年の温室効果ガス排出に伴って変化する、春の「雲被覆(cloudiness)」と「湿度」の増加が温室効果を通して、その後の季節の海氷の発展に重要であることが分かった。太陽からの下向き短波放射は直接的には海氷後退には影響しておらず、むしろフィードバックとして寄与しているらしい。

Projected increase in tropical cyclones near Hawaii
予想されるハワイ近くの熱帯低気圧の増加
Hiroyuki Murakami, Bin Wang, Tim Li & Akio Kitoh
気候変化とそれに伴う熱帯低気圧の変化を正確に予想するには、複数のモデルを用いて物理的な設計を変えたり、複数の海水温変化のシナリオを用いたりする必要がある。大循環モデルを用いて2075-2100年の気候変化予測を行ったところ、ハワイ島に到達するサイクロンの数が増加することが予想された。ハワイの南東部の外洋によりサイクロンが進行できる通路が形成されることが原因と考えられる。また亜熱帯太平洋中央部の環境も台風を成長させるのに適した状態へと変化すると考えられる。ハワイ島において社会経済的・生態学的ダメージをもたらすと思われる。
>関連した記事(Nature#7449 "RESEARCH HIGHLIGHTS")
More cyclones for Hawaiian Islands
ハワイ島により多くのサイクロン
気象研(+SOEST)の村上裕之らの研究グリープは、地球温暖化によって海水温上昇とハワイに到達するサイクロンの数が2075-2100年に現在の2倍に増加することをモデルシミュレーションから示した。ハワイのサイクロンはメキシコ湾を起源とするが、地球温暖化とともにサイクロンの進路が変化することが原因と考えられる。発生するサイクロンの数自体は減少するものの、ハワイに到達するほどに勢力を増すことが予想されている。

Effects of interannual climate variability on tropical tree cover
年々の気候変動が熱帯の森林被覆に与える影響
Milena Holmgren, Marina Hirota, Egbert H. van Nes & Marten Scheffer
気候が温暖化するにつれて水循環も強化されると考えられている。人工衛星観測記録から、年々の気候変動が大きくなるにつれ、現在湿潤な熱帯雨林の森林被覆が減少しつつあることが分かった。一方、比較的乾燥した地域(南米など)では、極端な雨に支えられて、逆に被覆は増加することが分かった。地域ごとの違いは、草食動物コミュニティーや森林火災などとも関連が深いと考えられる。

Shorter flowering seasons and declining abundance of flower visitors in a warmer Arctic
温暖化した北極圏における開花時期の短期化と花に訪れるものの豊富さの減少
Toke T. Høye, Eric Post, Niels M. Schmidt, Kristian Trøjelsgaard & Mads C. Forchhammer
気候が変化することによって生物季節学的な変化が時間的に同期した食物網の関係性を乱すと考えられるものの、特に北極圏ではその関係性がよく分かっていない。グリーンランド北極圏における1996-2009年の長期観測記録から、花が咲く季節が短くなっており、さらに花を訪れる生物が減少していることが分かった。