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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English) おまけTwilog

2013年7月5日金曜日

新着論文(Science#6141)

Science
VOL 341, ISSUE 6141, PAGES 1-100 (5 JULY 2013)

Editors' Choice
Governance by the People
人々によるガバナンス
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 110, 10.1073/pnas.1301733110 (2013)
中国四川省にある臥竜(Wolong)自然保護区における国家森林保全計画の一環で、各区画を1-16世帯で構成される集団に監視するよう命じられた。それぞれの集団のサイズと各世帯のモニタリング(不正な伐採など)の努力・森林被覆の増加との間にはU字型の関係が見いだされた。8〜9世帯が最適でであるらしい。また集団間の社会的な繋がりが強いこと、リーダーと強く結びついていることも、効果的なガバナンスに繋がると示唆される。

News of the Week
T. rex Goes to Washington
Tレックスがワシントンに行く
ティラノサウルス(Tyrannosaurus rex)の完全な化石がロッキー博物館(Museum of the Rockies)からスミソニアン博物館(Smithsonian Institution’s National Museum of Natural History)へと出発した。

On the Way to Cleaner Power
より綺麗な電力への道の途中
先週のオバマ大統領の気候変化に関するスピーチは、環境保護機関が来年から既存の発電所からの炭素排出を制限することを約束している。アメリカは既に低炭素社会に向けて動き始めており、天然ガスへの移行もあって、2012年の石炭発電量は過去20年間で最低値となった。世界的な景気悪化もまた排出量の低下へと繋がっている。

Map Offers Millennium Of Earthquake Records
地図が千年間の地震記録を提供する
イタリアで行われた会合にて、過去1000年間にわたる世界中の地震記録(1万件)のデータベースが紹介された。主に保険会社が出資しているGlobal Earthquake Modelによって支援されている。
>より詳細な記事
Seismic Data Set Could Improve Earthquake Forecasting
Roland Pease

BY THE NUMBERS
32%
生物多様性の保全に資金が不十分でない40カ国が世界の生物多様性に占める割合。PNASに論文。世界が生物多様性保全のために使った金額は過去10年間の間、年間215億ドルと推定されている。
>話題の論文
Targeting global conservation funding to limit immediate biodiversity declines
Anthony Waldron, Arne O. Mooers, Daniel C. Miller, Nate Nibbelink, David Redding, Tyler S. Kuhn, J. Timmons Roberts, and John L. Gittleman
PNAS, early edition

News & Analysis
Budget Malaise May Hit DOE's One Big Growth Area
予算の停滞がDOEのもっとも大きな成長分野に打撃を与えるかもしれない
Adrian Cho
物理学研究に対してアメリカで最大の資金援助をしているエネルギー局(Department of Energy)が予算削減に苦しんでいる。

China's Exquisite Look at Earth's Rocky Husk Wins Raves
Jane Qiu
中国の閣僚は15年間で65億ドルを使って地殻と上部マントル(リソスフェア)の謎を解き明かす計画を入念に検討している。

At Long Last, Europe's Mega R&D Program Comes Into Focus
長期的な、ヨーロッパのメガ・研究開発計画が注目されている
Tania Rabesandratana and Gretchen Vogel
先週、EUのリーダーたちは次のヨーロッパ全土の研究開発計画(Horizon 2020)に対する予算と規則に同意した。2014-2020年にかけて700億ユーロが配分される予定となっている。

Policy Forum
Sustainable Intensification in Agriculture: Premises and Policies
農業の持続可能な強化:約束とポリシー
T. Garnett et al.
「持続可能な強化の基礎をなす約束事」や「それをどのようにして食料システムの優先事項と関連づけるか」に関するより明確な理解が必要とされている。

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Research
Perspectives
Seabirds—Individuals in Colonies
海鳥—コロニーの中の個人
Henri Weimerskirch
近くのコロニーで生活をするそれぞれの海鳥は、食料を争わないように違う場所で餌探しをする。
Wakefield et al.の解説記事。

The Roots of Cultivation in Southwestern Asia
南西アジアの耕作の起源
George Willcox
イランのザグロス山脈で発見された初期の作物栽培の証拠はいつ・どこで人類が野生の穀物類を栽培し始めたのを解明する助けになる。
Riehl et al.の解説記事。

Radio Bursts, Origin Unknown
電波バースト、起源は分からない
James M. Cordes
おそらく天の川銀河の外を起源とすると思われる電波バーストは巨大で風変わりな供給源が存在することを示唆している。
Thornton et al.の解説記事。

Research Articles
The Long-Term Stability of the Human Gut Microbiota
ヒトの腸内細菌類の長期間の安定性
Jeremiah J. Faith et al.
誤差の小さいシーケンスから、乳児の腸内細菌類は一生を通じて存続することが明らかに。

Bringing Ecosystem Services into Economic Decision-Making: Land Use in the United Kingdom
生態系サービスを経済的な政策決定に用いる:イギリスにおける土地利用
Ian J. Bateman et al.
土地景観(landscape)は幅広い生態系サービスを生み出すが、一方で土地利用に関する政策決定においてはその価値が無視されがちである。イギリスにおける実例から、農業生産としての土地利用変化だけでなく、「温室効果ガス排出削減」「自由に行き来できるレクリエーションの場」「都市部の緑地」「野生生物の多様性」という意味でもそれが重要であることを示す。その経済的な付加価値や気候変化が与える影響をモデルから求めたところ、農業だけに着目した土地開発だけでは全体としての生態系サービスの価値を下げることが分かった。可能性のあるサービスをすべて取り入れることで価値が大きく増加すること、さらにそうしたアプローチが野生生物の多様性の保護にも繋がることが示された。

Reports
Signatures of Cool Gas Fueling a Star-Forming Galaxy at Redshift 2.3
赤方偏移2.3における星形成銀河に燃料を供給している冷たいガスの特性
N. Bouché, M. T. Murphy, G. G. Kacprzak, C. Péroux, T. Contini, C. L. Martin, and M. Dessauges-Zavadsky
星形成銀河の近くのガスの観測から、ガスが銀河に流れ込む際に期待される力学的な特徴が明らかになった。

A Population of Fast Radio Bursts at Cosmological Distances
宇宙学的な距離にある速い電波バーストの集団
D. Thornton et al.
電波望遠鏡の観測から、4回の短い、天の川銀河の外からの、繰り返しのない電波バーストの存在が明らかになった。その起源はまだ分かっていない。

Emergence of Agriculture in the Foothills of the Zagros Mountains of Iran
イランのザグロス山脈の丘陵地帯における農業の出現
Simone Riehl, Mohsen Zeidi, and Nicholas J. Conard
栽培用の穀物(domesticated cereals)の起源がイラン中心部であることの意味は長いこと議論されてきた。ザグロス山の丘陵地帯に位置する新石器時代の遺跡(Chogha Golan)には2,200年にわたる野生植物の栽培の連続した考古学記録が残されており、また栽培用の穀物が初めて出現した地でもある。イランにおけるもっとも初期の長期的な植物管理の記録であると思われる。

Space Partitioning Without Territoriality in Gannets
Gannetsの縄張り争いのない空間分割
Ewan D. Wakefield
海鳥の一種であるGannetの12の近くに住むコロニーを対象にした調査から、互いに排他的な場所で餌探しをしていること、コロニー特有の巣の範囲は密度に依存した競合によって決まっていることが示された。