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2013年6月2日日曜日

新着論文(Geology)

Geology
1 June 2013; Vol. 41, No. 6

A new paleothermometer for forest paleosols and its implications for Cenozoic climate
Timothy M. Gallagher and Nathan D. Sheldon
古土壌は気候によって影響されるため、過去の気温指標になる可能性を秘めている。古土壌の風化の度合いと年平均気温との関係を広く調査したところ、森林で形成されたような粘土に富む古土壌については古気温指標が適用可能であることが示された。新生代のオレゴン州の地層にて適応したところ、植物組成から推定されている気温と整合的な結果が得られた。

Carbon isotopic analyses of ca. 3.0 Ga microstructures imply planktonic autotrophs inhabited Earth’s early oceans
C.H. House, D.Z. Oehler, K. Sugitani, and K. Mimura
30億年前の西オーストラリアのFarrel Quartziteには有機物と思しき紡錘形の構造が確認されているが、それが生物起源かどうかは分かっていない。32点のδ13C測定結果から、それが-37‰と非常に軽い値をとっており、バックグラウンドの有機物からも差異が見られることから、それが生物起源であることを示唆していることを示す。またそれらは浮遊性で、無機栄養生物(autotrophic)であったと思われる。約34億年前のオーストラリアのStrelley Pool Formationのもの、34億年前の南アフリカのOnverwacht Groupのものとの類似性から、初期の生命の最も古い痕跡の一つであると思われる。

Stability of the nitrogen cycle during development of sulfidic water in the redox-stratified late Paleoproterozoic Ocean
Linda V. Godfrey, Simon W. Poulton, Gray E. Bebout, and Philip W. Fralick

Sulfur isotope systematics of a euxinic, low-sulfate lake: Evaluating the importance of the reservoir effect in modern and ancient oceans
Maya L. Gomes and Matthew T. Hurtgen

North Atlantic versus Southern Ocean contributions to a deglacial surge in deep ocean ventilation
L.C. Skinner, A.E. Scrivner, D. Vance, S. Barker, S. Fallon, and C. Waelbroeck
最終退氷期におけるCO2濃度上昇は南大洋におけるガス交換が原因と考えられているが、その証拠は限られている。放射性炭素(Skinner et al., 2010, Science)と新たに得られたεNdから、最終退氷期における大西洋南部の海洋循環を復元。大西洋の子午面循環だけでなく、南大洋の底層水形成も重要な役割を負っていたと考えられる。大西洋が重要なフィードバックを担っていた?

Cooling of the Bushveld Complex, South Africa: Implications for paleomagnetic reversals
R. Grant Cawthorn and Susan J. Webb

Evidence for an African-Iberian mammal dispersal during the pre-evaporitic Messinian
Luís Gibert, Gary R. Scott, Plini Montoya, Francisco J. Ruiz-Sánchez, Jorge Morales, Luis Luque, Juan Abella, and María Lería

Reach-scale river dynamics moderate the impact of rapid Holocene climate change on floodwater farming in the desert Nile
Mark G. Macklin, Jamie C. Woodward, Derek A. Welsby, Geoff A.T. Duller, Frances M. Williams, and Martin A.J. Williams
年代決定の不確実性の問題から、ナイル川流域の文明・気候の関係についてはよく分かっていない。正確に年代決定された考古学的記録とOSLで年代が決められたナイル川の流路変動を併せて古文明の盛衰を議論。

Potentially induced earthquakes in Oklahoma, USA: Links between wastewater injection and the 2011 Mw 5.7 earthquake sequence
Katie M. Keranen, Heather M. Savage, Geoffrey A. Abers, and Elizabeth S. Cochran

>関連する記事
Wastewater injection cracks open quake concerns
廃液を割れ目に注入することが地震の関心を呼ぶ
Nicola Jones
Nature Geoscience (May 2013) "In the press"
オクラホマにおいて2011年に生じたM5.7の地震は、石油・ガス掘削のサイトに廃液を注入したことが原因として報告され話題を呼んでいる。廃液注入サイトから200mも離れていないところで断層が滑り、M5.7の地震およびその後の数千回の余震を誘発したと考えられている。似たような例は1966年にもロッキー山脈で確認されており、当時はM4.8の地震を誘発していたという。

>関連する記事
Making a bigger Big One.
より大きい大きなものを作る
Richard A. Kerr
Science 338, 1497-1676 (21 DECEMBER 2012) "News & Analysis"
いわゆる’fracking’技術によってニューメキシコ、アラスカ、オハイオにおいてかなり大きな地震が引き起こされた。2011年11月にオクラホマで起きたM5.7の地震もまた掘削坑への流体注入がきっかけとなって起きた可能性が指摘されているが、Katie Keranenらによる調査によると、破壊された断層は掘削坑から200mしか離れておらず、掘削坑の最新部まで破壊が及んでいたという。注入された流体は地質構造によって再分配されるため、破壊はすぐには起きない。しかしながら、人間の手によって数世紀は起きないはずの大規模な地震が引き起こされる可能性が示された。