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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English) おまけTwilog

2013年6月24日月曜日

新着論文(BG, EPSL, QSR)

Biogeosciences
Analysis of a 39-year continuous atmospheric CO2 record from Baring Head, New Zealand
B. B. Stephens, G. W. Brailsford, A. J. Gomez, K. Riedel, S. E. Mikaloff Fletcher, S. Nichol, and M. Manning
ニュージーランドのBaring Headで測定されている39年間の長期大気CO2観測記録を用いて、その変動要因を考察。ENSOの変動周期と同期した年々変動が確認された。東西方向の風が強化された結果、南大洋のCO2吸収効率が減少していることが報告されているものの、南半球の中緯度と高緯度の大気CO2濃度の差からは変動が小さすぎて検出できなかった。

A new conceptual model of coral biomineralisation: hypoxia as the physiological driver of skeletal extension
S. Wooldridge
サンゴの骨格成長を決定するのは夜間の貧酸素状態であるという新たな石灰化モデルを提唱。またGBRのハマサンゴの成長速度が1900年代に入って急速に減少していることを新たなモデルを用いて説明。

EPSL
Glacial freshwater discharge events recorded by authigenic neodymium isotopes in sediments from the Mendeleev Ridge, western Arctic Ocean
Kwangchul Jang , Yeongcheol Han , Youngsook Huh , Seung-Il Nam , Ruediger Stein , Andreas Mackensen , Jens Matthiessen
北極海西部のMendeleev Ridgeで採取された堆積物コアの過去75ka分のεNdを測定。Polar Deep Water (PDW)の指標として使え、特にBarents–Kara氷床・ローレンタイド氷床などからの淡水供給の推定に使える。北極海への淡水供給量は大きく変動したが、NADWの形成に影響するほどではなかったと思われる。

Was the Antarctic glaciation delayed by a high degassing rate during the early Cenozoic?
Vincent Lefebvre, Yannick Donnadieu, Yves Goddéris, Frédéric Fluteau, Lucie Hubert-Théou
 Eocene/Oligocene境界において南極に氷床が発達し始めた。またその際の全球の寒冷化は南大洋海路が開いたことと、同時に大気中CO2濃度が低下したことがその原因と考えられている。しかし、そうしたCO2減少に至ったメカニズムについては特によく分かっておらず、議論が活発になされている。
 結合された気候-炭素循環モデル(GEOCLIM)を用いて、メカニズムを考察。CO2低下に必要だったのは、大陸移動によってITCZの影響下に北アフリカ・南米北部が移動したこと、さらにはEoceneの間にインドア大陸のDeccan玄武岩が風化したこと、OligoceneにEthipian Trapが風化したことによってCO2が吸収されたことと考えられる。またEoceneにおいて南極が氷河化しないようにするためには地球内部からのCO2脱ガスは50%高くなっていなければならなかったと考えられる。E/O境界のCO2濃度低下にはケイ質岩の風化よりもむしろ火山からの脱ガス量が減少したことが効いていたのではないかと思われる。さらに、その後さらにインド亜大陸・アフリカ大陸が移動したことで岩石化学風化が減少し、Mioceneの温暖期(大気中CO2濃度も上昇)が生じたのではないかと考えられる。そしてその後チベット高原の隆起とインド・アジアモンスーンの強化によって岩石風化がさらに促進し、現在のような新生代後期の寒冷気候に至ったと考えられる。

Australasian monsoon response to Dansgaard–Oeschger event 21 and teleconnections to higher latitudes
Michael L. Griffiths, Russell N. Drysdale, Michael K. Gagan, John C. Hellstrom, Isabelle Couchoud, Linda K. Ayliffe, Hubert B. Vonhof, Wahyoe S. Hantoro
氷期のD/Oイベントは主に北半球で見られる急激な気候変動イベントであるが、その際のWPWPやオーストラリア・モンスーンの変動についてはよく分かっていない。インドネシア南部のLiang Luar洞窟から得られた複数の鍾乳石のδ18O・δ13Cおよび流体包有物からD/O21(MIS5の後半)の小温暖期における気候変動を復元。東アジアのモンスーンが強化している一方で、インドネシアの降水量は低下しており、ITCZが北へ移動したと考えられる。さらにその際に気温も2~3℃上昇しており、土壌におけるメタン生成が増加したことが鍾乳石のδ13Cに記録されていると思われる。メタン濃度とCO2濃度の増加は温室効果によって全球の温暖化に寄与したと思われる。

The magnitude, timing and abruptness of changes in North African dust deposition over the last 20,000yr
D. McGee , P.B. deMenocal , G. Winckler , J.B.W. Stuut , L.I. Bradtmiller
北アフリカにおける砂漠起源のダストフラックスは気候にも大きな影響を与えており、過去においても重要であったと思われるが、それを定量的に復元できる高時間解像度の記録は限られている。アフリカ大陸の北西部の海岸に沿って(31ºN〜19ºN)堆積物を採取。粒径と230Thを用いて規格化したダスト・フラックスを組み合わせることで、過去20kaのダスト沈降を復元。HS1とYDにおいてはダスト・フラックスが急増しており、またアフリカの湿潤期(African Humid Period; AHP; ∼11.7–5 ka)には激減していることが分かった。今後のモデル研究に重要なデータとなると期待される。

QSR
Modelling past sea ice changes
H. Goosse , D.M. Roche , A. Mairesse , M. Berger
モデル内の海氷の再現の問題に関するレビュー。特にLGMの南大洋の海氷、完新世初期の北極海の夏の海氷範囲においてモデル間の大きな食い違いが見られるらしい。

Changes in silicate utilisation and upwelling intensity off Peru since the Last Glacial Maximum e insights from silicon and neodymium isotopes
C. Ehlert, P. Grasse, M. Frank
ペルー沖で採取された堆積物コアのεNdとδ30Siから過去20kaのケイ酸塩利用・水塊混合・湧昇の強度を復元。εNdの南北の傾きはローカルな風化による供給源を反映していると思われる。コーティングεNdは過去20kaでほとんど変化せず。一方で砕屑岩εNdは変動が見られ、堆積物の起源や輸送の変化を反映していると思われる。δ30Siの変動は湧昇の強さに変化があり、珪藻によるケイ酸利用が変化していたことを物語っている。特に過去5kaにENSOが強化している。

Role of sea ice in global biogeochemical cycles: emerging views and challenges
Martin Vancoppenolle , Klaus M. Meiners , Christine Michel , Laurent Bopp , Frédéric Brabant , Gauthier Carnat , Bruno Delille , Delphine Lannuzel , Gurvan Madec , Sébastien Moreau , Jean-Louis Tison , Pier van der Merwe
海氷域の生物地球化学循環のレビュー。近年「海氷のbrine(高塩分海水)にも生物が棲息し生物活動を行っていること」「海氷が海への鉄の供給を担っていること」「海氷を介しても大気海洋でCO2が交換されていること」が報告されるなど、大きなパラダイム・シフトが生じている。近年北極域は急速に変化しており、地球システムモデル研究や古気候学研究の重要性は増している。