Main contents


☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English

2013年6月30日日曜日

気になった一文集(English ver. No. 15)

The important thing is not to stop questioning
重要なのは疑問を抱くのをやめないことだ

Albert Einstein

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Many workers at present, he says, could suffer from a form of social jet lag, forced to shuffle sleep patterns between the conflicting time zones of working and work-free days. The solution would be a profound change: restructure work and school schedules to better suit the biological clocks of the majority of the population, once we work out what they are.
近年の多くの労働者は、勤務日と休息日で逆転した睡眠パターンを余儀なくさせられており、社会的な時差ボケに苦しんでいる」と彼は言う。解決するにはかなりの変化が必要だ。かつてそうであったように、多くの人間の体内時計をうまく調整することで、仕事と学校のスケージュールを再構成する必要がある。

People in many countries get as much as two hours less sleep a night than their ancestors did a century or so ago. That must have a consequence.

多くの国の人々は、100年くらい前の祖先に比べて2時間も短い睡眠しかとっていない。それは何らかの結果を生むに違いない。

How do you sleep?」Nature 498 (27 June 2013)
効率的な睡眠とは?

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Marine scientists fear that the conditions will disrupt ecosystems by, for example, inhibiting some organisms’ ability to build shells. Yet the effects are unclear: in small-scale laboratory tests, certain species have proved surprisingly resilient, and some even flourish.
海洋科学者はそうした状態(海洋酸性化)が、ある種の生物が殻を作る能力を阻害するなどして生態系を崩壊させることを恐れている。しかしながら、その効果は不確かである。小規模の室内実験から、ある種の生物は驚くほどの耐性を示したり、場合によっては逆に栄えたりすることが証明されている。

Marine biologist Ulf Riebesell says that these results tell only part of the story: scientists need to scale up and examine whole ecosystems. Lab studies of isolated species ignore variables such as competition, predation and disease, he says. Even minor effects of acidification on the fitness of individual species — especially small photosynthetic organisms such as phytoplankton — can upset food chains, eventually harming larger species. “If you only focus on the lab results, you are being misled,” he says.

海洋生物学者のUlf Riebesellは「こうした結果は物語の一部を伝えてくれるに過ぎない」と言う。科学者は全生態系へとスケールアップして調べる必要がある。隔離した生物の室内実験では競合・補食・病気といった要因を無視していると彼は言う。海洋酸性化が個々の種(特に植物プランクトンのような小型の光合成生物)の健康状態にわずかな影響をもたらしただけでも、食物連鎖を混乱させることがあり、最終的には大型生物を害する。”もし室内実験の結果だけに注目していると、勘違いさせられる”と、彼は言う。

Floating tubes test sea-life sensitivity」Nature 498 (27 June 2013)
mesocosm実験を通して、海洋酸性化が生態系に与える影響が評価されている。

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The combined effects of local variability in acidity, temperature and human-made eutrophication or pollution may be more detrimental than for each factor alone.
酸性化、温度、人間による富栄養化あるいは汚染のローカルな変動の組み合わさった影響は個々の要因の影響よりも損害が大きいかもしれない。

To understand what future oceans might look like, marine scientists need to assess how whole ecosystems respond to rising acidity over time frames that are long enough to track generations of organisms to see which ones die or adapt.

将来の海がどうなるかを理解するためには、海洋科学者はどのようにして生態系全体が、生物が世代を通じて死ぬかそれとも適応するかを見れるほどの長い時間をかけて、時間とともに増す酸性度に応答するかを評価する必要がある。

Ocean acidification is already affecting marine ecosystems and their services to humankind. In light of the millennia it will take to reverse changes in ocean chemistry, we believe that research should be oriented towards finding solutions, rather than to simply documenting the disaster. Ultimately, only the reduction of atmospheric CO2 levels will alleviate the challenges of ocean acidification. 

海洋酸性化はすでに海洋生態系とそれが人間に与えるサービスにも影響している。海洋の化学変化を打ち消すには数千年という時間がかかることを考えると、研究は単に災害を伝えることに留まらず、むしろ解決策を模索することに向けるべきだと我々は信じている。究極的には、大気中のCO2濃度を下げることだけが海洋酸性化を軽減できるのである。

We can also buy some time through reducing human pressures such as overfishing, eutrophication and pollution.

過漁獲、富栄養化、汚染といった人間の圧力を軽減することによっても時間稼ぎをすることができる。

Get ready for ocean acidification」Nature 498 (27 June 2013)
どのようにして海洋酸性化を研究するか。

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In a discussion of the potential for immediate or near-future action to slow the growth of atmospheric CO2, we suggest that consideration of carbon dioxide removal (or other geoengineering) technologies would at best be not very relevant, and at worst could distract from the imperative of decreasing investment in energy technologies that lead to large CO2 emissions.
大気中CO2濃度の増加を遅らせる中期的・短期的未来に向けた行動の可能性という議論において、大気中のCO2捕獲(或いはその他の地球工学)技術を考えることはものすごく意味のあることではないだろうと思われる。むしろより多くのCO2排出へと繋がるエネルギー技術への投資を減少させるという喫緊の課題から気をそらすことになりかねない。

Reversing Excess Atmospheric CO2—Response」Science 340 (28 June 2013)
大気中CO2濃度をどのように減らすかの立場の違い。ある研究者はアグレッシブな自然への介入を、またある研究者は介入なしに排出量を減らすこと(中道)を考えている。

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But in total, Antarctic ice shelves lost 2,921 trillion pounds (1,325 trillion kilograms) of ice per year in 2003-2008 through basal melt, while iceberg formation accounted for 2,400 trillion pounds (1,089 trillion kilograms) of mass loss each year.

Basal melt can have a greater impact on ocean circulation than glacier calving. Icebergs slowly release melt water as they drift away from the continent. But strong melting near deep grounding lines, where glaciers lose their grip on the seafloor and start floating as ice shelves, discharges large quantities of fresher, lighter water near the Antarctic coast line. This lower-density water does not mix and sink as readily as colder, saltier water, and may be changing the rate of bottom water renewal.


Warm Ocean, Not Icebergs, Causing Most of Antarctic Ice Shelves' Mass Loss」NASA news (June 13, 2013)
南極の棚氷がどのように融けているか。

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Focusing on the average is not always useful. If rainfall comes in a spell and is followed by a drought, this can be devastating even if the average is normal.

Ups-and-downs of Indian Monsoon Rainfall Likely to Increase Under Warming」Science Newsline (June 20, 2013)

モンスーンの降水の変化と社会経済的な影響。

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Such long-term perspectives are not only scientifically interesting and important, they also raise new ethical questions, simply because human beings are now in the picture. Our carbon emissions will influence countless generations, as well as many species other than our own, in future versions of the world that will differ markedly from the one we know now.

Whichever emissions scenario we choose-be it moderate or extreme-one thing is now clear. Our influence on the climatic future of the world is geological in scope. Little wonder, then, that many scientists are now referring to our chapter of Earth history with a term coined by ecologist Eugene Stoermer-the "Anthropocene Epoch" or the "Age of Humans"

What Happens AFTER Global Warming?」Stager, 2012, Nature Education Knowledge
未来のある時点でCO2をピークカットした際に、地質学時代で何が起きるか、またそれをめぐる世代間の倫理問題に関して。

新着論文(Ngeo#July2013)

Nature Geoscience
July 2013, Volume 6 No 7 pp505-584

Focus issue 'Bombardment of the early Solar System(初期太陽系の爆撃)'
※後ほどupします

Correspondence
Air quality by urban design
都市デザインによる空気の質
Yunwei Zhang & Zhaolin Gu
近年、中国のような大都市での大気汚染が問題視されている。大気汚染の原因物質は工場からの排出、乗り物、料理や暖などからもたらされるが、それは都市のデザインによっても大きく影響されている。例えば、高層ビル群は風の妨げとなることで汚染物質が拡散するのを妨げたりしている。そうした都市のレイアウトを工夫することで大気汚染を軽減できる。

Commentaries
China's carbon conundrum
中国の炭素の難問
Ye Qi, Tong Wu, Jiankun He & David A. King
中国の炭素排出量は急速に増加している。しかし、一人当たりのGDPやエネルギー消費量はアメリカに比べてほんのわずかに過ぎない。都市部の中流階級が増加するにつれ、排出量は増加している。しかしながら、低炭素経済に向けた改善も見られている。

In the press
Lost city found?
失われた都市が見つかった?
Nicola Jones
航空機のレーザー観測から、カリブ海に面したMosquitiaに失われた都市(Ciudad Blanca)が存在する可能性が指摘されている。

Research Highlights
Isoprene and agriculture
イソプレンと農業
Atmos. Chem. Phys. 13, 5451–5472 (2013)
食料とバイオ燃料への需要増加によって、森林や草原が農地へと変化している。数値モデルを用いてそうした土地利用の変化が植物によるイソプレン排出量に与える影響を評価したところ、北半球におけるバイオ燃料栽培の増加がイソプレンの排出量を増加させ、逆にブラジルやアフリカのサハラ地域においては森林や草原が農地に変わることでイソプレンの排出量が低下していることが分かった。打ち消し合いの結果、全球的にイソプレンの濃度が対流圏オゾンの生成量に与える影響は小さいものの、ローカルなレベルでは(北米・中国・アジアなど)大きいことが示された。

High turnover
高い回転率
Geology http://doi.org/md8 (2013)
西オーストラリアで得られた岩石のジルコンとトリウムの濃度、さらに世界中の岩石のジルコン中のδ18Oから過去の大陸地殻のリサイクルを評価したところ、およそ30億年前にリサイクルの間接指標の値が増加し始めたことが示された。さらにピークが11-12億年前に見られ、超大陸Rodiniaの集合時期と一致している。当時はテクトニックプレートは既に巨大になっていたが、マントルはより高温で、対流がより早かったと考えられている。そのため大陸衝突とリサイクルの速度も増加していたと思われる。その後マントルが冷えたことで、プレートの衝突が制限されたのではないかと考えられる。

Sea-ice effects
海氷効果
Palaeogeog. Palaeoclim. Palaeocean.
Pliocene(鮮新世)の温暖期には北極圏の気温は10-12℃高く、極増幅によって全球平均気温(2〜4℃高かった)よりもはるかに高かったと考えられている。大気海洋循環モデルを用いてPlioceneの北極圏の気温と北極海の海氷とを再現したところ、北極海に海氷がない状況では、北半球高緯度域の気温の復元結果と整合的であることが示された。また北極圏の気温の季節変動も減少し、いくつかの記録と整合的となった。
>話題の論文
The amplification of Arctic terrestrial surface temperatures by reduced sea-ice extent during the Pliocene
Ashley P. Ballantyne, Yarrow Axford, Gifford H. Miller, Bette L. Otto-Bliesner, Nan Rosenbloom, James W.C. White

Core merger
コアの合併
Icarus 226, 20–32 (2013)
火星においては誕生から5億年以内にジャイアント・インパクトがあったと考えられており、その時の衝突天体と火星のコアとが合併したと考えられている。その際に熱的な傾きが生じたことで、短期間のコアのダイナモが生じた可能性がある。数値モデルを用いたシミュレーションから、コアの合併は衝突から100万年後に生じ、その際の熱の混合によってコアマントル境界をまたぐ熱フラックスが増加したと考えられる。熱フラックスはさらに1億年に渡ってダイナモを駆動したのではないかと考えられる。

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Research
News and Views
Core processes: Earth's inner weakness
コアプロセス:地球の内部の弱さ
Sébastien Merkel
Gleason & Maoの解説記事。
コアを通過する地震波の解析から、固体の内核の内部で鉄の結晶が並んでいることが示唆される。高温高圧実験から、内核は従来考えられていたよりも弱く、簡単に鉄の結晶が変形することが可能であることが示唆されている。

Marine biogeochemistry: The ups and downs of ocean oxygen
海洋生物地球化学:海洋の酸素の上下動
Scott C. Doney & Deborah K. Steinberg
Bianchi et al.の解説記事。
海洋の小動物の鉛直運動は有機炭素を表層から深層へと運ぶ役割を担っている。音響データの解析から、そうした鉛直運動が海洋全体で深部の酸素濃度と強く関係していることが明らかに。

Deep Earth: Mantle fabric unravelled?
地球深部:マントルの繊維が明らかに?
John Hernlund
Dobson et al.の解説記事。
マントルの流れのパターンは鉱物の並びから復元することができるかもしれない。高温・高圧実験から、高圧状態のポスト-ペロブスカイト(post-perovskite)はより低圧側から構造を引き継ぐことができることが明らかに。地球最深部の流れを解釈するのに新たな手段になるかもしれない。

Palaeoclimate: The mummies' tale
古気候:ミイラの物語
Alicia Newton
ナイル川の流量は約5,000年前頃から流域に栄えたエジプト文明の盛衰をも左右した。5.0-4.4kaには歴史記録が残っているが、それ以外の期間には限られているため、間接記録から流量の復元をする必要がある。動物の骨や歯といったリン酸塩鉱物のδ18Oはそれらが飲んでいた水、さらには降水のδ18Oを反映していると思われ、河川流量の復元に使える可能性がある。フランスに保管されているエジプト文明のミイラの歯のδ18Oから、6.0ka-1.3kaの古環境と当時の人々の暮らしの復元がなされた。気温(最大2℃上昇)と降水量(最大140mm低下)は大きく変化していたと思われる。また87/86Srの分析から、当時48人に1人くらいしかナイル川流域を長距離移動しなかったことなどが明らかになった。
>話題の論文
Egyptian mummies record increasing aridity in the Nile valley from 5500 to 1500 yr before present
Alexandra Touzeau, Janne Blichert-Toft, Romain Amiot, François Fourel, François Martineau, Jenefer Cockitt, Keith Hall, Jean-Pierre Flandrois, Christophe Lécuyer
Earth and Planetary Science Letters, in press

Atmospheric science: Aerosol alteration of Atlantic storms
大気科学:エアロゾルが大西洋の嵐を変える
Johannes Quaas
Dunstone et al.の解説記事。
大気中のエアロゾルは太陽光を散乱・吸収あるいは雲を変えることを通して気候にも影響する。モデルシミュレーションから、20世紀のほとんどを通して、人為起源のエアロゾルが大西洋全体で熱帯域の嵐の活動度を抑制されていたことが示唆される。
>関連した記事(Nature "RESEARCH HIGHLIGHTS")
Aerosols suppress hurricanes
エアロゾルがハリケーンを抑える
Nature Geosci. http://dx.doi. org/10.1038/ngeo1854 (2013)
ダスト粒子がハリケーンの活動度に与える影響は知られているものの、人為起源のエアロゾルが与える影響はよく分かっていない。イギリス・ハドレーセンターの研究グループによるモデルシミュレーションから、20世紀前半に人為起源のエアロゾル排出量が急増したことで、大西洋の嵐の活動度が減少し、また20世紀後半に排出量が減少したことで逆に増加したことが示された。雲を介したフィードバックが原因と考えられている(エアロゾル強化→雲が明るく+滞留時間が長くなる→地表温度低下→ハリケーン弱化)。

Letters
Atmospheric dynamics of Saturn’s 2010 giant storm
土星の2010年の嵐の大気力学
E. García-Melendo, R. Hueso, A. Sánchez-Lavega, J. Legarreta, T. del Río-Gaztelurrutia, S. Pérez-Hoyos & J. F. Sanz-Requena
2010-2011年にかけて土星の大気に巨大白班(Great White Spot)が出現した。東西方向に広がる、長さ数千キロメートルの巨大嵐だと考えられている。観測衛星の画像データと数値モデリングから、嵐の先頭(storm head)は土星大気の東西方向の流れの中の対流活動によってエネルギーを得ていることが示された。

Degradation of terrestrially derived macromolecules in the Amazon River
アマゾン川内部における陸源の巨大分子の分解
Nicholas D. Ward, Richard G. Keil, Patricia M. Medeiros, Daimio C. Brito, Alan C. Cunha, Thorsten Dittmar, Patricia L. Yager, Alex V. Krusche & Jeffrey E. Richey
 温帯域・亜熱帯域を流れる河川は大気へと大量のCO2を放出しているが、それを可能にする河川水中の有機物の起源はあまりよく分かっていない。リグニンやセルロースが巨大分子の大半を担っているものの、これらは安定で簡単には分解しないと考えられている。
 アマゾン川の懸濁粒子の有機物分析から、陸源のリグニンと他の巨大分子の分解がCO2の脱ガスに大きく貢献していることが明らかに(30-50%)。

Anthropogenic aerosol forcing of Atlantic tropical storms
大西洋の熱帯低気圧の人為起源のフォーシング
N. J. Dunstone, D. M. Smith, B. B. B. Booth, L. Hermanson & R. Eade
 大西洋の熱帯低気圧(ハリケーン)は社会経済的に大きな影響を与えている。海表面温度との関連性は報告されているものの、その他の自然・人為起源のフォーシング(火山性エアロゾル・人為起源エアロゾル・ダスト・温室効果ガスなど)との関係性についてはまだよく分かっていない。
 気候モデルを用いて、個々の気候ドライバーが1860-2050年までの北大西洋の熱帯低気圧の頻度に与える影響を評価したところ、人為起源のエアロゾルが頻度を低下させていることが示された。20世紀末に急激にエアロゾル排出量が低下したことが頻度の増加を招いたことが分かった。エアロゾルがハドレー循環に影響することで嵐の頻度に影響したと考えられるが、将来もエアロゾル排出量とともに変化すると思われる。
>Nature 関連誌注目のハイライト
北大西洋の暴風のエアロゾルによる抑制

A combination mode of the annual cycle and the El Niño/Southern Oscillation
年周期とエルニーニョ・南方振動の組み合わさったモード
Malte F. Stuecker, Axel Timmermann, Fei-Fei Jin, Shayne McGregor & Hong-Li Ren
エルニーニョは通常冬から始まるが、何故季節変動がENSOと関連しているのかはよく分かっていない。観測記録と気候モデルを用いた実験から、SSTの季節変動と年々変動とが非線形に繋がった結果、10-15月という周期を持った気候モードが生まれることが示された。特に、北半球の冬と春の偏西風の南方へのアノマリが大きなエルニーニョ現象のきっかけとなっていることが分かった。

Intensification of open-ocean oxygen depletion by vertically migrating animals
鉛直移動する動物による外洋の酸素極小の強化
Daniele Bianchi, Eric D. Galbraith, David A. Carozza, K. A. S. Mislan & Charles A. Stock
外洋では、日中無数の小動物(動物プランクトンなど)が捕食者を避けて深部へと移動している。ドップラー・プロファイラーを用いた後方散乱のデータ解析から、そうした鉛直移動が酸素極小層の酸素濃度の減少を強化していることが明らかに。
>Nature 関連誌注目のハイライト
海洋動物の移動が海洋酸素損失を増大させる

Contribution of ice sheet and mountain glacier melt to recent sea level rise
近年の海水準上昇に対する氷床と山岳氷河の寄与
J. L. Chen, C. R. Wilson & B. D. Tapley
海面の高度観測から、2005年から2011年にかけて年間2.4mmの割合で海水準が上昇していることが示されている。しかし、海洋の熱膨張と質量増加がどの割合で寄与しているのかについてはよく分かっていない。Argoによる海水温観測記録と人工衛星GRACEによる重力観測記録から、観測されている海水準上昇のうち、75%が質量増加(氷床と山岳氷河の融解)であることが示された。

Barbados-based estimate of ice volume at Last Glacial Maximum affected by subducted plate
沈み込むプレートによって影響されるバルバドスに基づいた最終氷期極大期の氷床量の推定値
Jacqueline Austermann, Jerry X. Mitrovica, Konstantin Latychev & Glenn A. Milne
 赤道大西洋のバルバドスから得られたサンゴ記録によって、最終氷期極大期の全球の平均的な海水準(eustatic sea level)は現在よりも120m低かったと推定された。しかし、この記録は他のfar fieldの記録よりも10mほど小さく見積もられていた。
 同地域のマントルの3Dシミュレーションから、この推定値はSouth AmericanプレートのCaribbeanプレートへの沈み込んだ際の高粘性のスラブの存在によってややバイアスを受けており、新たな推定値は130mであることが示された。南極の氷床量の寄与が従来考えられていたよりも小さかったとする先行研究が正しいとすると、北半球の氷床がより大きかったということになる。
>Nature 関連誌注目のハイライト
最終氷期極大期の海水面

Atlantic cooling associated with a marine biotic crisis during the mid-Cretaceous period
白亜紀中における海洋生物危機を伴う大西洋の寒冷化
A. McAnena, S. Flögel, P. Hofmann, J. O. Herrle, A. Griesand, J. Pross, H. M. Talbot, J. Rethemeyer, K. Wallmann & T. Wagner
白亜紀の温暖期は何度かの寒冷化を経験した。海洋堆積物の分析とモデルシミュレーションから、116-114Maの浮遊性有孔虫と石灰質ナノプランクトンの一種(nannoconids)の減少が海表面温度の寒冷化と関連していたことが示唆される。

Noble gas transport into the mantle facilitated by high solubility in amphibole
角閃石の高い溶解度に手助けされるマントルへの希ガス輸送
Colin R. M. Jackson, Stephen W. Parman, Simon P. Kelley & Reid F. Cooper
大気とマントル間の希ガスのリサイクルについてはよく分かっていない。高圧実験から、変成した海底地殻中の水和鉱物に対して希ガスが高い溶解度を持っていることが示された。海底地殻の沈み込みが希ガスがマントルへと戻る上で重要だと考えられる。

Episodic fault creep events in California controlled by shallow frictional heterogeneity
浅い摩擦の不均質性によってコントロールされるカリフォルニアの段階的な断層クリープ現象
Meng Wei, Yoshihiro Kaneko, Yajing Liu & Jeffrey J. McGuire

Strength of iron at core pressures and evidence for a weak Earth’s inner core
コアの圧力での鉄の強度と地球の内核の弱さの証拠
A. E. Gleason & W. L. Mao

Strong inheritance of texture between perovskite and post-perovskite in the D′′ layer
D"層におけるペロブスカイトとポスト・ペロブスカイトの間の構造の強い引き継ぎ
David P. Dobson, Nobuyosihi Miyajima, Fabrizio Nestola, Matteo Alvaro, Nicola Casati, Christian Liebske, Ian G. Wood & Andrew M. Walker

Article
The acceleration of oceanic denitrification during deglacial warming
最終退氷期の温暖化における海洋脱窒の加速
Eric D. Galbraith, Markus Kienast & The NICOPP working group members
海洋表層の一次生産は生物が利用可能な窒素の量によって制限されている。海洋堆積物のδ15N記録は最終退氷期に窒素循環が変化したことを示しているものの、窒素循環における窒素同位体が複雑な挙動を示すことから、その定量的なメカニズムはよく分かっていない。2,329地点のコアトップ記録と過去30kaをカバーする76の堆積物コア記録から、最終氷期でも完新世初期でもδ15Nは全球平均でほとんど変化していなかったことが示された。大陸棚が海水準上昇によって浸水したことで、海底の脱窒が増加し、やがて海水準の安定とともに窒素循環も安定化したと考えられる。δ15Nが2つの安定状態で変化しなかったことを説明するためには、外洋の脱窒が30-120%増加していたことになる。

Macの起動音を小さくする

いつもMacを起動するときに、なんで起動音が大きいんだろう…と思ってたら、イヤホンの音量だけに注目してたからだったんですね…

チラシの裏のアレ: Macの起動音を小さくする:
【症状】 いつのまにか起動音(ジョワーン)が最大になっていてのけぞる。
 【原因】 内蔵スピーカーの音量=起動音の音量になっている。ヘッドフォンをMacに直接繋いだ場合に、内蔵スピーカーの音量を上げ、その後下げることを忘れがち
 【対応】 サウンドコントロールパネルで内蔵スピーカーの音を下げる。

2013年6月29日土曜日

新着論文(NCC#July2013)

Nature Climate Change
Volume 3 Number 7 (July 2013)

Editorial
Having an impact
インパクトを持つ
Nature Climate Change誌のインパクト・ファクターに関して。

Correspondence
Anthropogenic CO2 emissions
人為起源のCO2排出
M. R. Raupach, C. Le Quéré, G. P. Peters & J. G. Canadell
Francey et al.は大気のCO2観測記録から1994-2007年の排出量が過小評価されていると主張しているが、それは非現実な仮定に基づいた上での結論である。
>話題の論文
Atmospheric verification of anthropogenic CO2 emission trends
人為起源のCO2排出の傾向の大気的な証拠
Roger J. Francey, Cathy M. Trudinger, Marcel van der Schoot, Rachel M. Law, Paul B. Krummel, Ray L. Langenfelds, L. Paul Steele, Colin E. Allison, Ann R. Stavert, Robert J. Andres & Christian Rödenbeck
Nature Climate Change 3, 520-524 (2013).
地球温暖化と海洋酸性化を制限する国際的な努力は大気中のCO2濃度の上昇速度を遅くすることを目的としている。大気観測から2010年にアジア地域のCO2排出が急増したこと、2002-2003年には排出速度が鈍化したことを示す。

Reply to 'Anthropogenic CO2 emissions'
'人為起源のCO2排出'に対する返答
Roger J. Francey, Cathy M. Trudinger, Marcel van der Schoot, Rachel M. Law, Paul B. Krummel, Ray L. Langenfelds, L. Paul Steele, Colin E. Allison, Ann R. Stavert, Robert J. Andres & Christian Rödenbeck
Raupach et al.に対する返答。

Threats to coastal aquifers
沿岸部の帯水層への脅威
Chunhui Lu, Adrian D. Werner & Craig T. Simmons
Ferguson and Gleesonは沿岸部の帯水層への影響は海水準よりも人間による地下水揚水であると結論づけているが、それはまだ時期尚早である。
>話題の論文
Vulnerability of coastal aquifers to groundwater use and climate change
地下水利用と気候変化に対する沿岸帯水層の脆弱性
Grant Ferguson & Tom Gleeson
Nature Climate Change 2, 342–345 (2012).
気候変動と人口増加が地下水資源に大きな影響を与えると考えられている。海水準上昇及び地下水の過度な使用は沿岸地域の氾濫と地下水資源への塩害をもたらし、既に帯水層に悪影響をもたらし始めている。それぞれの影響を定量化することはこれまでされてこなかったが、我々の研究から帯水層は海水準上昇よりも地下水の過度な利用の方に影響されることが示された。従って、海水準上昇に対する適応のみを考えている水資源管理の施策は誤りだ。

Reply to 'Threats to coastal aquifers'
'沿岸部の帯水層への脅威'に対する返答

Grant Ferguson & Tom Gleeson
Lu et al.に対する返答。

Blood product safety
血液製品の安全性
Mitchell Berge

Commentaries
Managing risk with climate vulnerability science
気候に対する脆弱性の科学とともにリスクを管理する
Paul C. Stern, Kristie L. Ebi, Robin Leichenko, Richard Stuart Olson, John D. Steinbruner & Robert Lempert
気候に関する情報だけでは気候変動の影響を予測し軽減するには不十分である。破壊的である可能性のある現象に対する社会の耐性を増やすための、先を見越した効果的な努力を援助するためにも、ローカルな・グローバルなモニタリングを含む、脆弱性の科学を促進することが必要である。

Fostering knowledge networks for climate adaptation
気候変動に対する適応に関する知識ネットワークを育てる
David Bidwell, Thomas Dietz & Donald Scavia
気候変化のリスクに対して効果的に適応する必要があることを社会に学んでもらうためにも、急速に変化する政策決定者-研究者間のネットワークを築く必要がある。

Mitigation win–win
双方にとって好都合な緩和策
Dominic Moran, Amanda Lucas & Andrew Barnes
農業界の気候変化緩和策に関する双方にとって好都合なメッセージ(Win–win messages)は農業経営者のモチベーションを簡略化しすぎている傾向がある。心理学・文化史・行動経済学がより効果的な政策デザインの手助けになるに違いない。

Policy Watch
EU adaptation policy sputters and starts
EUの適応策が早口でしゃべり、そして始まる
「ヨーロッパ連合の新たな気候変化適応戦略は長く、でこぼこした道のりである」と、Sonja van Renssenは報告する。

Research Highlights
Hot, dry and greening
厚く、乾燥した、緑化
Geophys. Res. Lett. http://doi.org/mqx (2013)
 大気中CO2濃度の増加は光合成の促進などを介した植物への直接的な影響と、気候変化を介した間接的な影響がある。CO2による施肥効果は実験室と野外調査の両方で確認されており、さらには近年の人工衛星観測からはここ数十年間の全球的な緑化の傾向が見られており、施肥効果が生じるという予想と合っている。
 施肥効果がもっとも顕著に出ると思われる暑く乾燥した地域の植生を対象にした解析から、大気中のCO2濃度の上昇は5-10%の緑化につながることが予想された。降水量の変動が取り除かれた場合、11%になるらしい。こうした結果は、CO2の施肥効果が地表プロセスに重大な影響を与えることを物語っている。
>話題の論文
Impact of CO2 fertilization on maximum foliage cover across the globe's warm, arid environments
Randall J. Donohue, Michael L. Roderick, Tim R. McVicar, Graham D. Farquhar

The devil’s in the detail
悪魔は細部に宿る
Ecol. Lett. http://doi.org/msf (2013)
 気候変化に対する生態系の応答は、全球的な・地域的な変化の上に合わさった、極めてローカルな気象・気候の影響に支配されると思われる。そのため、高解像度の気候モデルによって変化予測を行うことが重要である。
 イギリスに生息するチョウ(Hesperia comma)に対する影響を分析したところ、微気候(microclimate)の影響を考慮した方がチョウの動態をうまく再現できることが分かった。

Weather and climate
気象と気候
Clim. Dynam. http://dx.doi.org/msg (2013)
気候変化は日々の気象の変化という短い時間スケール(1日ごと)でも考慮されるべきであるが、現状気候モデルでは数年や数十年の気候の平均場の予測をするに留まっている。韓国の研究グループはCMIP5の気候変化予測結果をもとに21世紀の日々の気象変化の解析を行った。高緯度域の冬は気温が低下し、風が弱まるという予測結果が得られた。北半球全体で春の風は弱まり、中緯度の春と冬の降水量は増加するという予測も抽出された。

Thirsty biofuels
喉が渇くバイオ燃料
Environ. Sci. Technol. 47, 6030–6037 (2013)
 2012年には20年間でもっとも厳しい干ばつがアメリカを襲った。その結果トウモロコシの生産量は12%減少した。こうしたことは、バイオ燃料用作物が異常気象に対して脆弱であるという、政策上の問題を浮き彫りにした。
 将来40年間にわたって気候変化がバイオ燃料用の灌漑トウモロコシ栽培の水需要に与える影響を評価したところ、Energy Independency and Security Actに沿うために必要なバイオ燃料栽培を行う際に必要な蒸発性の水消費(evaporative water consumption)が10%増加し、灌漑用の水消費(irrigation water consumption)が19%増加することが示された。水需要が完全に満たされたとしてもトウモロコシの生産量は平均的に減少することが示された。この結果は、アメリカにおけるバイオ燃料政策を見直す必要があることを物語っている。

Relocation hurdles
引っ越しの障壁
Proc. Natl Acad. Sci. USA 110, 9320–9325 (2013)
 沿岸部に住む人々は気候変化による頻繁な異常気象の脅威にさらされている。適応策のもっとも極端なケースがコミュニティー全体の引っ越し(relocation)である。
 アラスカ大学の研究グループによって、気候変化による沿岸部浸食、異常気象などによって引っ越しの必要性に迫られているアラスカの原住民コミュニティー(Kivalina, Shishmaref, Newtok)が抱える問題が評価された。KivalinaShishmarefの場合、引っ越し先の場所選択に対する明確なガイドラインが用意されていないことが引っ越しの最大の障壁となっていることが分かった。またNewtokの場合、資金的な援助を行う機関が存在しないことが問題となっていることが分かった。引っ越しを実行するためのガバナンスと組織的枠組みが必要とされている。
>話題の論文
Adaptive governance and institutional strategies for climate-induced community relocations in Alaska
Robin Bronen and F. Stuart Chapin III

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Research
News and Views
Public opinion: Stunted policy support
公共意見:阻止された政策支援
James N. Druckman
’気候変化’、’代替エネルギー使用’、’政策への責任(responsibility for policy)’のテーマに関しては、エネルギー政策は広く議論されている。新たな研究によって、エネルギー政策に関する公の議論における市民の役割が重要であること、それが政策をどれほど左右するものであるかが明らかに。

Oceanography: Has global warming stalled?
海洋学:地球温暖化は減速したのだろうか?
Doug Smith
急速な温暖化に見舞われた1970年代に比べれば、最近の温暖化は失速したように見える。海洋上層部における熱の吸収を分析した研究により、その原因が浮き彫りになり、さらに失速は以前から予測できていたことが示唆されている。
Virginie Guemas et al.の解説記事。

Atmospheric Science: Volcanic rain shift
大気科学:火山による雨のシフト
Yochanan Kushnir
成層圏におけるダスト粒子の分布が熱帯の降水帯の位置に影響する。そうした現象を含むあらゆる可能性は、(粒子を成層圏に注入する)地球工学技術が実行される前に考慮されるべきである。
Jim M. Haywood et al.の解説記事。

Perspectives
Integrated analysis of climate change, land-use, energy and water strategies
気候変化、土地利用、エネルギー、水戦略の統合的な分析
Mark Howells, Sebastian Hermann, Manuel Welsch, Morgan Bazilian, Rebecka Segerström, Thomas Alfstad, Dolf Gielen, Holger Rogner, Guenther Fischer, Harrij van Velthuizen, David Wiberg, Charles Young, R. Alexander Roehrl, Alexander Mueller, Pasquale Steduto & Indoomatee Ramma
土地・エネルギー・水利用は気候変化に影響し、逆に気候変化はそれらの資源をもたらす地球システムに影響する。効率的な資源管理が気候変化を緩和し、適応行動を援助すると思われる。資源アセスメントと政策決定を統合する新たなアプローチを提案。

Characteristics of low-carbon data centres
低炭素データセンターの特徴
Eric Masanet, Arman Shehabi & Jonathan Koomey
IT機器類とデータセンター業務の効率が改善することを仮定すると、ITサービスをより使うことで炭素排出量を軽減することができると思われる。しかし、炭素排出を最小化ことを目的としたデータセンターに報いるための信頼のおける尺度はまだ欠けている。低炭素データセンターの特徴とその実効性を支配する要因についての視点を提供する。

Building resilience to face recurring environmental crisis in African Sahel
アフリカのサヘル地帯で循環する環境危機に立ち向かうための強さを作る
Emily Boyd, Rosalind J. Cornforth, Peter J. Lamb, Aondover Tarhule, M. Issa Lélé & Alan Brouder
大規模な危機に繋がりかねない気候ショックを吸収するためにも、先を見据えた政策決定が常に気候情報にアクセスできることは重要である。Rainwatchの価値は2011年の西アフリカモンスーンの失敗のときに浮き彫りになった。
※Rainwatch…地元住民と密着したGISを使った雨の観測プロジェクト
>関連した記事(NOAA)
Rainwatch keeps eye on rainfall for West African farmers
May 12, 2011

Letters
Effects of climate change on US grain transport
アメリカの穀物輸送に対する気候変化の影響
Witsanu Attavanich, Bruce A. McCarl, Zafarbek Ahmedov, Stephen W. Fuller & Dmitry V. Vedenov
気候変化によって穀物の割合が変わることで、輸送システムにも変更が生じると思われる。アメリカにおいて、それがミシシッピ川下流域の港の重要性を下げる一方で、太平洋側の北西部・五大湖・大西洋側の重要性を上げることが示された。

Intensification of winter transatlantic aviation turbulence in response to climate change
気候変化に応答した冬期の大西洋横断航路の乱気流の強化
Paul D. Williams & Manoj M. Joshi
ほとんどの気象関連の航空機事故は乱気流によって生じている。しかしながら、それが気候変化ともにどう変化するかはよく分かっていない。気候モデルシミュレーションから、CO2濃度が2倍になることで、晴天乱気流に変化が生じ、大西洋横断航路に大きな影響が出ることが分かった。今世紀中頃には航行中の揺れが大きくなると思われる。

Retrospective prediction of the global warming slowdown in the past decade
過去10年間の温暖化の鈍化に対する回想的な予測
Virginie Guemas, Francisco J. Doblas-Reyes, Isabel Andreu-Burillo & Muhammad Asif
 近年(2000-2010年)、温室効果ガスの排出量は増加しているにもかかわらず、温暖化の進行が頭打ちになっている。海の熱吸収量の増加・太陽活動の弱化が長く続いていいること・成層圏の水蒸気・成層圏と対流圏のエアロゾルなどの要因が影響していると考えられているものの、まだはっきりと分かっていない。
 過去になされた5年先の予測シミュレーションから、それが海洋内部の熱吸収量が増加したことが原因であることが示された。大気上層から入ってくるエネルギー量は一定のため、過剰の熱の大半は海洋の700mよりも浅い部分に吸収されており、またうち65%は赤道太平洋・大西洋に吸収されたと考えられる。ハインドキャストによってこの鈍化が再現されたことから、気候モデルの厳密性を強めるものとなっただけでなく、さらに社会経済的に見ても10年予測は重要であることを示す結果となった。
>関連した論文
Distinctive climate signals in reanalysis of global ocean heat content
全球の海洋の熱容量の再解析における際立った気候シグナル
Magdalena A. Balmaseda, Kevin E. Trenberth, Erland Källén
Geophys. Res. Lett. 10.1002/grl.50382 (2013).
1958年〜2009年にかけての海水温の観測をもとに、温暖化の傾向と2004年以降の表層水の温暖化の停止(warming hiatus)の原因を評価。ここ10年間は700mよりも深い部分で温暖化が起きており、風の変化に伴う海洋鉛直構造の変化が原因と考えられる。
※コメント
海が吸収という意味では一致していますが、海のどこに熱が吸収されたのかについては2つの論文で食い違っています。

Upper bounds on twenty-first-century Antarctic ice loss assessed using a probabilistic framework
確率的な枠組みに基づいた21世紀の南極氷床の質量損失の上限値
Christopher M. Little, Michael Oppenheimer & Nathan M. Urban
 半経験的手法(semi-empirical methods)と専門家が考える質量収支シナリオ(expert-informed mass-balance scenarios)に基づくと、将来の海水準上昇はIPCC AR4の予測よりも3倍ほど大きいことが示されている。しかしながら、長期的な氷床の挙動がよく分かっておらず、温暖化によって海水準がどれほど上昇するかを推定することは依然として難しい。
 数値モデルの予測結果と観測記録とを組み合わせて、ベイズ確率に基づいて南極氷床の質量収支を見積もったところ、急激な崩壊がなかったとすると、95%の確率で2100年までに13cm海水準を上昇させるほどの氷が失われると考えられる。この数値は以前の上限値の予測よりも低いものとなっている。ただし、急激な崩壊がないという仮定そのものが予測結果に大きく影響し、今後の課題でもある。

Asymmetric forcing from stratospheric aerosols impacts Sahelian rainfall
成層圏エアロゾルからの非対称なフォーシングがサヘル地域の降水に影響する
Jim M. Haywood, Andy Jones, Nicolas Bellouin & David Stephenson
 1970年代から1990年代にかけてのサヘル地域の干ばつは過去50年間で最悪の災害と言われ、25万人が死亡し、1000万人の難民が出た。過放牧や人為起源の二酸化硫黄排出が大西洋の海水温やサヘル地域の降水に影響したと考えられている。
 1900-2010年における観測記録から、さらに火山噴火の影響も大きな影響を与えていたことを示す。4つの大きな干ばつのうち、3つは北半球における大きな火山噴火のあとに起きていた。さらに、モデルシミュレーションから、地球工学や火山噴火によって成層圏にエアロゾルを注入した場合、北半球だけに注入するとサヘル地域が乾燥化するが、南半球だけに注入すると逆にサヘル地域が湿潤化することが示された。太陽放射管理(SRM)を実行する前に、気候変化に脆弱な地域に対して影響評価をすることが肝要であると思われる。

Multiple greenhouse-gas feedbacks from the land biosphere under future climate change scenarios
将来の気候変化シナリオの下での陸上生物圏からの複数の温室効果フィードバック
Benjamin D. Stocker, Raphael Roth, Fortunat Joos, Renato Spahni, Marco Steinacher, Soenke Zaehle, Lex Bouwman, Xu-Ri & Iain Colin Prentice
 気候変化に対する陸上生物圏のフィードバックは、温室効果ガス(CO2・CH4・N2Oなど)排出を変化させ、温暖化をさらに加速させる可能性を秘めている。
 process-basedのモデルシミュレーションを用いて土地利用の変化と活性度の高い窒素(reactive nitrogen)が温室効果ガスとフィードバックに与える影響を評価。business-as-usualシナリオの下では、2100年にはN2OとCH4の排出がそれぞれ80%、45%増加することが示された。さらに陸上生物圏が炭素の’放出源’になることも示された。陸上生物圏の変化は温暖化の正のフィードバックを増幅し、気候感度を22-27%増加させると予想される。温室効果ガス削減に対する強い規制が必要とされている。

Shifts in Arctic vegetation and associated feedbacks under climate change
気候変化の下での北極圏の植生のシフトとそれに伴うフィードバック
Richard G. Pearson, Steven J. Phillips, Michael M. Loranty, Pieter S. A. Beck, Theodoros Damoulas, Sarah J. Knight & Scott J. Goetz
 温暖化が北極圏の植生の競合・密度・分布に影響している。そうした変化が生物圏・大気間のフィードバックに相反するフィードバックをもたらすと考えられるが、北極圏全体でお互いの寄与がどれほどかはよく分かっていない。植生の変化は気候にも影響すると思われるため、その正確な予測は重要である。
 2050年代を対象にしたモデルシミュレーションから、少なくとも植生の半分は全く異なるものへと変化し、森林被覆が52%も増加することが示された。その変化はアルベド・蒸発散・バイオマスの変化を通じて温暖化を増幅させ、その大きさは従来の見積もりよりも大きいと考えられる。また植生の変化は生態系へも大きく影響する。

Quantifying the benefit of early climate change mitigation in avoiding biodiversity loss
生物多様性の消失を避けるための初期の気候変化緩和の恩恵を定量化する
R. Warren, J. VanDerWal, J. Price, J. A. Welbergen, I. Atkinson, J. Ramirez-Villegas, T. J. Osborn, A. Jarvis, L. P. Shoo, S. E. Williams & J. Lowe
気候変化は生物多様性に大きく影響すると思われるが、気候変化緩和戦略がそうした影響をどれほど軽減できるかはよく分かっていない。一般的で広く分布する生物を対象にしたモデルシミュレーションから、緩和策によって排出量が2016年以降減少に転じれば60%、2030年以降減少に転じれば40%、生物多様性の消失を減らすことができることが示された。

Spatial community shift from hard to soft corals in acidified water
酸性化した海水におけるイシサンゴからソフトコーラルへの空間的な集団シフト
Shihori Inoue, Hajime Kayanne, Shoji Yamamoto & Haruko Kurihara
 海洋酸性化によってサンゴ礁における石灰化量が低下し、非石灰化生物である大型藻類へのシフトが起きると考えられているものの、その他の生物へのシフトの可能性については注意が払われていない。
 硫黄鳥島の火山性CO2による酸性化が起きている海域の調査から、イシサンゴがCO2分圧が225μatmの海水中には分布しているものの、831μatmの海水中ではソフトコーラル(Sarcophyton elegans)が支配的になり、さらに1,465μatmではさらにソフトコーラルも不在になることが分かった。酸性化実験から、S. elegansの光合成量が活発化すること、夜間の反石灰化(decalcification)が増加することが分かった。従って、これらの結果はイシサンゴが今世紀末にはソフトコーラルコミュニティーへとシフトする可能性を示している。

2013年6月28日金曜日

新着論文(Science#6140)

Science
VOL 340, ISSUE 6140, PAGES 1489-1604 (28 JUNE 2013)

EDITORIAL:
The Science of Sustainability
持続可能性の科学
Christopher Dye and Marcia McNutt

Editors' Choice
Teething Signs
歯が生えることの兆候
Am. J. Pathol. 183, 109 (2013).
Bisphenol A (BPA)はプラスチック製造に使われる薬品の一種だが、内分泌系に影響することが知られている。近年、途上国におけるBPA汚染が深刻になっており、不妊・肥満・ガンなどの健康被害につながる可能性が指摘されている。マウスの子宮内の胎児にBPAを投与したところ、歯のエナメルの無機質減少(hypomineralization)が確認された。6~8歳の子供に見られている前歯の病気(molar incisor hypomineralization)と類似した点が確認された。

Siderite in Time
ちょうどいい時にsiderite
Nat. Comm. 4, 1741 (2013); Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 110, 10.1073/pnas.1308958110 (2013).
 縞状鉄鉱床は地球大気が酸素で満ちる前の堆積過程を記録しており、カンブリア爆発前の海水の化学組成を記録していると思われる。しかし、生物過程・非生物過程が入り交じっておりその形成のメカニズムはまだ紐解けていない。
 高温高圧の鉄炭酸塩鉱物(siderite; FeCO3)の沈殿実験から、反応には有機物の量が重要であることが分かった。従って、球状のsiderite粒子は微生物活動の指標になる可能性がある。
 また別の室内実験から、カンブリア爆発前の水柱中のsideriteは光酸化して水素分子と鉄酸化物を形成することが示された。これは縞状鉄鉱床の形成の材料になった可能性がある。この現象が全球規模だったとすると、初期大気の酸素濃度上昇過程においては非生物過程が重要な役割を負っており、嫌気的微生物のエネルギーソースとして寄与していたのかもしれない。

Green Gains
緑の獲得
Geophys. Res. Lett. 10.1002/ grl.50563 (2013).
陸上の植物量は近年増加傾向にあることが人工衛星観測から示されている。しかしそれには光・水・栄養・土地利用などの様々な要因が関係していると思われるが、中でもCO2による施肥効果(CO2 fertilization)の役割が大きいのではないかと考えられている。理論予測からは1982-2010年のCO2濃度上昇によって5-10%緑化すると考えられたが、それは人工衛星観測による乾燥域(CO2以外の要因があまり影響しない)の11%の緑化と整合的な結果となった。この結果を他の地域に応用することは難しいものの、CO2が緑化に与える影響を考える上で重要な知見になると思われる。
>話題の論文
Impact of CO2 fertilization on maximum foliage cover across the globe's warm, arid environments
Randall J. Donohue, Michael L. Roderick, Tim R. McVicar, Graham D. Farquhar

News of the Week
House Panel Seeks Changes In NASA Programs
議会のパネルがNASAの計画の変更を求めている
NASAは小惑星を捕獲して月の軌道に持ってくる計画ではなく、月に基地を設立する計画の方に変更を余儀なくさせられるかもしれない。
>より詳細な記事
House Science Committee Wants NASA to Return to the Moon
Yudhijit Bhattacharjee

New Treasures at Angkor Wat
アンコール・ワットの新しいお宝
航空機を用いたレーザー観測から、世界最大の宗教構造物であるアンコール・ワットの周辺に中世の大都市が存在した可能性が明らかに。
>より詳細な記事
The Hidden City of Angkor Wat
Richard Stone

Voyager’s Not Gone Yet
ボイジャーはまだ遠くへ行ってしまっていない
ボイジャー1号は地球を離れてから35年が経過し、太陽-冥王星間の距離の3倍も離れた地点を飛行しているが、太陽風が急激に減少し、銀河線が急激に上昇したというデータを昨年夏に送ってきた。しかしまだ太陽圏を脱出していないことを示すデータを示した論文が今週Scienceのオンライン版に公表された。まだ磁場の変化が確認されていないことがその根拠とされている。現在太陽圏と星間のハイブリッド空間にいるが、それがどれほど広がっており、ボイジャーがいつそれを脱出するかは前例がないため分からない。

Letters
Coral Diseases Cause Reef Decline
サンゴの病気がサンゴ礁の減少を招く
Caroline S. Rogers and Jeff Miller
近年サンゴの白化現象によるサンゴ礁の減少が議論されているが、病気による減少にはあまり注目が寄せられていない。1970-1980年代にはカリブ海のミドリイシ類(Acropora palmata; A. cervicornis)に対する病気によってサンゴ礁が大きく姿を変えた。近年でもイシサンゴ(Scleractinia)が一つ以上の病気に感染している。通常白化現象は温度上昇によってもたらされるが、温度が元に戻れば回復する例もある。しかしながら病気の場合は組織が失われるため、白化現象とは全く異なる現象である。気候変化によって白化現象はますます増加すると考えられているが、温暖化・白化現象・病気の関係性についてはまだよく分かっていない。それぞれの関係性をよりよく研究する必要があるが、汚染水の流入や土砂堆積量を減らすことでも白化現象や病気のリスクを軽減することができると思われる。

Reversing Excess Atmospheric CO2
過剰の大気CO2を逆転する
Greg H. Rau and Klaus S. Lackner
Matthews & Solomonは記事の中で、"少なくとも千年スケールでは過去のCO2排出は打ち消せない"と述べているが、大気中のCO2を「直接捕獲」あるいは「陸や海に吸収させて減らす」術はある。しかしながら、そうした人間の炭素循環への野心的な介入に対するコスト・安全性・能力・環境的社会的な好ましさといったことはまだ十分に評価されておらず、今後大気中のCO2濃度が加速的に上昇することはないと結論づけるのは時期尚早である。
>話題の記事(Science#6131 "Perspectives")
Irreversible Does Not Mean Unavoidable
不可逆性は不可避性を意味しない
H. Damon Matthews and Susan Solomon
 「全球気温の上昇はもはや避けられない」「これまでに出されたCO2が原因で起きている温暖化は1,000年は打ち消せない」といった誤解があるが、過去の変化が打ち消せないことは、将来のさらなる温暖化が避けられないということにはならない。
 炭素循環・気候の慣性(inertia)を考える必要がある。海によるCO2の吸収には時間がかかるため、現在CO2の排出を停止すれば、次第に大気中のCO2濃度は低下するはずである。例えば現在CO2の排出が急激にゼロになったとしても、気温は数世紀はおおよそ現在のレベルに維持されるだろうと思われるが、少なくとも上昇することは考えにくい。CO2の排出量が低下した場合、最悪のシナリオに比べて温暖化が抑えられることになり、温暖化がなくなるわけではない。つまりこれまでの排出を打ち消すことは難しいが、これからの排出とそれに伴うさらなる温暖化はコントールすることができる。
 将来の温暖化は全体を通して排出されたCO2の総量によるが、現在は先進国が途上国に比べて多くのCO2を放出している。しかしあと数十年でその関係は逆転すると考えられている。うまく低炭素社会が先進国・途上国で実現すれば破滅的な地球温暖化は防げるが、うまくいかないか、或いは対応が遅れた場合、地球はよりいっそう温暖化する。
 排出削減だけで産業革命以前のレベルまで気温を低下させることは不可能だが、将来の温暖化の程度は現在の排出によって決まるのであって、もはや人間が手の届かないところにあるというわけではない。

Reversing Excess Atmospheric CO2—Response
Rau & Lacknerに対する返答
Damon Matthews and Susan Solomon
 確かにCO2濃度を減少させる技術の可能性や効果を議論することは重要である。しかし、我々が考えている時間スケールにおいては関連しないと思われる。
 太陽放射反射を含む地球工学技術は一時的に地表気温を操作するだけで、大気中のCO2濃度上昇をそのままにしておくと海洋酸性化や降水パターンの変化は避けられない。地球工学技術の中には大気中のCO2を取り去るものもあるが、そうした技術をテストすることも現在かなわず、発展する・実行する見込みは薄いと思われる。さらに地球システムへの介入が招く他の環境被害は大気中CO2を減らすことの恩恵よりも大きい可能性もある。
[以下は引用文]
In a discussion of the potential for immediate or near-future action to slow the growth of atmospheric CO2, we suggest that consideration of carbon dioxide removal (or other geoengineering) technologies would at best be not very relevant, and at worst could distract from the imperative of decreasing investment in energy technologies that lead to large CO2 emissions.
大気中CO2濃度の増加を遅らせる中期的・短期的未来に向けた行動の可能性という議論において、大気中のCO2捕獲(或いはその他の地球工学)技術を考えることはものすごく意味のあることではないだろうと思われる。むしろより多くのCO2排出へと繋がるエネルギー技術への投資を減少させるという喫緊の課題から気をそらすことになりかねない。
※誤訳あるかもしません

Policy Forum
The Global Prevalence of Intimate Partner Violence Against Women
女性に対するドメスティック・バイオレンスの世界的な蔓延
K. M. Devries, J. Y. T. Mak, C. García-Moreno, M. Petzold, J. C. Child, G. Falder, S. Lim, L. J. Bacchus, R. E. Engell, L. Rosenfeld, C. Pallitto, T. Vos, N. Abrahams, and C. H. Watts
81カ国のデータから、女性に対するドメスティック・バイオレンスの世界的な蔓延の程度が推定された。

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Research
Perspectives
Eliminating Malaria
マラリアを排除する
David A. Fidock
マラリアを根絶するためには抗マラリア作用の可能性のあるアーテミシニンに対する、生まれつつある抗性を打ち消す集中的な努力が必要である。

Some Like It Hot, Some Not
あるものは暑いのを好むが、またあるものはそうではない
Jayne Belnap
乾燥地域の土壌中の微生物同士の競合は地域的な気候に左右される。
Garcia-Pichel et al.の解説記事。

Solving the Mascon Mystery
Masconの謎を解く
Laurent G. J. Montesi
MasconとはMass Concentrationの略で、月の地殻で確認されている重力異常を指す。月の質量集中形成のモデリングが初期の熱史の新たな推定につながるかもしれない。Melosh et al.の解説記事。

Review
From Gas to Stars Over Cosmic Time
宇宙的時間をかけてガスから星へ
Mordecai-Mark Mac Low
銀河における星の形成のレビュー。

Reports
The Origin of Lunar Mascon Basins
月のMascon地形の起源
H. J. Melosh, Andrew M. Freed, Brandon C. Johnson, David M. Blair, Jeffrey C. Andrews-Hanna, Gregory A. Neumann, Roger J. Phillips, David E. Smith, Sean C. Solomon, Mark A. Wieczorek, and Maria T. Zuber
衝突盆地形成の詳細なモデルが2つの月のクレーターの地殻に見られる重力の特徴を説明するかもしれない。

Continuous Permeability Measurements Record Healing Inside the Wenchuan Earthquake Fault Zone
連続した透磁率測定が四川地震の断層帯内部の回復を記録する
Lian Xue, Hai-Bing Li, Emily E. Brodsky, Zhi-Qing Xu, Yasuyuki Kano, Huan Wang, James J. Mori, Jia-Liang Si, Jun-Ling Pei, Wei Zhang, Guang Yang, Zhi-Ming Sun, and Yao Huang
四川大地震の際に破壊された断層帯が、その後急速に回復しつつあることが透磁率測定から明らかに。

Dynamic Topography Change of the Eastern United States Since 3 Million Years Ago
300万年前からのアメリカ東部のダイナミックな地形変化
David B. Rowley, Alessandro M. Forte, Robert Moucha, Jerry X. Mitrovica, Nathan A. Simmons, and Stephen P. Grand
これまで非活動的だと考えられてきた北米大陸の東部が、過去500万年間にマントルの流れによって変形していたことが示された。
>関連した記事(Science#6134 "News of the Week")
U.S. East Coast Not So Passive
アメリカの東海岸はそんなに受動的ではない
「火山活動や地震がないような大陸棚縁辺は、河川や海による堆積場で、海水準変動のいい指標になる」というのが従来の地質学の常識となっていたが、アメリカ東海岸は実はそうではないらしい。非常にゆっくりとした深部のマントル対流が東海岸の地形形成にとって重要であることが新たな研究から示されている。さらに北米で伸縮を繰り返した更新世の氷床の存在もまた話を複雑にしているらしい。過去の海水準変動を正しく理解するには、全球的なマントル対流や氷床変動まで理解する必要があると研究者らは語る。

Varied Response of Western Pacific Hydrology to Climate Forcings over the Last Glacial Period
最終氷期の間の気候フォーシングに対する西大平洋の水循環の様々な応答
Stacy A. Carolin, Kim M. Cobb, Jess F. Adkins, Brian Clark, Jessica L. Conroy, Syria Lejau, Jenny Malang, and Andrew A. Tuen
 西太平洋の暖水域は全球の熱と水蒸気輸送において中核的な役割を担っているが、氷期-間氷期スケール・千年スケールの気候変動に対する応答はよく分かっていない。
 ボルネオ島の北部から得られた複数の鍾乳石のδ18Oから過去100kaの降水を復元。歳差運動(21ka周期)にはよく応答しているが、氷期-間氷期の変化にはほとんど応答していなかった。氷期のハインリッヒ・イベント時には地域的な減少していた可能性が高いが、他の北半球の急激な気候変動(D/Oイベント、YDなど)のシグナルはほとんど確認されなかった。

Temperature Drives the Continental-Scale Distribution of Key Microbes in Topsoil Communities
温度が表土コミュニティーにおける重要な微生物の大陸規模の分布を決める
Ferran Garcia-Pichel, Virginia Loza, Yevgeniy Marusenko, Pilar Mateo, and Ruth M. Potrafka
 気候変化の結果、植物や動物がより寒冷な地域へと移動すると考えられているが、微生物もそうなるかはよく分かっていない。
 北米大陸を対象にした土壌中の微生物コミュニティーの調査から、気候変化の中でも特に’温度’の変化が原因で、2種の表土中のシアノバクテリアが緯度方向に移動していることが分かった。この観測事実は温度を変えた飼育実験からも支持された。将来数十年間に渡ってMicrocoleus steenstrupiiMicrocoleus vaginatusに置き換わるかもしれず、その結果土壌中の生態系、ひいては土壌の栄養度や浸食度に影響すると思われる。

2013年6月27日木曜日

新着論文(Nature#7455)

Nature
Volume 498 Number 7455 pp407-532 (27 June 2013)

EDITORIALS
How do you sleep?
どのように眠りますか?
最近の睡眠パターンは我々を不健康にしている。そのため私たちが本当にどれほどの睡眠を必要としているのかを明らかにする時が来た。
[以下は引用文]
Scientists cannot say for sure how much sleep we need, or when we should take it.
科学者はどれだけ睡眠が必要かということ、いつ睡眠を取るべきかということを確実に言うことはできない。

Many workers at present, he says, could suffer from a form of social jet lag, forced to shuffle sleep patterns between the conflicting time zones of working and work-free days. The solution would be a profound change: restructure work and school schedules to better suit the biological clocks of the majority of the population, once we work out what they are.
「近年の多くの労働者は、勤務日と休息日で逆転した睡眠パターンを余儀なくさせられており、社会的な時差ボケに苦しんでいる」と彼は言う。解決するにはかなりの変化が必要だ。かつてそうであったように、多くの人間の体内時計をうまく調整することで、仕事と学校のスケジュールを再構成する必要がある。

People in many countries get as much as two hours less sleep a night than their ancestors did a century or so ago. That must have a consequence.
多くの国の人々は、100年くらい前の先祖に比べて2時間も短い睡眠しかとっていない。それは何らかの結果を生むに違いない。

WORLD VIEW
Europe should rethink its stance on GM crops
「ヨーロッパは遺伝子組換え作物に対するスタンスを再考すべきだ
第2世代の遺伝子組換え作物作成技術はこれまで反対意識をもつきっかけを作ってきたいくつかの問題を回避している」と、Brian Heapは言う。

RESEARCH HIGHLIGHTS
Red Queen forces extinctions
赤の女王が絶滅を強制する
Science http://dx.doi.org/10.1126/science.1239431 (2013)
過去66Maの間に絶滅したか多様性が減少した19種の祖先を同じくするほ乳類の化石記録を調べたところ、多様性の現象は新たな種の出現とともにゆっくり起こり、絶滅は急激に起きていた。生物は変わりゆく環境を追いながら進化し続けなければならないとする’赤の女王仮説’で説明できる可能性があるという。
>話題の論文
How the Red Queen Drives Terrestrial Mammals to Extinction
Tiago B. Quental, Charles R. Marshall

Vegetables’ daily rhythm
野菜の日周期
Curr. Biol. http://dx.doi. org/10.1016/j.cub.2013.05.034 (2013)
収穫されたキャベツ(Brassica oleracea)はイモムシ(Trichoplusia ni)が嫌う分泌液を日周期で出すことで葉がかじられるのを防いでいる。通常の日周期と時間を変えて光を当てたキャベツ(スーパーで買ったもの)とで虫の食われ方を調べたところ、前者のほうがより齧られにくい(つまり妨害物質が効果的に分泌されている)ことが分かった。同じことが、ブルーベリー・さつまいも・にんじんで確認された。リズムによって栄養価にも影響がある可能性が指摘されている。

Shells show rise of Homo sapiens
殻がホモ・サピエンスの出現を物語る
Proc. Natl Acad. Sci. USA http://dx.doi.org/10.1073/ pnas.1304750110 (2013)
南アフリカの考古学遺跡から発掘されたカサガイの殻(limpet shell)のサイズを計測したところ、中期石器時代(200-50ka)のサイズが後期石器時代のものよりも大きかったことが分かった。これは人類の数が急増し、漁獲量が増えた可能性を物語っている。ホモ・サピエンスは100kaには貝のビーズの装飾品を作っていたことが分かっているが、当時はまだ人口は少なかったと考えられている。従って、人口が増えたのはそれからかなり後になってからだということになる。これは「文化的な発展は人口が増え、技術が広まりやすくなってからだ」とする従来の仮説と大きく食い違っている。
>話題の論文
Archaeological shellfish size and later human evolution in Africa
Richard G. Klein and Teresa E. Steele

Escargot on the go
移動中のエスカルゴ
PLoS ONE 8, e65792 (2013)
ヨーロッパに生息する11個体のカタツムリ(land snail; Cepaea nemoralis)のミトコンドリアDNAを分析したところ、7つの分類群のうち、アイスランドとピレネー山脈東部(ヨーロッパ南西部)にはわずか1種しかいないことが分かった。アイスランドで発見されている最古の化石は8,000年前のもので、初めて人が住み着いた年代と一致している。人々がガロンヌ川に沿って地中海と大西洋間を移動した際に人気のあったカタツムリを持ち運んでいた可能性がある。もしカタツムリ以外にもイベリア半島とアイルランドだけに生息する生物が見つかれば、より強固な証拠になる可能性が高い。

Aerosols suppress hurricanes
エアロゾルがハリケーンを抑える
Nature Geosci. http://dx.doi. org/10.1038/ngeo1854 (2013)
ダスト粒子がハリケーンの活動度に与える影響は知られているものの、人為起源のエアロゾルが与える影響はよく分かっていない。イギリス・ハドレーセンターの研究グループによるモデルシミュレーションから、20世紀前半に人為起源のエアロゾル排出量が急増したことで、大西洋の嵐の活動度が減少し、また20世紀後半に排出量が減少したことで逆に増加したことが示された。雲を介したフィードバックが原因と考えられている(エアロゾル強化→雲が明るく+滞留時間が長くなる→地表温度低下→ハリケーン弱化)。
>話題の論文
Anthropogenic aerosol forcing of Atlantic tropical storms
大西洋の熱帯低気圧の人為起源のフォーシング
N. J. Dunstone, D. M. Smith, B. B. B. Booth, L. Hermanson & R. Eade
 大西洋の熱帯低気圧(ハリケーン)は社会経済的に大きな影響を与えている。海表面温度との関連性は報告されているものの、その他の自然・人為起源のフォーシング(火山性エアロゾル・人為起源エアロゾル・ダスト・温室効果ガスなど)との関係性についてはまだよく分かっていない。
 気候モデルを用いて、個々の気候ドライバーが1860-2050年までの北大西洋の熱帯低気圧の頻度に与える影響を評価したところ、人為起源のエアロゾルが頻度を低下させていることが示された。20世紀末に急激にエアロゾル排出量が低下したことが頻度の増加を招いたことが分かった。エアロゾルがハドレー循環に影響することで嵐の頻度に影響したと考えられるが、将来もエアロゾル排出量とともに変化すると思われる。

SEVEN DAYS
NASA funding plan
NASAの基金計画
共和党員はNASAによる小惑星捕獲計画を棄却する法案を提出した。コストが高いことが一つの理由とされている。惑星科学部門から削減された予算は気候変化研究に割り当てられる。

Indonesian fires choke nearby countries
インドネシアの火災が近隣諸国を窒息させる
インドネシアで発生した大規模森林火災によってシンガポールとマレーシアがひどいもやに見舞われている。それを受けて、マレーシアでは非常事態宣言を発し、シンガポールは大気汚染が’健康を酷く害する環境レベル’を上回ったことを報告した。
>関連した記事(毎日新聞)
シンガポール:煙害拡大、インドネシアと非難合戦

Impact-factor list
インパクト・ファクターのリスト
最新の科学雑誌のインパクト・ファクターがThomson Reutersから6/19に出された。66の雑誌がself citation(自分の論文を自分で引用すること)を禁止するという新たな記録ができた。5月には科学者・研究機関・出版社がインパクト・ファクターを実績の参考にすることを批判する声明を出している。
>より詳細な記事
New record: 66 journals banned for boosting impact factor with self-citations
Richard Van Noorden

NEWS IN FOCUS
Gas drilling taints groundwater
天然ガス掘削が地下水を汚染する
Jeff Tollefson
化学分析から、地下水中のメタンとシェール・ガス掘削との関連性が明らかに。

Floating tubes test sea-life sensitivity
浮きチューブが海洋生物の感度を調べる
Hristio Boytchev
海の現場での実験(mesocosm experiment)によって海洋酸性化が生態系に与える影響が明らかになりつつある。スウェーデンのフィヨルドにて行われた実験の紹介。酸性化がピコプランクトンの生存を有利にすること、珪藻に害を与えること、DMS生産量を減少させること、巻貝やウニに悪影響を与えることなど、様々な知見が得られている。
[以下は引用文]
Marine scientists fear that the conditions will disrupt ecosystems by, for example, inhibiting some organisms’ ability to build shells. Yet the effects are unclear: in small-scale laboratory tests, certain species have proved surprisingly resilient, and some even flourish.
海洋科学者はそうした状態(海洋酸性化)が、ある種の生物が殻を作る能力を阻害するなどして生態系を崩壊させることを恐れている。しかしながら、その効果は不確かである。小規模の室内実験から、ある種の生物は驚くほどの耐性を示したり、場合によっては逆に栄えたりすることが証明されている。

Marine biologist Ulf Riebesell says that these results tell only part of the story: scientists need to scale up and examine whole ecosystems. Lab studies of isolated species ignore variables such as competition, predation and disease, he says. Even minor effects of acidification on the fitness of individual species — especially small photosynthetic organisms such as phytoplankton — can upset food chains, eventually harming larger species. “If you only focus on the lab results, you are being misled,” he says.
海洋生物学者のUlf Riebesellは「こうした結果は物語の一部を伝えてくれるに過ぎない」と言う。科学者は全生態系へとスケールアップして調べる必要がある。隔離した生物の室内実験では競合・補食・病気といった要因を無視していると彼は言う。海洋酸性化が個々の種(特に植物プランクトンのような小型の光合成生物)の健康状態にわずかな影響をもたらしただけでも、食物連鎖を混乱させることがあり、最終的には大型生物を害する。”もし室内実験の結果だけに注目していると、勘違いさせられる”と、彼は言う。

COMMENT
Chronobiology: The human sleep project
時間生物学:人間の睡眠プロジェクト
「睡眠の真の役割を明らかにするために、研究者は数千あるいは数百万人の(実験室ではなく)現実世界のデータを収集する必要がある。」と、Till Roennebergは言う。

Marine science: Get ready for ocean acidification
海洋科学:海洋酸性化の心構えをする
「気候が温暖化するとともに海水が酸性化したときに生態系にどのような影響が出るかを、より複雑な実験系にして調べる必要がある」と、Sam DupontとHans Pörtnerは主張する。
[以下は引用文]
The combined effects of local variability in acidity, temperature and human-made eutrophication or pollution may be more detrimental than for each factor alone.
酸性化、温度、人間による富栄養化あるいは汚染のローカルな変動の組み合わさった影響は個々の要因の影響よりも損害が大きいかもしれない。

To understand what future oceans might look like, marine scientists need to assess how whole ecosystems respond to rising acidity over time frames that are long enough to track generations of organisms to see which ones die or adapt.
将来の海がどうなるかを理解するためには、海洋科学者はどのようにして生態系全体が、生物が世代を通じて死ぬかそれとも適応するかを見れるほどの長い時間をかけて、時間とともに増す酸性度に応答するかを評価する必要がある。

Ocean acidification is already affecting marine ecosystems and their services to humankind. In light of the millennia it will take to reverse changes in ocean chemistry, we believe that research should be oriented towards finding solutions, rather than to simply documenting the disaster. Ultimately, only the reduction of atmospheric CO2 levels will alleviate the challenges of ocean acidification. 
海洋酸性化はすでに海洋生態系とそれが人間に与えるサービスにも影響している。海洋の化学変化を打ち消すには数千年という時間がかかることを考えると、研究は単に災害を伝えることに留まらず、むしろ解決策を模索することに向けるべきだと我々は信じている。究極的には、大気中のCO2濃度を下げることだけが海洋酸性化を軽減できるのである。

We can also buy some time through reducing human pressures such as overfishing, eutrophication and pollution.
過漁獲、富栄養化、汚染といった人間の圧力を軽減することによっても時間稼ぎをすることができる。

CORRESPONDENCE
Brazil: Nuclear plans add to pressure on Caatinga
ブラジル:新たな原子力計画がカーティンガをさらに圧迫する
Erika dos Santos Nunes

Conservation: Relaxed laws imperil Australian wildlife
保全:緩和された法律がオーストラリアの野生生物を脅かす
Euan G. Ritchie

OBITUARY
Joe Farman (1930–2013)
John Pyle & Neil Harris
オゾンホールの発見者。

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RESEARCH
BRIEF COMMUNICATIONS ARISING
Diatom flickering prior to regime shift
レジームシフトに先立つ珪藻のフリッカー現象
Jacob Carstensen, Richard J. Telford & H. John B. Birks
地球温暖化が生態系に与える影響が広く調査されている。Wang et al.は中国の洱海(Lake Erhai)の調査から、珪藻の群集組成のレジームシフトが2001年頃に起きたことを報告しているが、それはデータの処理の仕方の問題であることを指摘。
>話題の論文
Flickering gives early warning signals of a critical transition to a eutrophic lake state
フリッカー現象は湖沼の富栄養状態への臨界遷移の早期警告シグナルとなる
Rong Wang, John A. Dearing, Peter G. Langdon, Enlou Zhang, Xiangdong Yang, Vasilis Dakos & Marten Scheffer

Wang et al. reply
Wang et al.の返答
Rong Wang, John A. Dearing, Peter G. Langdon, Enlou Zhang, Xiangdong Yang, Vasilis Dakos & Marten Scheffer

NEWS & VIEWS
Animal behaviour: Brain food
動物行動:脳の食べ物
Marian Turner
昆虫の脳のカロリー消費に関して。

LETTERS
Multi-periodic pulsations of a stripped red-giant star in an eclipsing binary system
食連星系における外層をはぎ取られた赤色巨星の多重周期の脈動
Pierre F. L. Maxted, Aldo M. Serenelli, Andrea Miglio, Thomas R. Marsh, Ulrich Heber, Vikram S. Dhillon, Stuart Littlefair, Chris Copperwheat, Barry Smalley, Elmé Breedt & Veronika Schaffenroth
低質量の白色矮星は破壊された赤色巨星の名残である。低質量白色矮星の前駆天体の質量と半径の測定から、厚い水素の外層の存在が明らかに。急速に冷えた白色矮星の場合は、パルサーの伴星からの放射、または殻フラッシュ現象によって、厚い水素の外層を失ってしまった可能性が高い。

Lifespan of mountain ranges scaled by feedbacks between landsliding and erosion by rivers
河川浸食と地すべりとの間のフィードバックによって決まる山脈の寿命
David L. Egholm, Mads F. Knudsen & Mike Sandiford
テクトニック的に活発な山脈と不活発なものとで見られる河川浸食速度の変動は、基盤岩を河川が下刻することと地滑りとの双方向的なつながりが関連していることがシミュレーションから示された。この知見は、テクトニック活動が終わった後、数億年にわたって急な山脈地形が保持されていることのもっともらしい物理的説明になるという。

Stability of active mantle upwelling revealed by net characteristics of plate tectonics
プレートテクトニクスの総合的な特徴から明らかになる活発なマントル上昇の安定性
Clinton P. Conrad, Bernhard Steinberger & Trond H. Torsvik
全球的なマントルの流れのパターンは、表面のプレートの総体的な動き(収束・発散)によって得られることを示す。現在のプレート運動については、東アジアに双極子収束があり、中央アフリカと太平洋中央部に四重極子発散があることが分かった。これらの位置はその下のマントル流の双極子と四重極子の位置とほぼ一致しており、プレート運動のこうした’総合的な特徴(net characteristics)’から深部の流れのパターンが明らかになることを示している。四重極子発散の位置は、過去2億5000万年間大きく動いておらず、アフリカと太平洋の下のマントル上昇流が長期的に安定していることを示唆している。これらの領域を中心として全球のマントル流が形成された?

Elastic energy storage in the shoulder and the evolution of high-speed throwing in Homo
ヒト属の肩の弾性エネルギー保存と高速投げの進化
Neil T. Roach, Madhusudhan Venkadesan, Michael J. Rainbow & Daniel E. Lieberman
 ヒトは霊長類の中で唯一高速かつ高精度にものを投げることができるが、いつ・どのように・なぜ能力が進化したのかを示す証拠が存在しないことからその進化についてはよく分かっていない。
 ヒトがものを投げる優れた能力は、弾性エネルギーの保存と肩におけるエネルギー解放を可能にする解剖学的特徴に起因することが明らかに。そうした特徴はすでに200万年前のホモ・エレクトス(Homo erectus)に現れており、狩りの手段として重要な役割を担っていたと考えられる。

2013年6月25日火曜日

新着論文(G3, JGR, MEPS, CP)

◎G3
A core-top study of dissolution effect on B/Ca in Globigerinoides sacculifer from the tropical Atlantic: Potential bias for paleo-reconstruction of seawater carbonate chemistry
R. Coadic, F. Bassinot, E. Douville, E. Michel, D. Dissard, M. Greaves
東赤道大西洋のSierra Leone Riseから得られた堆積物コア中のG. saccliferの殻のB/CaとMg/Caが深度が増すごとに(溶解が進むごとに)値が低下することが分かった。2,640m深と4,950m深でB/Caは14 μmol/mol(pHに換算して0.11程度)、Mg/Caは0.7 mmol/mol変化した。従って、氷期-間氷期のpH復元(0.10-0.15の変化)において非常に大きな障壁になると思われる。

Oceanographic variability in the South Pacific Convergence Zone region over the last 210 years from multi-site coral Sr/Ca records
Henry C. Wu, Braddock K. Linsley, Emilie P. Dassié, and Peter B. deMenocal, Benedetto Schiraldi
トンガとフィジーで得られたハマサンゴSr/Caの測定結果について。1981-2004年までは観測SSTとの相関が良いが、時代をさかのぼるごとにSSTとの相関が悪化する。δ18Oは塩分指標になるが、降水量というよりは異なる水塊との混合によって説明される。過去100年間では最近の20年間はWPWPの拡大とSPCZによる表層水の低塩分化が確認された。さらに偏西風の強化に伴い、南太平洋亜熱帯循環が強化され南下したことで、SPCZが南東部へと拡大していると考えられる。

◎JGR-atm
Atmospheric CH4 in the first decade of the 21st century: Inverse modeling analysis using SCIAMACHY satellite retrievals and NOAA surface measurements
P. Bergamaschi, S. Houweling, A. Segers, M. Krol, C. Frankenberg, R. A. Scheepmaker, E. Dlugokencky, S. C. Wofsy, E. A. Kort, C. Sweeney, T. Schuck, C. Brenninkmeijer, H. Chen, V. Beck, and C. Gerbig
近年大気中のメタン濃度は急増しているが、その放出源についてはまだ議論が分かれている。2000年代以降の人工衛星観測と地上観測記録からメタン放出を逆算したところ、2003-2005年平均に比べて2007-2010年平均の排出量が16-20 TgCH4/yr増加していた。増加しているのは北半球の低・中緯度がメインで、北極圏からの排出に有為な増加傾向は見られなかった。人為起源のメタン排出増加に上乗せされる形で、自然の大きなメタン変動も観察された(湿地や森林火災を起源とするもの)。

The relationship between the ITCZ and the Southern Hemispheric eddy-driven jet
Paulo Ceppi, Yen-Ting Hwang, Xiaojuan Liu, Dargan M. W. Frierson, and Dennis L. Hartmann
北半球の温暖化(寒冷化)がITCZや南半球のジェット・偏西風に与える影響を評価。また古気候研究において提案されているメカニズムを議論。

◎MEPS
Effects of ocean acidification on the calcification of otoliths of larval Atlantic cod Gadus morhua
Maneja R. H., Frommel A. Y., Geffen A. J., Folkvord A., Piatkowski U., Chang M. Y. & Clemmesen C.
海洋酸性化がタイセイヨウダラ(Atlantic cod; Gadus morhua L.)の耳石形成に与える影響を2ヶ月の酸性化実験で評価。sagittaeとlapilliがpCO2が高いものほど大きくなった。耳石の形や対称性に対する影響は見られなかった。

◎Climate of the Past
Spatial gradients of temperature, accumulation and δ18O-ice in Greenland over a series of Dansgaard–Oeschger events
M. Guillevic, L. Bazin, A. Landais, P. Kindler, A. Orsi, V. Masson-Delmotte, T. Blunier, S. L. Buchardt, E. Capron, M. Leuenberger, P. Martinerie, F. Prié, and B. M. Vinther
グリーンランドから得られている4本のアイスコア(GRIP・GISP2・NGRIP・NEEM)のDO8・9・10に相当する時期の温度変化の違いについて。亜氷期-亜間氷期の温度変化は北西部よりも中央部で2℃ほど高いことが示された。δ18O-温度関係式の傾きもNEEMの掘削地点では大きく、おそらく降水量の季節性を反映していると思われる。

Abrupt shifts of the Sahara–Sahel boundary during Heinrich stadials
J. A. Collins, A. Govin, S. Mulitza, D. Heslop, M. Zabel, J. Hartmann, U. Röhl, and G. Wefer
アフリカ大陸北西岸の南北トランゼクトで得られた堆積物コアの主成分分析から、氷期のハインリッヒ・イベント時のサハラ砂漠のダストフラックスを復元。ハインリッヒ・イベント時にはサハラ-サヘル境界がより赤道側に南下し、最大で13ºNまで(現在は20ºN)到達していたと考えられる。同時期に北大西洋が寒冷化していることから(AMOCの弱化)、乾燥化と風の強化が原因と考えられる。

◎その他
Could some coral reefs become sponge reefs as our climate changes?
Bell J. J., Davy S. K., Jones T., Taylor M. W. & Webster N. S.
Global Change Biology (in press)
現在の温暖化と海洋酸性化がサンゴ礁を脅かしているが、過去にもサンゴは何度も絶滅を経験してきた。例えば三畳紀末の大量絶滅時には石灰化生物の多くが絶滅したが、その後カイメン類が栄えた。カイメンが支配する環境は安定的に長期間継続したことから、将来のサンゴ礁の姿としてカイメン礁というのも十分あり得るかもしれない。この仮説を検証するために、
(ⅰ)地質学時代のカイメン礁の存在
(ⅱ)サンゴからカイメンにシフトしていることが報告されている生態系
(ⅲ)スポンジ共同体(holobiont)の温度・pH変化に対する応答
を紹介し、議論する。将来の気候変化シナリオにおいてはカイメンが恩恵を被り、多くのサンゴ礁で優先種になる可能性がある。サンゴ礁全体としての機能に大きな変化が生じると思われる。

2013年6月24日月曜日

新着論文(BG, EPSL, QSR)

Biogeosciences
Analysis of a 39-year continuous atmospheric CO2 record from Baring Head, New Zealand
B. B. Stephens, G. W. Brailsford, A. J. Gomez, K. Riedel, S. E. Mikaloff Fletcher, S. Nichol, and M. Manning
ニュージーランドのBaring Headで測定されている39年間の長期大気CO2観測記録を用いて、その変動要因を考察。ENSOの変動周期と同期した年々変動が確認された。東西方向の風が強化された結果、南大洋のCO2吸収効率が減少していることが報告されているものの、南半球の中緯度と高緯度の大気CO2濃度の差からは変動が小さすぎて検出できなかった。

A new conceptual model of coral biomineralisation: hypoxia as the physiological driver of skeletal extension
S. Wooldridge
サンゴの骨格成長を決定するのは夜間の貧酸素状態であるという新たな石灰化モデルを提唱。またGBRのハマサンゴの成長速度が1900年代に入って急速に減少していることを新たなモデルを用いて説明。

EPSL
Glacial freshwater discharge events recorded by authigenic neodymium isotopes in sediments from the Mendeleev Ridge, western Arctic Ocean
Kwangchul Jang , Yeongcheol Han , Youngsook Huh , Seung-Il Nam , Ruediger Stein , Andreas Mackensen , Jens Matthiessen
北極海西部のMendeleev Ridgeで採取された堆積物コアの過去75ka分のεNdを測定。Polar Deep Water (PDW)の指標として使え、特にBarents–Kara氷床・ローレンタイド氷床などからの淡水供給の推定に使える。北極海への淡水供給量は大きく変動したが、NADWの形成に影響するほどではなかったと思われる。

Was the Antarctic glaciation delayed by a high degassing rate during the early Cenozoic?
Vincent Lefebvre, Yannick Donnadieu, Yves Goddéris, Frédéric Fluteau, Lucie Hubert-Théou
 Eocene/Oligocene境界において南極に氷床が発達し始めた。またその際の全球の寒冷化は南大洋海路が開いたことと、同時に大気中CO2濃度が低下したことがその原因と考えられている。しかし、そうしたCO2減少に至ったメカニズムについては特によく分かっておらず、議論が活発になされている。
 結合された気候-炭素循環モデル(GEOCLIM)を用いて、メカニズムを考察。CO2低下に必要だったのは、大陸移動によってITCZの影響下に北アフリカ・南米北部が移動したこと、さらにはEoceneの間にインドア大陸のDeccan玄武岩が風化したこと、OligoceneにEthipian Trapが風化したことによってCO2が吸収されたことと考えられる。またEoceneにおいて南極が氷河化しないようにするためには地球内部からのCO2脱ガスは50%高くなっていなければならなかったと考えられる。E/O境界のCO2濃度低下にはケイ質岩の風化よりもむしろ火山からの脱ガス量が減少したことが効いていたのではないかと思われる。さらに、その後さらにインド亜大陸・アフリカ大陸が移動したことで岩石化学風化が減少し、Mioceneの温暖期(大気中CO2濃度も上昇)が生じたのではないかと考えられる。そしてその後チベット高原の隆起とインド・アジアモンスーンの強化によって岩石風化がさらに促進し、現在のような新生代後期の寒冷気候に至ったと考えられる。

Australasian monsoon response to Dansgaard–Oeschger event 21 and teleconnections to higher latitudes
Michael L. Griffiths, Russell N. Drysdale, Michael K. Gagan, John C. Hellstrom, Isabelle Couchoud, Linda K. Ayliffe, Hubert B. Vonhof, Wahyoe S. Hantoro
氷期のD/Oイベントは主に北半球で見られる急激な気候変動イベントであるが、その際のWPWPやオーストラリア・モンスーンの変動についてはよく分かっていない。インドネシア南部のLiang Luar洞窟から得られた複数の鍾乳石のδ18O・δ13Cおよび流体包有物からD/O21(MIS5の後半)の小温暖期における気候変動を復元。東アジアのモンスーンが強化している一方で、インドネシアの降水量は低下しており、ITCZが北へ移動したと考えられる。さらにその際に気温も2~3℃上昇しており、土壌におけるメタン生成が増加したことが鍾乳石のδ13Cに記録されていると思われる。メタン濃度とCO2濃度の増加は温室効果によって全球の温暖化に寄与したと思われる。

The magnitude, timing and abruptness of changes in North African dust deposition over the last 20,000yr
D. McGee , P.B. deMenocal , G. Winckler , J.B.W. Stuut , L.I. Bradtmiller
北アフリカにおける砂漠起源のダストフラックスは気候にも大きな影響を与えており、過去においても重要であったと思われるが、それを定量的に復元できる高時間解像度の記録は限られている。アフリカ大陸の北西部の海岸に沿って(31ºN〜19ºN)堆積物を採取。粒径と230Thを用いて規格化したダスト・フラックスを組み合わせることで、過去20kaのダスト沈降を復元。HS1とYDにおいてはダスト・フラックスが急増しており、またアフリカの湿潤期(African Humid Period; AHP; ∼11.7–5 ka)には激減していることが分かった。今後のモデル研究に重要なデータとなると期待される。

QSR
Modelling past sea ice changes
H. Goosse , D.M. Roche , A. Mairesse , M. Berger
モデル内の海氷の再現の問題に関するレビュー。特にLGMの南大洋の海氷、完新世初期の北極海の夏の海氷範囲においてモデル間の大きな食い違いが見られるらしい。

Changes in silicate utilisation and upwelling intensity off Peru since the Last Glacial Maximum e insights from silicon and neodymium isotopes
C. Ehlert, P. Grasse, M. Frank
ペルー沖で採取された堆積物コアのεNdとδ30Siから過去20kaのケイ酸塩利用・水塊混合・湧昇の強度を復元。εNdの南北の傾きはローカルな風化による供給源を反映していると思われる。コーティングεNdは過去20kaでほとんど変化せず。一方で砕屑岩εNdは変動が見られ、堆積物の起源や輸送の変化を反映していると思われる。δ30Siの変動は湧昇の強さに変化があり、珪藻によるケイ酸利用が変化していたことを物語っている。特に過去5kaにENSOが強化している。

Role of sea ice in global biogeochemical cycles: emerging views and challenges
Martin Vancoppenolle , Klaus M. Meiners , Christine Michel , Laurent Bopp , Frédéric Brabant , Gauthier Carnat , Bruno Delille , Delphine Lannuzel , Gurvan Madec , Sébastien Moreau , Jean-Louis Tison , Pier van der Merwe
海氷域の生物地球化学循環のレビュー。近年「海氷のbrine(高塩分海水)にも生物が棲息し生物活動を行っていること」「海氷が海への鉄の供給を担っていること」「海氷を介しても大気海洋でCO2が交換されていること」が報告されるなど、大きなパラダイム・シフトが生じている。近年北極域は急速に変化しており、地球システムモデル研究や古気候学研究の重要性は増している。

2013年6月23日日曜日

海洋酸性化が最も早く進行するのは実は中層(Resplandy et al., 2013, GRL)

Role of mode and intermediate waters in future ocean acidification: analysis of CMIP5 models
将来の海洋酸性化におけるモード水と中層水の役割:CMIP5モデルの分析から
L. Resplandy, L. Bopp, J. C. Orr, J. P. Dunne
GRL 40, doi:10.1002/grl.50414 (2013)

海洋酸性化は実は水面下で最も進行している。

Hawaiiの定点観測所ALOHAの長期観測記録も物語っているように、表層で生成された有機物が分解される深さ200-500mの中層水での酸性化が顕著に現れている。
Physical and biogeochemical modulation of ocean acidification in the central North Pacific
John E. Dore, Roger Lukas, Daniel W. Sadler, Matthew J. Church, and David M. Karl
PNAS 106, 12235–12240
[論文概説「ハワイ発の海洋酸性化の記録〜ハワイの海で有名なのはビーチだけではない〜」]

Dore et al. (2009)を改変。
表層0-30mよりも235-265mでのpH低下の傾きが大きいことが見てとれる。

右から2番目のデータがpHの低下の速度(つまり酸性化)を表す。表層よりも中層が大きい。

Hawaiiにおける定点観測は北太平洋亜熱帯域のある1点にすぎないが(※それでも継続して測定するのには多大な労力が必要)、より広い範囲でもそうした現象が起きていることをモデルシミュレーションから示したのが本論文である。

本論文で用いられているモデルはCMIP5で用いられている地球システムモデル7つのアンサンブル平均である。
特に将来の排出シナリオ(RCP 2.6・4.5・6.0・8.5)に基づいて、どの海域のどの深度が早く酸性化するかを予想している。

彼らは海をおおまかに4つの水塊に分けている(※下の図を参照)。
STW; Stratified Tropical Waters
熱帯〜亜熱帯の表層0 - 200 m深

MIW; Mode and intermediate Waters
熱帯〜亜熱帯〜亜寒帯の温度躍層下部〜1,000 m深

DW; Deep Waters
南大洋の大部分と、全球の1,000〜3,000 m深

BW; Bottom Waters
全球の>3,000 m深

Resplandy et al. を改変。
太平洋の190ºEに沿った南北断面図。
上から、現在のpHの分布、RCP2.6シナリオの21世紀末のpHの低下、RCP8.5シナリオの21世紀末のpHの低下
図のb)とc)を見て明らかなように、亜熱帯域の200 - 500 m深に大きな酸性化が生じることが見てとれる。

また海洋循環は非常にゆっくりしているため、CDWやBWには酸性化がなかなか生じないことも見てとれる。

「何故中層水が早く酸性化するのか?」

答えは、同じDICが取り込まれたとしても、それが炭酸系の平衡に変化を来した際に、pHの変化として異なる応答をするということである。
例えば、DICの変化に対する水素イオン濃度の感度(∂[H+]/∂DIC)はMIWがSTWの1.5倍と推定されている。

STWとMIWを比較した場合、温度が全く異なる
STWは表層の温かい水(10~30℃)であるが、MIWは非常に冷たい水(~4℃)である。

また、MIWのアルカリ度がSTWよりも低いことも影響している(らしい)。


さらに、それぞれの水塊の表面積(CO2を交換する領域)には大きな開きがある。
例えば、MIWは南大洋のかなりの部分を占め、そこで大量のCO2を取り込み、沈み込む(大気から隔離される)が、DWやBWはほとんど大気と接触しない。
この沈み込みが効果的に働くことが、SAMWやAAIWといった南大洋における沈み込みが全球の海洋による人為起源CO2取り込みの4割を担っていることの説明として報告されている。
エクマン流によって駆動される南大洋における人為起源二酸化炭素輸送
T. Ito, M. Woloszyn & M. Mazloff
Nature 463 (7 January 2010), doi:10.1038/nature08687
[論文概説「南大洋における人為起源CO2吸収(Ito et al., 2010, Nature)」]


彼らの解析では、表層および中層の海洋酸性化を支配するのは主としてCO2の大気から海洋への無機的な溶解であって、生物活動や海洋循環の変化は小さな寄与しかしていないという。
しかし、Dore et al. (2009)では生物活動と海洋循環の変化(特に遠くで沈み込んだ水塊の水平方向の移流による)とされ、食い違っている。

メカニズムの解明については今後さらなる研究が必要と思われるが、重要な示唆としては、より長い時間スケールではこれら生物活動や海洋循環の変化が出てくる可能性があることである。

また、モード水・中層水が低緯度に輸送され、再び表層にもたらされる際に(30-100年後)、酸性化を強める効果があることも決して無視できない。

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※コメントと補足

先日、セミナーでの後輩の論文紹介(Druffel et al., 2002, Oceanography)で、サンゴ骨格に刻まれたボム・ピーク(核実験由来の放射性炭素が海水や石灰化生物の殻に取り込まれ、1970年頃をピークとする高いΔ14Cが観察されること)が、異なる海域において必ずしも同じ形で現れていないことが紹介されていた。
Ellen R.M. Druffel
Oceanography 15, 122–127 (2002)

Druffel (2002)を改変。
太平洋の様々な海域でサンゴ骨格に記録されたボム・ピーク。

特にガラパゴスにおけるボムピークの立ち上がりは遅く、さらにΔ14Cが低いことが図から見てとれる。
おそらくガラパゴスにおいて湧昇する水塊が遠く南大洋のSAMWを起源としていることがこうしたラグや希釈を生む原因となっていると思われる。

Extratropical sources of Equatorial Pacific upwelling in an OGCM
Keith B. Rodgers, Bruno Blanke, Gurvan Madec, Olivier Aumont, Philippe Ciais, Jean-Claude Dutay
GRL 30, dio: 10.1029/2002GL016003 (2003)

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海水炭酸系はわりとよく理解されており、モデルでもうまく再現できているため、観測記録だけでなく、モデルシミュレーション側からのアプローチもよくとられる。

観測ではDIC、TA、pH、pCO2 (fCO2)のうち、2つを測定することで、残り2つは理論計算から推定する場合が多い。しかし、厳密にはそうして計算された値には少なからず不一致が見られる(例えば、pHでも0.02程度の誤差が生じる)。
そのため、モデル計算の方がそうした測定に伴う誤差が影響せず、かつより広い範囲を、高分解能でカバーすることができるという特徴がある。

ただし、特に南大洋周辺や北大西洋の沈み込み帯などの海洋物理がうまくモデル内で再現できていないことを反映して、深層循環がうまく再現できていないことも多い。

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むろん、生物が主に棲息しているのは中層ではなく光の射す表層なので、より短い時間スケールでは、海洋酸性化の生態系の影響という意味においては、やはり表層が重要と言えそうである。(※生涯において中層水で一時を過ごす生物も少なからずいるとは思われるが)

新着論文(GRL, GPC, GBC, EPSL, DSR1, JC)

GRL
A new constraint on global air-sea CO2 fluxes using bottle carbon data
Tristan P. Sasse, Ben I. McNeil, Gab Abramowitz
WOCEとCLIVARが集めた海洋の混合層のボトル海水のpCO2データ17,800点を用いて、各海域の大気海洋間のCO2フラックスを推定。南半球は北半球に比べて5倍ものCO2を吸収していることが分かった。海洋のCO2の吸収量は1.55 ± 0.32 PgC/yrと推定される。

Aragonite Saturation State Dynamics in a Coastal Upwelling Zone
Katherine E. Harris, Michael D. DeGrandpre, Burke Hales
沿岸湧昇域は湧昇する低いΩを持った海水の影響もあわさって、海洋酸性化の影響を特に受ける海域である。Oregon大陸棚に設置された自動観測器によって得られた2007〜20011年にかけてのpH、pCO2データを解析。表層水のΩargは0.66〜3.9まで変動していた。春や秋には生物活動もあわさってΩargは1.0〜4.0と変動。春には淡水流入の影響でΩargはさらに低下した。冬はわりと単純に水塊の混合だけで説明されると思われる。

Recent warming at Summit, Greenland: Global context and implications
Daniel McGrath, William Colgan, Nicolas Bayou, Atsuhiro Muto, Konrad Steffen
グリーンランド頂上部の気温は1982-2011年にかけて年間0.09 ± 0.01 ℃で上昇しており、世界平均の6倍の速度である。平衡線の高度(elevation of the equilibrium line)と乾燥雪線(dry snow line)はそれぞれ44、35 m/yrで上昇した。2025年までに50%の確率で乾燥雪線が水が染み出る地帯(percolation facies)へと変化すると予想される。

Abyssal connections of Antarctic Bottom Water in a Southern Ocean State Estimate
Erik Sebille, Paul Spence, Matthew R. Mazloff, Matthew H. England, Stephen R. Rintoul, Oleg A. Saenko
南極底層水(AABW)は南極周辺の限られた海域で生成されるが、それぞれに異なった温度塩分を持つ。AABWはその後亜熱帯域の海底へと広がってゆくが、それぞれのAABWが31ºSに達する前に合併すると考えられる。その際にAABWの70%は南極を少なくとも一周することから、南極周回流が重要な役割を持っていると思われる。従ってその十年〜百年規模の変動はAABWの輸送に大きく影響すると思われる。

Sensitivity of the oceanic carbon reservoir to tropical surface wind stress variations
N. N. Ridder, K. J. Meissner, M. H. England
熱帯域のウォーカー循環が海洋炭素循環に与える影響をモデルシミュレーションから評価。貿易風を10%、20%、30%増加/弱化させたところ、赤道偏東風が強いときには全球の海洋の炭素吸収量が減少した。逆に貿易風が弱いときには吸収量は増加した。非線形関係には生物ポンプの変化が重要な役割を負っている。

Rapid loss of firn pore space accelerates 21st century Greenland mass loss
J. H. van Angelen, J. T. M. Lenaerts, M. R. van den Broeke, X. Fettweis, E. Meijgaard
南極氷床における近年の質量損失の大半は氷河流出量の増大が担っている。一方でグリーンランド氷床のそれの55%は表面融解が担っていると思われる。しかし表面で融解した水の40%は再び凝結すると考えられている。モデルシミュレーションから、RCP4.5シナリオの下では、21世紀末にはフィルンの間隙が減少することで、再凝結の緩衝作用が減少することが示された。その結果、グリーンランド氷床の融解量が増大し、21世紀末における海水準上昇への寄与は現在の4倍になると推定される(年間1.7 ± 0.5 mm)。

GPC
Has the Northern Hemisphere been warming or cooling during the boreal winter of the last few decades?
Juan C. Jiménez-Muñoz, José A. Sobrino, Cristian Mattar
IPCCの報告書によると北半球の冬の気温は上昇していると言われるが、実際には広い範囲でここ最近の寒冷化が報告されたりもしている。いくつかのデータセットを用いて過去30年間北半球の冬の温度変化を再評価したところ、ほぼ平衡〜弱い温暖化の傾向が見られた。グリーンランドだけは例外的に広範囲で有為な温暖化が確認された。

GBC
Winners and losers: Ecological and biogeochemical changes in a warming ocean
S. Dutkiewicz, J. R. Scott, M. J. Follows
生態系モデルと地球システムモデルを組み合わせて、将来の温暖化が光合成植物プランクトンコミュニティーに与える影響を評価。直接効果(温度変化が代謝に与える影響)と間接効果(微量栄養塩の供給・光環境の変化)のバランスによって決まると思われる。全球平均的には釣り合っているものの、地域的には複雑に両者の強弱が生物生産を制御している。植物プランクトンの中でも勝者と敗者が生まれると思われる。温暖化した世界で何が起きるかの中で最も確実な予測は、植物プランクトンの組成の変化が起きるということである。

EPSL
The “MIS 11 paradox” and ocean circulation: Role of millennial scale events
Natalia Vázquez Riveiros, Claire Waelbroeck, Luke Skinner, Jean-Claude Duplessy, Jerry F. McManus, Evgenia S. Kandiano, Henning A. Bauch
氷期から間氷期へと移行するターミネーション(ⅠとⅤに着目)の際の氷床の最後の挙動を北・南大西洋の堆積物コア中のIRDから復元。ターミネーションⅤ(MIS11への移行期)には最終退氷期のHS1よりも強く・長く続くハインリッヒ・イベントがあり、さらにバイポーラー・シーソーも確認された。大きなハインリッヒ・イベントはより多くの氷床崩壊によって、より長い継続期間はAMOCがより長く停滞していたことが原因と思われる。その後のAMOCのオーバーシュートがMIS11が現在の間氷期よりも温暖であったことの説明になるかもしれない。

Riverine silicon isotope variations in glaciated basaltic terrains: Implications for the Si delivery to the ocean over glacial–interglacial intervals
S. Opfergelt, K.W. Burton, P.A.E. Pogge von Strandmann, S.R. Gislason, A.N. Halliday
海洋一次生産は主に珪藻が担っており、それは河川からのケイ素の供給量によってコントロールされている。河川水のδ30Si測定から、玄武岩の集水域を流れる河川と直接氷河から海へと流れ込む河川とでSiの量とδ30Siの値が異なることが示された。南大洋の堆積物コアのδ30Siを再評価してみたところ、もし氷期-間氷期スケールで海水のδ30Siが変化していたとすると、少なからず影響していたと思われる。δ30Siからより厳密なケイ酸の利用効率の復元を行う際には考慮すべきである。

DSR1
From circumpolar deep water to the glacial meltwater plume on the eastern Amundsen Shelf
Y. Nakayama, M. Schröder, H.H. Hellmer
Pine Island棚氷からの淡水フラックスは1990年代以降増加しており、氷床力学・海水準・周辺の水塊特性に影響している。融解の原因は下から暖かい水(CDW)が谷底を通って貫入していることと考えられている。2010年の航海データをもとに、CDWが貫入する経路・棚氷の融解量・融水のその後を調査した。2010年の融解量は30mと推定され、先行研究の報告値とも整合的である。2000年の記録と比較すると、CDWがより暖かく、より厚くなっており、より貫入が強化されていると思われる。

Journal of Climate
Twentieth-Century Oceanic Carbon Uptake and Storage in CESM1(BGC)
Matthew C. Long, Keith Lindsay, Synte Peacock, J. Keith Moore, Scott C. Doney
地球システムモデル(CESM1)を用いて海洋のCO2フラックスをシミュレーションしたところ、観測との非常に良い対応が確認された。しかし南大洋のものは大きな食い違いが見られ、特に亜南極帯と海氷帯で顕著だった。人為起源CO2の取り込みは南半球における水塊形成に大きく支配されているが、それがモデルでうまく再現できていないことでCantとCFCの大きなバイアスが特に中層水で生まれている。

2013年6月22日土曜日

新着論文(PNAS, Ncom)

Proceedings of the National Academy of Sciences
18 June 2013; Vol. 110, No. 25
Earth, Atmospheric, and Planetary Sciences
Evidence for reactive reduced phosphorus species in the early Archean ocean
Matthew A. Pasek, Jelte P. Harnmeijer, Roger Buick, Maheen Gull, and Zachary Atlas

Direct electrolytic dissolution of silicate minerals for air CO2 mitigation and carbon-negative H2 production
Greg H. Rau, Susan A. Carroll, William L. Bourcier, Michael J. Singleton, Megan M. Smith, and Roger D. Aines

Sustainability Science
Global human appropriation of net primary production doubled in the 20th century
Fridolin Krausmann, Karl-Heinz Erb, Simone Gingrich, Helmut Haberl, Alberte Bondeau, Veronika Gaube, Christian Lauk, Christoph Plutzar, and Timothy D. Searchinger
人口・消費量・国内総生産の増加が現在と将来の資源の持続可能性に関する関心を集めている。人間による総一次生産の横取り(The human appropriation of net primary production; HANPP)という概念を用いることで、人間活動の生物圏への介入を定量化することができる。1910-2005年にかけて人口は4倍となり、経済支出は17倍となったにもかかわらず、HANPPは2倍に留まっている。その原因を考察。

Nature Communications
12 June 2013
Role of biogenic silica in the removal of iron from the Antarctic seas
Ellery D. Ingall, Julia M. Diaz, Amelia F. Longo, Michelle Oakes, Lydia Finney, Stefan Vogt, Barry Lai, Patricia L. Yager, Benjamin S. Twining and Jay A. Brandes
鉄は南大洋における生物生産を支配していると考えられているものの、その利用効率を決めるメカニズムについてはよく分かっていない。還元的な、有機鉄が生物源シリカに取り込まれるという新たなプロセスを通じて鉄が海洋システムから除去される過程が存在することが西南極の調査から分かった。ロス海においては年間11μmol/m2で除去されており、インプットと同程度である。除去が起きることで鉄をあまり必要としない微生物構造へと変化し、生態系全体としての一次生産量と炭素捕獲量が減少すると思われる。

19 June 2013
An earthquake gap south of Istanbul
Marco Bohnhoff, Fatih Bulut, Georg Dresen, Peter E. Malin, Tuna Eken and Mustafa Aktar

Exceptionally well-preserved Cretaceous microfossils reveal new biomineralization styles
Jens E. Wendler and Paul Bown
海洋堆積物に含まれる炭酸塩は古環境復元に広く使用されているが、それは堆積後の続成過程が最低限に留まっていることが条件となる。白亜紀に絶滅した渦鞭毛藻類(pithonellids)が従来見落とされていたことに、複雑な炭酸塩の細胞壁を持っていたことが、タンザニアのラーゲルシュテッテンから分かった。繊維構造は壁を強く・柔軟にする上で重要であったと思われる。また低密度にすることで急速に沈まないようにしていたようだ。

Upper mantle viscosity and dynamic subsidence of curved continental margins
Victor Sacek and Naomi Ussami

Genome of the red alga Porphyridium purpureum
Debashish Bhattacharya, Dana C. Price, Cheong Xin Chan, Huan Qiu, Nicholas Rose, Steven Ball, Andreas P. M. Weber, Maria Cecilia Arias, Bernard Henrissat, Pedro M. Coutinho, Anagha Krishnan, Simone Zäuner, Shannon Morath, Frédérique Hilliou, Andrea Egizi, Marie-Mathilde Perrineau and Hwan Su Yoon

Carbon dioxide concentration dictates alternative methanogenic pathways in oil reservoirs
Daisuke Mayumi, Jan Dolfing, Susumu Sakata, Haruo Maeda, Yoshihiro Miyagawa, Masayuki Ikarashi, Hideyuki Tamaki, Mio Takeuchi, Cindy H. Nakatsu and Yoichi Kamagata
石油が貯蔵されていたサイトといった地下の地質構造帯は炭素捕獲・貯留(CCS)の最有力候補の一つであるが、そうしたサイトの生態系や、高圧のCO2を注入した際の生態系への影響についてはよく分かっていない。高温高圧実験によって、高圧のCO2下ではメタン生成が倍増することが示された。従って、CCSによって微生物によるエネルギー生産が促進されることが示唆される。