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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English) おまけTwilog

2013年4月18日木曜日

新着論文(Nature#7445)

Nature
Volume 496 Number 7445 pp269-392 (18 April 2013)

RESEARCH HIGHLIGHTS
Desert plants reap no rewards
砂漠の植物はご褒美をもらえない
Glob. Change Biol. http://dx.doi.org/10.1111/ gcb.12177 (2013)
大気中のCO2濃度の増加は植物の一次生産を刺激すると考えられている。しかしながら一方で乾燥化は植物の成長を阻害する。アメリカ南西部のMojave砂漠に生える植物を10年間にわたりCO2を増やした状態に維持したところ、低木や草の支配的な種はより成長することが示された。しかし乾燥化しているとそうではないことが分かった。大陸の3分の1を覆う砂漠の生態系は、CO2よりもむしろ水によってコントロールされているかもしれない。

Old evidence for fewer fish
より少なかった魚の古い証拠
Fish Fish. http://dx.doi. org/10.1111/faf.12034 (2013)
イギリスにおける白身魚の過去の漁獲量の調査から、19世紀にトローリング漁法によって魚の個体数が64%も低下した可能性が示された。このことは、科学的なモニタリングがスタートするよりもはるか昔から、トローリングが魚の資源量に影響を与えていたことを物語っている。
>より詳細な記事
Fishermen report on stocks from beyond the grave
Daniel Cressey

Symbionts set squid’s clock
共生者がイカの時計をセットする
mBio 4, e00167-13 (2013)
コウイカの近縁であるHawaiian bobtail squidEuprymna scolopes)の腹部にはバクテリア(Vibrio fischeri)が共生しており、夜間に成長している。光を発するバクテリアと共生するイカには光に反応する遺伝子(escry1)が発現し、日々のリズムが見られることが示された。他のほ乳類などでも同様の関係があるかもしれない。

Cheap, colourful solar cells
安くてカラフルな太陽電池
Nano Lett. http://dx.doi.org/10.1021/nl400349b (2013)
韓国の研究グループは、金属と有機物の合成物質(鉛、メチルアンモニウム、ヨウ素/臭素)を新たに開発し、それは太陽電池として機能する。ヨウ素/臭素比を変えることで安定性と光吸収能力が変化し、様々な波長の光を透過させることができることが分かった(つまり色が様々に変化する)。さらに太陽光からのエネルギー変換効率も非常に高く、現在の安いコストのものと比肩するほどらしい。

SEVEN DAYS
The costs of storms
嵐のコスト
アメリカにおける巨大な雷雨(2億5千万ドル以上の被害をもたらすもの)の経済損失は1970年から2009年にかけて2倍に増加したことが、ドイツの保険会社Munich ReによってEGUにて報告された。雷雨へと繋がる気象状態の頻度が増していることが原因だと彼らは主張している。
>より詳細な記事
Climate change brings stormier weather to the US
気候変化がアメリカにより嵐的な気象をもたらす
Quirin Schiermeier

Telescope go-ahead
望遠鏡にゴーサインが出る
ハワイのマウナケアの山頂に30mの巨大望遠鏡( Thirty Meter Telescope; TMT)を建設する計画に許可が下りた。ちなみにケック望遠鏡は10m。
>より詳細な記事
Giant Hawaiian telescope gets go-ahead for construction
Alexandra Witze

Publishing deal
出版社の取引
ElsevierがMendeleyを買収した。Mendeleyは200万人のユーザを持つ研究者用のSNSで、論文に対するコメントなどをシェアすることのできるサービスである。両社ともに買収額は公表していないが、6,900万ドルという話も。

To steal a ship
船を盗むために
スクリップス海洋研究所に属する全長52mの研究船New Horizonを盗もうとした女性が逮捕された。船の運航スタッフは全員寝ていて気づいていなかったという。

NEWS IN FOCUS
Synthetic biologists and conservationists open talks
合成生物学者と環境保護論者がオープンに話す
Ewen Callaway
しかしながら、自然をいじくり回した結果生じる、意図しない結果には常に心配が伴う。

‘Living fossil’ genome unlocked
'生きた化石'のゲノムが明らかに
Chris Woolston
古代魚シーラカンスの遺伝子ははるかな古代のことを多く記録している。

Climate models fail to ‘predict’ US droughts
気候モデルがアメリカの干ばつを’予想’するのに失敗する
Quirin Schiermeier
シミュレーションは過去の大きな干ばつを再現することはできたが、時期が間違っていた。

FEATURES
Forest ecology: Splinters of the Amazon
森林生態学:アマゾンのスプリンター
生態学者のThomas Lovejoyがブラジルの熱帯雨林に人工の実験場を設置してから数10年が経過したが、現在世界中の様々な地域で同様の実験がなされている。

COMMENT
Sustainability: Choose satellites to monitor deforestation
持続可能性:森林破壊をモニタリングするために人工衛星を選ぶ
違法な森林伐採が熱帯地域の森林とそこに眠る炭素を脅かしている。「政府は結束して初期警告システムを構築すべきだ」、とJim Lynchほかは言う。

Phylogenetics: Heed the father of cladistics
系統学分岐学の父のことを心に留める
「系統学の創始者であるWilli Hennigが発見した、進化の関係性に関する方法は忘れてはいけない」、とLeandro AssisとOlivier Rieppelは言う。

CORRESPONDENCE
Marine ecosystems: Overfishing in west Africa by EU vessels
海洋生態系:EUの船による西アフリカの過漁獲
Raül Ramos & David Grémillet
中国だけがアフリカ西部の海洋生態系を脅かしているわけではない。1960年代以降、ヨーロッパもまた過度な漁獲を行い続けてきたのであり、さらに現在EUはアフリカの国家との漁業の取り決めを見直そうとしている。その見直しは怪しげなものであり、アフリカからEUへと漁業資源を大量にもたすことを目的としている。Canary諸島周辺の生態系はひどく傷つけられており、EU政府は取り決めを見直すべきだ。

Environment: Scale of global road map is impractical
環境:全球的なロードマップの物差しは非実用的だ
Malgorzata Blicharska

Contamination: Uphold standards for lab reagents
汚染:研究室の試薬の基準を確認せよ
Sally Roberts, Heidi Fuller & Bruce Caterson
科学者は購入した試薬類の純度が厳しくテストされていると思いがちだが、その思い込みはリスクが大きいかもしれない。

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RESEARCH
NEWS & VIEWS
Archaeology: A potted history of Japan
考古学:日本の簡略化した歴史
Simon Kaner
縄文時代の土器の破片に付着した脂質の発見から、その土器が料理に使われていたことが分かった。人類の発明の歴史に関して再考する必要があるかもしれない。

Astronomy: A cosmic growth spurt in an infant galaxy
天文学:銀河の子供から突然噴き出す宇宙の成長
Desika Narayanan & Chris Carilli

Biogeochemistry: Nitrogen deposition and forest carbon
生物地球化学:窒素の沈降と森林の炭素
Beverly Law
人間活動(農業用の肥料の使用など)に伴い、大気を通じて森林へともたらされる窒素の量が増加している。全球的な常緑針葉樹林にもたらされる窒素に対する光合成の応答が定量化された。

ARTICLES
The African coelacanth genome provides insights into tetrapod evolution
アフリカのシーラカンスのゲノムが四肢動物の進化に関する洞察を与える
Chris T. Amemiya et al.
シーラカンスは魚の祖先の姿に非常に似ており、初めて陸上に進出した魚に対する知見を与えてくれる。アフリカのシーラカンス(Latimeria chalumnae)のゲノム解読から様々なことが分かった。1つ目は四肢動物に近いのはシーラカンスよりもむしろ肺魚であること。2つ目はシーラカンスのタンパク質翻訳は四肢動物や肺魚よりも遅く進化したこと。3つ目は脊椎動物が陸へと進出する際に変化を経験した遺伝子や制御エレメント(regulatory element)が新たな環境への適応を反映していることである。

LETTERS
A dust-obscured massive maximum-starburst galaxy at a redshift of 6.34
赤方偏移6.34にある塵に隠された大質量で最高形成率のスターバースト銀河
Dominik A. Riechers et al.

Terrestrial water fluxes dominated by transpiration
蒸発散に支配される陸域の水フラックス
Scott Jasechko, Zachary D. Sharp, John J. Gibson, S. Jean Birks, Yi Yi & Peter J. Fawcett
陸の水は雨や植物の蒸発散によってリサイクルしている。しかし全球的な蒸発散の規模については気候モデルでもよく再現できず、推定値もばらついている。湖や河川の水の酸素・水素同位体データから、陸上の水フラックスの80-90%は蒸発散が担っていることが示された。年間に62,000 ± 8,000 km3の水がリサイクルされており、地表にもたらされる日光のエネルギーの半分が使われていると考えられる。さらに陸上植物による一次生産量を見積もったところ、年間129±32GtCと推定された。物理的なフラックス(蒸発など)よりも、生物的なフラックスの方が重要であり、この知見は水資源の予測、気候変化予測などのモデルを改善することに繋がることが期待される。

Earliest evidence for the use of pottery
土器の使用の最も古い証拠
O. E. Craig, H. Saul, A. Lucquin, Y. Nishida, K. Taché, L. Clarke, A. Thompson, D. T. Altoft, J. Uchiyama, M. Ajimoto, K. Gibbs, S. Isaksson, C. P. Heron & P. Jordan
土器は20-12kaに狩猟採集時代の東アジアにおいて発明されたと考えられている。縄文時代に相当する日本の遺跡から発掘された最古の土器の破片(15-11.8ka)に付着した食べ物の残りかすの窒素・炭素同位体分析から、それが淡水と海の生物を調理するのに使われたものであることが示された。水生態系の上位捕食者のものであったと推定される。

Slower recovery in space before collapse of connected populations
連結された集団の崩壊の前には空間的回復が遅くなる
Lei Dai, Kirill S. Korolev & Jeff Gore