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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English) おまけTwilog

2013年4月14日日曜日

新着論文(GPC, CG, GCA, EPSL)

Global and Planetary Change
☆Volume 104, Pages 1-74, May 2013
A 400-year tree-ring δ18O chronology for the southeastern Tibetan Plateau: Implications for inferring variations of the regional hydroclimate
Xiaohong Liu, Xiaomin Zeng, Steven W. Leavitt, Wenzhi Wang, Wenling An, Guobao Xu, Weizhen Sun, Yu Wang, Dahe Qin, Jiawen Ren
チベット平原から得られた木の年輪に沿った過去400年間のδ18O記録。温度、日照時間との相関が確認された。さらに夏の雲被覆量、相対湿度、降水量とも負の相関が確認された。地域的な水気候の指標だけでなく、夏モンスーンの指標にもなるかもしれない。ヒマラヤから得られているアイスコアのδ18Oともよく対応しているという。

Revisiting the Indian summer monsoon–ENSO links in the IPCC AR4 projections: A cautionary outlook 
Mathew Roxy, Nitin Patil, K. Aparna, Karumuri Ashok
IPCC AR4に採用された複数のモデル(20C3M)のうち、4分の1しかENSOもどきを再現できていない。さらにそのうちの2つしかENSOとENSOもどきの両方を再現できていない。現行のモデルではモンスーンやENSOの変動を捉えきれていない。将来の温室効果ガス・エアロゾルによる気候変化の予測精度を向上するためにも、モデルを改善する必要がある。

Chemical Geology 
☆Volume 343,  Pages 1-110, 8 April 2013
No discernible effect of Mg2+ ions on the equilibrium oxygen isotope fractionation in the CO2–H2O system
Joji Uchikawa, Richard E. Zeebe
BaCO3の無機沈殿実験から、水-炭酸塩におけるδ18Oの同位体分別を評価。Mg2+イオンの濃度は同位体分別にほとんど影響しないことが示された。つまり、淡水に対して決定された同位体分別係数が海水にも適用できることを示唆している。

Coupling between suboxic condition in sediments of the western Bay of Bengal and southwest monsoon intensification: A geochemical study
J.N. Pattan, Ishfaq Ahmad Mir, G. Parthiban, Supriya G. Karapurkar, V.M. Matta, P.D. Naidu, S.W.A. Naqvi
ベンガル湾から採取された堆積物コアの過去45kaにわたる地球化学的分析の結果について。9.5ka頃に貧酸素の状態が起き、モリブデンやジルコニウムが濃集。北半球の夏の日射量増大に伴う夏モンスーンの強化が原因と考えられる。一次生産は増加していないため、陸源物質の輸送量が増加した結果、低層に有機物が多くもたらされ分解されたことが貧酸素の原因?さらに、δ15NにはD/Oイベントやハインリッヒ・イベントなどとも対応が見られる。

Geochimica et Cosmochimica Acta 
☆Volume 109,  Pages 1-414, 15 May 2013
Determination of low-level mercury in coralline aragonite by calcination-isotope dilution-inductively coupled plasma-mass spectrometry and its application to Diploria specimens from Castle Harbour, Bermuda
Carl H. Lamborg, Gretchen Swarr, Konrad Hughen, Ross J. Jones, Scot Birdwhistell, Kathryn Furby, Sujata A. Murty, Nancy Prouty, Chun-Mao Tseng
新たなサンゴ骨格中のHg測定法を紹介。バミューダで採取された脳サンゴ(Diploria labyrinthiformis)に対して1949年から2008年にかけてのHgの変動を復元したところ、長期的な減少傾向が見られた。港における産業廃棄物の投棄などの影響は特に見られなかった。

Reactivity of neodymium carriers in deep sea sediments: Implications for boundary exchange and paleoceanography
David J. Wilson, Alexander M. Piotrowski, Albert Galy, Josephine A. Clegg
深層水のNd同位体が過去の風化速度や海洋循環の指標として使用されているが、固相-液相間の交換についてはよく分かっていないことが多い。堆積物のリーチング実験から同位体への影響を評価。

Calibrating the glycerol dialkyl glycerol tetraether temperature signal in speleothems 
Alison J. Blyth, Stefan Schouten
世界中から得られた鍾乳石のGDGTが気温の指標になるかどうかを評価。TEX86、MBT/CBTともに気温との相関が確認された(それぞれ、2.3℃、2.7℃の精度で気温を復元可能)。解決すべき課題は多いが、陸域の気温指標として有望かも?

Organic carbon export from the Greenland ice sheet
Maya P. Bhatia, Sarah B. Das, Li Xu, Matthew A. Charette, Jemma L. Wadham, Elizabeth B. Kujawinski
グリーンランド氷床から海へと運ばれる溶存+粒子状有機物の炭素同位体(δ13C+Δ14C)を測定。輸送されるDOCは北極圏の小さい河川に匹敵するほど、POCは北極圏の大きな河川に匹敵するほどの量であることが分かった。DOCのΔ14Cは時間変動を示したが、POCは示さなかった。異なるメカニズムによってコントロールされていると考えられる。

☆Volume 108,  Pages 1-202, 1 May 2013
Calibration and application of the ‘clumped isotope’ thermometer to foraminifera for high-resolution climate reconstructions
Anna-Lena Grauel, Thomas W. Schmid, Bin Hu, Caterina Bergami, Lucilla Capotondi, Liping Zhou, Stefano M. Bernasconi
古気候学研究において温度プロキシの開発は極めて重要であり、生体効果を受けないとされるclumped isotopeには大きな期待が寄せられている。幅広い温度(2-28℃)に生息する浮遊性・底性有孔虫に対して行われた測定結果をもとに、温度復元の不確実性および不確実性をもたらすメカニズムを考察。地中海で得られた堆積物コアのG. ruberに対する測定結果はここ700年でも大きくばらつき、正しい温度を得るには数多くの結果を平均化する必要がある。現在のところ、大きな温度変化に対しては適用可能だが、小さな変化にはまだ技術開発が必要かもしれない。

Earth and Planetary Science Letters
☆Volume 368, 15 April 2013, Pages 20-32 
Rapid changes in meridional advection of Southern Ocean intermediate waters to the tropical Pacific during the last 30 kyr    
L.D. Pena, S.L. Goldstein, S.R. Hemming, K.M. Jones, E. Calvo, C. Pelejero, I. Cacho
氷期間氷期の気候変動において南大洋のプロセスが大きく寄与していたと考えられている。特に、SAMW/AAIWを介した高緯度から低緯度へのパス(oceanic tunnelling)も高緯度のシグナルを低緯度に伝播する上で重要だったと考えられている。しかし最終退氷期のパスについては証拠が断片的でよく分かっていないことが多い。東赤道太平洋から得られた堆積物コア中のN. dutertreiの殻のεNdからEUCの水のもとになった水を調査したところ、最終退氷期の寒い時期(H0, H1, H2, LGM)によりSAMW/AAIWが強まっていたことが示唆される。南大洋で湧昇した氷期の古い深層水は、低緯度へと伝播したと考えられる。