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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English) おまけTwilog

2013年2月22日金曜日

新着論文(Science#6122)

Science
VOL 339, ISSUE 6122, PAGES 873-1000 (22 FEBRUARY 2013)

Editors' Choice
Modern Warming by Proxy
プロキシによる現在の温暖化
Geophys. Res. Lett. 40, 189 (2013).
全球のあらゆる地域の気温の間接指標(木の年輪、サンゴ、アイスコア、鍾乳石、海洋堆積物)は、過去100年間に地球が温暖化していることを明らかに、そして何度も示している。新たに170の間接指標をまとめた研究では、観測がある期間については非常に良い一致を見せており、過去130年間の気温の変化を明らかにしている。気温上昇は1960年代には一度停止したが、その後現在にかけて温暖化が継続している
>問題の論文
Global warming in an independent record of the last 130 years
Anderson, D. M., E. M. Mauk, E. R. Wahl, C. Morrill, A. Wagner, D. R. Easterling, and T. Rutishauser

Risky Fishing
リスクの高い漁業
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 110, 2076 (2013).
牧場主などと違い漁業に従事する人には保険や価格援助などがなく、金銭的なリスクが大きい。

News of the Week
Drying Out the Cradle of Civilization
文明のゆりかごを渇かせる
チグリス・ユーフラテス沿いはもともと長く乾燥しているが、人工衛星GRACEの重力観測データから周辺に住む人々が危険な早さで水を引いていることが分かった。

Looking for Life on Mars? Dig Deeper
火星の生命探し?より深く掘れ
12,000年前に地球に落ちた火星の隕石は火星に生命が存在した証拠をより強めている。隕石には硝酸塩や過塩素酸塩が多く含まれ、それは地球に落下後に付加したものというよりは、もともと火星の地殻に含まれていたものであることを示している。地球でもあらゆる場所に生命は存在しているため、火星でもより深い場所に生命が見つかる可能性もあるという。

New Whale Species Unearthed in California
カリフォルニアで鯨の新種が発掘された
カリフォルニアの高速道路の建設現場から、新種のクジラ(歯のあるヒゲクジラ;toothed baleen whales)の化石が複数発掘された。おおよそ19-17Maのもので、5Maより以前に絶滅したと考えられている。4種のクジラは歯があるクジラとしてはこれまで見つかっている中では最古のもので、歯の摩耗が激しいことから、サメなどを好んで食べていた可能性が指摘されている。

Economics Dims Coal’s Power
経済が石炭の発電力を翳らせる
天然ガスへのシフトによって石炭の発電資源としての価値が下がっている。アメリカにおいては過去6年間に石炭の発電量は50%から38%へと低下した。石炭は船や鉄道を使って運ぶのにも莫大な費用がかかり、明らかに経済的なメリットが翳りつつある。

Ancient Pee Provides Clues To Africa’s Past
古代のおしっこがアメリカの過去についてのヒントを与える
湖や泥炭地の堆積物に残された花粉などが得られないため、アフリカの乾燥地域では古環境を復元することが難しい。ケープハイラックス(rock hyrax; Procavia capensis)は地面に穴を掘り、世代を通して同じ穴におしっこをする。そうしたおしっこの中には花粉や炭などが残っているため、そこから古環境を推定することができる。フランスの研究グループは長さ2mほどにもなるおしっこの化石を用いて12kaの古環境を推定したところ、「より湿潤な環境」であったことが示唆され、モデルなどから示唆されている「より乾燥した環境」と食い違う結果となった。

News & Analysis
North Korea's Blast Poses Riddles and Challenges
北朝鮮の核爆発が謎と課題を浮き彫りに
Richard Stone
北朝鮮の3度目の地下核実験について。用いられたのはプルトニウム型?ウラン型?

Congress Tries Again to Head Off Looming Helium Crisis
議会が次第に迫ってくるヘリウム危機を回避する試みを再び
Adrian Cho
今年末に迫るヘリウムの深刻な不足を回避するために、議会で予算が配分された。

Warning Issued for Looming Data Gap From Fleet of Weather Satellites
気象観測衛星の軍団からのデータのギャップに対する危機的な問題
David Malakoff
アメリカの政策決定者たちは、必要不可欠な天気予報データの欠損や目下簡単な解決策がないことに対して危機感を抱きつつある。

How Sweet It Is: Genes Show How Bacteria Colonized Human Teeth
なんと甘いことか:遺伝子が「バクテリアがどのようにしてヒトの歯に巣食ったか」を示す
Ann Gibbons
人類が農業を発明してから、虫歯菌がヒトの歯に大きく繁殖し、多様性に乏しい生態系が口内に形成されたことが遺伝学研究から新たに明らかになった。

International Arbiter of Animal Names Faces Financial Woes
動物の名前の国際的な権威が財政難に苦しむ
Elizabeth Pennisi


Letters
Old Trees: Extraction, Conservation Can Coexist
Raf Aerts

Old Trees: Cultural Value
Malgorzata Blicharska and Grzegorz Mikusinski

Old Trees: Large and Small
Jacob Cecile, Lucas R. Silva, and Madhur Anand

Old Trees: Large and Small—Response
David B. Lindenmayer, William F. Laurance, and Jerry F. Franklin

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Research
Perspectives
The Aerosol Nucleation Puzzle
エアロゾル凝結のパズル
Meinrat O. Andreae
北半球の森林における野外実験と室内実験から、どのようにしてガス分子から大気中のエアロゾルが形成されるのかが示された。

Research Article
Using the Earth as a Polarized Electron Source to Search for Long-Range Spin-Spin Interactions
Larry Hunter, Joel Gordon, Stephen Peck, Daniel Ang, and Jung-Fu Lin

Reports
Global Patterns of Groundwater Table Depth
地下水面の深さの全球的なパターン
Y. Fan, H. Li, and G. Miguez-Macho
浅い地下水は陸の生態系を支えているが、地下水面の全球的な分布についてはよく分かっていない。モデルを用いて、パターンやプロセスを補完。地下水面の深さで全球スケールでの湿地の分布や植生などをうまく説明することができることが示された。全球の陸の22 - 32%に浅い地下水が影響を及ぼしていると考えられる。

Direct Observations of Atmospheric Aerosol Nucleation
大気中のエアロゾル凝結の直接観測
Markku Kulmala et al.
大気中のエアロゾルは放射強制力・雲形成・気候などにも大きな影響を及ぼしている。エアロゾル形成プロセスは2nmほどの微小なサイズで起きているため、直接的な観測はこれまで不可能だった。直径1nmまで観察できる大気中の微粒子観測から、3つのフェーズが重要であることが分かった。大気中のエアロゾル形成に有機物が重要であることが示された。

Little Emperors: Behavioral Impacts of China's One-Child Policy
小さな皇帝:中国の一人っ子政策が振る舞いに与える影響
L. Cameron, N. Erkal, L. Gangadharan, and X. Meng
中国の都市部で過去30年間に行われてきた一人っ子政策は抜本的な人口抑制策の一つである。政策が開始される1979年の前後に生まれた421人に対して調査を行ったところ、一人っ子政策が「他人を信用せず、信頼できず、リスクを嫌い、競争力が小さく、より悲観的で、より不誠実」な個人を産み出してきたことが示された。中国の社会にも影響を及ぼしていると考えられる。

Technical Comments
Comment on "Bilaterian Burrows and Grazing Behavior at >585 Million Years Ago"
"585Maよりも前の左右相称動物の巣穴とすり行動"に対するコメント
Claudio Gaucher, Daniel G. Poiré, Jorge Bossi, Leda Sánchez Bettucci, and Ángeles Beri

Response to Comment on "Bilaterian Burrows and Grazing Behavior at >585 Million Years Ago"
"585Maよりも前の左右相称動物の巣穴とすり行動"に対するコメントに対する返答
Ernesto Pecoits, Kurt O. Konhauser, Natalie R. Aubet, Larry M. Heaman, Gerardo Veroslavsky, Richard Stern, and Murray K. Gingras