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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English) おまけTwilog

2013年2月14日木曜日

新着論文(Nature#7436)

Nature
Volume 494 Number 7436 pp147-276 (14 February 2013)

EDITORIALS
Damage control
損害のコントロール
極端な出来事に備えるにはインフラだけでなく、社会の準備度も考慮しなければならない。ハリケーン・Sandyで大きな被害が出たNYの例。

RESEARCH HIGHLIGHTS
Bats as disease reservoirs
病気の温床としてのコウモリ
Proc. R. Soc. B 280, 20122753 (2013)
げっ歯類よりもコウモリがヒトを含むほ乳類に病原菌を運んでいるかもしれない。寿命が長く、より多くの糞をし、仲間同士くっついているようなコウモリほど多くのウイルスを運んでいる。コウモリ間でも頻繁にウイルスの交換が起きているらしい。

Fish oils turn on cellular recycling
魚油が細胞のリサイクルのスイッチを入れる
Genes Dev. http://dx.doi. org/10.1101/gad.205294.112 (2013)
線形動物(C. elegans)に対して、魚の脂に含まれる多価不飽和脂肪酸がオートファジー(栄養が足りない際に余った細胞がリサイクルされること)を刺激することで寿命を伸ばす効果があることが示された。この事実は魚を多く食べる人ほどより健康であることを説明するかもしれない。

Symbiosis leads to diversity
共生が多様化に繋がる
Proc. R. Soc. B http://dx.doi. org/10.1098/rspb.2012.2820 (2013)
種の競合や補食といった生物の相互作用が生物の多様化を招くように、共生関係が生物の多様化に繋がることが植物を食べる昆虫の研究から分かった。タマバエ(gall midges; Cecidomyiidae)は真菌類と共生することで植物の細胞を破壊してもらう一方、真菌の胞子を運ぶ役割を担っている。より共生を行っているタマバエはそうでないものに比べ、17倍も多様であることが示された。

SEVEN DAYS
Subglacial lake life
氷底湖の生命
南極氷床の800m地下に存在するWhillans氷底湖から得られた水と堆積物の中に生きた微生物が確認された。アメリカの研究グループが世界初の快挙。
>より詳細な記事
Lake-drilling team discovers life under the ice
Quirin Schiermeier

Landsat 8 lifts off
ランドサット8の打ち上げ
NASAは2/11にランドサット8を打ち上げた。40年間にわたる地球の環境変動のモニタリングを引き継ぎ、森林火災や氷河の後退などを監視する。
>より詳細な記事
NASA launches Landsat 8 into orbit
Jeff Tollefson

Nuclear test
核実験
北朝鮮が3度目となる地下核実験を行った。3-10キロトン規模のものであろうと推測されている。2006年と2009年のものよりもうまくいった模様。大きな疑問はどういった核爆弾が実験されたかで、これまで北朝鮮はプルトニウム型の爆弾を実験していたが、ウラン型の爆弾を使用できるところまで技術が進展していると考える人もいる。
>より詳細な記事
North Korea tests “smaller and lighter” bomb
Geoffrey Brumfiel

NEWS IN FOCUS
特になし

FEATURES
New York vs the sea
ニューヨーク v.s. 海
Jeff Tollefson
ハリケーン・Sandyの例に倣って、科学者と職員は未来の洪水からアメリカ最大の都市を守ろうと努力している。

COMMENT
Classify plastic waste as hazardous
プラスチックゴミを「危険を及ぼすもの」に分類せよ
「プラスチックゴミを管理する政策は時代遅れであり、人と野生生物の健康を危険にさらしている」とChelsea M. Rochman、Mark Anthony Browneなどは言う。

CORRESPONDENCE
特になし

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RESEARCH
NEWS & VIEWS
All rise for the case of the missing magma
John Maclennan
インド洋の海嶺の詳細な分析から、マントルの組成変動が海嶺に沿った海底の膨らみの隆起に驚くほど重要な役割を負っていることが示された。

ARTICLES
Thin crust as evidence for depleted mantle supporting the Marion Rise
Huaiyang Zhou & Henry J. B. Dick
インド洋南西部のMarion Riseにおける試料採取から、地殻が不連続で薄く、隆起が地下の低密度のマントルによって支えられていることが示された。

LETTERS
The structure of the asteroid 4 Vesta as revealed by models of planet-scale collisions
惑星規模の衝突モデルから明らかになる小惑星ベスタの構造
M. Jutzi, E. Asphaug, P. Gillet, J.-A. Barrat & W. Benz
3次元モデルを用いて惑星同士の天体衝突からベスタ状の小惑星ができるかどうかを再現。

Insolation-induced mid-Brunhes transition in Southern Ocean ventilation and deep-ocean temperature
日射量によって引き起こされる南大洋の気体交換と深層水の温度のmid-Brunhesにおける変化
Qiuzhen Yin
430ka以降の間氷期(MIS11〜)はよりCO2濃度が高く、より暖かい間氷期として知られているが、その変化は'mid-Brunhes event (MBE)'と呼ばれている。日射量の変動を与えるだけで、海氷・温度・蒸発・塩分のフィードバックで南大洋の気体交換やAABW形成を再現できることがモデルシミュレーションから分かった。MBE以前の間氷期はよりAABWの形成が強く、深層水はより冷たかったことが示された。MBEを挟んで軌道要素に大きな変化は見られないため、日射の変動がAAIWの形成や深層水の温度に影響するというのはこれまで予想されていなかった。

Biodiversity decreases disease through predictable changes in host community competence
宿主のコミュニティーの能力の予測可能な変化を通して生物多様性が病気を減らす
Pieter T. J. Johnson, Daniel L. Preston, Jason T. Hoverman & Katherine L. D. Richgels
両生類の感染症に関する調査と実験から、多様性が高いほど感染症の広がりが抑えられることが示された。種が多いほど種全体として感染に耐える能力が高まることが原因だろう。