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1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
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2013年1月11日金曜日

新着論文(Science#6116)

Science
VOL 339, ISSUE 6116, PAGES 113-244 (11 JANUARY 2013)

Editors' Choice
Acid to Acid
酸から酸へ
J. Am. Chem. Soc. 134, 20632 (2012).
大気中でSO3がH2SO4に水和されることによって酸性雨が作られ、粒子が形成される。理論に基づいた計算から、H2SO4が化学反応における触媒として重要な役割を負っていることが示された(従来は水分子だと考えられていたらしい)。また化学反応の経路を決定するのは、生成場の水とH2SO4の元々の濃度であることも分かった。

Vital Variation
命に関わる多様性
Ecol. Lett. 10.1111/ele.12035 (2012).
人間活動の結果として現在は地球史上6度目の大量絶滅の最中にあることが認識され始めている。4400種ほどの哺乳類のデータベース(panTHERIA)を用いてそれぞれの種の絶滅に対する弱さのパターンを調べたところ、およそ期待通りに、「個体数が少なく」、「繁殖の速度が遅く」、「成長が遅い」種ほど(例えば大型哺乳類など)絶滅の危険性が高いことが示された。一方で種内でも様々な特性(体長、糞の大きさなど)を持ったものほど絶滅には強いことが示された。従って、より多様性を持ったものほど変化する環境に適応できることが示された。

Shrinking Atomic Clocks
小さくなる原子時計
Appl. Phys. Lett. 101, 253518 (2012).
現在の原子時計(chip-scale atomic-clock; CSAC)はナビゲーション・システムなどの様々な局面において使用されているが、軽いが比較的電気を食い(< 150 mW)、時間が経つにつれてドリフトすることが知られている(頻繁に較正しなければならない)。今回、Ybイオンを用いた新たな原子時計が作られた。従来型の時計と同程度の重さで、しかも長期安定性も高いという。

Microbial Conversion
微生物の変換
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 10.1073/ pnas.1220608110 (2012).
ここ数十年間、アマゾンの熱帯雨林が牧草地へと急速に変化しつつある。その結果、花や植物種の多様性が失われ、土壌の豊かさも低下している。そうした変化が土壌中の微生物に与える影響はよく分かっていない。熱帯雨林と牧草地の土壌中のDNAを比較したところ、α多様性(種数)は牧草地のほうが高いが、β多様性(場所ごとの多様性)は熱帯雨林のほうが高いことが示された。

News of the Week
Clearing the Air on Particulates
大気中の粒子を綺麗にする
1/1より、74の中国の大都市において2.5μm以下の有害な粒子の濃度が測定され始めた。中国にあるアメリカ大使館の測定値と中国政府が公表する数値(および解釈)が大きく食い違っているという問題があった。環境コンサルタントのSteven Q. Andrewsによれば中国政府は汚染を軽視しているという。

Transocean Owes $1 Billion For Clean Water Act Violations
’水を綺麗にする活動’を犯した罪でTransocean社が100億ドルを科せられる
2010年にメキシコ湾で起きたDeepwater Horizon石油流出事故を受けて、掘削を請け負っていたTransocean Deepwater社が140億ドルの賠償を支払うことが決定した。賠償金の多くは環境保護活動やゆく30年間のモニタリングなどに用いられる。
>より詳細な記事「Second Oil Spill Settlement Adds to Gulf Coast Science and Restoration Funding

‘Third Kingdom’ Discoverer Dies
’第三の界’の発見者が亡くなる
微生物学者のCarl Woeseが12/30に亡くなった。彼は古細菌(アーキア;Archia)の研究を通して微生物学に革命を起こした。かつて生物学の教科書には生命の木には2つの幹(バクテリアと真核生物)しか存在しなかったが、古細菌がバクテリアとは異なる進化の道筋を辿ったことが示され、1977年に異なる遺伝子を持つことが示された。その発見は議論を呼び、一般に受け入れられるようになるにはかなりの時間を要した。ほとんどの生物学者や一部の医者は「彼の功績はノーベル賞に値する」と考えているという。

Hope for Coral Reefs
サンゴ礁に対する希望の光
温暖化によってサンゴ礁が世界的に破壊されると予想されているが、一部のサンゴは熱ストレスに対して強い遺伝子を持っていることが分かった。スタンフォード大の研究グループはサモアの異なる2つの環境において熱に強いクシハダミドリイシAcropora hyacinthus)を採取した。一つは夏に水温が34℃まで上昇する水温変動が大きい環境、もう一つは水温がそれほど変動しない環境のものである。新たに60の遺伝子が同定され、前者のほうが後者に比べて活発であることが分かった。さらに後者でも温度を上げると遺伝活発になることが示された。
>より詳細な記事「A Glimmer of Hope for Coral Reefs

BY THE NUMBERS
830 million
8億3千万トン
世界の遠距離通信インフラが年間に排出するCO2の量(世界の2%を占めるらしい)。Environmental Science & Technologyにおいて公表された研究から。

100 billion
1000億個
我々の太陽系が存在する天の川銀河の中の惑星の数。The Astrophysical Journalにおいて公表された研究から。

News & Analysis
Climate Study Highlights Wedge Issue
気候研究がくさび問題を強調する
Eli Kintisch

News Focus
特になし

Letters
Antarctic Treaty System Past Not Predictive

Sustaining China’s Water Resources
中国の水資源を維持する

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Research
Perspectives
特になし

Reports
Multiple Fitness Peaks on the Adaptive Landscape Drive Adaptive Radiation in the Wild
Christopher H. Martin and Peter C. Wainwright
バハマの湖に棲息するメダカの一種(Cyprinodon pupfish)について。