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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
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2012年11月4日日曜日

新着論文(Nature#7422)

Nature
Volume 491 Number 7422 pp7-154 (1 November 2012)

EDITORIALS
Bad press
ダメなプレス
日本のメディアが嘘の影響を大げさにするのに大きな部分を負っていた。

RESEARCH HIGHLIGHTS
Plankton diversity loss looms
プランクトンの多様性の消失が近づいてくる
Science http://dx.doi. org/10.1126/science.1224836 (2012)
植物プランクトンは気候変動によって大きく影響を被る。ミシガン州立大学の研究チームは194種の植物プランクトンについてそれぞれの最適温度をまとめたところ、それぞれの種はそれぞれの地域に適した温度に適応しているが、熱帯種のみ周囲よりもやや温度が低いところに最適温度があることが分かった。彼らのモデルによれば、進化しない限り2℃の温度上昇が特に熱帯種の多様性の消失へとつながることが示された。

Tailored geoengineering
調整された地球工学
Nature Clim. Change http:// dx.doi.org/10.1038/ nclimate1722 (2012)
日光を反射することで地球を冷やす地球工学はその地域的な悪影響を最低限に抑えることが可能かもしれない。成層圏にエアロゾルを注入する地球工学を気候モデル上で実験したところ、北極の海氷を回復させながら、全球の気温を低下させることが可能だという。

Palaeoflamingo nest found
古代のフラミンゴの巣が見つかる
PLoS ONE 7, e46972 (2012)
1,500-2,000万年前のフラミンゴの祖先の巣の化石がスペインの地層から見つかり、さらに骨とともに5つの卵が確認された。卵の殻はフラミンゴに類似しているが、巣はカイツブリに類似しているという。現在2種は異なる巣作りや摂食のパターンを取るが、DNA的には近縁であることが知られていた。

SEVEN DAYS
Biofuels warning
バイオ燃料の警告
アメリカのNational Research Councilによると、「米国の輸送用のエネルギー源の5%を藻類によって作られたバイオ燃料で賄うとエネルギー・水・栄養の点で持続不可能になる」らしい。

Nuclear restart
原子力の再スタート
日本の原子力発電所の事故を受けて止まっていた中国の新たな原子力発電所の建設が再スタートする。ただし安全基準の引き上げなどに伴い、2015年までに50GWを賄う予定が40GWに抑えられるという。現在中国は15の原子力発電所を保有し、12.5GWを発電しているという(国内総発電量の1.8%)。

Solar exit
太陽から撤退
ドイツのミュンヘンに本部を置くSiemensはサハラ砂漠に太陽光発電所を建設する計画(DESERTEC)から撤退するという。

Nuclear rights
原子力の権利
日立はイギリスに原子力発電所を建設する権利を獲得した。ホライズン原子力を買収し、新たな原発を2ヵ所で建設する予定。1,300MW級の原発が4-6基できる予定だという。

NEWS IN FOCUS
L’Aquila verdict row grows
ラクイラの宣告に対する反感が広がる
Nicola Nosengo
地震のリスク評価を行ったイタリアの科学者に対する宣告に対して世界各地で反感が巻き起こっている。

Sahara solar plan loses its shine
サハラの太陽計画がその輝きを失う
Devin Powell
SiemensがDESERTEC計画から撤退するという決断が疑問を再燃させる

NIH faces chimp housing quandary
NIHがチンパンジーを飼育することの困惑に直面している
Meredith Wadman
研究対象から引退した多くのチンパンジーは研究室のような環境で今後も生き続けなければならないだろう。

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RESEARCH
NEWS & VIEWS
Origins of life: The cooperative gene
生命の起源:協力的な遺伝子
James Attwater & Philipp Holliger
地球の生命の起源はまだ解決していない最大の謎の一つである。新たな研究から、分子間の協力が無生物の化学から生物への移行へと大きく寄与した可能性が示唆される。

ARTICLES
Spontaneous network formation among cooperative RNA replicators
協力的なRNA受容体間の同時ネットワーク形成
Nilesh Vaidya, Michael L. Manapat, Irene A. Chen, Ramon Xulvi-Brunet, Eric J. Hayden & Niles
初期生命モデルでは、もしRNAが独立に機能するのではなく相互作用することができれば生命の出現と進化はより簡単に達成されることが示されていた。いくつかのRNAがリボザイムを形成することができるようにデザインされたin vivo系で、これらの断片が自ら触媒作用を持つRNA断片に打ち勝つことが示された。

LETTERS
Distinctive space weathering on Vesta from regolith mixing processes
レゴリスの混合プロセスから明らかになる、特徴的なベスタにおける宇宙風化
C. M. Pieters et al.

Dark material on Vesta from the infall of carbonaceous volatile-rich material
揮発性物質に富んだ炭素質の物質の沈着から明らかになるベスタの黒い物質(?)
T. B. McCord et al.

Fluvial response to abrupt global warming at the Palaeocene/Eocene boundary
暁新世/始新世境界における急激な地球温暖化に対する河川の応答
Brady Z. Foreman, Paul L. Heller & Mark T. Clementz
PETMは温暖化した将来のアナログになると考えられているが、新生代における最大の温暖化に対する河川の応答を西コロラドにおいて調べたところ、堆積盆スケールで砂岩層が厚く・多層に変化していたことが明らかになった。この変化はモデルによって示されている「植生の激変とモンスーン性の降水の増加に伴う堆積物フラックスや河川流量の急激な増加」と整合的である。また河川による堆積の変化はPETM時のCO2濃度上昇期間よりも長く持続している。PETMのような超温室効果状態では大きな地形変化が起きることが示される。

The elusive enriched reservoir revealed by 142Nd deficits in Isua Archaean rocks
イスアの始生代の岩石における142Ndの欠落が明らかにする、なかなか手に入らない冥王代のリザーバー
Hanika Rizo, Maud Boyet, Janne Blichert-Toft, Jonathan O’Neil, Minik T. Rosing & Jean-Louis 

Fault healing promotes high-frequency earthquakes in laboratory experiments and on natural faults
実験と自然の断層においては、断層の回復が高周波の地震を促進する
Gregory C. McLaskey, Amanda M. Thomas, Steven D. Glaser & Robert M. Nadeau