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1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
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2012年9月8日土曜日

新着論文(EPSL, QSR, Ncom)

EPSL, QSR, Ncom
※論文アラートより

Environmental controls on B/Ca in calcite tests of the tropical planktic foraminifer species Globigerinoides ruber and Globigerinoides sacculifer
Katherine A. Allen, Bärbel Hönisch, Stephen M. Eggins, Yair Rosenthal
Earth and Planetary Science Letters 351-352 (2012) 270–280
G. ruber (pink)G. saccliferのB/CaがpHの指標になるかを評価。G. saccliferのB/CaはpHの増加とともに増加したが、一方でDICが増加することで低下した。これはホウ酸溶存種と炭酸溶存種がカルサイトの結晶格子に取り込まれる際に競い合っていることを示唆している。O. universaのB/Caに対する先行研究(Allen et al., 2011, EPSL)と同じくB/Caは塩分とともに([B]SWが増加するため)上昇したが、温度依存性は見られなかった。

A review of the AustralianeNew Zealand sector of the Southern Ocean over the last 30 ka (Aus-INTIMATE project)
H.C. Bostock, T.T. Barrows, L. Carter, Z. Chase, G. Cortese, G.B. Dunbar, M. Ellwood, B. Hayward, W. Howard, H.L. Neil, T.L. Noble, A. Mackintosh, P.T. Moss, A.D. Moy, D. White, M.J.M. Williams, L.K. Armand
Quaternary Science Reviews (in press)
南大洋のニュージーランド・オーストラリア周辺海域の最過去30kaの古気候復元のレビュー。最終氷期には南極周辺の海氷面積は拡大しており、氷河性砕屑物の記録より流出する氷山も増加していたことが分かっている。微化石の群集組成から海水温は7℃程度低かったと考えられている。STF, SAF, PFはすべて北上していた。ダストの量が増加していたため、鉄肥沃の可能性が考えられるが、生物生産が増加していた証拠は欠乏している。また氷期の海洋循環の変化は表層の栄養塩濃度を変化させ、CO2の脱ガスも制限していた。これは深層水のCO2貯蔵量を増加させ、炭酸塩補償深度を浅くしたと考えられる。また最終退氷期にはSST上昇とともに18kaに海氷が急激に後退し、深層水のCO2が大気にもたらされた。AAIWとLCDWに見られるδ13Cの差異は前者のガス交換が先に起きたか、或いは海氷面でのδ13Cの分配が大きく変化した可能性を示唆している。またACRの際には浮遊性有孔虫のδ18Oがわずかに重くなっており、SSTは低下、中層・深層水の形成は弱化していた。これはニュージーランドの山岳氷河の肥沃化などの陸域の記録からも支持される。ACRののち、深層のCO2が再びわずかに放出されるが、これはNADWの形成が再び活発になったことが原因である可能性が高い。また10ka以降、現在と同じ中層・深層水の形成が始まった。完新世初期にはSSTと気温ともに最大となっており、その結果STFは最も南下しており、また南極氷床も最小になっていた。その後完新世の中期・後期に向かってSSTと気温は低下して現在の状態に入っていくが、その過程で数千年スケールの変動が見られ、SSTや浮遊性有孔虫のδ18Oの変化として記録されているが、偏西風の位置の変動が原因として考えられる。

Evidence for methane production by saprotrophic fungi
Katharina Lenhart, Michael Bunge, Stefan Ratering, Thomas R. Neu, Ina Schüttmann, Markus Greule, Claudia Kammann, Sylvia Schnell, Christoph Müller, Holger Zorn and Frank Keppler
Nature Communications (4 Sep 2012)
生物圏におけるメタンはメタン酸化古細菌、バイオマス燃焼、石炭・石油採鉱によって主にもたらされており、わずかな量が真核生物の植物からもたらされている。腐栄養性の菌類もまたメタン酸化古細菌の関与なしにメタン生成をすることが分かった。好気的な環境下での菌類のメタン生成パスは環境中で未だ知られていなかったメタンの生成源として重要である。この重要な発見はメタン研究の新たな道を開拓し、さらにプロセスの特定に大きな助けとなると考えられる。

Latitudinal variations in intermediate depth ventilation and biological production over northeastern Pacific Oxygen Minimum Zones during the last 60 ka
Olivier Cartapanis, Kazuyo Tachikawa, Edouard Bard
Quaternary Science Reviews 53 (2012) 24-38
北東太平洋に存在する酸素極小層(OMZ)の過去の変動はよく分かっていない。ニカラグア付近で採取された堆積物コアの主要元素分析(Ti, Br, Si, K, Ca, U, Mo, Ni)から50kaのOMZの挙動を復元し、その変動を説明するメカニズムを考察。UとMoは最終退氷期に濃度が上昇するが、有機物に敏感なNiの濃度上昇は確認されなかった。また最終氷期には炭酸塩含有量は有機物・生物源オパール量と数千年スケールの変動が逆相関していた。最終退氷期の500-900m深のOMZの変動は表層の生物プロセスというよりはむしろ海洋循環を起源とする酸素欠乏によって支配されていると考えられる。南北からもたらされる中層・深層水の酸素濃度に大きな変化があったと考えられる。またMIS3には生物生産と間隙水の酸素濃度との間には同位相の変動が見られず、遠隔地の海水の酸素濃度や海水のガス交換がOMZの強度に影響していたと考えられる。Papagayo湧昇セルはCosta Rica Domeの生物生産と逆相関で変動しており、ITCZの緯度方向の移動と関係があると考えられる。またOMZの緯度方向の変化は南北の中層水の相対的な影響の変化を反映していると考えられる。