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1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
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2012年8月17日金曜日

新着論文(Science#6096)

Science
VOL 337, ISSUE 6096, PAGES 769-876 (17 August 2012)

EDITORIAL:
Capably Communicating Science
うまく科学を伝える
Alan I. Leshner
科学者が科学関連の仕事の意義や本質をうまく説明する能力を身につける必要性はますます増している。人々に科学をより理解してもらうことで、科学によって生まれた製品をうまく使えるようになるだけでなく、科学研究への支援の範囲も広がると期待される。人は自分に関わるものにしか基本的には興味を示さないため、それをうまく生かしたアプローチを行うことも重要である。また評価を下すのは話し手側ではなく聞き手側なので、個人的な価値観を入れずに客観的に事実を伝えることも大切である。

Editor's Choice
A Cascade of Consequences
結果の階層構造
Ecol. Lett. 15, 786 (2012).
寄生生物がホストの動物の行動様式を変化させ、それが生態系全体の構造を変える可能性がある。ある種の線虫はライフサイクルのある段階でコオロギに寄生するが、コオロギを水場に移動させる指令を出す。こうしたコオロギはマスのより良い餌となり、底性生物の補食圧が下がる。その結果、底性生物の活動が活発化し、その餌となる落ち葉や藻類の分解量が増える。全球的に見ても、こうした寄生生物が生態系に与える階層構造というのは普遍的かもしれない。

Chaotic Planets
カオス的な惑星
Astrophys. J. 755, L21 (2012).
我々の住む太陽系の惑星の軌道は500万年もすれば予測ができないほど、カオス的な振る舞いをする。そうした軌道予測が困難になるまでの時間を「Lyapunov time」という。Kepler-36という系外システムもまたカオス的な振る舞いをするが、Lyapunov timeは10年以下という短さらしい。人間が観測可能な時間スケールでカオス的振る舞いをする身近な惑星には、土星のプロメテウス(Prometheus)とパンドラ(Pandora)がある。とある2つの系外惑星はあまりに近い軌道を公転しており、それぞれ質量は地球の4倍と8倍。この異常な軌道は重力場の相互作用の結果だと考えられている。

News & Analysis
Negative Report on GM Crops Shakes Government's Food Agenda
遺伝子組換え作物に関する消極的な報告書が政府の食料政策を揺るがす
Pallava Bagla
インド議会のパネルは先週、インドにおけるいかなる遺伝子組み換え作物の試験培養も直ちに止め、農業作物の遺伝子組み換えの研究は厳しい規制の下でしかなされるべきでない、と推奨した。インドは2002年に初めて遺伝子組換え作物を導入し、ナスと綿花の栽培効率が飛躍的に向上した。しかしながら依然として懐疑的な立場は多いという。インドの人口のうち7割が農家で、彼らはそうした生産性の高い遺伝子組換え作物の種を買うほか手段がない。ここ数年で負債が原因で自殺した農家は数千人に及び、遺伝子組換え作物のせいだという指摘がされている。インド政府は現在、報告書を精査している。

News Focus
Mountains of Data
データの山
Robert F. Service
有名な登山家とMicrosoftの研究者が一緒になって、どのように気候変動がヒマラヤに影響を与えているのかを画像・データ・コンピュータモデルを組み合わせて調べている。

Perspectives
Reproduction in Early Amniotes
初期の有羊膜類の生殖
P. Martin Sander
生きた子供を生み出す有羊膜類は卵を産む有羊膜類よりもあとに出現したはずなのに、なぜ初期の有羊膜類化石記録は前者が支配的であるか、を説明する新たな証拠が得られた。

Water Vapor in the Lower Stratosphere
成層圏下部の水蒸気
A. R. Ravishankara
中緯度の対流圏上層において、成層圏へと水蒸気が輸送されることによって、成層圏下部の水蒸気量がときおり増加しているかもしれない。

An Ancient Portal to Proteolysis
古代のタンパク質加水分解の入り口
Andreas Matouschek and Daniel Finley
アーキアに発見された新たなプロテアソームがタンパク質分解の進化に対する新たな知見を与える。

Reports
Mixed-Phase Oxide Catalyst Based on Mn-Mullite (Sm, Gd)Mn2O5 for NO Oxidation in Diesel Exhaust
Weichao Wang et al.
ディーゼル燃料の燃焼から出てくる一酸化窒素の酸化を行うためのNOx除去装置には従来プラチナ触媒が用いられてきたが、非常に効率が悪く、コストがかかるという問題があった。それに代わる金属酸化物(マグネシウムムライト;Mn-mullite (Sm, Gd)Mn2O5)の触媒が有望であることが分かった。価格・熱耐性・高いNO酸化効率の点で特に優れているらしい。

UV Dosage Levels in Summer: Increased Risk of Ozone Loss from Convectively Injected Water Vapor
James G. Anderson, David M. Wilmouth, Jessica B. Smith, and David S. Sayres
アメリカ大陸の上空で成層圏の下部に注入される水蒸気が大気における塩素・臭素ラジカルの光化学反応を根本から変える可能性がある。特に夏における深い対流が水蒸気を運搬し、オゾンを破壊する反応へと連結している。二酸化炭素とメタンによる気候フォーシングの結果としてこうした水蒸気注入の強度や頻度が上昇するとしたら、オゾン破壊と紫外線の照射量は増加するだろう。

A Mechanism of Extreme Growth and Reliable Signaling in Sexually Selected Ornaments and Weapons
Douglas J. Emlen, Ian A. Warren, Annika Johns, Ian Dworkin, and Laura Corley Lavine
オスの生物の中には誇張された装飾や武器を巧みに操るものがいるが(例えば、カブトムシ、クワガタ、カニ、シカなど)、そうした極端な構造の成長にはインスリンやインスリン状の成長要因(insulin/insulin-like growth factor; IGF)が関連している可能性がある。成長には栄養状態とIGFとがかなり関係しており、それがオスの価値を決める?