Main contents


☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English

2012年7月30日月曜日

14Cと人工衛星から二酸化炭素の排出量を見積もる

Carbon from Tropical Deforestation
Daniel J. Zarin
22 JUNE 2012 VOL 336 SCIENCE

Using Radiocarbon to Go Beyond Good Faith in Measuring CO2 Emissions
MICHAEL BALTER
27 JULY 2012 VOL 337 SCIENCE
より。

人為起源の二酸化炭素排出量、森林破壊によって放出される二酸化炭素の量の見積もりについての最新の測定法・測定結果の紹介。

新着論文(CP, BG)

Climate of the Past
23 July 2012 - 29 July 2012
Tightened constraints on the time-lag between Antarctic temperature and CO2 during the last deglaciation
J. B. Pedro, S. O. Rasmussen, and T. D. van Ommen
南極アイスコアは南極の気温と大気中の二酸化炭素濃度が氷期間氷期サイクルのうち少なくとも過去80万年間は非常に良く相関していることを明瞭に示している。この関係に関与している物理プロセスを理解するために、両者の時間的な差異を明らかにすることが重要である。最終退氷期には南極の気温が10℃、二酸化炭素濃度が80ppm上昇している。非常に高精度に年代決定がなされている5つの沿岸に近い地域のアイスコアと2つのアイスコアから、二酸化炭素濃度の上昇は南極の気温上昇に対して少なくとも’400年’遅れていることを示す。ただし、二酸化炭素が先行している可能性も否定しきれない。1,000年程度の遅れを認めていた先行研究に比べて、より遅れが少ないことが分かった。
Pedro et al. (2012)を改変。
南極アイスコアから得られている最終退氷期の大気中の二酸化炭素濃度の変化。下のグラフは温度上昇に対して二酸化炭素濃度の上昇が何年遅れているかの頻度分布を表す。

Biogeosciences
23 July 2012 - 29 July 2012
Role of sediment denitrification in water column oxygen dynamics: comparison of the North American East and West Coasts
L. Bianucci, K. Fennel, and K. L. Denman
人為起源・自然起源の貧酸素状態は生態系に大きく影響し、海水中の酸素濃度のダイナミクスを理解することは重要である。物理・生物モデルシミュレーションを用いて大陸棚において堆積物の脱窒が低層水の酸素濃度に与える影響を評価。堆積物中の脱窒に伴い、生物が利用可能な窒素濃度の低下が生じ、一次生産は低下する。一次生産の低下と海底への有機物の堆積が減少すると堆積物中の酸素消費が抑えられ、低層水の酸素濃度は上昇する。しかしバンクーバー大陸棚においては夏の湧昇が効果的に新しい栄養塩をもたらすため、この大陸棚においては脱窒が一次生産に与える影響はそれほど大きくない。大陸棚の酸素ダイナミクスに着目したモデル実験では堆積物中の脱窒をモデルに組み込むことを推奨する。
Bianucci et al. (2012)を改変。
海水中と堆積物における有機物・窒素循環と酸素濃度の関係の模式図。


A high-resolution record of carbon accumulation rates during boreal peatland initiation
I. F. Pendea and G. L. Chmura
北半球の泥炭地は炭素の吸収源として機能しており、気候に対してフィードバックを持っていると考えられる。10-7kaの二酸化炭素濃度の低下は温暖な気候に依って生物生産が増加した結果、泥炭地の炭素集積が増加したために生じたとも考えられている。他にも湖の形成や海岸の露出によって泥炭地の面積そのものが増加したことも寄与していた可能性がある。ケベックのJames湾は氷期の氷床解放後のリバウンドによって隆起している。ここ70年間にsalt marshから沼へと変化した地域の堆積物コアから非常に高時間解像度の記録を得、10年スケールの変動を復元した。炭素の埋没速度は非常に大きく、通常の泥炭地の6倍程度であった。Holocene初期の氷床解放リバウンドによって新しくできた泥炭地が部分的に二酸化炭素のフラックスに寄与していた可能性がある。将来の海水準上昇によってこの湿地面積の増加が抑制されることで、炭素固定能力は低下するかもしれない。

2012年7月29日日曜日

新着論文(GBC, PO)

Global Biogeochemical Cycles
23 July 2012 - 29 July 2012
CO2 semiannual oscillation in the middle troposphere and at the surface
Jiang, X., M. T. Chahine, Q. Li, M. Liang, E. T. Olsen, L. L. Chen, J. Wang, and Y. L. Yung
対流圏中層と表層において二酸化炭素濃度の準-年変動が見られた。化学輸送モデルを用いて変動の要因を調べたところ、表層の二酸化炭素濃度がシグナルの原因で、生物圏と大気との二酸化炭素交換が大元の原因であることが分かった。モデルによるシミュレーション結果と航空観測によって得られた熱帯域の対流圏中層の二酸化炭素濃度とは良い一致を見せた。
Jiang et al. (2012)を改変。
様々な緯度において得られた大気中の二酸化炭素濃度の年変動。赤い点は航空機による観測。様々な色の線はモデルによるシミュレーション結果を表す。
Jiang et al. (2012)を改変。
赤:観測値、青:モデルによるシミュレーション結果。特に北半球の高緯度で年変動が顕著であることが分かる。逆に南半球はほとんど年変動が見られない。


Paleoceanography
23 July 2012 - 29 July 2012
Response of the North American monsoon to regional changes in ocean surface temperature
Barron, J. A., S. E. Metcalfe, and J. A. Addison
先行研究のモデルシミュレーションと間接指標の記録から、8ka頃から北アメリカモンスーンが7−9月に起きることが知られており、原因は北半球の日射量の変化であると考えられている。カリフォルニア沖で採取された堆積物コアから復元されたSSTは8ka頃までは低く、湿度を北アメリカモンスーン地域にもたらすほどの影響力を持っていなかった。またバハ・カリフォルニアの湧昇は7.5ka頃から強化されており、この頃から気候レジームが変化したことを示唆している。アメリカ南西部の降水の指標(湖、植生・花粉、鍾乳石)はこの仮説を支持している。
Barron et al. (2012)を改変。
北アメリカモンスーン(North American Monsoon)地域の気候。ピンクの部分がモンスーンによる影響を強く受ける地域。水蒸気はメキシコ湾とカリフォルニア湾の両方からもたらされている。


新着論文(GRL)

GRL
23 July 2012 - 29 July 2012

Punctuated global tropical cyclone activity over the past 5,000 years
Nott, J., and A. Forsyth
北半球の各地域において残っているoverwashから過去5,000年間の台風の頻度を復元。3,000-5,000年前にかけて全球的に頻度が上昇していた。また100年-1,000年の周期で盛衰を繰り返していた。
Nott & Forsyth (2012)を改変。
黒は台風が活発だった時期、白は逆に不活発だった時期を表す。

Sensitivity of peatland carbon loss to organic matter quality
Leifeld, J., M. Steffens, and A. Galego-Sala
泥炭地には大量の有機物が眠っており、水収支の変化や気候変動によってこれらの有機物が失われることが危惧されている。泥炭地では分解されやすい有機物が先に分解され、逆に分解されにくいものが後に残るため、深度方向に有機物の質が変化する。特に酸素に富んだ表層に泥炭地の深部の有機物が触れると分解が促進される。スイスの6カ所の泥炭地で4mほどの堆積物コアを採取し、有機物量や元素組成などを分析。泥炭地の土壌呼吸は泥炭の質と多糖類の量によってコントロールされているらしい。

Impacts of non-canonical El Niño patterns on Atlantic hurricane activity
Larson, S., S.-K. Lee, C. Wang, E.-S. Chung, and D. Enfield
通常と異なるエルニーニョ(El Niño Modoki, positive phase Trans-Niño, and positive phase Pacific meridional mode)が大西洋の台風発生域の風の鉛直シアに与える影響を評価。通常のエルニーニョは大西洋の台風の活動度を抑える効果があるが、逆に通常と異なるエルニーニョはあまり大西洋には影響しないことが分かった。台風の成長には対流圏の加熱が必要であるが、それほど大きな加熱は起こせないらしい。近年通常と異なるエルニーニョの出現頻度が上昇しており、この傾向が続けばエルニーニョによる台風の抑制効果が失われ、大西洋の台風発生域のSSTがより重要な台風の発生要因になると考えられる。

Evidence for El Niño–Southern Oscillation (ENSO) influence on Arctic CO interannual variability through biomass burning emissions
Monks, S. A., S. R. Arnold, and M. P. Chipperfield
北極域の一酸化炭素の年変動をもたらすメカニズムを明らかにするために、化学輸送モデルを用いてシミュレーションを行ったところ、バイオマスの燃焼が最も支配的な駆動力であることが分かった。また一酸化炭素の変動はENSOとも有為に相関しており、火災の発生頻度にENSOが影響していることが原因として考えられる。アラスカ、カナダ、シベリア北東部が主なソースとなっているらしい。ENSOがこれらの地域の冬と春の降水量に影響していると考えられる。

The effect and correction of aerosol forward scattering on retrieval of aerosol optical depth from Sun photometer measurements
Zhao, F., Y. Tan, Z. Li, and C. Gai
エアロゾルの光学的な厚さを測定するために太陽光度計が用いられている。大気の前方散乱の影響を調べたところ、ほとんどの場合無視できる程度の寄与であることが分かった。しかし、ダストが多い際には光学的厚さの見積もりは大きく変化してしまい、補正をする必要がある。

2012年7月28日土曜日

新着論文(Science#6093)

Science
VOL 337, ISSUE 6093, PAGES 381-496 (27 July 2012)

Editor's Choice
Cryptic N2 Fixation
秘密の窒素固定
Nat. Geosci. 5, 459 (2012).
コケに覆われた建造物や岩、木などは地球上にありふれており、時間が十分にあればほとんどの地表はコケ類で覆われてしまうという。これらの生物が地球の窒素固定と炭素固定に大きく寄与していることが最近分かった。’cryptogamic cover’と呼ばれる生物コミュニティーによる炭素固定はヨーロッパで最大(一次生産の10%)で、アフリカで最小(一次生産の4%)。一方で窒素固定は非常に大きく、ヨーロッパや南アフリカで30%、アジアや北米で80%もの量を占めているらしい。現在の窒素循環モデルはこれらの寄与を含める必要があり、また他の地域の未発見の窒素循環も見落としている可能性がある。

Refuges for Corals
サンゴの難民
Nat. Clim. Change 2, 530 (2012).
地球温暖化は水温上昇によるサンゴの白化現象を促進するため、サンゴ礁を危機にさらしている。例えば、21世紀末には太平洋中央部の表層水温は3℃上昇すると予測されており、この水温上昇は生物にとって破壊的なものになると予想される。しかし、気候システムは非常に複雑であるため、こうした温暖化の影響が顕著に表れない海域も存在するかもしれない。最近のモデル研究によると太平洋赤道域の一部の地域では将来風が強まり、それによって赤道下層流(equatorial undercurrent)が湧昇し、冷たい水がより表層にもたらされやすくなる可能性がある。どのサンゴ礁が生き残るのかを知ることで、サンゴ礁の保全活動の計画にも役立つかもしれない。

News of the week
European Commission Proposes Deep-Sea Protections
ヨーロッパ議会は深海の保全を提案している
ヨーロッパの議会は深海漁業の規制を強化しようとしている。大西洋北東部で行われる底引き網漁では深海サメなどの不要な魚が網にかかるのがほとんどであり、またこの漁法は脆弱な深海生態系に破壊的なダメージを与えることから、議会は底引き網漁業を禁止する予定である。現在法案はレビューされている段階であるが、通れば2年後には完全に禁止される予定であるという。

U.S. Science Board Green-Lights Telescope
アメリカの科学委員会は望遠鏡に緑信号を出した
NSFの政策決定機関であるNSBはチリにおけるLarge Synoptic Survey Telescope (LSST)の建設を承認した。総工費6億6500万ドルのうち、70%はNSFが負担するという(他にエネルギー庁が24%負担、残り6%は私的な献金)。この望遠鏡は8.36mの大きさで、週に2回、30億ピクセルのカメラを用いて銀河の画像を撮影する予定である。繰り返し観測することで、星や銀河の観察だけでなく、ダークマター・ダークエナジーの検出や超新星爆発の時間変動なども捉えられると期待されている。議会が出資を認めれば、5年間で建造は終わり、2022年から観測がスタートする見込み。

Police Close Climategate Investigation
警察はクライメートゲートの調査をやめた
2009年11月に発覚した’クライメートゲート事件’の調査をイギリスの地元警察は終了した。East Anglia大の気候研究グループの何千通ものe-mailが流出し、気候変動を疑う人々によってIPCCに出された気候データの改ざんの疑いや科学倫理の問題が取り上げられ、問題となった。調査の中には科学者が間違った行いをしていたと指摘するものもあった。

Scientists Spar Over Fukushima Radiation Effects
福島の放射線の影響を巡って科学者が議論している
福島第一原発の事故によって放出された放射性物質が招いた死が調査されているが、Stanford大の研究チームのモデリングの結果(いかなる放射性物質もがんのリスクを高めるとしているモデル)からは、拡散した放射性物質によって15-1100人ががんで亡くなったという試算が得られた。しかし一方で東京大学理学系研究科教授の早野龍五は、低い放射線量に対してはこのモデルを適用すべきでないと指摘している。またノーベル賞受賞者のBurton Richterは石炭発電所(124,000年)や天然ガス発電所(3,8000年)による汚染や事故によるlost years of life(寿命の縮まり?)に比べると、福島第一原発の事故によるlost years of lifeははるかに短い(26,800年)と指摘している。

Genetic Code Reveals Hunter-Gatherer Diversity
遺伝子が狩猟採集の多様性を明らかにする
人類はアフリカからアジア・ヨーロッパに広がっていく過程で、主に環境の変化に刺激されて多様な遺伝子を獲得してきた。タンザニア・カメルーンの3つの異なる部族に属する原住民5人の遺伝子を解読したところ、過去においてネアンデルタール人に相当するような未確認のアフリカの類人猿との交配があったことが分かった。

By the numbers '34 billion'
’340億トン’という数字から
2011年における全世界の二酸化炭素の排出量。前年比で3%増加したことがヨーロッパの委員会から報告されている。

News & Analysis
Needed Antarctic Upgrades Would Trim Science Budget
南極の施設改良の必要性が科学にかかる費用を減らすかもしれない
Carolyn Gramling
老朽化した南極の科学施設は修理や改良を必要としており、短期的に科学にかかる費用を削減して改修費用に充てる必要性に迫られている。

Data Dispute Revives Exoplanet Claim
データに関する論争が系外惑星存在の主張を再び蘇らせた
Yudhijit Bhattacharjee
生命が存在する可能性がある系外惑星として初めて発見された’Gliese 581g’を発見した研究チームは、確かにこの星は存在すると結論づけた。

Using Radiocarbon to Go Beyond Good Faith in Measuring CO2 Emissions
二酸化炭素排出量を測るのに放射性炭素を使う
Michael Balter
研究者は二酸化炭素排出量を推定するのに空気中の二酸化炭素の放射性炭素を測定することが有効であることを見つけた。
※コメント
この手法自体は新しいわけではありませんが、測定精度の向上と排出量の増加から可能になったのかもしれません。化石燃料排出起源の二酸化炭素は放射性炭素が欠乏している(石油・石炭ともに数億年前にできたものであるため)という特徴があります。記事を読んだらそのうち解説します。

News Focus
Planetary Science Is Busting Budgets
惑星科学が予算を破壊している
Richard A. Kerr
ますます増大する火星探査の見通しが限られた科学予算と衝突している。火星に関する科学は宇宙飛行士の武器となりつつある。

For China and Kazakhstan, No Meeting of the Minds on Water
中国とカザフスタンにとって、水に関する意識は一致しない
Richard Stone
カザフスタンの科学者は中国からの河川流量の低下が農業や水生生態系に悪影響を及ぼすとしている。中国側は話を聞く姿勢を示さない。

JOINT CONGRESS ON EVOLUTIONARY BIOLOGY
Elizabeth Pennisi
Insulin May Guarantee the Honesty of Beetle's Massive Horn
インスリンがカブトムシの力強い角を保証するかもしれない

Texas Wildflower's Red Keeps It a Species
テキサスの野生の花の赤色がそれが種として存在するのを支えている

By the Skin of Their Teeth
彼らの歯の肌によって
エクアドルの洞窟の地下の流れに生息するナマズは、周囲の水の流れを感じるのに自らの歯を使っている。体から突き出た歯はセンサーとしての役割を負っているらしい。

Letters
Pollution in the Yangtze
揚子江の汚染
揚子江で建設されるダムが魚や鯨類に与える影響について。揚子江の水質汚染が絶滅を加速させている。そのひとつの例がヒレナシネズミイルカ(finless porpoise; Neopho- caena phocaenoides)であり、ここ20年間で年間5%以上の割合で個体数が低下してきた。急速な工業・農業の発展に伴い、種々の有機・無機の汚染物質(重金属、農薬など)が揚子江に流入していることが原因のひとつ。またダムによって水をせき止めることでダムの底への堆積物の沈殿やダム中の富栄養化、酸素欠乏などが発生する。Three Gorges Reservoirを例にとると、鉛・銅・カドミウムの濃度は深さが増すごとに25%以上増加する。中でも有毒なメチル水銀が貧酸素下では堆積物から放出されやすくなるため注目されており、懸濁粒子中の水銀量は既にEUが定める環境基準に比べて10,000倍の濃度に達している。政府の浄化キャンペーンの効果もむなしく、汚染された土地が沈んでいることと人間活動が拡大することが汚染を押し上げている。揚子江は汚染がひどい世界の河川のトップ10に入るが、すでに数多くの絶滅危惧種を破滅へと押しやっている。短期的にはダム建設を止めることが重要であるが、それ以上に汚染を減らすことが河川管理政策には重要である。そうした努力がなされなければ、最近絶滅した中国カワイルカ(Lipotes vexillifer) 以上に、さらなる種の絶滅を招くだろう。

Reports
Binary Interaction Dominates the Evolution of Massive Stars
H. Sana, S. E. de Mink, A. de Koter, N. Langer, C. J. Evans, M. Gieles, E. Gosset, R. G. Izzard, J.-B. Le Bouquin, and F. R. N. Schneider
従来考えられていたよりも、我々の銀河に含まれる星は近隣の星と質量の交換などの相互作用をしていることが分かった。全体の70%以上の星がそうした質量交換を行っているという。binary interactonが星の進化、星の数、超新星爆発などを支配しているかもしれない。

The Tides of Titan
Luciano Iess, Robert A. Jacobson, Marco Ducci, David J. Stevenson, Jonathan I. Lunine, John W. Armstrong, Sami W. Asmar, Paolo Racioppa, Nicole J. Rappaport, and Paolo Tortora
カッシーニ土星探査機の2006年から2011年にかけて行われたフライバイから得られた観測データから、土星の衛星のひとつであるタイタンの潮汐を分析したところ、観察された重力場はタイタン内部が軌道の時間スケールで変形可能でなければならないことを示唆している。つまり内部海の存在を示唆している。

Isotropic Events Observed with a Borehole Array in the Chelungpu Fault Zone, Taiwan
Kuo-Fong Ma, Yen-Yu Lin, Shiann-Jong Lee, Jim Mori, and Emily E. Brodsky
低応力の台湾のChelungpu断層帯の掘削孔から得られたデータから、1999年のM7.6の地震の際に滑った不透水層の下にある流体に富んだ透水層において小さい地震(l-typeイベント)が観測された。等方性の、応力以外の起源のメカニズムが関与している可能性がある。また周囲の岩石にしばしば観察される割れ目や他の流体構造の形成を伴っており、人工的なhydraulic fracturingの特徴に類似している。

新着論文(Nature#7408)

Nature
Volume 487 Number 7408 pp405-524 (26 July 2012)

Research Highlights
Engineered ‘jellyfish’
作られた’クラゲ’
Nature Biotechnol. http://dx.doi.org/10.1038/nbt.2269 (2012)
ラットの細胞とシリコンを合成することでクラゲの動きを模した装置が作られた。

Squid ‘fly’ faster than they swim
イカは泳ぐよりも飛ぶときの方が’速い’
Deep-Sea Res. Pt II http://dx.doi. org/10.1016/j.dsr2.2012.07.002 (2012)
4種類のイカについて調べたところ、イカは泳ぐときよりも空を飛ぶときの方が3倍速く飛べる体型をしていることが分かった。イカは従来考えられていたよりも空を飛ぶ能力が高く、長い距離の移動にもエネルギーコストを抑える上で効果的であると考えられる。

Greenland’s ancient impact
グリーンランドの過去の隕石衝突
Earth Planet. Sci. Lett. http:// dx.doi.org/10.1016/ j.epsl.2012.04.026 (2012)
グリーンランドの南西部には直径100kmの隕石孔がある。30億年前の隕石衝突で、25km深に衝突時の特徴が刻まれているらしい。地球の歴史上、隕石衝突は普遍的であるが、気候とテクトニクスの作用で浸食され、その証拠があまり残らない。Maniitsoq構造と名付けられた隕石孔は記録上最も古く、大きいものであるらしい。

Toxins for cane-toad control
キビガエルを抑えるための毒
Proc. R. Soc. B http://dx.doi.org/10.1098/rspb.2012.0821 (2012)
外来種であるキビガエルの侵入がオーストラリアの熱帯雨林を脅かしている。しかしこのカエルそのものが生産する毒がその個体数を制御するのに効果的らしい。このカエルは食料競争を軽減するために同種のカエルの卵を食べるらしく、この性質を利用して卵の成分をもつ囮を仕掛けたところ、成体のカエルが多数捕獲されたという。この成分は固有種のカエルには効果がないらしい。

Seven days
Climategate closed
クライメートゲートが閉じた
地元警察は’climate gate’のきっかけとなったe-mailの発信源であるEast Anglia大の気候研究グループ(Climatic Research Unit; CRU)の捜査を終えた。e-mailが暴露されたのはインターネット経由の攻撃が原因で、犯人特定の見込みがないという。大学内部の関係者の疑いはないという。

Arctic iceberg
北極海の氷山
7/16にグリーンランドの巨大な氷山が崩壊した。マンハッタンの2倍のサイズであるが、2010年夏に崩壊した別の氷山に比べると半分以下のサイズだという。

Fukushima work
福島の作業
7/18に福島第一原発の4号機から使用済み核燃料が別の建物に移された。腐食のチェックが厳密に行われたという。保管施設が近日建設される予定で、来年から精力的に移動作業が行われるという。

CHINA’S EMISSIONS RISE
中国の排出量の増加
これまで中国は一人当たりの二酸化炭素排出量は他の先進国よりも少ないと計算されていたが、European Commission’s Joint Research CentreとPBL Netherlands Environmental Assessment Agencyによって7/18に出された新しい報告書によると、間違っていることが分かった。一人当たりの排出量は今やEU諸国に匹敵する程である。総合計では2011年に3%増加し、約340億トンとなった。
中国の一人当たりの二酸化炭素排出量の変化。中国は急速に成長しており、2011年にEUのレベルに達した。
End of an age for Aquarius
Aquariusの時代の終焉
Mark Schrope
海中の研究拠点の代表格であったAquariusは今年を最後に気密部の入り口を閉鎖することとなった。

The time machine
タイムマシン
Scott Andersonによって開発された装置は宇宙空間において現場で採取した岩石試料のRb-Sr法による年代測定が可能であるらしい。月や火星の年代決定に期待が寄せられる。

Correspondence
More medieval clues to cosmic-ray event
中世の銀河線イベントのより多くの証拠
先日アングロサクソン族の古文書(Anglo-Saxon Chronicon)で銀河線に関連した天体現象の記述が見つかったが、他にもそれと関連する可能性がある文書が見つかっている。ドイツの修道院の年代記には「two shields burning with red colour and moving above the church itself 」という記述がAD776に見られ、またAnglo-Saxon Chroniconの中では「when the Saxons besieged the castle of Heresburch, the glory of God appeared to all, surely as two shields burning with the colour of blood and making certain motions through the air, as if at war」などの記述がAD774-775に見られる。この現象は日中ずっと観察され、非常に明るい銀河線イベントであったことを示唆している。また年代のずれはオーロラ活動が数年間活発であったことを示している可能性がある。

Political backing to save the Baltic Sea
バルト海を保護するための政治的な後援
バルト海を富栄養化から救うためには栄養塩の流入量を減らす必要がある。しかし生態モデルを用いた研究から回復には50-100年もの歳月を必要とすることが分かったため、持続的に行うためには政治的な援助が必要不可欠である。農業技術向上によって栄養塩流入量は低減できるものの、土壌中の栄養塩はなかなか減らすことはできない。BalticSea2020基金は富栄養化した地域に塩化アルミニウムを散布することで堆積物からのリン酸の溶出を抑制し、藻類の異常繁殖を防ぐ手段なども考えている。

BRIEF COMMUNICATIONS ARISING
Atmospheric oxygenation and volcanism
大気の酸化と火山活動
James F. Kasting, David C. Catling & Kevin Zahnle
「GOE(Great Oxidation Event)の原因は大陸の出現と火山地域が海底から陸上へ移ったことである」とするGaillard et al. (2011)に対する問題点の指摘。

Gaillard et al. reply
Fabrice Gaillard, Bruno Scaillet & Nicholas T. Arndt
それに対する返答。

LETTERS
Inland thinning of West Antarctic Ice Sheet steered along subglacial rifts
Robert G. Bingham, Fausto Ferraccioli, Edward C. King, Robert D. Larter, Hamish D. Pritchard, Andrew M. Smith & David G. Vaughan
現在の海水準上昇の10%は西南極氷床の融解によって説明される。氷床融解は主に氷が力学的に薄くなっていることが原因で、特に沿岸部で大気と海洋の擾乱が原因で融解が加速している。しかし基底部や地質の知識が欠乏していることで、モデル化が妨げられており、将来の西南極氷床の後退を予測するのを困難にしている。氷を貫通するレーダーと磁気、重力観測からFerrigno氷河下の海盆の存在が明らかになり、氷床後退に大きく寄与していると考えられる。海盆の起源は地溝らしい。西南極氷床縁辺を横切る地溝盆地は、海岸における擾乱を急速に内陸へと伝搬させ、氷床の不安定化を促進していると考えられる。

Reconciling the temperature dependence of respiration across timescales and ecosystem types
Gabriel Yvon-Durocher, Jane M. Caffrey, Alessandro Cescatti, Matteo Dossena, Paul del Giorgio, Josep M. Gasol, José M. Montoya, Jukka Pumpanen, Peter A. Staehr, Mark Trimmer, Guy Woodward & Andrew P. Allen
生態系呼吸(Ecosystem respiration)とは、消費者と一次生産者の両者を含む生態系内の全生物による、有機炭素の二酸化炭素への生物的変換のことである。呼吸は、細胞内および個体のレベルでは指数関数的な温度依存性を示すが、生態系のレベルでは、群集の個体数やバイオマスなど、生態系ごとに大きく異なる多くの変数によって変化する。生態系呼吸の温度依存性は気候変動に対する生物圏の反応を予測するうえで重要であるが、これが水中環境と陸上環境とで系統的に異なっているのかどうかは明らかにされていない。生態系呼吸量の大規模なデータベースの分析から、季節的な温度変化に対する生態系呼吸の感度が、湖沼、河川、河口、外洋、ならびに森林および非森林の陸上生態系を含む多様な環境できわめてよく似ていることが分かった。対照的に、年間の生態系呼吸では、幅広い地理的温度勾配にわたり、水中生態系のほうが陸上生態系よりも温度依存性が大幅に高くなっているらしい。

2012年7月25日水曜日

タヒチ化石サンゴから過去のENSOを復元する

Pronounced interannual variability in tropical South Pacific temperatures during Heinrich Stadial 1
Thomas Felis, Ute Merkel, Ryuji Asami, Pierre Deschamps, Ed C. Hathorne, Martin Kölling, Edouard Bard, Guy Cabioch,Nicolas Durand, Matthias Prange, Michael Schulz, Sri Yudawati Cahyarini and Miriam Pfeiffer
Nature Communications (24 July 2012)

今日は投稿論文用の図を作るつもりでしたが、自分の研究にとって重要すぎる論文が出たため、それを読んでいました。
さくっとレビューを書いて気持ち良くサッカーの練習に行きたいと思います。

新着論文(PNAS, Ncom, Geology)

PNAS
24 July 2012; Vol. 109, No. 30

Earth, Atmospheric, and Planetary Sciences
Improving aerosol distributions below clouds by assimilating satellite-retrieved cloud droplet number
Pablo E. Saide, Gregory R. Carmichael, Scott N. Spak, Patrick Minnis, and J. Kirk Ayers
エアロゾルをうまく制約できないことが大気モデルの妨げとなっている。人工衛星によってエアロゾルの光学特性を制約することができるが、曇りの日にはそれはできない。雲の水滴数を差し引くという新しい手法(?)でうまく雲の下にあるエアロゾルの質量や数を推定できるようになるらしい。エアロゾルをうまく制約することで健康被害、大気の放射、大気汚染、天気、気候変動予測などの研究の進展につながることが期待される

Bedrock displacements in Greenland manifest ice mass variations, climate cycles and climate change
Michael Bevis, John Wahr, Shfaqat A. Khan, Finn Bo Madsen, Abel Brown, Michael Willis, Eric Kendrick, Per Knudsen, Jason E. Box, Tonie van Dam, Dana J. Caccamise, II, Bjorn Johns, Thomas Nylen, Robin Abbott, Seth White, Jeremy Miner, Rene Forsberg, Hao Zhou, Jian Wang, Terry Wilson, David Bromwich, and Olivier Francis
Greenland GPS Network (GNET)はグリーンランド氷床の縁辺でGPSを用いて基盤の変位を調査している。過去と現在の氷床量の変動を受けて、観測点は隆起しつつある。それに覆い被さる形で年変動も見られるが、それは氷床量と大気の重み(つまり大気圧)が制御している。氷期の氷床解放から推定される速度よりも早く隆起しており、固体地球が弾性体として’早く’振る舞っていることを示唆している。特に2010年の異例な隆起速度は融解日の増加に一致する。

Nature Communications
24 July 2012
Pronounced interannual variability in tropical South Pacific temperatures during Heinrich Stadial 1
Thomas Felis, Ute Merkel, Ryuji Asami, Pierre Deschamps, Ed C. Hathorne, Martin Kölling, Edouard Bard, Guy Cabioch, Nicolas Durand, Matthias Prange, Michael Schulz, Sri Yudawati Cahyarini and Miriam Pfeiffer
最終退氷期の前半は北大西洋の寒冷化で特徴づけられる(ハインリッヒ1)が、この時期における赤道太平洋の応答はそれほどよく理解されていない。IODP310で得られた化石サンゴの成長縞に沿ったSr/Ca測定からこの時期にTahitiにおいてENSOの周期での海水温変動が見られた。現在Tahitiでは明瞭に海水温のENSO変動が見られないため、この結果はハインリッヒ1の時期にENSOがより強化されていた可能性を示唆している。ENSOの海水温変動の影響がより南に伸長していた?

Geology
1 August 2012; Vol. 40, No. 8
Evidence of very rapid reef accretion and reef growth under high turbidity and terrigenous sedimentation
C.T. Perry, S.G. Smithers, P. Gulliver, and N.K. Browne
気候変動によってサンゴの生育が妨げられることが予測されているが、それ以上に陸源の砕屑物質の流入によるサンゴ礁の海水の濁度の上昇がサンゴに大きな脅威を与えている。水質悪化がサンゴの被服度や成長を阻害し、サンゴ礁の成長が抑制され、多様性も低下すると考えられている。グレートバリアリーフのMiddle Reefでサンゴ礁を掘削し、過去9,000年間のサンゴ礁の成長量を復元。年代はすべて放射性炭素によって得られている。Middle Reefは現在陸源の砕屑物が供給されている場で、成長が阻害されていると考えられているが、ここ700年間は非常に早く(年間8.3mm)成長していることが分かった。過去において成長率は様々に変化したが、成長率が最も早いのは細粒の陸源物質が最も多く流入している時期と一致し、死んだサンゴを地中に保存するのに陸源物質が寄与していることが示唆される。またサンゴ礁の中部・外部でも過去9,000年間で最も成長率が早かったのはもっとも水が綺麗な時期に一致していた。またそれは他の太平洋・インド洋のサンゴ礁でも同様のことが観察されている。つまり、濁度の大きい環境においても一時的にサンゴの成長は阻害されるかもしれないが、基本的に成長は維持され、サンゴ礁は早く成長することができる。

Hydrologic forcing of ice stream flow promotes rapid transport of sediment in basal ice
M. Bougamont and P. Christoffersen
高緯度域の大陸棚には氷河性堆積物がたまっているが、それがどのように浸食され、運搬され、堆積するかの理解は不足している。3次元の氷河流動モデルを利用して氷河の下で起きている物理現象を再現。南極のKamb氷河の底から15mに位置する氷の層の観測事実から、砕屑物を含んだ状態で流動し、氷河中で砕屑物が運搬され、そして最終的には融解によって解放されるという現象がもっとも効率の良い氷河浸食・運搬するというモデルを提唱する。モデルの再現では氷河の流れは早い時と遅い時と様々な状態を示す。また氷河速度と堆積物の運搬量の間には強い相関が見られ、砕屑物を含む層
の成長は基底部分の水の獲得などによって支配されている。モデルは南極の氷河や最終退氷期の不思議な氷河の振る舞いをよく再現できているらしい。

Evidence for end-Permian ocean acidification from calcium isotopes in biogenic apatite
Jessica L. Hinojosa, Shaun T. Brown, Jun Chen, Donald J. DePaolo, Adina Paytan, Shu-zhong Shen, and Jonathan L. Payne
ペルム紀の終わり(約252Ma)には海洋酸性化が海洋生物の大量絶滅に寄与していたことが示唆されている。中国南部の炭酸塩のδ44/40Caは同時期に負のエクスカージョンを示しており、海水のδ44/40Caが変化したか、炭酸塩のcalcite/aragonite比が変化していたことを示唆している。中国のMeishanのコノドント(アパタイトで構成される生物遺骸)化石のδ44/40Caを測定したところ、同じようなδ44/40Caの負のエクスカージョンが見られたことから、海水のδ44/40Caが変化していたことが示唆される。またその原因は海洋酸性化が考えられる。

2012年7月23日月曜日

研究に使えるMacアプリ+iPhoneアプリ(part.2)

今日、上野のヨドバシカメラで新型iPadのEvernoteをいじっていて、Evernoteでも辞書のルックアップ機能が使えるようになっていることに気づいた。

気になったので早速iPhoneやMacのEvernoteについてもチェックしてみたところ、Evernoteだけでなく、DropBoxにも辞書のルックアップ機能が備わっていることが分かった。
(補足:MacのEvernoteだけは辞書のルックアップ機能は備わっていないw)

今回は主にiPhoneのEvernoteを使って英語の記事をさくさく読む方法のまとめ。

2012年7月22日日曜日

「大気化学入門」(D.J. Jacob)

大気化学入門
D.J. Jacob著 近藤豊訳
東京大学出版会(¥3,600-)
2007年6月 第二版

ロシアの湖堆積物から推定される北極の古環境(将来の温暖化した世界の鑑?)

2.8 Million Years of Arctic Climate Change from Lake El’gygytgyn, NE Russia
Martin Melles, Julie Brigham-Grette, Pavel S. Minyuk, Norbert R. Nowaczyk, Volker Wennrich, Robert M. DeConto, Patricia M. Anderson, Andrei A. Andreev, Anthony Coletti, Timothy L. Cook, Eeva Haltia-Hovi, Maaret Kukkonen, Anatoli V. Lozhkin, Peter Rosén, Pavel Tarasov, Hendrik Vogel, and Bernd Wagner
Science 337 pp.315-320
より。

ICDPの一環で採取された北極に近いロシア北東部のEl’gygytgyn湖の堆積物コアから復元された過去280万年間の古環境復元結果について。

2012年7月21日土曜日

新着論文(Science#6092)

Science
VOL 337, ISSUE 6092, PAGES 257-380 (20 July 2012)

Editor's Choice
Half Truths
半分の真実
「だまし」という行為はその効果を認識することとそれを実行することの両方を必要とする複雑な行為である。頭足類(イカ・タコなど)は環境に化けたり、他の生物に化けることで補食を避ける生物として有名である。コウイカ(Sepia plangon)のオスは求愛中メスを誘惑するために身体の色を変えてアピールするが、そのままではメスを争うオスも引きつけてしまうため、身体の半分はメスの求愛用の色を見せ、もう一方ではメスの体表を真似ている。この行動は頭足類が社会的な認識行動を行うのに大きく機能しているものと思われる。

Diversity Persists
多様性は持続する
海洋の生物多様性は熱帯域で高く、極域で低い。つまり温度と多様性は正相関している。安原盛明(香港大准教授)らは北大西洋で採取された堆積物コアから過去300万年間の動物プランクトンの多様性を分析し、mid-Pliocene(鮮新世中期)にもっとも高い生物多様性を確認した。温度の変化に耐性があまりない種はその後の寒冷化と氷河化の際に絶滅したと考えられる。
香港大のプレスリリース

News of the Week
Conservation in the Desert
砂漠における保全
オーストラリア政府はTanami砂漠の北部1000万ヘクタールを保護地域に指定した。有袋類の一種であるbilby(ミミナガバンディクート)や穴を掘ってシステマティックな巣を作るgreat desert skink(オオトカゲ)などが生息しているが、捕食者の猫や狐、野火や放牧によってともに絶滅の危機にさらされている。

Scientists Protest Canada’s Budget Cuts as Antiscience
科学者は反科学だとしてカナダの予算削減に抗議する
カナダ政府の科学に対する予算削減に対して2,000人の科学者がカナダの議会前にて抗議デモを行った。カナダ政府はオンタリオの北西にある実験湖を閉鎖し、極域大気研究所も閉鎖することを検討しており、それを受けてオタワ大の学生たちは’証拠の死’集会を行った。カナダ政府はより実用的な科学分野に予算を分配するとしている。

Fertilized Blooms Deposit Carbon To Deep Sea
施肥されたブルームが深海に炭素を堆積させる
鉄散布による植物プランクトン(珪藻類)のブルームを利用した、大気中の二酸化炭素を深海底に輸送する実験の直接的な結果が初めて得られた。鉄は多くの海域で欠乏しており、生物生産を制限している。鉄散布によって大気中の二酸化炭素を固定できる可能性が先行研究によって示されていたが、生成された炭素が大気に戻ることなく深海底に輸送されるかどうかは不確かであった。2004 European Iron Fertilization Experimentの一環で南大洋において行われた実験では、沈降粒子を追跡することでおよそ半分の炭素が1,000mの深さに輸送されることを突き止めた。

Global Warming Punched Up Some 2011 Extremes
地球温暖化が2011年のいくつかの異常気象を活気づけた
人為起源の温暖化が異常気象と関係しているかを突き止めることは難しい。テキサスの熱波・干ばつとイギリスの異常に暖かかった冬は温暖化が原因かもしれないが、去年タイを襲った大洪水は温暖化とは全く関係がなかったらしい。NOAAとイギリス気象庁は様々な方法(モデルや観測記録)から異常気象と大気中の温室効果ガスとの関係について研究している。

News & Analysis
The Metatron: Experimental Ecology Gets Connected
メタトロン:実験生態学が結びついた
4ヘクタールの広い敷地にまたがるそれぞれが繋がった白テント群から成る、全く新しいタイプの生態研究施設が設立され、どのように生物が広がっていくかの研究がなされる。

News Focus
Taking the Measure of Madidi
Madidiの手段をとる
Jean Friedman-Rudovsky
地球の植物の将来を予測するために、世界で最も生物が多様な地域の一つであるボリビアのMadidi保護区域に科学者が入った。

Probing Diversity's Complexity
生物多様性の複雑さを証明する
Jean Friedman-Rudovsky
海抜180mの地域で6,000mの山の斜面に沿って生息する植物相を研究することで、研究者たちは地球の生物多様性の真の複雑さをモデル化することを目標としている。

The Ingredients for a 4000-Year-Old Proto-Curry
4,000年前の最初のカレーのレシピ
Andrew Lawler
学会にて最近発表された研究はインドの食事(スパイス、豆、穀物、バナナなど)が驚くほど多様であることを示した。

Diving Into the Indian Ocean's Past
インド洋の過去に潜る
Andrew Lawler
インド洋に沈んでいる最古の沈船を調べることで、過去の理解がいっそう深まると科学者たちは確信している。

Persians Made the Afghan Desert Bloom
ペルシャがアフガン砂漠の最盛期を作った
Andrew Lawler
アフガニスタンの中部〜北部の調査から見事な水系を作った巨大都市は2,500年前までその歴史が遡ることが分かった。

Books et al.
Summer Reading
夏の読書
夏に読みたい英語の本の紹介。

Finding Their Place In the World
世界の中で彼らの位置を発見する
Nature’s Compass: The Mystery of Animal Navigation
James L. Gould and Carol Grant Gould. Princeton University Press, Princeton, NJ, 2012. 310 pp. $29.95, £19.95. ISBN 9780691140452.
プリンストン大のJames Gouldと科学雑誌の記者のCarol Grant Gouldが動物の空間把握能力(正確な位置を飛行する鳥など)について議論する。

Evolution and Robots
進化とロボット
Darwin’s Devices: What Evolving Robots Can Teach Us About the History of Life and the Future of Technology. John Long. Basic Books, New York, 2012. 281 pp. $26.99, C$30, £17.99. ISBN 9780465021413.
魚ロボットを使った脊椎動物の生体メカニズムと進化についての議論。

Life from a Rooted Perspective
根っこに焦点を当てた生命
What a Plant Knows: A Field Guide to the Senses
Daniel Chamovitz. Scientific American/Farrar, Straus and Giroux, New York, 2012. 187 pp. $23. ISBN 9780374288730.
植物の感覚と周囲への反応に関する本。

Hot Seat in Our Warming World
我々の温暖化した世界の熱い椅子
The Hockey Stick and the Climate Wars: Dispatches from the Front Lines. 
Michael E. Mann. Columbia University Press, New York, 2012. 413 pp. $28.95, £19.95. ISBN 9780231152549.
Michael E. Mannによる、気候変動科学に対する手厳しい攻撃についての個人の経験を語る。タバコの害をタバコ業界が認めなかったように、化石燃料産業界は当初温暖化は人為起源かどうか怪しいというキャンペーン等を行っていた。現在では科学界では温暖化は人類の活動が原因だというコンセンサスを得ている。Climate Gate事件やその他のキャンペーンの詳細について詳細に述懐する。

From the Belly of a Whale
クジラの腹から
Floating Gold: A Natural (and Unnatural) History of Ambergris.
Christopher Kemp. University of Chicago Press, Chicago, 2012. 209 pp. $22.50, £14.50. ISBN 9780226430362.
科学、歴史、旅行記を織り交ぜて語られるマッコウクジラ(Sperm whale)から採取される香料’竜涎香’を巡る物語。竜涎香は深海に潜行することで有名なマッコウクジラが補食した消化されないイカの尖った嘴などが腸を刺激することがきっかけとなり、嘴が鉱物で覆われる。その後糞便とともに排出された竜涎香の前駆体は海を漂い、数ヶ月から数年の時をかけて匂いを変化させ(初めは糞便の強烈な匂いらしい)、やがてさほど不快でもない強烈な香りのする竜涎香が出来上がる。偶然浜辺に打上った竜涎香は降水、薬、スパイスへと様々な用途に用いられ、その価値は金に匹敵するほどのものであったらしい。

MANIACal Roots
MANICA Calのルーツ
Turing’s Cathedral: The Origins of the Digital Universe. George Dyson. 
Pantheon, New York, 2012. 443 pp. $29.95, C$34. ISBN 9780375422775. Allen Lane, London. £25. ISBN 9780713997507.
プリンストン大でのコンピューター科学の基盤とモデリングに関する研究の議論。

Perspectives
The Marine Sulfur Cycle, Revisited
海洋の硫黄循環の見直し
Matthew T. Hurtgen
大気中の酸素濃度を維持するために硫黄循環が従来考えられてきたよりも重要な役割をもっていることをモデル研究が示した。

The Art of Ecological Modeling
生態モデリング技術
Ian L. Boyd
生態モデリングは予想能力が限られているが、擾乱に対して何が生態系を脆弱にするかという洞察をもたらしてくれる。

Research Article
2.8 Million Years of Arctic Climate Change from Lake El’gygytgyn, NE Russia
Martin Melles, Julie Brigham-Grette, Pavel S. Minyuk, Norbert R. Nowaczyk, Volker Wennrich, Robert M. DeConto, Patricia M. Anderson, Andrei A. Andreev, Anthony Coletti, Timothy L. Cook, Eeva Haltia-Hovi, Maaret Kukkonen, Anatoli V. Lozhkin, Peter Rosén, Pavel Tarasov, Hendrik Vogel, and Bernd Wagner
北極からの過去の環境記録がほとんど得られていないことが北極の将来予測の妨げとなっている。ロシア北東部のEl’gygytgyn湖の堆積物から過去280万年間(2.8Ma)の古環境を復元。MIS11cとMIS31に'スーパー間氷期'があったことが分かり、現在(MIS1)や最終間氷期(MIS5)と比較して夏の最高気温は4-5℃高く、降水量も300mmほど多かったらしい。こうした変化は軌道要素や温室効果ガスの濃度では説明できず、増幅フィードバックが関与している可能性を示唆している。また北極の温暖化は西南極氷床の後退ともタイミングが一致しており、両極で気候がリンクしていたことを示唆している。
Melles et al. (2012)を改変。
ICDPの一環でロシア北東部の湖において堆積物が採取された。

Reports
Sulfate Burial Constraints on the Phanerozoic Sulfur Cycle
Itay Halevy, Shanan E. Peters, and Woodward W. Fischer
硫黄循環は堆積物中の有機物分解に影響するため、大気や海水の酸化状態を決定する。しかし堆積物と海水間の硫黄フラックスを支配する要素の理解は不完全なままである。硫黄を含んだ蒸発岩(CaSO4)の硫黄同位体分析から顕世代(過去5億年間)の蒸発岩の埋没フラックスを推定。硫黄は半分が河川を通じて海洋にもたらされるが、もともとは蒸発岩の風化が起源である。硫黄の埋没速度は時代によって異なり、蒸発岩の形成と保存に適した海洋環境の変化と密接に繋がっている。逆に硫化鉄の埋没速度はあまり変動せず平衡状態に達している。これらの事実は硫黄循環が大気の酸素濃度を規定している重要な要素であることを示唆している。

Rapid Variability of Seawater Chemistry Over the Past 130 Million Years
Ulrich G. Wortmann and Adina Paytan
流体包有物のデータは海水の主元素濃度が地質時代とともにゆっくりと変化したことを示唆している。しかしながら高解像度の同位体記録は非常に早い変動を物語っている。そこで非安定状態のボックスモデルを用いて過去1億3千万年間の全球の硫黄循環をモデリングしたところ、観測されているδ34S記録は海洋の硫酸塩濃度の変化(蒸発岩の形成と溶解)で最も良く説明されることが分かった。基本的には均衡状態で、時折急激な変動が見られる。硫黄濃度は様々な生物地球化学的過程(炭酸塩形成、有機物分解、堆積物中でのリン酸再生成、窒素固定、硫酸エアロゾル生成)に影響する。硫黄の変化は海洋の生物生産にも影響し、全球の炭素循環や気候にも影響したと考えられる。

Diversity of Interaction Types and Ecological Community Stability
A. Mougi and M. Kondoh
生態学の理論は多くの生物種からなる複雑なコミュニティーは不安定であることを予測しているが、どういった関係性(拮抗、競争、中立など)がコミュニティーの維持に重要な要素であるかについてはまだ疑問が多い。拮抗や中立のモデルを組み込むと現実の個体数変動をよく再現できることが分かった。複雑さが増すことによってコミュニティーの安定性は’増す’ということも分かった。多様性と関係性の2つが重要である可能性がある。

2012年7月20日金曜日

新着論文(Nature#7407)


Nature
Volume 487 Number 7407 pp271-400 (19 July 2012)

World View
Wildfires ignite debate on global warming
野火が地球温暖化に関する議論に火をつける
温暖化が進むとともに、森林や家は焼け、メディアと人々は気候変動の現実に直面せざるを得ないだろう、とMax A. Moritzは言う。

Research Highlights
Lucy’s relatives walked upright
Lucyの親戚はまっすぐ立って歩いていた
J. Hum. Evol. http://dx.doi.org/ 10.1016/j.jhevol.2011.11.012 (2012)
人類の祖先’Lucy’(320万年前)の親戚である猿人類の骨を分析したところ、従来考えられていたよりもより人間に近い存在であることが分かった。エチオピアから発掘されたAustralopithecus afarensisの骨を分析したところ、骨は3-3.4Maのものであることが分かり、足の骨は弓状で、脊椎は特に背骨が人類に類似した特徴を有している。直立二足歩行の証拠と言える。

Dark galaxies revealed
暗い銀河が明らかになった
Mon. Not. R. Astron. Soc. http:// dx.doi.org/10.1111/j.1365- 2966.2012.21529.x (2012)
暗い銀河は星を持たず、光学望遠鏡では観測できない。隣接する明るい光を出す銀河(quasers)から放出される放射を利用することで、暗い銀河からかすかな蛍光が検出されたらしい。大量の水素(太陽の10億倍の量に相当)が見つかり、これらが星の素となっているものと想像される。

Trout nose yields magnetic cells
ニジマスの鼻は磁性細胞を作る
Proc. Natl Acad. Sci. USA http://dx.doi.org/10.1073/ pnas.1205653109 (2012)
動物の中には磁気を感じて移動を行うものがいるが、磁性細胞を特定することに成功したらしい。ニジマスの鼻の表皮細胞を採取し、比較的強力な磁場の下で顕微鏡観察を行ったところ、特定の周期で回転した。高解像度のイメージングを行ったところ、鉄に富んだ結晶が細胞脂質に結合しているのが観察された。これらが磁性細胞が磁場の下で整列する原因となっているようだ。

Extinctions still to come
まだ見ぬ絶滅
Science 337, 228–232 (2012)
アマゾンの熱帯雨林において90%の絶滅はまだ起きていないことがモデル研究から分かった。1978-2008年に得られたデータに基づき、「生息域が失われても直ちには絶滅しない」という過程のもとで熱帯雨林に生息する脊椎動物の絶滅のタイミングと生息域の減少をモデル化している。すでに生息域の減少は進行しているものの未だ絶滅に達したものは少なく(絶滅の’負債’)、2050年までに絶滅する種は全体の60-70%という予測がなされた。

Seven days
Telescope club full
望遠鏡は目一杯結束する
南半球の宇宙を詳細に観測するためにチリに設置されるLarge Synoptic Survey Telescope (LSST)はNSFの計画に対する援助を受けることが決まった。2022年から運用が開始されるとのこと。

Pluto’s fifth moon
冥王星の5番目の月
ハッブル宇宙望遠鏡は冥王星の新たな月(P5)を発見した。これらの月は冥王星に比べてはるかに小さく、また最近発見されたばかり。P5、P4、Nix、Hydra、Charonの5つ。

Atmospheric lab
大気の研究所
ニュージーランドは科学者の削減と世界最高レベルの大気観測の研究を中止しようとしているらしく、国際社会の関心が寄せられている。特に南島において51年間に渡って稼働しているLauder Atmospheric Research Stationは大気中のフロン、紫外線、温室効果ガスをモニタリングしている。Lauderの研究員は全員がクビになると施設を管理するNational Institute of Water and Atmospheric Researchから勧告されているらしい。

CHINA’S RARE-EARTH DOMINANCE
中国のレアアース独占
日本とベトナムは先月、中国のレアアース市場の独占を食い止めるべく、joint Rare Earth Research and Technology Transfer Centreをベトナムのハノイに設立した。世界中の鉱山から得られた鉱物中からのレアアースの分離と濃縮の技術開発を目指す。
レアアースの現在の生産量(左)と各国の備蓄量(右)。現在レアアースは中国の独占状態にあり、中国の輸出規制によって価格も高騰している。


News in Focus
The legacy of Lonesome George
’孤独なジョージ’の伝説
カメの死がガラパゴスの保全の努力に拍車をかける
絶滅の危機にさらされているガラパゴスリクガメの個体数。現在すべての種が危機にさらされているが、個体数を正確に把握するのは難しいらしい。

Cosmic survey finds global appeal
銀河の調査が世界的な魅力を見つける
Large Synoptic Survey Telescopeの計画を支える国や機関が出そろった。

Florida abuzz over mosquito plan
蚊の計画をめぐってフロリダが騒然としている
天狗熱を媒介する蚊を遺伝子組換えによって感染率を下げるように作り変えることについて、人々の反対の声が高まっている。

Correspondence
Costa Rica pioneers ecosystem services
コスタリカが生態系サービスの最先端を行く
小国のコスタリカはPayments for Environmental Services (PES)計画のもと、グリーン化の分野で先陣を切っている。例えば、環境保全に協力的な地主はその地から恩恵を受けている地方住民から報償を得ることができる。また化石燃料や水の使用にかかる税をもとに森林保全機関が維持されている。さらに自動車からの排出を抑えるための基金に対するボランティアの寄付もある。

Sewage recycles antibiotic resistance
下水は抗生物質に対する耐性をリサイクルする
下水処理の重要な側面は抗生物質に耐性のある生物の汚染の問題にもある。下水処理槽には抗生物質に耐性のある生物の遺伝子が多数混入してくるため、そうした遺伝子が再利用・再分配される場でもある。解決策を早急に模索しなければならない。


News & Views
The great iron dump
鉄を大量に放り込む
Ken O. Buesseler
海の藻類のブルーミングによって有機炭素が深海に沈積することがわかり、施肥する(鉄を与える)ことが気候変動を軽減するための実現可能な戦略となるかどうかという疑問について、全部ではないにしろ、答えの一部が得られた。

A bone for all seasons
四季を通じて育つ骨
Kevin Padian
哺乳類の代謝速度は非常に高いので、その成長は季節的変動の影響を受けないとずっと考えられてきた。だが、哺乳類の骨に冷血動物に見られるような年輪があることが今回明らかになった。

Articles
Deep carbon export from a Southern Ocean iron-fertilized diatom bloom
Victor Smetacek, Christine Klaas, Volker H. Strass, Philipp Assmy, Marina Montresor, Boris Cisewski, Nicolas Savoye, Adrian Webb, Francesco d’Ovidio, Jesús M. Arrieta, Ulrich Bathmann, Richard Bellerby, Gry Mine Berg, Peter Croot, Santiago Gonzalez, Joachim Henjes, Gerhard J. Herndl, Linn J. Hoffmann, Harry Leach, Martin Losch, Matthew M. Mills, Craig Neill, Ilka Peeken, Rüdiger Röttgers, Oliver Sachs, Eberhard Sauter, Maike M. Schmidt, Jill Schwarz, Anja Terbrüggen & Dieter Wolf-Gladrow
鉄化合物を海洋表層に散布することで海洋の肥沃化を招き、植物プランクトン(特に珪藻類)のブルーミングを招くことが知られているが(鉄仮説)、プランクトンの成長に有機物(つまり炭素)が使用されるために、海洋表層中で二酸化炭素がかなり減少する。しかしブルーミングによって生成されたバイオマスが沈降過程においてどう変化するのかについては十分に確かめられておらず、大気からの炭素隔離の時間スケールもよく分かっていない。南極周回流のメソスケールの渦の中心において5週間にわたる鉄散布実験を行い、この期間に表層から深海底へ沈降する粒子を追跡した。珪藻類のブルーミングは、施肥後の4週目に最大になった。次いで、数種の珪藻類が大量死し、細胞と鎖状群体が絡み合って粘液質の集合体が形成され、急速に沈降した。結果をまとめると、複数の証拠(それぞれが大きな不確実性を伴っているにしろ)から、大増殖によって生じたバイオマスの少なくとも半分が1,000 m以上の深さにまで沈降し、かなりの割合が海底に達したと考えられる。したがって、鉄肥沃化による珪藻類の大増殖は、海洋底層水では数百年の時間スケールで、堆積物中ではさらに長い時間スケールで、炭素を隔離する可能性がある。

※コメント
有機物が盛んに分解される中層・底層の酸素濃度とそれが他の生物に与える影響の評価はなされていない?また隔離が上手くいく海域として南極周辺は適切か?せっかく隔離した溶存炭素や有機物粒子が湧昇によって再び表層にもたらされてしまっては意味がない。生物生産の高さから選定されているのかもしれないが…

Letters
Solid–liquid iron partitioning in Earth’s deep mantle
Denis Andrault, Sylvain Petitgirard, Giacomo Lo Nigro, Jean-Luc Devidal, Giulia Veronesi, Gaston Garbarino & Mohamed Mezouar
マントル深部の融解過程は、ハワイなどのホットスポット火山にマグマを供給していると考えられている深部由来のプリュームの起源に重要なかかわりを持っている。さらに、地球が形成されて以降、マントルが地球化学的あるいは力学的にどのように進化したかについての手がかりも与える。マントル浅部におけるメルトの生成についてはよく理解されているが、核–マントル境界近傍の深部融解については議論が続いている。深部の部分的に融解したマントルの力学的振る舞いのモデル化には、固体部分とメルト部分の密度差についての知識が必要となる。メルトの浮力は、それが正の場合でも負の場合でも、異なる地球化学的リザーバーの間に大きな化学的分離を生じさせうるが、浮力の選択次第で地球力学モデルは大きく異なる。部分的に融解した深部マントル中での液体の上昇は、地表における火山活動に、下降は深部マグマ・オーシャンの生成に寄与していると考えられる。我々は、部分的に融解したコンドライトタイプの物質の深部マントル条件下における相関係を調べた。本論文では、アルミニウムを含む(Mg,Fe)SiO 3 ペロブスカイトとメルトとの間の鉄の分配係数が0.45と0.6の間であり、鉄はこれまで報告されていたほどには深部マントル鉱物とincompatibleではないことを示す。固体とメルトとの間の密度差を計算すると、核–マントル境界で生成されたメルトは浮力があると予想され、したがって上向きに分離するはずである。初期地球において巨大隕石の衝突で生じたマグマ・オーシャンについて言えば、マグマの結晶化が液体を表面に押し上げ、深部にincompatible元素に欠乏した固体残滓が形成されることを示唆している。

Seasonal bone growth and physiology in endotherms shed light on dinosaur physiology
Meike Köhler, Nekane Marín-Moratalla, Xavier Jordana & Ronny Aanes
周期的な成長が骨組織に残す痕跡は、絶滅した脊椎動物の生理特性をめぐる議論の的となっている問題である。変温動物には、体温および代謝速度の低下と相関する成長停止の著明な年周期が認められるが、恒温動物は、体温が定常的に高く代謝速度が維持されるため、成熟するまで継続的に成長すると考えられている。このような見かけ上の二分性によって、帯状構造のある骨は変温動物様の生理特性を表すと考えられるようになり、その結果、恐竜の体温生理特性(thermophysiology)や、鳥類および哺乳類様爬虫類の恒温性の進化をめぐる議論がさらに盛んに行われるようになった。今回我々は、熱帯から極地までの環境に生息する野生の反芻動物に関する包括的な全地球規模の研究に基づき、周期的な成長が恒温動物の普遍的な形質の1つであることを明らかにする。成長に不適な季節には、体温、代謝速度、および骨成長に関与するインスリン様成長因子1の血漿中濃度の低下と同時に成長が停止し、これはエネルギーを温存するための原始的な熱代謝戦略の一環となっている。逆に、組織の成長が旺盛な期間は、適した季節の始まりに見られる最高代謝速度およびそれと相関するホルモン変化に一致しており、季節的な資源を獲得・使用する効率が上昇していることが示唆される。本研究は、恒温性内温動物が季節によって成長を停止させることを裏付けるこれまでで最も強力な証拠を示しており、これによって、成長の停止で生じた線を変温性の論拠とすることは否定される。しかし、高い成長速度は哺乳類の特徴的な形質の1つであり、このことは内因的熱生成の能力を示唆している。反芻動物の年周期は、恐竜をはじめとする絶滅した分類群の体温生理特性について推論するうえで基盤とすべき現生モデルとなる。

新着論文(CP)


Climate of the Past
7 May 2012 - 29 June 2012

The impact of different glacial boundary conditions on atmospheric dynamics and precipitation in the North Atlantic region
D. Hofer, C. C. Raible, A. Dehnert, and J. Kuhlemann
高解像度のAGCMを用いて氷期の異なる境界条件(LGM; 21kaとMiddle Weichselian; 65ka)が北大西洋の大気力学や降水にどのような影響を与えるかを調査(海氷、SST、ほ放射強制力、氷床量など)。特にLaurentaide氷床の高度に大きな違いが見られ、氷床の影響で偏西風の位置が変化することで北大西洋の降水も変化した(特に冬に顕著で、夏はあまり変化は見られなかった)。

Productivity response of calcareous nannoplankton to Eocene Thermal Maximum 2 (ETM2)
M. Dedert, H. M. Stoll, D. Kroon, N. Shimizu, K. Kanamaru, and P. Ziveri
PETM(~56Ma)のあとに起きたETM2(~53.7Ma)にも同様の温暖期が起きていたことが知られている。d13Cの負のエクスカージョンと深海底での炭酸塩の大規模な溶解は大量の炭素が表層にもたらされたことを示唆しており、結果的に海洋酸性化、温暖化、海洋の成層化、栄養塩供給の変化などが海洋の植物プランクトン(中でも石灰化・光合成植物プランクトン)に影響したと考えられる(現在の地球温暖化のアナログになる)。南大西洋と北太平洋から得られた堆積物コア中の石灰化植物プランクトンのSr/CaをICP-AESで測定することで過去の生物生産を推定。ETM2の時に南大西洋では生物生産が増加(湧昇か河川からの栄養塩供給が増加したことが原因?)し、逆に北太平洋では減少していたことが分かった。

Sensitivity of the North Atlantic climate to Greenland Ice Sheet melting during the Last Interglacial
P. Bakker, C. J. Van Meerbeeck, and H. Renssen
EMICs(LOVECLIM)を用いて最終間氷期のグリーンランド氷床の融解とそれが気候に与える影響の感度実験。海氷の範囲や子午面循環の強弱を変えることで、3つの北大西洋のSSTのレジームがあることが分かった。それを間接指標より復元されているSSTと比較することで、どのレジームが現実的かを特定。それによると、Labrador海では約4℃の温度低下、北大西洋の40º-70ºNで約1℃の温度低下が見られた。またグリーンランド氷床は夏の温度極大期とはやや遅れて部分的に融解していることも分かった。

Role of CO2 and Southern Ocean winds in glacial abrupt climate change
R. Banderas, J. Álvarez-Solas, and M. Montoya
氷期の千年スケールの気候変動のメカニズムをEMICs(CLIMBER-3α)を用いて考察。二酸化炭素濃度と南大洋の偏西風を変えることで(ともに増加させた)、AMOCが強化し、北大西洋の海氷の後退とSSTの上昇(初めの数十年で4℃、その後10℃の上昇)が再現された。またAMOCの強化はNADWの形成域をより北上させ、より多くの熱を大気に渡すことで自身は冷たくなり、かつ海氷後退によって淡水の供給も減少することでよりAMOCが強化される(正のフィードバック)という新しいメカニズムが提唱された。

Volcanic synchronisation between the EPICA Dome C and Vostok ice cores (Antarctica) 0–145 kyr BP
F. Parrenin, J.-R. Petit, V. Masson-Delmotte, E. Wolff, I. Basile-Doelsch, J. Jouzel, V. Lipenkov, S. O. Rasmussen, J. Schwander, M. Severi, R. Udisti, D. Veres, and B. M. Vinther
102の火山灰層を特定(電気伝導度、di-electorical profiling、硫黄濃度)することで、EDCアイスコアとVostokアイスコアの0-145kaの年代モデルを再構築。新しい年代モデルはAntarctic Ice Core Chronology 2012に貢献すると考えられる。年代モデルの差異は主に氷の厚さの変化によるもので、表面で雪の降り方が変化したせいではなさそう。新しい年代モデルからは、EDCとVostokで同位体シグナルの時間的な遅れは確認されなかった。またToba大爆発の差異に放出された火山灰と思しき候補は3つあるが、他の火山灰層の方が明瞭である。

Ranges of moisture-source temperature estimated from Antarctic ice cores stable isotope records over glacial–interglacial cycles
R. Uemura, V. Masson-Delmotte, J. Jouzel, A. Landais, H. Motoyama, and B. Stenni
アイスコアの同位体比(δ18O, δD)を用いて氷期-間氷期の極域の温度復元がなされているが、同位体は水蒸気の元となる海域の温度の変化や降水の際の空気の温度に依存して変化してしまうことが知られている。Dome Fujiのアイスコアの360ka分を用いてd-exess法で温度変化のもたらす不確実性を評価。特に後者の効果与える影響が大きいが、効果の見積もりはかなり正確に行えるらしい。

2012年7月18日水曜日

新着論文(PNAS)

PNAS
10 July 2012; Vol. 109, No. 28 
LETTERS (Online Only)
Importance of autumn Arctic sea ice to northern winter snowfall
Jianping Li and Zhiwei Wu
「北極海の海氷減少が北半球の異常現象を説明する」とするLiu et al. (2012, PNAS)の主張は面白いがもっと詳しい説明が必要だ。またこの発見は2年前に出されたWu et al. (2010, Clim Dyn)によって既に報告されている。Liu et al. (2012, PNAS)は北極振動(AO)と近年の海氷減少とは全く異なる現象だとしているが、海氷の定義が面積ではなく、範囲だとしている点がおかしい。またAOとも有為な相関が見られている。

Reply to Li and Wu: Arctic sea ice and winter snowfall
Jiping Liu, Judith A. Curry, Huijun Wang, Radley M. Horton, and Mirong Song
Wu et al. (2010, Clim Dyn)によって提示される以前から北極海の海氷と北半球の異常気象の関連性については報告されていたものの、有名な論文さえWu et al. (2010, Clim Dyn)は引用していない。北極振動と近年の海氷減少とは全く異なる現象だ。

PNAS Plus (Author Summaries and Research Articles)
Very high-temperature impact melt products as evidence for cosmic airbursts and impacts 12,900 years ago
Ted E. Bunch, Robert E. Hermes, Andrew M.T. Moore, Douglas J. Kennett, James C. Weaver, James H. Wittke, Paul S. DeCarli, James L. Bischoff, Gordon C. Hillman, George A. Howard, David R. Kimbel, Gunther Kletetschka, Carl P. Lipo, Sachiko Sakai, Zsolt Revay, Allen West, Richard B. Firestone, and James P. Kennett
「YDの原因となったのは隕石衝突である」とする説は未だにそれを完全に否定する証拠がないため依然として議論の的となっている。12,000kmも離れた18地点(北米、ヨーロッパ、アジア)のYDに対応するすべての地層から微小球(Microspherules;隕石衝突の証拠の一つとされる)が検出された。またいくつかの地点ではスコリア状のケイ質の小包(高温状態で形成?)も見つかった。これは隕石衝突が原因でできたArizonaのクレーターに見られる特徴や1945年のTrinity nuclear airburst(核実験?)で高いエネルギーが放出された際にできた物質の特徴に類似していることから、「YDの原因となったのは隕石衝突である」とする説を支持するものである。

Earth, Atmospheric, and Planetary Sciences
Younger Dryas cooling and the Greenland climate response to CO2
Zhengyu Liu, Anders E. Carlson, Feng He, Esther C. Brady, Bette L. Otto-Bliesner, Bruce P. Briegleb, Mark Wehrenberg, Peter U. Clark, Shu Wu, Jun Cheng, Jiaxu Zhang, David Noone, and Jiang Zhu
YDにはグリーンランドの気温はOldest Dryas(H1に一致)と同程度に低下していたことがアイスコアのd18Oの記録から知られている。しかし、YDとODでは大気中の二酸化炭素濃度が50ppm違っていたたため、グリーンランドの二酸化炭素に対する感度が低下していた可能性を暗示している。北大西洋のSSTの復元とモデルシミュレーションからグリーンランドにおけるYDの温度低下はODと比較して約5℃高かったことを示す。大気循環の変化がグリーンランドにおけるd18Oと気温の関係を変えていた可能性がある。つまりグリーンランドの二酸化炭素に対する感度は従来考えられてきたよりも高く、アルベドフィードバックが効果的に働き温度が上昇することが示唆される。


17 July 2012; Vol. 109, No. 29
Earth, Atmospheric, and Planetary Sciences
1,500 year quantitative reconstruction of winter precipitation in the Pacific Northwest
Byron A. Steinman, Mark B. Abbott, Michael E. Mann, Nathan D. Stansell, and Bruce P. Finney
湿度の記録は木の年輪から得られることが多いが、湖の堆積物コアのd18Oデータを使って物理モデルシミュレーションを行うことで過去1500年間のアメリカ北西部の降水を復元を行った。中世気候変調期(MCA)に特に冬の湿潤化、小氷期(LIA)に乾燥化 が見られ、アメリカ南東部の砂漠地帯とは逆の結果が得られた。

Observationally constrained estimates of carbonaceous aerosol radiative forcing
Chul E. Chung, V. Ramanathan, and Damien Decremer
化石燃料や木材の燃焼によって大気中に放出される炭素質のエアロゾル(Carbonaceous aerosols; CA)はブラックカーボン(BC)と有機物(OM)から構成される。BCは太陽放射をよく吸収し、OMは吸収も散乱もする特徴がある。地上+衛星観測からCAの放射強制力を見積もったところ、+0.75W/m2という値が得られた(モデルでは0~0.7という値、IPCCでは1.6という値が見積もられている)。’ブラウン’カーボン(BrC)の存在も重要であることが分かった。CAの直接的な放射強制力は+0.65W/m2程度で、メタンのそれに匹敵するかそれ以上であることが分かった。
Ching et al. (2012)を改変。
全球の(A)CA(B)BC(C)OM(BrC含む)の排出量の分布。特にアフリカの熱帯雨林、東南アジアの都市部からの排出が多い。原因は焼き畑と質の悪い木材の燃焼。

2012年7月17日火曜日

新着論文(Ngeo#July2012)

Nature Geoscience
Vol 5 No 7 (July 2012)

Editorial
Beyond forest carbon 
森林の炭素を超えて
生物的な炭素貯留域として陸上及びマングローブの森林の保全に注目が寄せられている。目に見えにくい生物コミュニティーほど詳しく調べる必要がある。

Correspondence
Circadian control of global isoprene emissions
Trevor F. Keenan & Ülo Niinemets

Reply to 'Circadian control of global isoprene emissions'
C. N. Hewitt, K. Ashworth, A. Boynard, A. Guenther, B. Langford, A. R. MacKenzie, P. K. Misztal, E. Nemitz, S. M. Owen, M. Possell, T. A. M. Pugh, A. C. Ryan & O. Wild
「全球のイソプレン排出量が日周期で変動していること」に対するコメントとその返答。

Commentary
The dilemma of mountain roads
山道のジレンマ
Roy C. Sidle & Alan D. Ziegler
東南アジアの発展途上国において山道の数が増えつつある。地滑りや浸食が下流の水生生態系に与える影響は長期的な視点では重大であると考えられるが、広く認知されていない。

In the press
Nuances of glacier speed
氷河の速度の陰影
Mark Schrope
グリーンランド氷河は従来考えられてきたほど早くは融けていないらしい。2008年には間違ったデータに基づいて急速に融ける危険があると認識されていた。

Research Highlights
Drying times
乾燥した時代
Geol. Soc. Am. Bull. http://doi.org/hzg (2012)
現在アタカマ砂漠は地球上で最も乾燥した地域の一つである。乾燥化(年降水量が125から3mm以下に低下)は200万年前に始まったと考えられる。乾燥化する前の水系は10倍もの浸食・堆積が起きていたらしい。乾燥化のタイミングは、アンデスの隆起が気候変化の第一の駆動力であるというよりは、赤道東太平洋の湧昇の強化によって冷たい水が表層にもたらされ、降水のもととなる水蒸気の形成が低下したことが乾燥化の駆動力になっていたと考えられる

Emissions from ponds
沼からの排出
Glob. Biogeochem. Cycles http://doi.org/ hx4 (2012)
シベリア北東部のツンドラに広がる沼地は陸起源の二酸化炭素の量としてかなりの割合を負っている。沼と湖の水系が74-81%を負っており、そのうち沼の割合が50-70%であるという。研究チームは永久凍土地形の水系は二酸化炭素排出のホットスポットであると考えている。

Orbital assist
軌道的な手助け
Icarus http://doi.org/hzj (2012)
多くの天体(惑星・衛星)の地軸は公転面に対し垂直ではなく、傾いている。数理モデルを用いて木星の衛星の回転運動をモデリングした。一つのモデルではすべての衛星が均質な個体であることを仮定し、もう一つのモデルでは様々な厚さを持った固体と液体の層構造を採用した。液体の海があることがエウロパ・ガニメデ・カリストの地軸傾動に大きな影響を及ぼしていることが分かった。イオにはそれほど大きな影響は見られなかったらしい。系外惑星の海の存在や地下の海の深さを推定し、生命存在可能性を考える上で助けとなるかもしれない。

News and Views
Unexpected uptake
予想外の取り込み
Jayne Belnap
地衣類・シアノバクテリア・コケは地表の様々な部分を覆っているが、これらの生物が地球化学的に炭素と窒素の循環に重要な役割を負っていることが分かった。

Mercury in flux
流れの中の水銀
Jeroen E. Sonke & Lars-Eric Heimbürger
北極の大気中の水銀量は夏に極大となる。モデルシミュレーションから夏に河川から大量の水銀が供給されれば説明可能であることが分かった。

Dirtier air from a weaker monsoon
弱いモンスーンがもたらすより汚い空気
Mian Chin
中国のエアロゾルの量は少なくとも地域的には人体に害を与えるレベルに達している。モデルシミュレーションから過去数十年間にモンスーンが弱まってきたことが、汚染物質を陸に滞留させる原因として重要であることが分かった。

Analogue complexity
アナログの複雑さ
Dorothy Pak
カリフォルニア湾は最終退氷期の寒冷化が起きていた時期(YD?)には湧昇が弱化していたらしい。これは現在見られる季節変動をもとになされる予想とは反対の変化であることが分かった。

Progress Article
The contribution of organics to atmospheric nanoparticle growth
Ilona Riipinen, Taina Yli-Juuti, Jeffrey R. Pierce, Tuukka Petäjä, Douglas R. Worsnop, Markku Kulmala & Neil M. Donahue
エアロゾルは気候に大きな影響を与えていると考えられているが、あまり定量化がなされていない。ナノメートルサイズの粒子が雲の凝結核になり得るサイズの粒子まで成長する過程を理解することはエアロゾル・雲の形成過程・気候との関係を知る上で重要である。自然界では炭化水素起源の有機物を取り込んで成長しているが、いくつかのメカニズムが考えられる。成長を支配するメカニズムは粒子のサイズに強く影響されるため、よりシステマティックに研究をする必要がある。
Riipinen et al. (2012)を改変。
揮発性有機物(VOC)・エアロゾルの成長とその起源・影響などの模式図。

Letters
Contribution of cryptogamic covers to the global cycles of carbon and nitrogen
Wolfgang Elbert, Bettina Weber, Susannah Burrows, Jörg Steinkamp, Burkhard Büdel, Meinrat O. Andreae & Ulrich Pöschl
地上の多くの部分(土壌・岩石・植物)は光合成自家栄養生物(光から栄養を作る)によって覆われている。これらの生物は隠花植物カバーと呼ばれており、大気中の二酸化炭素と窒素を固定できる能力がある。これらのコミュニティーが陸域の炭素固定の7%を負っており、窒素固定のほとんど半分を負っている可能性があることが分かった。
Elbert et al. (2012)を改変。
様々な環境中の隠花植物。

Articles
Riverine source of Arctic Ocean mercury inferred from atmospheric observations
Jenny A. Fisher, Daniel J. Jacob, Anne L. Soerensen, Helen M. Amos, Alexandra Steffen & Elsie M. Sunderland
メチル水銀は水生生物の体内に蓄積する神経毒を持った物質である。工業や鉱業などの人間活動によって無機的な水銀の陸域への流入量が増加してきた。北極の大気中の水銀量は夏にピークを迎える(北半球の中緯度では逆に低くなる)ことが知られているが、3次元のモデルシミュレーションから水銀は北極周辺の河川から特に夏に流入している可能性が示された。しかし河川流量の変化や土壌中での水銀の移動性(例えばツンドラの融解や森林火災など)に強く依存することが分かった。

Seagrass ecosystems as a globally significant carbon stock
James W. Fourqurean, Carlos M. Duarte, Hilary Kennedy, Núria Marbà, Marianne Holmer, Miguel Angel Mateo, Eugenia T. Apostolaki, Gary A. Kendrick, Dorte Krause-Jensen, Karen J. McGlathery & Oscar Serrano
炭素固定に森林やマングローブの保全が重要であることは広く認識されているが、海で炭素固定を担っている海草類の炭素固定能(地球で最も大きな炭素固定能をもつものの一つ)はあまり定量化されていない。これまで得られたデータと新しく得たデータをもとに、海草類とその下の土壌中の炭素量を推定。4.2-8.4PgCほどの炭素量に相当するらしい。現在の速度で海草類が失われてしまうと、年間299TgCが放出されることになるらしい。

2012年7月16日月曜日

新着論文(PO)


Paleoceanography
27 June 2012 - 11 July 2012

An early Lutetian carbon-cycle perturbation: Insights from the Gorrondatxe section (western Pyrenees, Bay of Biscay)
Payros, A., S. Ortiz, L. Alegret, X. Orue-Etxebarria, E. Apellaniz, and E. Molina
Eocene中期のC21r/C21nクロン(地磁気年代層序)はタービダイトの増加、d13Cの負のエクスカージョン、有孔虫殻の保存の悪化、底性有孔虫の多様性の低下などの環境悪化によって特徴づけられる。この環境擾乱はPaleogeneの他の
温暖期の環境変動と同じ特徴を有しているものの、温暖化が実際に起きていたかどうかが議論されている。スペイン沖で採取された堆積物コアの分析から、PETMと類似しているが、小さな規模のイベントであったことが分かった。

Chronostratigraphic framework for the IODP Expedition 318 cores from the Wilkes Land Margin: Constraints for paleoceanographic reconstruction
Tauxe, L., C. E. Stickley, S. Sugisaki, P. K. Bijl, S. M. Bohaty, H. Brinkhuis, C. Escutia, J. A. Flores, A. J. P. Houben, M. Iwai, F. Jiménez-Espejo, R. McKay, S. Passchier, J. Pross, C. R. Riesselman, U. Röhl, F. Sangiorgi, K. Welsh, A. Klaus, A. Fehr, J. A. P. Bendle, R. Dunbar, J. Gonzàlez, T. Hayden, K. Katsuki, M. P. Olney, S. F. Pekar, P. K. Shrivastava, T. van de Flierdt, T. Williams, and M. Yamane
南極のWilkes Landで得られた堆積物コア(IODP318)はEoceneから現在までの年代を有している。コアリングやハイエタス起源の不整合が多数見られるが、地磁気逆転を用いた層序はなんとか使えそう。また生物層序(珪藻、放散虫、石灰質ナノ化石、渦鞭毛藻胞子)によってもさらに年代軸を構築。南大洋で年代軸が構築されている他の堆積物コアが少ないため、このコアは貴重。

Variations in seawater Sr/Ca recorded in deep-sea bamboo corals
Hill, T. M., M. LaVigne, H. J. Spero, T. Guilderson, B. Gaylord, and D. Clague
カリフォルニア縁辺から採取された深海サンゴ(Banboo coral)の成長縞に沿ってSr/Caを測定(溶液ベース+LA-ICPMS)。海水のSr/Caをよく記録しており(R2=0.53)、水柱でのSrを含んだ殻の溶解を反映していると考えられる。10年スケールのSr/Caの大きな変動は海水のSr/Caが従来考えられていたより一定でないことを示唆している。
Hill et al. (2012)を改変。
深海サンゴのSr/Caは海水のSr/Caを反映している?

Abrupt changes of intermediate water properties on the northeastern slope of the Bering Sea during the last glacial and deglacial period
Rella, S. F., R. Tada, K. Nagashima, M. Ikehara, T. Itaki, K. Ohkushi, T. Sakamoto, N. Harada, and M. Uchida
ベーリング海から得られた堆積物コアの底性有孔虫のd13C・d18O、炭酸塩量から最終氷期以降の環境変動を復元。D/Oの亜間氷期に相当する時期に深さ方向の底性有孔虫d18Oの傾きが小さくなることから、中層水の形成が妨げられ、北太平洋を起源とする深層水が中層水を満たしていたことが示唆される。北太平洋の深層水形成には表層水が十分に冷やされることと海氷形成時に塩分が増加することの二つの要因が重要。

新着論文(Science#6091)

Science
VOL 337, ISSUE 6091, PAGES 125-256 (13 July 2012)

Editors' Choice
It’s All About the Sulphides
それが硫黄酸化物のすべてだ
Geochim. Cosmochim. Acta 90, 47 (2012).
火星の表面では硫黄水酸化物と炭酸塩の両方が観測されている。しかし通常これら二つの鉱物は同時に存在しにくいはずである。硫黄水酸化物は酸性状態を必要とするが、これは火星全体が酸性状態であるというよりは、硫黄に富んだ玄武岩の中で局所的に酸化状態が実現されているのが原因である可能性がある。

News of the week
NSF Finds Icebreaker To Reach McMurdo
NSFはMcMurdoに到達するための砕氷船を見つけた
NSFは南極のMcMurdo米軍基地への通路を作るためにロシアの砕氷船(Vladimir Ignatyuk)をチャーターしたと発表した。今期は利用可能だが、来期は利用不可能だという。

New World Heritage Site Spans Three Countries
新しい世界遺産は3つの国々にまたがる
UNESCOは7/2にコンゴ・カメルーン・中央アフリカ共和国の3つの国にまたがる世界遺産を登録した。Sangha River Tri-National Protected Area (TNS)と呼ばれる領域で、野生動物(ゴリラ・チンパンジー・象)がもとの状態で保存されている、中央アフリカのなかで数少ない地域に当たる。

Putting Zoonotic Diseases on the Map
動物由来感染症を地図上に落とす
動物と人間の垣根を越えて、新しい病気は常に発生している。家畜が密集しているアメリカとヨーロッパは以前ホットスポットであるが、発展途上国もそれに追いつきつつある。食料・乳製品の需要増加が主な原因らしい。密集した空間で家禽や豚を飼育することで病気の危険性が高まり、動物由来感染症が原因で毎年2,700万人もの人が死んでいる(特にエチオピア・ナイジェリア・タンザニア・トーゴ・インド)。

South Korea Considers ‘Scientific’ Whaling
韓国が’科学的な’捕鯨を考えている
韓国は先週開かれた国際捕鯨委員会の年会において’科学的な’捕鯨を考えていると公表した。目視だけでは十分な情報が得られないため、特に韓国半島を回遊するミンククジラを捕獲し、生態調査や漁業への影響を評価するという。クジラ保護の国際協定で’科学的な調査’に限って捕鯨は認められているものの、日本は’科学的な調査’として、1986年以降16,000頭ものミンククジラを捕獲している。

Revised Sea Level Rise Bill Goes To Governor
改訂された海水準上昇の法案が州知事へ
海水準上昇が指数関数的に上昇することをいっさい考慮せずに沿岸部の適応政策を決定するという法律がノースカロライナの州議会で可決された。あとは州知事がゴーサインを出せば法律として制定されることになる。2016/7/1まで有効であるという。

News & Analysis
Commission Spreads Blame for ‘Manmade’ Disaster
’人的な’災害だと委員会は責任を広める
Dennis Normile
日本の議会が設立した事故調査委員会は福島第一原発のメルトダウンの事故はいわゆる’人災’であるとして、東京電力と政府の取り締まり委員会を糾弾している。

Earth and Planetary Scientists Search for Common Ground
地球科学者と惑星科学者は同じ地面を探している
Eli Kintisch
NASAの別々の部門が協賛となって開かれた4日間のミーティングにおいて、地球科学と惑星科学のコミュニティーを融合する計画が模索された。

News Focus
Rising Acidity Brings an Ocean of Trouble
上がる酸性度がトラブルの多い海をもたらす
Robert F. Service
二酸化炭素放出は世界の海の化学を変えており、殻を作る生物に既に悪影響を及ぼしているとともに、海洋生態系に大きな影響を及ぼすと考えられる。

Letters
Canada's Weakening Aquatic Protection
カナダの弱い水環境保全
Brett Favaro, John D. Reynolds, and Isabelle M. Côté
予算削減を受けて、カナダ政府は汚染生態学の研究施設や水環境の研究施設を閉鎖した。さらに「Fish Act」と呼ばれる淡水・海水のすべての水に生息する魚を保護するための条例も改定され、漁業対象の魚のみに適応されることに。

Policy Forum
Challenges to the Future Conservation of the Antarctic
将来の南極保全に向けた挑戦
S. L. Chown, J. E. Lee, K. A. Hughes, J. Barnes, P. J. Barrett, D. M. Bergstrom, P. Convey, D. A. Cowan, K. Crosbie, G. Dyer, Y. Frenot, S. M. Grant, D. Herr, M. C. Kennicutt II, M. Lamers, A. Murray, H. P. Possingham, K. Reid, M. J. Riddle, P. G. Ryan, L. Sanson, J. D. Shaw, M. D. Sparrow, C. Summerhayes, A. Terauds, and D. H. Wall
環境の変化と資源需要が南極の保全を脅かしている。

Perspectives
Amazonian Extinction Debts
アマゾンの絶滅の負債
Thiago F. Rangel
ブラジルの熱帯雨林で過去とこれからの森林破壊によってどれだけの種が絶滅に向かうのだろうか?

Reports
A Reduced Organic Carbon Component in Martian Basalts
A. Steele, F. M. McCubbin, M. Fries, L. Kater, N. Z. Boctor, M. L. Fogel, P. G. Conrad, M. Glamoclija, M. Spencer, A. L. Morrow, M. R. Hammond, R. N. Zare, E. P. Vicenzi, S. Siljeström, R. Bowden, C. D. K. Herd, B. O. Mysen, S. B. Shirey, H. E. F. Amundsen, A. H. Treiman, E. S. Bullock, and A. J. T. Jull
火星の隕石から芳香族炭化水素が検出された。マグマ鉱物と同時に産出することから、マグマの結晶化の際に選択的に有機物が沈殿した?過去の火星の炭素循環と生命存在を調べるのに重要な知見が得られた。

Ice Volume and Sea Level During the Last Interglacial
A. Dutton and K. Lambeck
将来の海水準上昇を予測するためにも過去の氷床の安定性(特に西南極氷床)を評価することは重要である。最終間氷期(MIS5, ~125ka)の海水準をサンゴ(U/Thで年代決定)やアイソスタシーを組み込んだモデルを用いて求めたところ、現在よりも5.5 - 9.0 m 高かったことが分かった。グリーンランドと南極の氷床はともに縮小していた可能性がある。放射強制力の増加に対して、両氷床の感度は高いかもしれない(温室効果ガス濃度増加で融けるということ)。
Dutton & Lambeck (2012)を改変。
生息深度が既知のサンゴは海水準の指標になり得る。この場合、テクトニクス的に比較的安定な地域から得られた化石サンゴの年代をU/Th法により得て、最終間氷期の海水準を推定している。

Rapid Progression of Ocean Acidification in the California Current System
Nicolas Gruber, Claudine Hauri, Zouhair Lachkar, Damian Loher, Thomas L. Frölicher, and Gian-Kasper Plattner
カリフォルニア海流系は既に海洋酸性化によって大きな影響を受けている地域の一つである。渦を改造できるモデルシミュレーションを用いてA2・B2排出シナリオに基づいて将来の酸性化を予測。30年後には表層60mは夏の間中、アラゴナイトに対する不飽和が実現すると考えられる。また2050年までにはアラゴナイトに対する飽和度が1.5を超す海域はなくなり、一年中不飽和な状態が実現する海域が半数に達し、底性の生態系に重大な悪影響を及ぼすと考えられる
Gruber et al. (2012)を改変。
カリフォルニア海流系ではすでに酸性化が顕著に進行しており、将来も拡大することが予測されている。2050年にはアラゴナイトに関して未飽和(飽和度が1を切ると殻が溶けると考えられている)の海水はほとんどなくなることが予想される。

Clovis Age Western Stemmed Projectile Points and Human Coprolites at the Paisley Caves
Dennis L. Jenkins, Loren G. Davis, Thomas W. Stafford Jr., Paula F. Campos, Bryan Hockett, George T. Jones, Linda Scott Cummings, Chad Yost, Thomas J. Connolly, Robert M. Yohe II, Summer C. Gibbons, Maanasa Raghavan, Morten Rasmussen, Johanna L. A. Paijmans, Michael Hofreiter, Brian M. Kemp, Jodi Lynn Barta, Cara Monroe, M. Thomas P. Gilbert, and Eske Willerslev
アメリカ・オレゴン州のPaisley洞窟から発見された古代人の遺物と糞の化石の放射性炭素年代測定から、鏃をもつ文化がClovisと呼ばれる別の文明と同時期かやや早く(~11,000 14Cage)登場していることが分かった。2つの文化は平行して進化してきた可能性が高い。

Extinction Debt and Windows of Conservation Opportunity in the Brazilian Amazon
Oliver R. Wearn, Daniel C. Reuman, and Robert M. Ewers
いつ生物が絶滅するかを予測するのはこれまで困難であったが、我々が新しく開発した方法では絶滅のタイミングや生息地の喪失の規模を推定することができる。この手法をアマゾンの熱帯雨林に応用したところ、2008年までに絶滅した脊椎動物は全体のわずか1%で、2050年までに16種が絶滅すると予想される。このモデルから得られる知見はどの種を優先的に保護すべきかを考える上で非常に重要である。

2012年7月15日日曜日

新着論文(QSR#44-46)

Quaternary Science Reviews
Volume 44, Pages 1-240 (21 June 2012) 
'Quaternary Glaciation History of Northern Europe'特集号

New insights into the last deglaciation of the south-eastern flank of the Scandinavian Ice Sheet
Albertas Bitinas
Scandinavian Ice Sheet (SIS)の力学・形態・後退の歴史については不明な部分が多い。バルト海近傍のリトアニアの氷河の後退を詳細に復元。Salpausselkäモレーンを除いて氷床の後退は連続的に起きていたらしい。最終退氷期においては氷床の後退は面的な縮小というよりは厚さが薄くなったことによって特徴づけられる。kameテラスや台地状の氷河湖性kameは最終退氷期に活動的な氷床の突起や縁辺部に取り残された氷によって形成されたらしい。


Volume 45, Pages 1-134 (29 June 2012)
Rapid Communication
Green mosses date the Storegga tsunami to the chilliest decades of the 8.2 ka cold event
Stein Bondevik, Svein Kristian Stormo, Gudrun Skjerdal
死んだ植物のクロロフィルは光・水・酸素によって完全に分解されてしまう。ノルウエーの津波堆積物中に保存されたコケのクロロフィルは貝に富んだ堆積物中で光と酸素から遮断され、pHが7以上に維持されたことで分解を免れた。コケの放射性炭素年代は津波がコケを押し流し、堆積させた時間を明確に記録していると考えられる。8.2kaイベントの前後で北大西洋高緯度の古環境記録を解釈する際に、地震起源の津波と8.2kaイベントとを注意して区別する必要がある

Research and Review Papers
Speleothem isotopic evidence of winter rainfall variability in northeast Turkey between 77 and 6 ka
P.J. Rowe, J.E. Mason, J.E. Andrews, A.D. Marca, L. Thomas, P. van Calsteren, C.N. Jex, H.B. Vonhof, S. Al-Omari
トルコの石筍のd18Oを用いて77-6kaの古環境を復元。歳差運動の20ka周期が卓越しており、中国の鍾乳石やグリーンランドアイスコアの記録と類似。また晩氷期の流体包有物(洞窟内の滴下水)のd18Oもまた大きな負の値を示し、この時期に降水の変化があったことを支持している。降水量・水蒸気の起源の変化はMOCの変化やアジアモンスーンの変化と同期して起きている。d13Cの解釈は難しいらしい。

ITCZ and ENSO-like pacing of Nile delta hydro-geomorphology during the Holocene
Nick Marriner, Clément Flaux, David Kaniewski, Christophe Morhange, Guillaume Leduc, Vincent Moron, Zhongyuan Chen, Françoise Gasse, Jean-Yves Empereur, Jean-Daniel Stanley
ナイル川の三角州の堆積物コアを用いて8kaから現在にかけての(完新世)堆積形態を復元。堆積物コアの数は105本、放射性炭素年代は320点。軌道スケールでは低緯度の環境変動にナイル川の水文や堆積は支配されており、数千年スケールではENSOの変動に支配されている。

Volume 46, Pages 1-150 (16 July 2012)
Research and Review Papers
Centennial- to millennial-scale climate oscillations in the Central-Eastern Mediterranean Sea between 20,000 and 70,000 years ago: evidence from a high-resolution geochemical and micropaleontological record
Mario Sprovieri, Enrico Di Stefano, Alessandro Incarbona, Daniela Salvagio Manta, Nicola Pelosi, Maurizio Ribera d'Alcalà, Rodolfo Sprovieri
地中海中央部で採取された堆積物コアの生物組成・植物組成・地球化学的指標から70-20kaの古環境を推定。D/Oイベントやハインリッヒイベントに対応する環境変動が地中海からも得られた。D/Oの亜間氷期に大陸からの陸源物質の流入量が増加。またこの時期にG. ruberのBa/Caが増加し、地中海に流入する河川の流量が増加したことが示唆される。淡水キャップによって成層化が起き、水柱の酸素消費量に影響を及ぼした(浮遊性・底性有孔虫のd13Cに負のエクスカージョン)?HEのときには浮遊性有孔虫のd18Oが軽くなるが、氷山がイベリア半島沖に淡水を供給したことで、地中海の熱塩循環に影響したことが原因?特にHE2とHE5の影響が大きかった。

Fine scale sediment structure and geochemical signature between eastern and western North Atlantic during Heinrich events 1 and 2
H. Rashid, F. Saint-Ange, D.C. Barber, M.E. Smith, N. Devalia
ハインリッヒイベント(ここではH1とH2)の際のLabrador海の堆積相はnepheloid flow(比較的強い深層流によって運ばれる深海堆積物の懸濁物の流れ)と炭酸塩量の増加、IRDの存在、N. pacydermaのd18Oの負のエクスカージョンで特徴づけられる。北大西洋でこれまで得られた堆積物コアから各地のIRDの年代のずれなどを比較し、H1とH2の詳細な時間軸・空間分布を構築。Labrador海でもH0・H1・H1に対応する炭酸塩に富んだ層はHudson海峡では見られるが、Baffin湾では見られない。また北大西洋の東西でも堆積相が異なり、給源となった氷床の位置(εNdで推定)や海流によってどのように氷山が流されるかがIRDをはじめとする堆積相の変化に影響すると考えられる。陸棚の上と下でも堆積相は顕著に異なるため、堆積物コアの採取位置の違いが先行研究の解釈の食い違いを生んでいる?

2012年7月13日金曜日

プリンター、PC、ルーターを無線で繋ぐ

いま住んでいるアパートでは妹と2LDK(2部屋+リビング)に2人で暮らしているため、有線で何もかもを繋ぐとドアが閉まらずプライベートが侵され大変…ということで妹が上京してきた2年前から自宅に無線LANを導入しました。

現在繋いでるのは…
  1. MacBook Air (OS10.7)@僕の部屋(時々MacBook, Mac Book Pro)
  2. DELL (Windows7)+BUFFALO無線子機 @妹の部屋
  3. iPhone4@僕の部屋
  4. Wii@僕の部屋
  5. PSP@妹の部屋
で全部かな?たぶん。

先日エプソンの新しい無線LAN対応のプリンターを購入し、早速無線LANで接続してみました。
それまで使っていたのは大学入学当時に購入した生協の安いEPSONプリンターでした。
7年近くお世話になり、今でも全然使える状態ではあるのですが、インクは購入しにくくなりましたw

漫画家の卵である妹の仕事柄、B4のスキャン(とFAX)に対応している大型プリンターが必要だったのと、僕自身プリントアウトまたはスキャンをしたい時に毎回妹の部屋に行ってUSBで旧プリンターに接続する必要があり無線でぱぱっとやりたいという憧れがあったので、ビックカメラで「EPSON PX-1600F」を見た時に、比較的お値段もお手頃(¥32,000-くらい)だったので妹と相談し購入を決意しました。

「PX-1700X」という機能はほぼ同じで大型の機種もあり、それは両面印刷にも対応していたのですが、正直僕が論文をプリントアウトする時くらいしか活躍の場がなかったのと、やや値が張ることから「PX-1600F」のほうを選択しました(ゆくゆくは妹の私物に)。

購入後、無線LANの設定自体はすんなりいって、パソコンの画面から印刷なりスキャンなり自由自在にできるようになったわけですが…


何故かプリンター本体のボタンから操作するスキャンだけが使えない。




ワンタッチでスキャンしパソコンにデータを送るという便利な機能なんですが、どうしても送る先のパソコンを認識してくれないので、エプソンのカスタマーサービスに連絡し、業者の方に来て見ていただきました。
結構長い時間色々と見てくださいましたが、結局分かったのはどうやらプリンターのドライバーや初期不良などが原因ではなく、ネットワークつまり無線LANのルーターに原因がありそうとのこと。

その後業者さんが帰った後にひたすら無線LANの設定と格闘していたわけですが…妹の方のDELLは一瞬うまくいったのですが、その後ネットワーク上にあるはずのPCが全く認識されない状態に。
僕のMacの方は何をしてもプリンター側から全く認識されず、そもそもCoregaのルーターの設定画面にログインすることも何故かままならず、結局何一つ解決しませんでした。

Coregaのルーターは最近は安定して動作していましたが、つい最近までは再起動しないとろくにインターネットに接続できなかったりと不具合が続いている問題児でもありました。

いったい何が原因かは素人の僕には全く分かりませんでしたが、結局

  • スキャンをするたびに妹の部屋に行って原稿をセットし、
  • 再び僕の部屋に戻ってパソコンの画面上でパソコンを操作し、
  • そして再び妹の部屋に行き原稿を回収する…

という何とも二度手間な残念な結果に。

まあ数歩の距離を往復するだけなんですけどねwww


「なんでもかんでも便利なものに飛びついても、結局中身を十分に理解していないとトラブルシューティングもままならない」という好例ですね。。

現時点で解決策は皆目見当もつきません。いつか解決すると良いのですが

新着論文(Nature#7406)

Nature
Volume 487 Number 7406 pp139-266 (12 July 2012)

Research Highlights
Planet gas vanishes
惑星の気体が消える
Astron. Astrophys. http:// dx.doi.org/10.1051/0004- 6361/201219363 (2012) 
ハッブル宇宙望遠鏡が木星状の系外惑星の大気中の水素が宇宙に消失している姿を捉えた。恒星から強いX線が出ていることを別の観測衛星が捉えていることから、フレアが大気(特に水素)を一部蒸発させていると考えられる。

Why Antarctica is melting
なぜ南極が融けているのか

Geophys. Res. Lett. http://dx.doi.org/10.1029/2012GL051012 (2012)
南極のFimbul氷床の基部が融解しているのは、表面を流れる暖かい水と深層水から渦を介してパルス的にやってくる暖かい水が原因らしい。南極の氷床は従来考えられてきたよりも複雑な機構で融解しているらしい。

Two-faced cuttlefish 
二つの顔を持つコウイカ
Biol. Lett. http://dx.doi. org/10.1098/rsbl.2012.0435 (2012)
コウイカは求愛中、片側はメスに向けて求愛用の模様を見せており、もう片側はライバルに見つからないようにメスの模様を見せているらしい。138個体のオスのうち、約4割がこのような行動をしたという。
右がオスのコウイカ。左側は求愛、右側はメスの真似をした模様。

Seven days
Arsenic life
ヒ素生命体

カリフォルニアのMono湖から見つかった高濃度のヒ素中で生きるバクテリアについて。高濃度のヒ素中でリンを使ってDNAや生体高分子を合成していると考えられていたが、2つの新しい研究からヒ素そのものは生体内には取り込まれていないことが分かった。

Reefs at risk
脅威にさらされているサンゴ礁
’サンゴ三角地帯(インドネシア、マレーシア、パプアニューギニア、フィリピン)’の世界平均と比較してはるかに珊瑚礁が脅威にさらされているらしい。原因は沿岸部の汚染や破壊的な漁業などによる地域的な人間活動の影響。

Korean whaling
韓国の捕鯨
先日の国際捕鯨会議にて韓国は調査目的での捕鯨を開始すると宣言した。韓国は周辺海域のミンククジラの頭数を把握するためだとしているが、捕鯨に反対する団体は商業目的の捕鯨を正当化するためだとして糾弾している。現在’科学的な’捕鯨を行っている国は世界で日本だけである。

Nuclear inquiry
核の調査
福島第一原発のメルトダウンの事故は人為的な事故で、予測可能であったし、防げたと最近日本の議会から提出された報告書は痛烈に批判している。また安全装置は津波によってではなく、地震によって損傷を受けていた可能性がある。業界は原発の再稼働を急ぐあまりこの事実を過小評価していた可能性がある。

Endangered species
絶滅危惧種
アメリカのFish and Wildlife Service (FWS) が設置した42の生物保護区の調査から、専門家が保護区を広げるようアドバイスした地域のうち、92%の地域がアドバイスを無視していることが分かった。

Deep-sea mining
深海の採鉱
インドが海底下の鉱物資源(レアアースなど)を採鉱する計画を立てているらしい。インドのNational Institute of Ocean Technologyはすでに採鉱用の潜水艇を備え付ける船を一隻所持しており、7/31には2隻目の船が出来上がるらしい。さらにもう2つの船が建造中なのだとか。

CHINA TO LEAD RENEWABLE ELECTRICITY SURGE
再生可能エネルギーのうねりを中国が先行する
2015年までの世界の再生可能エネルギーのうち、40%は中国によって占められるだろうという予測がIEAから出された。再生可能エネルギーのうち現在80%が水力発電であるが、2017年には70%が水力発電、17%が風力、5%が太陽光発電になるだろうと予測されている。

News in Focus
NASA set to choose low-cost Solar System mission
NASAは低価格の太陽系ミッションを選択することにした
Eric Hand
プロポーザルを書く科学者たちは上がり続けるコストと複雑さを心配している。

Books and arts
Depth charge
深さの説明
Cecily Wolfeは地図製作者としてのMarie Tharpの生涯と彼女がプレートテクトニクスに与えた影響について述べる。

Correspondence
A bleak day for the environment
環境に対する暗い日々
カナダ政府は環境問題に対して非常に消極的である。British Columbiaで見つかったAlberta oil sand(石油砂?)のパイプラインが環境に与える影響についても法的に非常に緩い規制しか設けられていない。漁業は擁護する一方で、魚の居住域には保護されていない。こうした姿勢は京都議定書を批准しなかった点にも垣間見える。

Evolution blackout in South Korea
韓国の進化に対する記憶喪失
creationist(創造説論者)が韓国政府に学校や大学での進化論教育を減らすよう要請し、説得に成功した。韓国政府は新しい教科書の導入を検討しており、その査読には科学者の有識者会議も含まれている。科学者や教育者を始めとして、進化論を教育することの科学的な重要性について正しく認識し、教育機関のカリキュラムに含められるよう戦う必要がある。

Letters
Deglacial rapid sea level rises caused by ice-sheet saddle collapses
Lauren J. Gregoire, Antony J. Payne & Paul J. Valdes
最終退氷期は氷床融解に伴う大規模な海水準上昇で特徴づけられるが、その中でも最大の氷床融解はMWP-1A(350年間で14-18mの海水準上昇)に起きている。しかしMWP-1Aを引き起こした氷床がどの氷床であるかなどの理解は未だ不足している。氷床のモデリングからMWP-1Aの原因はLaurentide氷床とCordilleran氷床の分断であり、8.2kaイベントの原因はLabradorアイスドームとBaffinアイスドームが分断されたことであることが分かった。アイスドームの鞍部が急激に崩壊することが大規模な海水準上昇に寄与していると考えられる。
MWP-1A(14.6ka)の原因となった北米氷床の崩壊のシナリオ。

8.2ka eventの原因となった北米氷床の崩壊のシナリオ。
※補足
最終退氷期の海水準上昇にどの氷床が・どの時期に・どれほど寄与したかについてはまだ議論が分かれていると思います。氷床は北米だけではなく、スカンジナビアと南極にもあったと考えられており、すべてを併せて考える必要があると思われます。また氷床モデルもまだまだ開発途上の段階です。どのルートで融解した水が大西洋に流れ込んだかについてもそれを制約する証拠が不足している状況です。
参考までに、Dechamps et al. (2012, nature)ではMWP-1Aの海水準上昇の原因となったのは西南極の氷床であったと主張しています。

2012年7月9日月曜日

INTCALのお話

INTCALとは放射性炭素年代を暦年代に更正するための国際プロジェクトで、このプロジェクトを通して作られる曲線のことをINTCAL曲線と呼びます。

先日所属ゼミのセミナーにて上級生が下級生のための基礎講座を開くという位置づけで、「INTCAL更正曲線の作り方」に関する発表を行いました。
さらに先日、将来のINTCAL曲線において非常に重要な位置を占めるであろう、水月湖の年縞堆積物コアを用いた研究のスペシャリストである中川毅先生@ニューカッスル大の集中講義があり、そこで新たに仕入れた情報も併せてここにまとめておきます。

2012年7月8日日曜日

新着論文(GPC)

Global and Planetary Change
Volumes 92–93, Pages 1-286 (July 2012)

Estimate of calcification responses to thermal and freshening stresses based on culture experiments with symbiotic and aposymbiotic primary polyps of a coral, Acropora digitifera
Mayuri Inoue, Kotaro Shinmen, Hodaka Kawahata, Takashi Nakamura, Yasuaki Tanaka, Aki Kato, Chuya Shinzato, Akira Iguchi, Hironobu Kan, Atsushi Suzuki, Kazuhiko Sakai
Acropora digitiferaのポリプ(褐虫藻を持つものと持たないもの)を異なる温度(27, 29, 31, 33℃)・塩分(26, 28, 30, 32, 34‰)で飼育し、石灰化に対する影響を評価。温度に対する閾値が29-31℃付近に存在し、白化が起きる。また一方で塩分増加とともに成長率は増加。温暖化はポリプの段階でサンゴと褐虫藻との関係性を悪化させることが分かった。また淡水化もまた石灰化に影響することが分かった。

Possible changes in the characteristics of Indian Summer Monsoon under warmer climate
P. Parth Sarthi, S.K. Dash, Ashu Mamgain
インドモンスーンはアラビア海とアジア大陸の熱の違いと大気循環によって駆動されているため、これらの定性的・定量的な理解が将来のモンスーン予測にとっても重要である。 IPCC AR4の際に用いられた気候モデル(MIROC含む)を用いてモンスーン性の降水を予測。降水が東部と西部で増えるものと逆に減るものが見られた。

Changes in the frequencies of northeast monsoon rainy days in the global warming
C.V. Naidu, G.Ch. Satyanarayana, K. Durgalakshmi, L. Malleswara Rao, G. Jeevana Mounika, A. Dharma Raju
インドの1951-2008年において得られた降水のデータと風の東西分布のデータをもとに、温暖化前(1951-1969年)と温暖化後(1970-2008年)に分けて解析を行ったところ、特に温暖化後に北東モンスーンの時期のインド半島の降水が強化されており、降水がない日数が減少していることが分かった。

Annual ice volume changes 1976–2008 for the New Zealand Southern Alps
T. Chinn, B.B. Fitzharris, A. Willsman, M.J. Salinger
ニュージーランドの南部の山岳地帯には1977年から現在にかけて3,000個もの山岳の雪線をモニタリングした記録が充実している。全体の傾向を見積もるための一つの手法は雪線の変化を氷河量の変化に置き換える方法で、もう一つの手法は12個の比較的大きな氷河の変化を代表値として見なす方法である。氷河の量は54.5から45.1km2へと減少したらしい。うち71%は先の12個の代表的な氷河の減少。

Increased rainfall remarkably freshens estuarine and coastal waters on the Pacific coast of Panama: Magnitude and likely effects on upwelling and nutrient supply
Ivan Valiela, Luis Camilli, Thomas Stone, Anne Giblin, John Crusius, Sophia Fox, Coralie Barth-Jensen, Rita Oliveira Monteiro, Jane Tucker, Paulina Martinetto, Carolynn Harris
東赤道太平洋のパナマ湾においては2010年に前例をみないほどの降水によって表層水の淡水化が起きた。陸からの大量の淡水流入に伴いマングローブが根こそぎひっくり返されたり、ラニーニャに匹敵する栄養塩が供給されたらしい。将来の熱帯域のアナログになるか。生態系や生物地球化学的な循環も変化する模様。

The relative age of mountain permafrost — estimation of Holocene permafrost limits in Norway
Karianne S. Lilleøren, Bernd Etzelmüller, Thomas V. Schuler, Kjersti Gisnås, Ole Humlum
スカンジナビアの永久凍土では掘削孔を用いて孔内温度のモニタリングなどが充実してきたが、例えばHoloceneを通しての永久凍土の変化についてはほとんど知られていない。高度が高い地域の永久凍土は退氷期から存在し続けているが、低い地域はHoloceneの温度極大期には一度後退していたことが分かった。最も寒く、永久凍土が拡大していたのは小氷期の時代だったと考えられる。
Lilleoren et al. (2012)を改変。完新世の温度極大期と小氷期の寒冷化が顕著に現れている。

A short-term climate oscillation during the Holsteinian interglacial (MIS 11c): An analogy to the 8.2 ka climatic event?
Andreas Koutsodendris, Jörg Pross, Ulrich C. Müller, Achim Brauer, William J. Fletcher, Norbert Kühl, Emiliya Kirilova, Florence T.M. Verhagen, Andreas Lücke, André F. Lotter
ドイツ北部(Koutsodendris)の湖の年縞堆積物の花粉分析からHolsteinian間氷期(MIS11、二つ前の間氷期)の環境を復元。“Older Holsteinian Oscillation” (OHO)と名付けられた220年間継続する気候変動が見られた。また花粉だけでなく湖に生息していた珪藻のd18Oにも変動が見られた。OHOはヨーロッパ各地で認識されており、寒冷化と乾燥化が特徴らしい。偏西風の影響の低下とシベリア高気圧の影響力増大が原因?8.2kaイベントと非常に類似している。原因は北大西洋高緯度域への淡水流入によるAMOCの弱化か。間氷期においては一般的な現象だった?また夏の日射量の増加が先行して起きており、日射量がカギになっていた可能性がある。
Koutsudendris et al. (2012)を改変。OHOの概念図。