Main contents


☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English

2012年6月30日土曜日

新着論文(Nature#7404)

Nature
Volume 486 Number 7404 pp439-564 (28 June 2012)

Editorials
A first step
第一歩

Rio+20は機会の消失ではなく、新たな門出となるだろう。

Research Highlights
Turtle sex recorded in rock
岩に記録されたカメの性別

Biol. Lett. http://dx.doi.org/10.1098/rsbl.2012.0361 (2012)
ドイツの鉱山の立坑からカメの交尾の化石が発掘された。4700万年前のものらしい。火山湖の表層水で交尾中、運悪く沈んだ先が毒性のある水であったために交尾したまま死んでしまったと推測される。

Similar orbits but not densities
同じ軌道だが同じ密度ではない
Science http://dx.doi.org/ 10.1126/science.1223269 (2012)
ケプラー宇宙望遠鏡の2つの系外惑星の観測から、同じ星の周りをほとんど同じ軌道で周回している密度の全く異なる星が発見された。一つは地球に似た岩石惑星、そのすぐ外側を周回しているのは海王星に似たガス惑星であるらしい。惑星形成理論に新しい謎を投げかけている。

Carbon dioxide snow on Mars
火星の二酸化炭素の雪

J. Geophys. Res. http://dx.doi.org /10.1029/2012JE004087 (2012) 
火星の大気の大部分は二酸化炭素でできているが、北極及び南極では直径がわずか8-44μmしかない二酸化炭素の雪の結晶が形成されているらしい。火星の衛星観測から、二酸化炭素の雪は北極より南極の方が多く、それぞれ8-22、4-13μmの直径の雪の結晶が形成されているらしい。

Cyclones on the move
活動的なサイクロン
Clim. Dyn. http://dx.doi.org/ 10.1007/s00382-012-1407-z (2012)
温暖化した世界では、インドのサイクロンの発生時期が遅くなり、モンスーンのピークの時期に起きるようになる可能性があるらしい。ハワイ大の大気モデルシミュレーションから。年間の発生頻度は変わらないらしい。

Seven days
Farewell, Lonesome George 
さようなら、孤独なジョージ
'Lonesome George(孤独なジョージ)'の名で知られていたガラパゴスリクガメが亡くなった。およそ100歳 。彼自身がChelonoidis nigra abingdoniという種の最後の1頭で、絶滅危惧種のアイコン的存在であったらしい。

China dock and dive
中国のドッキングと潜水

6/24に中国はマニュアルでの宇宙ステーションへのドッキングとアリアナ海溝での7,020mの試験有人潜水を成功させた。

Nuclear protests
核への抗議運動

6/22に日本の政府官邸前に4万人もの抗議隊が集合した。7月から電力供給を開始する大井原発の再稼働を受けて、これまで政治的に無関心な日本人が珍しく行動を起こしたようだ。

Diminishing returns on fishing
漁業の再燃の消失
船団を用いた漁業は1950年代比で10倍に増えたが、効率自体は半分程度に落ち込んできているようだ。

News in Focus
Sea versus senators
海 v.s. 上院議員
ノースカロライナにおいて海水準上昇は加速しているが、一方で法制定を行う上院議員は海水準研究にブレーキをかけている。

Comment
Save the Baltic Sea
バルト海を守れ
バルト海の深層水に酸素を注入する地球工学を止めるべきだとDaniel J. Conleyは言う。

Correspondence
Limit consumption to preserve habitats
生息地を保護するために消費を制限せよ

環境汚染を軽減させるためにも先進国の大量消費を抑える必要性は言うまでもないが、それが国際貿易を通して貧しい国の生計にまで影響することも考慮する必要がある。必要なら先進国に援助や技術支援を要請しながら、途上国も環境に害をなす技術生産を制限すべきだ。

Clue to an ancient cosmic-ray event?
古代の銀河宇宙線イベントの手がかり?
アングロサクソンの年代記にAD774の銀河宇宙線の増加イベント(Miyake et al. (2012, Nature))が記述されているかもしれない?スーパーノバ起源の光の変化を記述したと思われる文章が年代記の冒頭に見つかった。

Brief Communications arising
No inter-hemispheric δ13CH4 trend observed
I. Levin, C. Veidt, B. H. Vaughn, G. Brailsford, T. Bromley, R. Heinz, D. Lowe, J. B. Miller, C. Poß & J. W. C.
Kai et al. (2011, Nature, 「Reduced methane growth rate explained by decreased Northern Hemisphere microbial sources」)に対するコメントとKai et al.の返事。1990年代の大気中のメタン濃度変動の原因を巡る議論。
Kai et al. (2011)は1990年以降のメタンのδ13C変動を説明するために、「北半球と南半球でメタンのδ13Cが異なる」ことを用い、北半球の微生物を起源とするメタン放出の減少に原因を求めたが、実際には「δ13Cは南北半球で変化していないのではないか?」という指摘。

News & Views
Swirls in the corona
コロナの中の渦巻き線
Stephen J. Bradshaw
NASAの太陽力学観測所の観測データから、太陽の表面からコロナへと伝達されるエネルギーの経路の特徴が明らかになった。

Letters
Magnetic tornadoes as energy channels into the solar corona
Sven Wedemeyer-Böhm, Eamon Scullion, Oskar Steiner, Luc Rouppe van der Voort, Jaime de la Cruz Rodriguez, Viktor Fedun & Robert Erdélyi
太陽のエネルギーが外層に輸送され、散逸される仕組みは解明されておらず、複数の説明が考えられている。太陽表面において磁場を持ち、対流性の渦が多数存在することが確認されたが、これらの渦は高速回転する磁気構造について観測される特徴であることが明らかになった。

新着論文(Ncc#May 2012)

Nature Climate Change
(May 2012)

東大のアクセス権が復旧したので再開。個人的には非常に重要な雑誌なのでとても嬉しい。

Editorial
Guilt Trip
罪深い旅
温室効果ガスと気候変動との繋がりが明瞭になってきた。科学者と雑誌の編集者は情報の拡散を加減しなければならない。

Commentary
Emergence of the carbon- market intelligence sector
炭素市場の情報部の出現
新しく設立された「economic phenomenon carbon-market intelligence(経済現象炭素市場情報部?)」は350億ユーロの価値があり、2倍成長を続けている。

Interview
Offsetting under pressure 
圧力のもとでオフセットする  
イギリスのTyndall CentreのKevin Andersonは、カーボンオフセットに対し「害はあっても益がない」と考える理由についてNature Climate Changeに語った。

Policy Watch
Climate battle for the skies
空に対する気候の戦い
航空機を使って放出された炭素を追いかけることは非常に難しいが、ヨーロッパは基盤を作りつつある。

Market Watch
Sweetening the dragon’s breath
ドラゴンの息を甘くする
世界最大の炭素放出国である中国が、排出取引の新しい実験的な枠組みを構想している。

Research Highlights
Antarctic warming
南極の温暖化
Geophys. Res. Lett. 39, L06704 (2012)
南極の気温は北極とは異なる歴史を歩んできた(バイポーラーシーソー)と考えられている。しかしながら、限られたデータと気温の復元データを用いて解析を行ったところ、南極の気温は北大西洋というよりは寧ろ赤道太平洋の気温とよく相関していた。近年の南極の気温はバイポーラーシーソー仮説では説明できない可能性を示唆している。

Women and climate change
女性と気候変動
Soc. Sci. Res. http://doi.org/hsx (2012)
女性は男性よりも気候変動に対する関心が高い。統計データの解析から女性の政治的な地位が高い国ほど二酸化炭素排出量が低いことが分かった。

Monitoring forest carbon
森林の炭素をモニタリングする
Environ. Sci. Policy 19–20, 33–48 (2012)
森林破壊による二酸化炭素放出を抑えることに活発な発展途上国の多くは政府によるモニタリング能力が低い。99の途上国のうち48がそれに相当することが分かった。

Carbon tax revenues
炭素税による収入
Energ. Econ. http://doi.org/hsz (2012)
炭素税は貧困層に与える影響が大きいことから特に途上国で反対されることが多い。メキシコにおける炭素税の影響をモデルでシミュレーションしたところ、炭素税を製造分野に還元する場合と助成金に還元する場合とで結果が逆転することが分かった。炭素税の実行可能性はそれが経済にどう還元されるかに大きく依存する。

Ocean oxygenation
海の酸素化
Biogeosciences 9, 1159–1172 (2012)
温暖化が進行すると海水温上昇に伴う酸素の溶解の低下と海洋の成層化が進行することで外洋の多くの場所で酸素欠乏が発生し、生物を脅かす可能性が高い。しかしながら最近のモデリングの研究からそうした海域は必ずしも全球的ではないことが示された。むしろ太平洋の貧酸素水塊は鉛直混合によって酸素濃度が上昇する可能性があるらしい。

Predicting rain
雨を予測する
J. Clim. http://doi.org/hs2 (2012)
将来雨は多くの地域で増えることが予測されている。地域的な気候モデルでは降水の日周期などを上手く再現できていないが、過去の降水を再現することでモデルの信頼性を高めることができる。イギリス気象庁の研究チームは1989-2008年の20年間の降水データとモデルの再現とを比較したところ、モデルがよく現実の降水を再現できていることが分かった。

Exactly what don’t we know? 
本当に我々が知らないものとは?
Nature Geosci. 5, 256–260 (2012)
将来の温暖化が何℃の上昇になるかを予測するのには大きな不確実性があるが、主に3つの要素の理解が不足していることが原因として考えられている。(1)平衡状態の気候感度(2)海洋の熱の吸収効率(3)エアロゾルの放射強制力。オクスフォード大の研究チームによる1000ものモデルを用いたアンサンブル予測から、中程度の排出シナリオでは21世紀中頃に1.4-3.0℃の温暖化になる可能性が示された。

US coastal flooding
アメリカ沿岸部の氾濫
Environ. Res. Lett. 7, 014032 (2012) 
海岸における氾濫のリスク評価における不確実性は、海水準上昇が嵐による高潮の程度と頻度にどう影響するかにある。モデルと潮位計のデータと歴史的な高潮のデータとを併せて2050年までのアメリカ沿岸部における海水準上昇と高潮の影響を評価したところ、将来100年に一度の高潮が毎年起きる(現在は10年に1回は起きているらしい)可能性が示された。これは過去の変動から将来のリスク評価を行うことの危険性を示している。

Release from the cold
冷たいものからの放出
Glob. Change Biol. http://doi.org/hs3 (2012) 
 北半球における泥炭地の植物生産は一般的には窒素に律速されている。ツンドラの永久凍土の融解によって植物に利用可能な形態の窒素が放出されるかどうかに関心が寄せられている。スウェーデンの泥炭地の調査から7倍もの窒素がもたらされる可能性が示された。植物の窒素の取り込み量は8倍に増加するらしい。窒素放出が植物生産や種組成を大きく変える可能性を秘めている。

News & Views
Arctic warming favors extremes
北極の温暖化は異常気象を好む
Vladimir A. Semenov
Dowsett et al.の解説記事。
21世紀は北半球のあらゆる地域における異常気象で特徴づけられる。北極周辺の大気力学を理解することが近年の異常気象の原因の解明に繋がるかもしれない。

Looking back to the future
未来のために過去を振り返る
Tim Naish & Dan Zwartz
Pliocene(鮮新世)の温暖な気候だった時代を調べることで、将来の温暖化した世界を気候モデルを用いて予測する手助けとなるかもしれない。

Melting biodiversity
融水の生物多様性
Leopold Füreder
Jacobsen et al.の解説記事。
氷河からの融水が河川に流入し、それが河川の生態系にどのような影響を与えるかはよく分かっていない。定量的な分析から、その規模について明らかになった。

Perspectives
Reconciling top-down and bottom-up modelling on future bioenergy deployment
Felix Creutzig, Alexander Popp, Richard Plevin, Gunnar Luderer, Jan Minx & Ottmar Edenhofer
IPCCの再生可能エネルギーと気候変動緩和に対する特別報告書(SRREN)は気候変動緩和におけるバイオ燃料の役割について評価している。バイオ燃料は二酸化炭素排出削減にも重要な貢献をするとしているが、一方で二酸化炭素の重要な排出源かつ環境に対する害をなすもの(土地利用の変化など)ともしている。双方の視点を持つというバランスは重要だが、この相反した考えをうまく合わせる方法を模索する必要がある。

Review
Realizing the electric-vehicle revolution
Martino Tran, David Banister, Justin D. K. Bishop & Malcolm D. McCulloch
完全にバッテリー化した自動車(BEVs)は気候変動緩和において重要な役割を持つと思われるが、どの時期に、どれほどの規模で市場に参入するかという不確かさがある。可能性や重要性はあるものの、消費者側のふるまいという視点が議論には不足している。技術だけでなく、消費者側の視点(電力需要、充電施設のインフラ整備、乗り心地、運転パターン、個々人の適応)の双方を考慮することが必要である。

Letters
Climate response to zeroed emissions of greenhouse gases and aerosols
H. Damon Matthews & Kirsten Zickfeld
二酸化炭素排出が完全にゼロになった地球の気候状態をモデリングすることは我々の経済発展の道筋を考える上で非常に重要な目標を与えてくれる。これまでに二酸化炭素をゼロにすることで気候が安定化することが示された。我々の研究において他の温室効果ガスとエアロゾルの両方の排出を削減することで、10年間で数10分の1℃温暖化することが分かった。主な原因はエアロゾルによる寒冷化の効果が打ち消されてしまうこと。その後数世紀かけて産業革命前のレベルに戻って行くことが示された。しかしモデルの中では現在のエアロゾルに対する気候感度に大きく依存してしまう。

Vulnerability of coastal aquifers to groundwater use and climate change
Grant Ferguson & Tom Gleeson
気候変動と人口増加が地下水資源に大きな影響を与えると考えられている。海水準上昇及び地下水の過度な使用は沿岸地域の氾濫と地下水資源への塩害をもたらし、既に帯水層に悪影響をもたらし始めている。それぞれの影響を定量化することはこれまでされてこなかったが、我々の研究から帯水層は海水準上昇よりも地下水の過度な利用の方に影響されることが示された。従って、海水準上昇に対する適応のみを考えている水資源管理の施策は誤りだ。

High sensitivity of the continental-weathering carbon dioxide sink to future climate change
E. Beaulieu, Y. Goddéris, Y. Donnadieu, D. Labat & C. Roelandt
21世紀初めのレベルに対し2倍の二酸化炭素濃度になった場合、最悪6℃の温暖化が予測されており、それは全球の水循環と植生に影響すると考えられ、さらに化学風化にも大きく影響することが予想される。プロセスに基づいたモデリング研究から、北米のMackinzie River流域で風化が50%強化されることを示す。次の世紀においては風化が炭素循環にも大きな役割を占める可能性がある。

Impacts of incentives to reduce emissions from deforestation on global species extinctions
Bernardo B. N. Strassburg, Ana S. L. Rodrigues, Mykola Gusti, Andrew Balmford, Steffen Fritz, Michael Obersteiner, R. Kerry Turner & Thomas M. Brooks
森林破壊は二酸化炭素排出の重要な構成要素であるとともに、種の絶滅の最大の原因である。モデルと種の分布データを用いて将来の森林破壊の種の絶滅に与える影響を評価。森林破壊と森林の劣化がこれまでの絶滅の主要因であり、将来これらを起源とする二酸化炭素放出を削減することが、種の保全に重要な要素であることが分かった。森林を保有する国が適切に与えられた基金をもとに森林を保全できれば、気候変動緩和に繋がるとともに、生物多様性も保護されることを示している。

Temperature-related changes in polar cyanobacterial mat diversity and toxin production
Julia Kleinteich, Susanna A. Wood, Frithjof C. Küpper, Antonio Camacho, Antonio Quesada, Tancred Frickey & Daniel R. Dietrich
温暖化が最も激しく起きるのは北極と南極であることが知られており、南極半島では過去50年間で10年に0.5℃の上昇率で温暖化していることが知られている。南極周辺の淡水システムにおいてはシアノバクテリアのマットが底層における一次生産を担っている。採取したシアノバクテリアを半年間様々な温度で培養したところ、8-16℃付近で多様性が増すことが分かった。毒性のあるシアノバクテリアが優勢になることで毒の生産量が増えることも分かった。南極では既に夏にはこれらの温度に達している?

Biodiversity under threat in glacier-fed river systems
Dean Jacobsen, Alexander M. Milner, Lee E. Brown & Olivier Dangles
淡水の生態系は温暖化によって脅威にさらされているが、氷河の融水によって支えられている氷河性の水生生態系は氷河の縮小に伴い影響を受けている可能性が高い。水生生物の中でも比較的大きな生物(昆虫の幼生など)に焦点を当てた調査から、氷河の縮小とともに多様性が減少していることが分かった。氷河が完全に消失することで固有種を含む11-38%が消えると予測される。

Assessing confidence in Pliocene sea surface temperatures to evaluate predictive models
Harry J. Dowsett, Marci M. Robinson, Alan M. Haywood, Daniel J. Hill, Aisling M. Dolan, Danielle K. Stoll, Wing-Le Chan, Ayako Abe-Ouchi, Mark A. Chandler, Nan A. Rosenbloom, Bette L. Otto-Bliesner, Fran J. Bragg, Daniel J. Lunt, Kevin M. Foley & Christina R. Riesselman
古気候データを用いてモデルのチューニングを行ったり、様々なモデルを用いて計算した結果を比較することで、モデル特有のバイアスの議論が広く行われている。データとモデルの双方にある不確実性を考慮する必要がある。最も最近の温暖化した世界はPliocene(鮮新世)であるが、4つの気候モデルを用いて計算したPlioceneの気SSTとプロキシを用いて求められたSSTのデータを比較。一般によく再現されたが、特に北大西洋の中緯度域で食い違いが見られた。

2012年6月24日日曜日

新着論文(Geology)

Geology
1 July 2012; Vol. 40, No. 7

Extreme change in sulfide concentrations in the Black Sea during the Little Ice Age reconstructed using molybdenum isotopes
G.L. Arnold, T.W. Lyons, G.W. Gordon, and A.D. Anbar
モリブデン同位体を間接指標とすることで、過去300年間の黒海における溶存硫化物濃度を復元。特に小氷期に上昇が見られ、温度低下や風の変化が化学躍層を変化させたことが原因?

Nile Delta vegetation response to Holocene climate variability
Christopher E. Bernhardt, Benjamin P. Horton, and Jean-Daniel Stanley
ナイル川の三角州の堆積物から過去7,000年間のナイル川周辺域の環境変動を復元。降水量に敏感な植物の花粉を用いることで、降水量を復元したところ、いくつかの時期に急激な乾燥化が見られた。ITCZの南下が原因か?古代人の文明とも関係していたかも。

European climate optimum and enhanced Greenland melt during the Last Interglacial
Maria Fernanda Sánchez Goñi, Pepijn Bakker, Stéphanie Desprat, Anders E. Carlson, Cédric J. Van Meerbeeck, Odile Peyron, Filipa Naughton, William J. Fletcher, Frédérique Eynaud, Linda Rossignol, and Hans Renssen
最終間氷期のAMOCはモデルによって強化するものと弱化するものとがあり、食い違いが見られる。北大西洋の堆積物コアからグリーンランド氷床の融氷水がAMOCを弱化させた証拠が得られた。しかし一方でヨーロッパは温暖化。モデルを用いてシミュレーションを行ったところ、AMOCの弱化はグリーンランドの南岸では顕著だったが、Nordic海における沈み込みは弱化しなかったことで、ヨーロッパの寒冷化が起きなかった可能性がある。

Northern Hemisphere forcing of the last deglaciation in southern Patagonia
Daniel S. Murray, Anders E. Carlson, Brad S. Singer, Faron S. Anslow, Feng He, Marc Caffee, Shaun A. Marcott, Zhengyu Liu, and Bette L. Otto-Bliesner
南半球の最終退氷期の気候変動はあまり制約ができていない。パタゴニア氷床のモレーンの10Beを用いて氷床後退のタイミングを推定。南半球の温度推定例と整合的な結果が得られた。温度上昇が始まるとともに、氷床の後退も始まった。一番始めは19.7±1.1kaであったと考えられる。

Strengthening of the Northeast Monsoon over the Flores Sea, Indonesia, at the time of Heinrich event 1
Joanne Muller, Jerry F. McManus, Delia W. Oppo, and Roger Francois
インドネシアのSunda shelfとSahal shelfの間から採取された堆積物コアから、最終退氷期の堆積環境と気候変動との繋がりを復元。232Thを陸源物質、230Thを生物源物質の流入量の指標としている。H1に生物源、陸源砕屑物の増加が確認された。ITCZの南下によって河川流入が増加したことが原因?232Thの陸源物質流入量の指標としての有用性を強調。

Seawater oxygenation during the Paleocene-Eocene Thermal Maximum
Alexander J. Dickson, Anthony S. Cohen, and Angela L. Coe
北極海から得られたIODP302の堆積物コアからPETMにおける海水の酸素濃度を復元。モリブデン同位体、モリブデン・レニウム・ウラン濃度を間接指標として用いている。PETM初期には貧酸素の状態はそれほど広くは起きていなかった?また温暖化のタイミングと同時に貧酸素の状態が少なくとも10万年間維持したことが示唆される。

Reef response to sea-level and environmental changes during the last deglaciation: Integrated Ocean Drilling Program Expedition 310, Tahiti Sea Level
Gilbert F. Camoin, Claire Seard, Pierre Deschamps, Jody M. Webster, Elizabeth Abbey, Juan C. Braga, Yasufumi Iryu, Nicolas Durand, Edouard Bard, Bruno Hamelin, Yusuke Yokoyama, Alexander L. Thomas, Gideon M. Henderson, and Philippe Dussouillez
IODP310において得られたタヒチの珊瑚礁掘削コアから最終退氷期における海水準上昇とそれに対する珊瑚礁の応答を復元。以前得られた陸上における珊瑚礁掘削のデータも併せることで、16-10kaの間は平均10mm/yrの成長率で停止することなく成長し続けていたことが分かった。MWP-1a(~14.6ka)においては表層生息種の衰退が見られ、珊瑚礁が溺れかけた。バルバドスで確認されているようなMWP-1bはタヒチでは確認されなかった。

2012年6月23日土曜日

新着論文(PO)

Paleoceanography
12 May 2012 - 21 June 2012

Rapid switches in subpolar North Atlantic hydrography and climate during the Last Interglacial (MIS 5e)
Irvalı, N., U. S. Ninnemann, E. V. Galaasen, Y. Rosenthal, D. Kroon, D. W. Oppo, H. F. Kleiven, K. F. Darling, and C. Kissel
1つ前の間氷期(MIS5)は現在世の間氷期よりも温暖で、グリーンランド氷床が消失していたため、今後の温暖化世界の鑑になる可能性がある。堆積物から得られた有孔虫Mg/Ca-SSTやIRDなどを駆使してMIS5eの古環境を復元したところ、北大西洋の環境がグリーンランドの気候と密接に関係していることが分かった。MIS5eの直後(~125ka)に訪れる寒冷化と淡水化はおそらくEGC海流の変化によってもたらされ、グリーンランド氷床の融氷水の影響が原因として考えられる。

North Atlantic ventilation of “southern-sourced” deep water in the glacial ocean
Kwon, E. Y., M. P. Hain, D. M. Sigman, E. D. Galbraith, J. L. Sarmiento, and J. R. Toggweiler
氷期にCO2濃度が100ppm低かった原因として、北大西洋におけるCO2の取り込みの強化という説がある。しかしデータは北大西洋の深層水はd13Cが低く、14C/Cが低い(古い)ことを示していることから、これらの深層水はNADW(比較的新しい深層水であるため)ではなく、南大洋が起源と考えられている。モデルを用いた感度実験から、AABWの形成が妨げられ、それが子午面循環を弱化させたことで、相対的にNADWによるCO2取り込みが強化され表層とのコンタクトを絶ったまま南大洋をはじめとする世界の海の深層へ広がったことがCO2低下に寄与した可能性が示された。データとも食い違わない説である。

Campanian-Maastrichtian intermediate- to deep-water changes in the high latitudes: Benthic foraminiferal evidence
Koch, M. C., and O. Friedrich
大西洋の堆積物コア(65ºS付近)の底性有孔虫のd18Oから白亜紀後期(Campanian-Maastrichtian)の中層・深層水の変化を復元。CMBEと呼ばれる寒冷化は海洋循環の変化によって引き起こされたかも?

A precise search for drastic temperature shifts of the past 40,000 years in southeastern Europe
Ménot, G., and E. Bard
黒海から得られた堆積物コアのTEX86を用いて過去40,000年間のSSTを復元。想像以上に氷期の黒海の環境は安定していたが、H2とH3に2℃ほどの寒冷化が確認された。最終氷期の温暖化は10℃ほどで、ヨーロッパの先行研究と整合的。YDの寒冷化は5-6℃ほどだった。DOイベントはほとんど確認されなかった。

Modeling evidences for global warming, Arctic seawater freshening, and sluggish oceanic circulation during the Early Toarcian anoxic event
Dera, G., and Y. Donnadieu
ジュラ紀初期のTortianのOAEは海洋無酸素、海水準上昇、海洋酸性化、炭酸塩生成危機、大量絶滅を伴っており、強烈な地球温暖化によってもたらされた可能性が高い。モデルシミュレーションでpCO2を上昇させることで、OAEなどが再現できるかを検証。北極海の海氷が融解したことで、深層水形成が滞り、OAEへと繋がった。北極海の栄養塩に富んだ表層水がViking Corriderを通してテチス海に流れ込み、一次生産を強化したことで、テチス海低層のOAEがさらに進行した?

Ostracode Mg/Ca paleothermometry in the North Atlantic and Arctic oceans: Evaluation of a carbonate ion effect
Farmer, J. R., T. M. Cronin, and G. S. Dwyer
深層水の温度を復元するために底性有孔虫や貝形虫の殻のMg/Caが使われるが、この手法は深層水の炭酸イオン濃度にも影響されてしまうと考えられている。北大西洋と北極海の表層堆積物から得られた686個体の底性貝形虫のMg/Caと深層水の温度を比較することで、BWT-Mg/Ca関係式を作成。Kritheという種のMg/Caは炭酸イオン濃度との間に明瞭な相関は見られす、古水温推定に有望であることが分かった。

新着論文(Science#6088)

Science
VOL 336, ISSUE 6088, PAGES 1473-1608 (22 June 2012)

News of the week
Legislating Sea Level Rise
海水準上昇を法規制する

ノースカロライナの議会は、「海水準上昇が直線的に増加する」ことを仮定して将来の変動予測をすることをNorth Carolina’s Coastal Resources Commissionに要求する法案を通した。海水準が直線的に増加するかどうかは分からず、指数関数的に上昇した場合、海水準上昇の脅威を低く評価してしまう可能性がある。モデルシミュレーションによると前者で0.2m、後者で1mの上昇が予測されている。

Australia Creates World’s Largest Network of Marine Reserves
オーストラリアが世界で最も大きな海洋保護のネットワクークを創設する

オーストラリアの海洋保護区は現在の4倍の3100万km2に増加する。しかし3分の1は漁業や天然ガス・石油開発が禁じられるが、残りの3分の2は様々な用途に用いられることになる。漁業可能な区域が狭まるとして、漁業組合からの批判も。

Stem Cell Hope for Vision, Brain 
視覚、脳に有望な幹細胞  
理研が新たに開発した幹細胞は、加齢によってできた網膜の黄斑の治療に有効な網膜細胞へと作り替えることができそうらしい。また Stem Cells Inc. が人間の幹細胞から作成した脳の神経細胞をPMD(Pelizaeus-Merzbacher disease)と呼ばれる致死性の難病の乳児に移植したところ、 病気を改善する効果が得られたらしい。  

Letter Details Einstein’s Post-War Passion
手紙がアインシュタインの戦後の情熱を明らかにする
Jewish Telegraphic Agency(ユダヤ通信機関?)が古文書の掃除をしていたところ、1947年1月20日のアインシュタインとJTAの創設者であるJacob Landauの間でやり取りされた書簡が出てきた。その中でアインシュタインは「戦争研究に対する科学の役割」という当時非常にホットなトピックに触れていた。書簡はオークションで34,375ドルの値がついたらしい。
軍事に非協力であることが基礎科学を研究している研究者の慣例となっているが、新しい発見を隠匿することは科学を害することに繋がる
News & Analysis
NASA's New X-ray Satellite Packs Compact Power
NASAの新しいX線人工衛星はあらゆる力が詰め込まれている
Yudhijit Bhattacharjee
先週NASAが打ち上げたX線天体望遠鏡(NuSTAR)はブラックホール近傍で周回する物質に何が起こるか?などの諸問題に対する答えを導きそうである。

News Focus
Hang On! Curiosity Is Plunging Onto Mars
頑張れ!Curiosityが火星に降り立とうとしている
Richard A. Kerr
今年8月に火星探査機「Curiosity」が火星に降り立つが、このミッションの成功・失敗はNASAの今後の火星探査の生死を分けることとなる。

Could a Whiff of Methane Revive The Exploration of Mars?
メタンのわずかな香りが火星探査を蘇らせるか?
Richard A. Kerr
火星にメタンが存在することを地上探査機が証明できれば、火星の生命存在の大きな証拠になり得る。

Letters
An Eye Toward Iodine in China
ヨウ素へ中国人の目が向く

昔から中国の内陸部の村落ではヨウ素欠乏(土壌にそもそもヨウ素が欠乏しており、作物などからも摂取できない)による子供の身体成長阻害が顕著であった。最近になってヨウ素の重要性が理解され始めた。アメリカと中国の研究チームが一丸となって妊婦にヨウ素サプリメントを投与しているらしい。

Perspectives
Biotic Multipliers of Climate Change
気候変動の生物的な増幅器
Phoebe L. Zarnetske, David K. Skelly, and Mark C. Urban
種間の相互作用に着目することで、気候変動っが生態系に与える影響の予測精度を改善できるかもしれない。

Carbon from Tropical Deforestation
熱帯の森林破壊起源の炭素
Daniel J. Zarin
森林破壊による炭素放出の見積もり量は大きく異なっている。

Reports
Baseline Map of Carbon Emissions from Deforestation in Tropical Regions
Nancy L. Harris, Sandra Brown, Stephen C. Hagen, Sassan S. Saatchi, Silvia Petrova, William Salas, Matthew C. Hansen, Peter V. Potapov, and Alexander Lotsch
人工衛星による観測データを用いて、2000年から2005年にかけて熱帯雨林の破壊に伴う炭素放出は年間およそ0.8PgC(0.57-1.22, 90%信頼区間)であることが分かった。この値は最近報告された値の25-50%ほどらしい。

2012年6月22日金曜日

「環境生物科学〜人の生活を中心とした〜」(松原聰、1997年)

環境生物科学〜人の生活を中心とした〜
松原聰 著
裳華房(¥2,600-)
初版 1997年 改訂8版 2006年

新着論文(Nature#7403)

Nature
Volume 486 Number 7403 pp293-434 (21 June 2012)

Research Highlights
Graphene can desalinate water
グラフェンは水の塩分を除去することができる

Nano Lett. http://dx.doi. org/10.1021/nl3012853 (2012) 
間隙の間隔が0.7-0.9nmのグラフェンは水は通すが塩分は除去するらしい。グラフェンの端に水酸基をつけると水の通りが良くなる一方で塩分の除去効率も落ちてしまう。逆に水素原子をつけると除去効率はアップするらしい。

Melting ice behind Arctic warming 
北極の温暖化の裏で氷が融ける
Geophys. Res. Lett. http://dx.doi.org/10.1029/2012GL051598 (2012)
モデルシミュレーションから地表付近は局地的な海氷の融解に伴う海表面での熱の交換がSSTの上昇に効いているが、一方で大気の下層は低緯度からの熱の運搬によって温暖化していることが分かった。

One mummy but three people 
1つのミイラだが、3人の人間
J. Archaeol. Sci. http://dx.doi. org/10.1016/j.jas.2012.04.030 (2012)
スコットランドから発掘されたミイラの骨のDNAを測ってみると、実は3人の全く異なる人物の骨からできていることが分かった。異なる家系を1つにまとめるという意味のシンボルに使われた?

Seven days
Ocean acidity
海の酸性度

IAEAは海洋酸性化研究を促進し、情報交換するための機関をこの夏に設立する。放射性元素の適切な利用を管理する目的があるが、例えばカルシウムの同位体は石灰化の評価に有用である。

Fossil smuggling
化石の密輸出

モンゴルから密輸出されたティラノサウルスの骨の化石がアメリカで先月オークションにかけられてしまった。モンゴル政府は市民の声を受けて訴訟を起こしていた。

Diesel cancer links
ディーゼルとガンの繋がり

International Agency for Research on Cancer (IARC)はディーゼル燃料に発がん性があり、肺がんのリスクが高まると発表した。

News in Focus
Peru battles the golden curse of Madre de Dios
Madre de Diosの呪いとペルーが戦う

Madre de Diosでの採鉱に伴う健康被害に国民の不安が高まる。

Correspondence
More ways to govern geoengineering 
地球工学を統合するためのより多くの方法
地球工学の一種であるSPICE計画中止によって、科学者は研究をより透明性のあるものにすべきことを学ぶことができる。

Use fast reactors to burn plutonium
プルトニウムを燃やすのに速い原子炉を使う
原発から廃棄されるプルトニウムをリサイクルすることで新しい利益が生まれ、放射能を低減することができる。試作機は20年前にはできており、現在は日立が311MW級の発電所を開発しているらしい。冷却系統が停止しても温度を低く維持することのできるシステムを採用しており’安全’で、電力供給力は従来のウランを使って捨てる方法の150倍に伸びるとか。副産物である廃棄物も兵器を作るには適さず、流出のリスクも少ないとか。

Monitor sea pollution to stop strandings
座礁を止めるために海の汚染のモニタリングを

ペルーの海岸に何百ものイルカが打ち上げられる事故が相次いでいる。海中での聴覚障害が原因として考えられている。海軍のソナーや油田開発の地震波探査がイルカの座礁を招くことが知られているが、今回の件はイルカの体内に蓄積した汚染物質が原因である可能性が高い。エルニーニョによって餌が不足することで免疫力が低下し有害な藻類の異常繁殖に脆弱になってしまうらしい。

News & Views
Planetary science: Early start for rocky planets
惑星科学:岩だらけの惑星は早い時期に生まれた

Debra Fischer
小型の惑星を持つ恒星の化学組成は、大型の惑星を持つ親星に比べて変動が多いらしい。この知見は、岩石でできた惑星の始まりと、太陽以外の恒星の周囲での生命の出現がもっと古いことを示しているのかもしれない。

Letters
An abundance of small exoplanets around stars with a wide range of metallicities
Lars A. Buchhave et al.
太陽に似た星の重元素の存在度(金属量)から、初期の原始惑星系円盤の化学組成の「化石」記録が得られる。金属の豊富な星には、巨大ガス惑星が存在している可能性がきわめて高く、惑星が塵や氷の粒子の集積によって形成されるというモデルを裏付けている。NASAのケプラー計画によって発見された226個の小さな系外惑星候補の親星の金属量を分光法によって求めたところ、大きな惑星は金属量がより多い星の周囲に選択的に形成される傾向があることがわかった。地球型惑星は天の川銀河系円盤に広く分布している可能性がある?

Constraints on the volatile distribution within Shackleton crater at the lunar south pole
Maria T. Zuber et al.
月の南極にはシャクルトンクレーターがあり、その内部は直射日光をほとんど受けず、永久的な冷却トラップ領域であるので、シャクルトンクレーターは隔離された揮発性物質を探し出すための有望な候補場所となっている。ルナー・リコネッサンス・オービター搭載のルナー・オービター・レーザー高度計による観測結果から、クレーターの内壁が縁やクレーター底よりも新しいことが明らかになった。シャクルトンの底の堆積物は縁とほぼ同じ年齢であり、これはクレーターが30億年以上前に形成されてから、底への堆積がほとんど起こっていないことを示唆している。壁表面のレゴリスの滑落によってその下から出てきた物質があらわになったと考えればおおむね説明できる。クレーター底が相対的に明るいことは、日陰であるために宇宙風化が減少したか厚さ1 μmの氷を20%含む層による反射?

First dairying in green Saharan Africa in the fifth millennium bc
Julie Dunne, Richard P. Evershed, Mélanie Salque, Lucy Cramp, Silvia Bruni, Kathleen Ryan, Stefano Biagetti & Savino di Lernia
アフリカ北部の先史時代の緑のサハラでは古代人による酪農が始まっていた可能性があるが、家畜の骨があまり残っていないことからその始まった年代を推定することが困難であった。陶器に吸着した牛乳の残渣(乳脂肪のアルカン酸)のd13CとΔ13Cを測定することで、BC5,000に酪農が始まっていたことが分かった。

AORI-UH Joint Symposium @ Oahu, Hawaii

Last week, I joined a symposium named 'AORI-UH Joint symposium' that is held at Manoa Campus of University of Hawaii (UH), Oahu Island, Hawaii.
Many people in AORI joined.

クラウドアプリ「Sugarsync」に不具合

他の方も経験しているかもしれませんが、クラウド型のオンライン同期サービス「Sugarsync」が急遽同期を含む様々な不具合を起こしました。
今回はそのトラブルシューティングとその結果について。

2012年6月21日木曜日

新着論文(PNAS, EPSL, GCA)

PNAS
☆12 June 2012; Vol. 109, No. 24
Pacific bluefin tuna transport Fukushima-derived radionuclides from Japan to California
Daniel J. Madigan, Zofia Baumann, and Nicholas S. Fisher
カリフォルニアから採取されたクロマグロから福島第一原発由来の放射性セシウムが検出。魚の回遊履歴を辿るのに有用であるとともに、回遊する生物が放射性元素を太平洋上で運搬するのに重要な働きを持っていることを示唆。

☆19 June 2012; Vol. 109, No. 25
Mode change of millennial CO2 variability during the last glacial cycle associated with a bipolar marine carbon seesaw
Bernhard Bereiter, Dieter Lüthi, Michael Siegrist, Simon Schüpbach, Thomas F. Stocker, and Hubertus Fischer
南極アイスコアから115-38kaの大気中のCO2を復元。MIS5-MIS3までをカバーしている。南極の気温とCO2の間の良い相関が知られているが、DOイベントの際にも南極の気温とCO2とはほぼ同位相で変化しているが、詳細に見てみると時間的なラグがあることが分かった。MIS5(間氷期)のときは気温の上昇後250年経ってからCO2が上昇するのに対し、、MIS3(亜-間氷期)では870年のラグがある。AMOCのモード変化が関係しており、またAABWに大量の溶存炭素があるかどうかでラグやCO2の上昇の程度を説明できる可能性がある。


EPSL
Volumes 333–334, Pages 1-332 (1 June 2012)
Magnetotactic bacterial response to Antarctic dust supply during the Palaeocene–Eocene thermal maximum
Juan C. Larrasoaña, Andrew P. Roberts, Liao Chang, Stephen A. Schellenberg, John D. Fitz Gerald, Richard D. Norris, James C. Zachos
南大洋の Kerguelen Plateau から得られた堆積物コアからPETM前後の磁性鉱物の変化を復元。PETMの始まる前の磁性鉱物の増加は南極の乾燥化に伴う風成塵の量の増加が原因と考えられる。南大洋表層への鉄供給が一次生産を強化して有機物の深海底への輸送を強化し、深海底における磁性微生物の生体硬化作用を活発化させ、多くの磁性鉱物を沈殿させた?しかしながら大西洋中緯度域の堆積物コアからはそのような傾向は見られなかった。より深くプロセスを理解することが必要。

Boundary scavenging at the East Atlantic margin does not negate use of 231Pa/230Th to trace Atlantic overturning
Jörg Lippold, Stefan Mulitza, Gesine Mollenhauer, Stefan Weyer, David Heslop, Marcus Christl
231Pa/230Thは氷期間氷期スケールの海洋の深層循環を調べるための有力なツールの一つである。しかしこの間接指標を使うには沈降粒子フラックスを見積もる必要がある。NambiaとSenegal(赤道大西洋)で得られた堆積物コアから過去35kaの231Pa/230Thを復元。基本的にはAMOCに支配されているようで、大西洋東部は一次生産が高かったものの、231Paを堆積物に除去するほどではなかったと考えられる。


GCA
Volume 89, Pages 1-348 (15 July 2012)
Seasonal resolution of Eastern Mediterranean climate change since 34 ka from a Soreq Cave speleothem
Ian J. Orland, Miryam Bar-Matthews, Avner Ayalon, Alan Matthews, Reinhard Kozdon, Takayuki Ushikubo, John W. Valley
地中海東部に位置するSoreq洞窟から得られた石筍の年縞に沿ってイオンプローブでδ18Oを測定し、34-4kaの古気候を復元。主に気温と降水量の変動を表していると思われる。H1とYDにおける気候変動が見られた。H1は乾燥していた?またYDの開始には最低でも12年かかったと思われる。

231Pa/230Thが何故AMOC強弱の間接指標になるのか

McManus et al. (2004, nature)で一躍有名になった231Pa/230Thを用いたAMOC(Atlantic Meridional Overturning Circulation; 大西洋子午面循環)などの深層水循環の復元の原理について。

2012年6月20日水曜日

海水のアルカリ度まとめ

どうも捉えにくい海水のアルカリ度。教科書
CO2 in seawater by Zeebe & Wolf-Gradrow」
と「Chemical Oceanography and the Marine Ocean Cycle by Emerson & Hedges」
をもとに簡単にまとめてみたい。

2012年6月19日火曜日

新着論文(Science#6087)

Science
VOL 336, ISSUE 6087, PAGES 1353-1472 (15 June 2012)

Editorial
UNsustainable? 
持続不可能?
The idea of the Anthropocene requires that nations reevaluate their relationship with the planet and each other to ensure the prosperity of current and future generations.
「’人類の時代’という考えは、それぞれの国の現在と未来の世代の繁栄を約束するために国と地球との関係・国同士の関係を再評価することを余儀なくさせる。」
来週始まるRio+20で各国が集い、地球環境の持続可能性について議論する。焦点となるのは、発展途上国、地球温暖化、生物多様性の低下など。

News of the Week
NASA Rover Will Contaminate Mars Samples 
NASAの地上探査機は火星の試料を汚染するだろう
探査機の装置に付着しているテフロンが火星から採取されると期待されている試料を汚染する可能性があることが分かった。

Fears of Damage to Great Barrier Reef Delay Mine
グレートバリアリーフへのダメージの懸念が採鉱を遅らせる
オーストラリア・クイーンズランドにおける石炭の採鉱が沿岸部に悪影響を与える可能性があるとして、議論を呼んでいる。

Venus Silhouetted by the Sun
太陽によって浮かび上がった金星
日本のひので観測衛星が金星の太陽面通過を捉えた。金星を取り巻くハローは金星大気によるもので、今回の観測から得られた結果を応用することで、系外惑星の大気組成の推定に期待が高まる。

California Rejects Tobacco Tax
カリフォルニア州がタバコ税を拒む
1箱あたり1ドルのタバコ税の増税法案をカリフォルニア州の国民は僅差で棄却した。増税によって得られる441百万ドルがタバコに関係する病気の研究に充てられる予定だったらしい。

NASA Axes Mission to Study Black Holes, Neutron Stars
NASAがブラックホールと中性子星を研究するためのミッションを中止に
予算の超過からThe Gravity and Extreme Magnetism Small Explorer (GEMS) のミッションが中止となった。科学技術の進化速度の見積もりが甘かったようだ。


News & Analysis
Seagrasses Partner With Clams to Stay Healthy
健康を保つための海藻と二枚貝の共生関係
Elizabeth Pennisi
海藻、ツキガイ、バクテリアの共生関係が明らかになった。

Letters
Forgotten Biodiversity in Desert Ecosystems
砂漠の生態系の忘れられた生物多様性
S. M. Durant et al.
地球の大陸の7%は砂漠で占められており、生物多様性に満ちている。砂漠に関連した研究には予算も乏しく、それを反映して数も少ない。Rio+20においてはこれまで無視されてきた砂漠の重要性を再認識してもらいたい。

Essays on Science and Society
Science for Sustainable Development
持続可能な発展に向けた科学
Brad Wible
Rio+20に向けて、専門家の期待やこれまでの改善点、これからの課題、科学の役割などについて考えてもらった。

1. Analyzing Sustainable Development Goals
持続可能な発展の目標を分析する
Lidia Brito

2. The Urban Challenge
都市の挑戦
David Fisk

3. Harnessing New Scientific Capacity
発展途上国の新しい科学の能力を支える
Alice Abreu

4. From Industrial Toward Ecological in China
中国では経済発展から持続可能な生態系維持へ
Jiahua Pan

5. Creating the New Development Ecosystem
新しい生態系の発展を創造する
Alex Dehgan

6. Systems Science for Policy Evaluation
政策評価のシステマチックな科学
Pavel Kabat

7. Rigorous Evaluation of Human Behavior
人類の振る舞いに対する厳密な評価
Esther Duflo

Policy Folum
Avoiding Empty Ocean Commitments at Rio+20
Rio+20において海の公約の空洞化を避ける
Liane Veitch, Nicholas K. Dulvy, Heather Koldewey, Susan Lieberman, Daniel Pauly, Callum M. Roberts, Alex D. Rogers,and Jonathan E. M. Baillie
海洋生態系の持続可能性を改善するためにも、現存の公約のうち守るべきものに優先順位を設けるべきだ。

Perspectives
Absolute Dating of Cave Art
壁画の絶対年代決定
John Hellstrom
スペインの壁画のU/Thを用いた年代決定の結果は、従来よりもそれが古いことを示している。

Fragments of the Lunar Cataclysm
月の激変の断片
Alan E. Rubin
アポロ計画の際に地球に持ち帰られた試料が太陽系の初期進化に関するプロセスを明らかにするかもしれない。

Review
The Functions of Biological Diversity in an Age of Extinction
Shahid Naeem, J. Emmett Duffy, Erika Zavaleta
世界中の生態系が人類の資源利用、生息地と気候の改変、外来種の国内輸入などによって脅かされている。20年の研究でこれらが生物地球化学的に、生態系の動力学的にどれほど影響しているかは分かってきたが、今後はそれが複雑な自然界の生態系とどのように繋がっており、食料、水、エネルギー、生物保全を圧迫しているかを明らかにすることが焦点となる。

Brevia
Massive Phytoplankton Blooms Under Arctic Sea Ice
北極海の海氷の下で大量の光合成植物が花開く
Kevin R. Arrigo et al.
夏の半ば、珪藻は徐々に薄くなる海氷の下で栄養塩に富んだ海水を摂取することに長けている。

Research Article
U-Series Dating of Paleolithic Art in 11 Caves in Spain
A. W. G. Pike, D. L. Hoffmann, M. García-Diez, P. B. Pettitt, J. Alcolea, R. De Balbín, C. González-Sainz, C. de las Heras,J. A. Lasheras, R. Montes, and J. Zilhão
世界遺産にも登録されているAltamira遺跡を含む、旧石器時代の古代人の洞窟遺跡に存在する方解石に対してU/Th不平衡法を用いて年代決定。絵画は4万年前に始まった?

Reports
Direct Detection of Projectile Relics from the End of the Lunar Basin–Forming Epoch
Katherine H. Joy, Michael E. Zolensky, Kazuhide Nagashima, Gary R. Huss, D. Kent Ross, David S. McKay, and David A. Kring
月の表面に存在するレゴリスの中に含まれる破砕物は地球形成のもととなった隕石や小惑星を推定する手段の一つである。アポロ計画の際に採取されたMgコンドリュールは月海盆形成期(Lunar Basin-Forming Epoch)に形成されたものであることを物語っている。

Continental-Scale Effects of Nutrient Pollution on Stream Ecosystem Functioning
Guy Woodward et al.
陸域から大量の栄養塩が流入することが沿岸域の生態系を脅かしている。しかし大陸スケールで河川からどれほどの栄養塩が流入しているかの知識は不足している。ヨーロッパにおける野外調査から、葉の腐食由来の栄養塩の供給が100の河川で1000倍の多様性があることが分かった。富栄養化に対する生態系の応答を調べるために助けとなる可能性がある。

2012年6月18日月曜日

新着論文(BG)

Biogeosciencees
22 March 2012 - 11 April 2012

High nitrate to phosphorus regime attenuates negative effects of rising pCO2 on total population carbon accumulation
B. Matthiessen, S. L. Eggers, and S. A. Krug
海洋酸性化した海洋表層において円石藻がどう応答するかはよく分かっていない。pCO2と栄養塩(リン酸と硝酸)濃度を人工的に変えて円石藻の飼育実験を行った。リン酸に対し硝酸が多いほど細胞内の有機物量は低下するらしい。ただし、得られた結果は必ずしも群集全体(つまり炭素輸送)に適応できるものではないらしい。

Understanding why the volume of suboxic waters does not increase over centuries of global warming in an Earth System Model
A. Gnanadesikan, J. P. Dunne, and J. John
温暖化が進むと酸素の海洋への溶解が低下し、貧酸素の状態が起きると考えられている。EMICsで温暖化を再現したところ、貧酸素の水塊はそれほど形成されなかった。特に亜熱帯での気体交換と渦による水平輸送が重要なカギとなっているらしい。

Coupled CO2 and O2-driven compromises to marine life in summer along the Chilean sector of the Humboldt Current System
E. Mayol, S. Ruiz-Halpern, C. M. Duarte, J. C. Castilla, and J. L. Pelegrí
フンボルト海流に影響を受けているチリ沖の調査から、二酸化炭素濃度上昇と酸素濃度の低下が特に200m深で顕著であることが分かった。生態系に悪影響を与えているかも。

Simulation of anthropogenic CO2 uptake in the CCSM3.1 ocean circulation-biogeochemical model: comparison with data-based estimates
S. Wang, J. K. Moore, F. W. Primeau, and S. Khatiwala
人為起源の二酸化炭素がどれほど海によって吸収されたかをモデルを用いて計算し、観測データから計算された推定値と比較。北大西洋と南大洋の深層水形成と気体交換がモデル内で小さく再現されていることを反映し、モデルは炭素吸収量を少なく見積もってしまった。

新着論文(Ncom, GRL, JGR)

Nature Communications
12 June 2012

Surface changes in the north Atlantic meridional overturning circulation during the last millennium
Alan D. Wanamaker Jr, Paul G. Butler, James D. Scourse, Jan Heinemeier, Jón Eiríksson, Karen Luise Knudsen and Christopher A. Richardson 
大西洋の高緯度域から採取された二枚貝(Arctica islandica)の殻年輪に沿って14Cを測定することで、過去1350年間の海洋リザーバー年代を復元。中世温暖期(最近は中世気候’変調期’と呼ばれるらしい)/小氷期に新しい/古い炭素が得られ、AMOCは強化/弱化していたと考えられる。

GRL
10-17 June 2012
Stable isotopes in global precipitation: A unified interpretation based on atmospheric moisture residence time
Aggarwal, P. K., O. A. Alduchov, K. O. Froehlich, L. J. Araguas-Araguas, N. C. Sturchio, and N. Kurita
降水のd18Oを理解するための新しい枠組みについて。従来のRayleigh蒸散を利用した方法(amount effect)ではなく、大気中の水蒸気の滞留時間を用いている。

Delayed deglaciation or extreme Arctic conditions 21-16 cal. kyr at southeastern Laurentide Ice Sheet margin?
Peteet, D. M., M. Beh, C. Orr, D. Kurdyla, J. Nichols, and T. Guilderson
数多くの湖や沼から得られた堆積物中の化石の14Cからローレンタイド氷床の南東部の後退のタイミングを決定したところ、後退は16ka頃から始まっており、従来の28-21kaに比べてはるかに‘若い’年代が得られた。

Biomass burning as a potential source for atmospheric ice nuclei: Western wildfires and prescribed burns
Prenni, A. J., P. J. DeMott, A. P. Sullivan, R. C. Sullivan, S. M. Kreidenweis, and D. C. Rogers
アメリカ西部の大気観測から、燃焼由来のススの冷たい雲(氷)の凝結核としての能力について議論。森林火災由来のススは氷の凝結核として大きな役割を負っていると考えられる。

JGR-Oceans
10-17 June 2012
Mapping phytoplankton iron utilization: Insights into Southern Ocean supply mechanisms
Boyd, P. W., K. R. Arrigo, R. Strzepek, and G. L. van Dijken
リモートセンシングで南大洋の鉄利用効率を定量化。パタゴニア砂漠起源の塵が多く供給される海域ほど利用効率は高く、逆に懸濁粒子が多い海域で低かった。また従来考えられていたほど南大洋の鉄利用効率は高くない可能性がある。

Statistical evidence for the natural variation of the central Pacific El Niño
Kim, J.-S., K.-Y. Kim, and S.-W. Yeh
近年太平洋のエルニーニョは中部の方が東部よりも「頻繁に」「強く」起きているらしい。2つのモードが関与しており、1990年以降の2つのモードの位相の一致がこの現象を説明できるかもしれない。モデルシミュレーションでも再現できたが、これが自然変動なのか人為起源の気候変動かは判別困難であった。

2012年6月15日金曜日

新着論文(Nature#7402)

Nature
Volume 486 Number 7402 pp157-286 (14 June 2012)

World View
Researchers can’t regulate climate engineering alone
研究者だけでは気候工学を規制できない
「気候変動を打ち消すための気候工学に影響するのは研究者や発明家ではなく、政治家の関心である。」とJason Blackstockは言う。
GEOENGINEERING WILL ALTER THE GEOPOLITICS OF CLIMATE CHANGE AND THIS CANNOT BE IGNORED.
地球工学は気候変動に対する地政学を変え、そしてこれは為政者によって無視され得ない

Research Highlights
Synthetic silk inspired by insect 
昆虫に発想を得た無機的なシルク
Angew. Chem. Int. Edn. http://dx.doi.org/10.1002/ anie.201200591 (2012)
クサカゲロウのメスは卵を保護するために絹状の繊維を作ることが知られている。クサカゲロウから同定した遺伝子を大腸菌に植え付けることで、絹状の繊維を再現することができた。本物よりやや湿っぽく、弾力性があるらしい。

Weighing extinct animals 
絶滅した動物の体重を測定する
Biol. Lett. http://dx.doi.org/10.1098/rsbl.2012.0263 (2012)
生物の骨格から質量を求めるのには、従来体積と密度を仮定して質量を求める方法が取られてきた。しかし現存する複数のほ乳類に対してレーザースキャンを用いて骨格と質量の関係を求めてみたところ、従来の方法では20%ほど体重を軽く見積もっていることが分かった。新しい方法でブラキオサウルスの体重を見積もったところ、23.2トンという推定値が得られた。

Ship GPS could flag tsunamis 
船のGPSが津波の到達を合図できるかもしれない
Geophys. Res. Lett. http://dx.doi. org/10.1029/2012GL051367 (2012)
2010年のチリ沖地震の際に発生した津波をハワイ大の観測船のGPSが偶然捉えていたらしい。海面高度の10cmほどの上昇が捉えられており、将来の津波警報の精度向上に繋がる可能性がある。ただし1000隻ほどの船のデータを集約する必要があると筆者らは考えているらしい。

Comment
Uncertainty: Climate models at their limit?
不確実性:気候モデルは限界に来ている?
「気候モデルを用いた将来予測の不確実性はこれ以上良くなるというよりも寧ろ悪くなるかもしれない。」と Mark MaslinとPatrick Austin は言う。 

Sanitation for all
皆のための下水設備
インドにおいては下水による汚染が大問題となっている。インド政府はゴミ処理とトイレの設備を整えなければならない。

News & Views
Microbiology: Learning about who we are
微生物学:我々は何者なのかを知る

David A. Relman
我々の体に定住している微生物の数は、体を構成する細胞の数のほぼ10倍程度という圧倒的な多さである。このような常在菌について、集中的な研究が行われるようになってきており、健康な、また病気の状態でのその役割の解明が始まりつつある。

Letters
Possible tropical lakes on Titan from observations of dark terrain
Caitlin A. Griffith, Juan M. Lora, Jake Turner, Paulo F. Penteado, Robert H. Brown, Martin G. Tomasko, Lyn Doose & Charles
土星の衛星であるタイタンには地球と同じように雲や雨、湖があるが、その成分は水ではなくメタンである。北緯20度から南緯20度の間にある地域の近赤外スペクトル画像の分析から、表面に液体のメタンが存在することが分かった。地下から供給されている可能性が高い。

A signature of cosmic-ray increase in AD 774–775 from tree rings in Japan
Fusa Miyake, Kentaro Nagaya, Kimiaki Masuda & Toshio Nakamura
木の年輪中での 14 Cの増加は、氷床コア中の 10 Beや硝酸塩の増加と同様に宇宙線事象に起因する可能性がある。日本の杉について、西暦750~820年までの年輪中の 14 Cを1年および2年の分解能で測定したところ、西暦774~775年までに 14 C含有量が約12 ‰も急増したことがわかった。この現象は通常の太陽変調による変化の約20倍であるが、太陽フレアや超新星爆発の影響ではなさそうである。

2012年6月10日日曜日

新着論文(Ngeo#June 2012)

Nature Geoscience
June 2012, Volume 5 No 6 pp365-432

Editorial
Flip sides of exploration
探検の裏面

1930年代にデンマーク人によって撮影された写真によって、過去のグリーンランド氷床の姿が明らかになった。地政学と科学的な野心の両方が探検を駆り立てたようだ。

In the press
Heat, floods and special reports
熱波、洪水、特別報告
Alexandra Witze
近年頻発する異常気象。IPCCでも異常気象を取り上げるだけでなく、それに対する適応の提案も行われている。3月に出された報告書(IPCC Special Report Managing the Risks of Extreme Events and Disasters to Advance Climate Change Adaptation; Cambridge Univ. Press, 2012)では、熱波と洪水のような人為起源の気候変動の可能性が高いものもあれば、巨大台風のように簡単に人為的な影響と結びつけにくいものもあることが指摘されている。メカニズムは簡単には解明できないが、こうした異常気象に対処するためにも、地域レベルで適したモニタリングを正しい場所・時間・人々に対し行うことが重要である。

Research Highlights
ATMOSPHERIC SCIENCE: Low-level clouds 
大気科学:低層雲
Geophys. Res. Lett. http://doi.org/hwk (2012)
北極海の低層雲の高度が変化している。雲底が500mよりも低いものが30%減少し、逆に高いものが20%増加しているらしい。北極海では海氷の隙間を通して大気と海の熱のやり取りが行われるが、近年の海氷減少が雲底の高さに影響している可能性がある。

PALAEOCEANOGRAPHY: North to south
古海洋学:北から南へ
Paleoceanography http://doi.org/hwm (2012)
氷期にCO2濃度を100ppm低下させた原因として大西洋における深層水の沈み込みが着目されている。海洋循環モデルから、氷期の深層水は現在と同じく南大洋を起源とした深層水であるものの、北大西洋を起源とする深層水もかなりの割合で含まれている可能性が示唆された。

TECTONICS: Slippery fractures
テクトニクス:滑りやすい構造
Earth Planet. Sci. Lett. 331–332, 164–176 (2012)
海洋プレートの沈み込み帯では海水が潤滑油の役目を果たして摩擦を低減させることで、巨大地震を引き起こすような応力の蓄積を防いでいると考えられている。南部〜中部のチリの沈み込み帯の滑っている部分を特定したところ、水によって大きく変質を受けていることが分かった。少なくともこの地域では応力の蓄積を防ぐ役割を持っていそう。

Planetary science: Smoothed by dust
惑星科学:塵によって滑らかにされる
Icarus http://doi.org/hwn (2012)
土星の衛星の1つである「Atlas」の地表面をカッシーニの観測データから解析したところ、表面が非常に滑らかであることが分かった。表面には隕石孔もほとんど見られず、表面を吹きすさぶ砂嵐が表面を研磨している可能性が高い。

News and Views
Glaciology: Repeat warming in Greenland
氷河学:グリーンランドにおいて繰り返していた温暖化
Benjamin E. Smith
眠っていた写真から復元されたグリーンランド氷床の縁辺部は温暖化によってかなり後退していたことが分かった。特に南東部は1930年に過去最大の温暖化を経験したらしい。

Cryospheric science: Vulnerable ice in the Weddell Sea
雪氷圏科学:ウェッデル海の脆弱な氷
Angelika Humbert
西南極の棚氷の安定性に関して注目が集まっている。モデルシミュレーションと詳細な観測から、もうまもなく不安定化する可能性が指摘された。

Earthquakes: Casting stress shadows
地震:応力の影に光を当てる
Andrew M. Freed
地震は近くの断層の地震によって影響されたり逆に他の断層の地震を引き起こしたりするが、その関係を評価することは難しい。カリフォルニアのLanders地震の観測がその関係を評価するカギになるかも。

Climate science: Methane uncovered 
覆われていないメタン
Giuseppe Etiope
天然のガス放出場はこれまでかなり見過ごされてきた。雪氷圏における有機物分解由来のメタン放出場が発見されたことで、全球の温室効果ガスの収支に大きく影響する可能性がある。

Eocene climate: Summer rains
始新世の気候:夏の雨
Alicia Newton
現在北半球の66º以北ではほとんど植生は見られず、針葉樹があるのみだが、Eoceneの温暖期には現在の温帯に見られるような植生が分布していたと考えられる。環境的には東アジアの植生が一番似ているらしい。化石化した木の年輪に沿ってd13Cを測定し降水量の指標としたところ、夏は冬の3倍の降水があったことが示唆される。緯度が高いので日射量が夏に限定されることで、植物の成長も夏に限定的だった?

Letters
Model estimates of sea-level change due to anthropogenic impacts on terrestrial water storage
Yadu N. Pokhrel, Naota Hanasaki, Pat J-F. Yeh, Tomohito J. Yamada, Shinjiro Kanae & Taikan Oki
海水準変動の要因は「熱膨張」「氷床・氷河融解」「陸水の変化」が考えられるが、3つ目の陸水の変化は人為的な影響が大きく評価が難しかった。モデルシミュレーションから、ダム建設や地下水の過剰利用、灌漑などの影響が、1961-2003年における海水準上昇の42%に寄与している可能性があることが示唆された。

Steep reverse bed slope at the grounding line of the Weddell Sea sector in West Antarctica
Neil Ross, Robert G. Bingham, Hugh F. J. Corr, Fausto Ferraccioli, Tom A. Jordan, Anne Le Brocq, David M. Rippin, Duncan Young, Donald D. Blankenship & Martin J. Siegert
西南極氷床の崩壊は全球の海水準を3mも上昇させるほどの影響力を持つ。西南極氷床のウェッデル海セクターの海底面のマッピングから、棚氷の縁辺部の背後すぐに大きな傾斜があり、その背後にはさらに平地が広がっていることが分かった。この地域の棚氷の安定性にこの地形効果が大きく効くことが予想され、棚氷の安定性は今がちょうど閾値にある可能性がある。

Regional atmospheric circulation shifts induced by a grand solar minimum
Celia Martin-Puertas, Katja Matthes, Achim Brauer, Raimund Muscheler, Felicitas Hansen, Christof Petrick, Ala Aldahan, Göran Possnert & Bas van Geel
完新世において数百年スケールの気候変動は「太陽」の変動によって支配されていたと考えられているが、太陽の変動はそれだけでは影響力が小さく、フォーシングに対する気候フィードバックを評価することが難しい。ドイツのMeerfelder湖の年縞堆積物から3.0 - 2.2kaの風力と10Be(太陽活動の指標と考えられている)を復元したところ、2759年に風力の低下と10Beの濃度上昇(太陽活動の低下)が同時に起きていたことが分かった。太陽活動の低下が大気循環を通して気候に影響を与えた証拠?

Tsunamigenic potential of the shallow subduction plate boundary inferred from slow seismic slip
Hiroko Sugioka, Taro Okamoto, Takeshi Nakamura, Yasushi Ishihara, Aki Ito, Koichiro Obana, Masataka Kinoshita, Kazuo Nakahigashi, Masanao Shinohara & Yoshio Fukao
プレート沈み込み帯の浅部は地震発生場にはならないと考えられてきたが、南海トラフの沈み込み帯の低周波地震の観測から、浅部でも滑りが起きており、津波を伴う地震が起きる可能性があることが分かった。

Articles
Geologic methane seeps along boundaries of Arctic permafrost thaw and melting glaciers
Katey M. Walter Anthony, Peter Anthony, Guido Grosse & Jeffrey Chanton
北極海周辺には1200PgCものメタンのリザーバー(大気中には5PgC)があるが、永久凍土や海氷がその大気放出を抑えている。メタンは強烈な温室効果ガスでもあるため、わずかな流出でも気候システムに大きな影響を与えるものとして注目されている。アラスカやグリーンランドで発見された放出場のメタンの14Cや同位体はこれらが非常に古く、地下で熱分解により生成されたメタンであることを示唆している。温暖化によってこうした古いメタンがより出やすくなる環境になると考えられる。

An aerial view of 80 years of climate-related glacier fluctuations in southeast Greenland
Anders A. Bjørk, Kurt H. Kjær, Niels J. Korsgaard, Shfaqat A. Khan, Kristian K. Kjeldsen, Camilla S. Andresen, Jason E. Box, Nicolaj K. Larsen & Svend Funder
1930年代初頭まで遡ることができる昔のグリーンランドの空中写真から特に南東部におけるグリーンランド氷河の縁辺の位置を復元。また近年の衛星観測記録とも併せて過去80年間のグリーンランド氷河の変動を議論。氷河は陸に流れ込むものと海に流れ込むものとあり、陸に流れ込む氷河は現在よりも寧ろ1930年代の方が後退が早く、一方で海に流れ込む氷河は現在が最も早く後退しているらしい。

2012年6月9日土曜日

新着論文(PNAS、EPSL)

PNAS
Vol. 109, No. 23 (5 June 2012)

Sulfur isotope variability of oceanic DMSP generation and its contributions to marine biogenic sulfur emissions
Harry Oduro, Kathryn L. Van Alstyne, and James Farquhar
海洋性エアロゾルの一種であるdimethylsulfoniopropionate (DMSP) はdimethylsulfide (DMS)の前駆体であり、海洋微生物によって生成されている。DMSPの硫黄同位体測定を測定したところ、海水の硫黄同位体とは異なる値が得られた。供給源の変化(生産者の変化など)というよりも寧ろ、生物の代謝過程にコントロールされている?
    
Predominance of heavily calcified coccolithophores at low CaCO3 saturation during winter in the Bay of Biscay
Helen E. K. Smith, Toby Tyrrell, Anastasia Charalampopoulou, Cynthia Dumousseaud, Oliver J. Legge, Sarah Birchenough, Laura R. Pettit, Rebecca Garley, Sue E. Hartman, Mark C. Hartman, Navjit Sagoo, Chris J. Daniels, Eric P. Achterberg, and David J. Hydes
Biscay湾において1年間にわたって詳細に円石藻の殻の様子や海水の観測を行ったところ、酸性度が増す(pCO2濃度が高まる)冬期において、円石藻が通常よりも厚い殻を形成していることが分かった。これは従来考えられていた酸性化において円石藻の殻が溶けるという予測に反するものであり、円石藻の酸性化に対する応答に対して疑問を投げかけるものである。

EPSL
Volumes 331–332, Pages 1-370 (15 May 2012) 

Mid- to late Holocene changes in tropical Atlantic temperature seasonality and interannual to multidecadal variability documented in southern Caribbean corals
Cyril Giry, Thomas Felis, Martin Kölling, Denis Scholz, Wei Wei, Gerrit Lohmann, Sander Scheffers
カリブ海のサンゴ(Diploria strigosa)のSr/Caから中期-後期完新世における月レベルの時間解像度のSSTを復元(最長で67年間)。中期完新世はSSTの変動幅が大きく、モデル結果とも整合的。ENSOも今より強化されていた?


East African mid-Holocene wet–dry transition recorded in palaeo-shorelines of Lake Turkana, northern Kenya Rift
Yannick Garcin, Daniel Melnick, Manfred R. Strecker, Daniel Olago, Jean-Jacques Tiercelin
ケニア北部に位置するTurkana湖の古水面を復元したところ、5.3kaに50mもの大きな低下が確認され、原因は干ばつと考えられる。この地域に住んでいた古代人の生活に影響した?

新着論文(Science#6086)

Science
VOL 336, ISSUE 6086, PAGES 1197-1352 (8 June 2012)

Editors' Choice
Ocean Science:Acid Test
海洋科学:酸性化実験 
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 109, 10.1073/pnas.1117508109 (2012).
Biscay湾において1年間に渡って詳細に採取された円石藻(E. huxley)はこれまでの予想に反して、冬期のpHが下がる(飽和度が下がる)時期にむしろ殻を厚くしていることが分かった。必ずしも原因はpHだけではなさそうだが、従来の単純なモデルでは将来予測が難しいことが浮き彫りになった。

News of the Week
Drill Ship Nabs Fault Zone Cores
掘削船が断層帯のコアを引き抜いた

日本の掘削船「ちきゅう」が東北沖地震を引き起こした断層の掘削を成功させた。水深7,000mでの海底下845mの掘削であった。温度計の設置はシステムの不具合で決行することができなかったため、夏に再度設置のための公開が予定されている。

Disputed Islands Could Be Marine Research Site
論争を巻き起こしている島々が海洋研究拠点になるかも
日本、台湾、中国によって領有権が主張されている尖閣諸島は海洋研究にはもってこいと石原東京都知事は発言した。東海大の岡本氏によれば、尖閣諸島は黒潮が豊かなサンゴ礁生態系を形成している場所であるが、その地理的な要因から訪れることが難しい島の1つであるという。

Raindrops Don’t Swat Down Mosquitoes
雨粒は蚊を撃ち落とさない
蚊にとって雨粒は自らの体の数倍の大きさ、重さを持った物体の衝突であるにも拘らず、雨粒が衝突しても蚊は死なない。実験室で蚊に水のジェットを当てて(雨を想定)ビデオカメラで観測したところ、蚊の質量が小さいことで運動エネルギーが伝わりにくいこと、蚊の外骨格が比較的固く、臓器が保護されることが理由として考えられるらしい。

Life Blooms Under Arctic Ice
北極の氷の下で生命が芽吹く
「氷が溶けると生命が一気に花開く」とこれまで考えられてきたが、チュクチ海の大陸棚における調査で厚さ1mの氷の下でも光合成植物プランクトンが増殖していることが分かった。
氷の中には「melt pond」と呼ばれる箇所があり、そこでは光の50%は下部に到達しているらしい。北極海において生物生産が低く見積もられている可能性がある。

News & Analysis
OCEAN SCIENCE: Oil Spill Researchers Lose Fight to Protect Documents
海洋科学:石油流出の調査員が文書を守る戦いに負けた
Eli Kintisch
「Deepwater Horison」石油流出事故の流出量の見積もりに関する内部メールが訴訟を受けて外部に公開されることとなった。

JAPAN: Growing Distaste for Nuclear Power Dims Prospects for R&D
日本:日々大きくなる原発への嫌悪感が将来の研究開発の可能性を霞めている
Dennis Normile
日本の諮問機関は予測される経済発展と二酸化炭素排出規制に見合った2030年までにエネルギー資源の確保先を多角化するオプションを発表した。

News in Focus
PUBLIC HEALTH: Do Sports Events Give Microbes a Chance to Score?
公衆衛生:スポーツのイベントは病原菌が蔓延するきっかけになるか?
Kai Kupferschmidt
多くの人が集まることは感染の中核をなすが、リスクはそれほど大きくないことが分かった。

Letters
Climate's Role in Polar Bear Past
過去のホッキョクグマに対する気候の役割
Kurt E. Galbreath, Joseph A. Cook, and Eric P. Hoberg
Plioceneに入り気候が寒冷化し、海氷が北極海を一年中覆い始めるまでシロクマは北極には生息することができなかったかもしれない。気候と生物進化を直接結びつけることは難しいが、シロクマに関してはある程度当てはまるかも?

Water Cycle Varies over Land and Sea
陸と海とで水循環は異なる
Michael L. Roderick, Fubao Sun, and Graham D. Farquhar
最近、海洋での水循環が強化されているという観測結果が提示されたが、海と陸の水循環は全く異なることに注意が必要である。海においては絶えず蒸発が水を大気に供給するが、陸では陸水の量に依存する。もとから乾燥した地域は乾燥を維持し続けるが、一方で湿潤地域は湿潤化したり乾燥化したりする(洪水や干ばつの発生)。そのため、海の知見を陸にそのまま当てはめて考えるのは早計である。

The Cost of Open Access
オープン・アクセスの価格

科学雑誌のオープン・アクセス(誰でも無料で記事を閲覧できる仕組み)に関するコメント集。メリット・デメリット。

Perspectives
CLIMATE CHANGE: Dancing to the Tune of the Glacial Cycles
気候変動:氷期のサイクルに合わせてダンスする
Naoyuki Kurita
鍾乳石の酸素同位体が過去60万年間の熱帯域の水循環を明らかにする。

ASTRONOMY: Gathering Interstellar Gas
天文学:星間ガスを集める
Seth Redfield
IBEX宇宙船による観測から、太陽系と宇宙との境界にあたる「Heliosphere」の詳細が明らかになった。

Letters
Interglacial Hydroclimate in the Tropical West Pacific Through the Late Pleistocene
A. N. Meckler, M. O. Clarkson, K. M. Cobb, H. Sodemann, and J. F. Adkins
インドネシアのボルネオ島から得られた鍾乳石のd18Oから過去570-210kaの水循環を復元。pCO2や高緯度の気温にはあまり敏感に応答していなかったことが分かる。退氷期には高緯度の寒冷化に対応して熱帯域の乾燥化の傾向が確認された。従って、熱帯のヒートエンジンは全球の気候を安定化・増幅という2つの相反する効果を持っていたと考えられる。

2012年6月8日金曜日

全球の海洋表層水のpCO2のここ20年間の傾向〜大規模データベースからの計算〜

The observed evolution of oceanic pCO2 and its drivers over the last two decades
Lenton, A., N. Metzl, T. Takahashi, M. Kuchinke, R. J. Matear, T. Roy, S. C. Sutherland, C. Sweeney, and B. Tilbrook
Global Biogeochem. Cycles, 26, GB2021, doi:10.1029/2011GB004095.


より。海洋表層のpCO2のデータベースの1つである、LDEO_v2009をもとに、全球の各海域におけるpCO2のここ20年の変化の傾向を計算。

2012年6月7日木曜日

新着論文(Nature#7401)

Nature
Volume 486 Number 7401 pp5-152 (7 June 2012)

Research Highlights
ANTHROPOLOGY: Rich milk for poor girls
人類学:貧しい娘に豊かなミルクを

Am. J. Phys. Anthropol. http:// dx.doi.org/10.1002/ajpa.22092 (2012)
83人のケニアの母親の調査から、貧しい母親は息子に授乳する時より娘に授乳する時の方が脂肪に富んだ母乳を出しているらしい。将来結婚によって貧困から抜け出せる可能性があるため?一方で裕福な母親は息子により脂肪に富んだ母乳を飲ませるらしい。将来複数の妻を持つ可能性が高いため?

GLACIOLOGY:Greenland glacier map
氷河学:グリーンランド氷河の地図

Geophys. Res. Lett. http://dx.doi. org/10.1029/2012GL051634 (2012)
2008-2009年の「国際極の年」の際に、衛星観測によってほぼ完璧なグリーンランド氷床の地図が描かれた。レーダー観測も組み合わせることで、より厳密な観測を行ったところ、グリーンランド氷床の流速が地域ごとに大きく異なることが分かった(年間に数cm〜13km)。主に降水量がコントロールしているらしい。

Seven Days
Golden age of gas 
ガスの黄金期
2035年には天然ガスの消費量が石炭を上回ることが予測されているが、より炭素放出量の少ないエネルギー源への転換だけは温暖化を2℃以内に食い止めることはできない。

Venus crosses the Sun 
金星の太陽面通過
生涯に一度しかない金星の太陽面通過に科学者だけでなく世界中の人々が魅了された。この現象を通して、これまでVenus Expressによってしか直接観測されていない金星大気の組成や、系外惑星の大気組成の推定に対する新たな知見が得られるだろう。

NOAA funding row 
NOAAの財政法
5/24に行われた調査によって、財政における不正が暴かれた。

Dragon returns
ドラゴンの帰還
民間のロケットによるISSへの物資輸送というミッションを負ったドラゴンは無事仕事を終え、太平洋に着水した。NASAによる打ち上げは1回に16億ドル使うのに対し、ドラゴンをはじめとする民間プロジェクトでは1億ドル程度で済む。

News in Focus
Japan considers nuclear-free future
日本が原子力発電からの脱却を考えている
二酸化炭素排出目標を達成するためにも、再生エネルギーへの大きな転換が迫られている。

Features
Return to Rio: Second chance for the planet
リオに戻る:地球のための2度目のチャンス

20年前に行われたリオデジャネイロ・サミットでは人為的な気候変動を押さえることは簡単なことだと思われていたが、当時370ppmしかなかった大気中のCO2濃度は今や400ppmに達し、今なお上がり続けている。また次々と生物が絶滅している。

Earth summit: Rio report card
地球サミット:リオデジャネイロの報告カード
20年前に決められた気候変動を防ぎ、生物を保全するための約束事はほとんど守られないまま20年が過ぎた。今や世界は先進国と途上国に二分され、議論が前に進まない状態にある。何をどう良くするか、についての議論が今月末行われる(Rio+20)

Comments
Lead by example 
先陣を切る
Rio+20の開催国として、ブラジルは先陣をきらなければならない。国内のダム建設反対問題など。

The corporate climate overhaul
気候を修復するための協力
「地球を守るためにはビジネスのルールを変える必要がある」とPavan Sukhdevは言う。

Correspondence
Value of submerged early human sites
初期の人類の海に沈んだ遺跡の価値 

Nicholas Flemming, Geoffrey N. Bailey & Dimitris Sakellariou
海に沈んだ遺跡は大きな価値がある。場合によっては陸よりも食料の遺物、野菜、骨などが良い状態で保存され、DNAを抽出することだってできる。さらにそれらの遺跡は現在の大陸棚に位置する場合が多く、後背地の味気ない遺跡に比べて交易などという点でも古代人を魅了していた場所でもある。「海底考古学」が現代の海洋調査技術に支えられて発展しつつある。

Two faces of marine ecology research
海の生態調査の二面性

Juerg Brunnschweiler
科学者は今や海洋生物(マグロ、サメ、カメ)などの回遊を3次元で追うことができる。それにより生物多様性が豊かな海域が明らかになり、保全と乱獲という2面性へと繋がってしまっている。

News & Views
Biodiversity: Remote responsibility
生物多様性:原因は離れたところに
世界的な商品供給網と消費パターンが生物多様性に及ぼす影響についてのモデル解析から、絶滅危惧動物種の絶滅の30%を引き起こした原因は国際貿易であることが、明らかになった。

Geochemistry: A dash of deep nebula on the rocks
地球化学:岩の上に残ったひとはけの星雲
アイスランドの岩から得られた希ガス同位体混合物は、上部マントルはこれまで、また現在でも、より深部のマントル供給源から気体を供給されたことがないことを示唆している。これは、地球深部の挙動と形成についての考えに難問を投げかけるものだ。

Reviews
Approaching a state shift in Earth’s biosphere
地球の生物圏に迫りくる状態シフト
Anthony D. Barnosky et al.
ローカルな生態系は閾値を超えると別の状態にシフトすることが知られているが、こうした現象は全球的にも同じように起こる可能性があり、人類の影響によって地球規模のシフトが迫りつつあることを示す証拠について再検討する。早期に兆候を見つけ出しメカニズムを理解するだけでなく、その根本的な問題の解決に取り組むことも大切である。

Biodiversity loss and its impact on humanity
生物多様性の減少とそれが人類に及ぼす影響
Bradley J. Cardinale et al.
地球のきわめて独特な特徴は生物の存在であり、生物の顕著な特徴はその多様性である。地球上に生息する植物、動物、原生生物、および菌類は、約900万種類に上る。そして70億人の人類も地球上で生活している。20年前に初めて開かれた地球サミットで、世界の国々の大多数が、人類の活動が地球の生態系を破壊しつつあり、遺伝子、種、および生物学的形質をすさまじい速度で消失させていることを言明した。そうした事情のもと、「生物多様性の減少が、生態系そのものの機能や人類の繁栄に必要な物品やサービスを社会に提供する能力をどう変化させてしまうのか」という疑問が生まれた。

Securing natural capital and expanding equity to rescale civilization
文明の規模縮小のための自然資本の確保と公平性の拡大
Paul R. Ehrlich, Peter M. Kareiva & Gretchen C. Daily
生物物理学の観点からすると、人類が現在ほど持続可能性から急速に遠のいていることはこれまでなかった。人口規模や1人当たりの環境に与える影響が増大していることから、我々人類の最も基本的な要求に地球がどれだけ応えられるかが厳しく試されている。このような状況に対する認識が非常に高まるとともに、この状況に対処するための努力もきわめて精巧になっている。しかし、この難題の複雑さは解決の見通しを今なお暗いものにしている。我々は、持続可能な発展の3つの重要領域、すなわち、持続可能な人口規模の達成と不可欠な自然資本の確保(どちらにも不公平の緩和が一部関与する)、および大学・研究機関による社会的リーダーシップの強化における変革の可能性を探究した。

Letters
Ultraviolet-radiation-induced methane emissions from meteorites and the Martian atmosphere
Frank Keppler, Ivan Vigano, Andy McLeod, Ulrich Ott ,Marion Früchtl & Thomas Röckmann
火星の隕石に火星の表面における状態下で紫外線を照射することでメタンが発生することが分かった。火星の大気にメタンが多いことの大部分を説明できるかも?

Late Miocene decoupling of oceanic warmth and atmospheric carbon dioxide forcing
Jonathan P. LaRiviere,A. Christina Ravelo, Allison Crimmins, Petra S. Dekens, Heather L. Ford, Mitch Lyle & Michael W. Wara
Miocene後期はCO2濃度が低いにも関わらず北半球に氷床がなく、温暖な状態が維持されていた。新たに得られた北太平洋中緯度域と北西太平洋の堆積物コアから同時期の温度と温度躍層の深度を復元。1300万年前から温度躍層が浅くなっており、温度躍層の浅化や水蒸気フィードバックなどによって温暖な地球を説明できるかも?

Early differentiation and volatile accretion recorded in deep-mantle neon and xenon
Sujoy Mukhopadhyay
アイスランドの海洋島玄武岩(OIB)の希ガスの同位体測定から、地球マントルは少なくとも2つの別個の供給源から揮発性物質を集積しており、ジャイアントインパクトや4.45 Gyrにわたるマントル対流のどちらもが、地球の不均一な集積と初期の分化の痕跡を消し去らなかったことが分かった。

A global synthesis reveals biodiversity loss as a major driver of ecosystem change
David U. Hooper, E. Carol Adair, Bradley J. Cardinale, Jarrett E. K. Byrnes, Bruce A. Hungate, Kristin L. Matulich, Andrew Gonzalez, J. Emmett Duffy, Lars Gamfeldt & Mary I. O’Connor
公表されているデータの一連のメタ解析を行うことで、局所的な種消失が生態系にもたらす影響が、全球規模の環境変動要因(CO2濃度上昇、栄養塩汚染など)による直接的影響と同程度に大きいことが分かった。

International trade drives biodiversity threats in developing nations
M. Lenzen, D. Moran, K. Kanemoto, B. Foran, L. Lobefaro & A. Geschke
人類の活動は、地球史上6番目の大量絶滅事象を引き起こしつつあり、世界の生物多様性が人類出現以前の100~1,000倍の速度で加速度的に失われている。グローバル化が進む現代の経済では、国際貿易網が、消費地から遠く離れた場所にある生息地の崩壊を加速している。世界の生物種が直面している絶滅の脅威の30%が国際貿易によるものであることがわかった。輸入されるコーヒー、茶、砂糖、織物、魚介類、およびそのほかの製品の消費が生物多様性への影響の原因となっている。

2012年6月4日月曜日

新着論文(Ncom, GCA)

Nature Communications
29 May 2012

The oceanic biological pump modulates the atmospheric transport of persistent organic pollutants to the Arctic
Cristóbal Galbán-Malagón, Naiara Berrojalbiz, María-José Ojeda and Jordi Dachs
環境汚染物質の一種である「polychlorinated biphenyl:ポリ塩化ビフェニル」が北極海の深海底に生物ポンプを介して到達していることが分かった。大気のポリ塩化ビフェニル濃度減少は生物ポンプによる輸送によって説明ができるそうだ。

Geochimica et Cosmochimica Acta
Volume 87, Pages 1-378 (15 June 2012)

Resilience of cold-water scleractinian corals to ocean acidification: Boron isotopic systematics of pH and saturation state up-regulation
Malcolm McCulloch, Julie Trotter, Paolo Montagna, Jim Falter, Robert Dunbar, André Freiwald, Günter Försterra, Matthias López Correa, Cornelia Maier, Andres Rüggeberg, Marco Taviani
非造礁性のサンゴのホウ素同位体を測定。アラゴナイトの骨格を作る種(Caryophyllia smithii, Desmophyllum dianthus, Enal- lopsammia rostrata, Lophelia pertusa, Madrepora oculata)は比較的高いd11Bを持ち、一方でカルサイトの骨格を作る種(Corallium sp. )は低いd11Bを示した。海水のホウ酸イオンのd11Bの理論曲線には乗らず、海水pHというより寧ろ石灰化流体のpHがこれらをコントロールしているものと思われる。また深海サンゴは飽和度の非常に小さい環境で石灰化できているため、酸性化にもある程度耐えられる可能性がある。

Vertical and temporal variability in concentration and distribution of thaumarchaeotal tetraether lipids in Lake Superior and the implications for the application of the TEX86 temperature proxy
Martijn Woltering, Josef P. Werne, Jason L. Kish, Randall Hicks, Jaap S. Sinninghe Damsté, Stefan Schouten
スペリオール湖で3年間かけて行われたGDGTのフラックスを求める実験の成果。GDGTが多く生成されるのは年に2回あり、またその深度は温度躍層の下部の20-40m深であった。夏のTEX86は現場水温とよく合うが、冬は合わない。平均するとまあまあ合うようだ。

Thorium-derived dust fluxes to the tropical Pacific Ocean, 58 Ma
Stella C. Woodard, Deborah J. Thomas, Franco Marcantonio
従来の方法では堆積物を化学的にリーチングしてアルミ質ケイ質鉱物を抽出することでダストの量を産出していたが、風成塵・無機鉱物・火山性鉱物を分けることができなかった232Thを用いることで風成塵のフラックスを求めることができる。シャッキー海台の堆積物コアから58Ma頃の風成塵フラックスを復元。Paleogene初期にアジア起源のレスが亜熱帯太平洋に届いていた。

Volume 88, Pages 1-282 (1 July 2012) 
Diagenetic barium cycling in Black Sea sediments – A case study for anoxic marine environments
Susann Henkel, José M. Mogollón, Kerstin Nöthen, Christine Franke, Kara Bogus, Eric Robin, André Bahr, Martin Blumenberg, Thomas Pape, Richard Seifert, Christian März, Gert J. de Lange, Sabine Kasten
黒海から得られた2本のGravity coreに対して様々な微量元素や間隙水を測定し、特にBaが一時生産の指標になり得るかを調査。堆積後の属性作用(bariteの沈殿)によって歪められてしまうことが分かった。

Influence of eolian deposition and rainfall amounts on the U-isotopic composition of soil water and soil minerals
Jessica L. Oster, Daniel E. Ibarra, Caroline R. Harris, Katharine Maher
ネバダで得られた土壌中の土壌と水のウランの同位体測定結果について。土壌の234U/238Uはサイトごとに異なる値を示し、風化の影響が考えられる。また間隙水の234U/238Uは降水の傾きの影響を受けていると考えられる。モデリングしてみたところ、浸透フラックス(つまり降水)が間隙水の234U/238Uに大きく影響することが分かった。土壌の234U/238Uが分かれば降水量を復元できるかも?

2012年6月3日日曜日

新着論文(Science#6085)

Science
VOL 336, ISSUE 6085, PAGES 1069-1196 (1 June 2012)

Editor's Choice
ECOLOGY: The Power of Pollination 
生態学:受粉の力
Ecology 93, 1036 (2012).
気候変動によって物理条件(気温、降水など)が変化し、それに対して生態がどう適応するかには注意が払われているが、共生関係などがどう変化するかはよく分かっていない。カリフォルニアの固有植物(Clarkia xantiana)に対して4年間に渡って実験をしたところ、受粉を行う昆虫が変化することで、受粉能力が低下し、再生産が行いにくくなることが分かった。昆虫自身気候変動によって(特にこの場合は降水に)影響されているが、間接効果として気候変動を考える上で重要な知見が得られた。

PHYSIOLOGY: Working on Borrowed Time
生理学:借りた時間で働く
Curr Biol. 22, 10.1016/j.cub.2012.03.038 (2012).
近年の労働時間の増加、インターネット/テレビ/ソーシャルネットの普及により、我々の生活リズムは人間本来の体内時計から狂ってきている。ヨーロッパの若者を対象にしたアンケートから、2時間ほど遅れた生活を送っており、それがBMIとも相関している(つまり肥満になりやすい)ことが分かった。夜間の活動が多い、外で日光に浴びないことは糖の代謝に密接な関係があり、それが肥満を誘発するようだ。

Around the World
French GM Concerns Dismissed—Again
フランスの遺伝子組み換えに関する関心が再び棄却される

最新の遺伝子組み換え作物栽培に対するフランスの反対が、ヨーロッパの食品安全局(European Food Safety Authority )によって再び棄却された。フランス側は対象とする昆虫以外や土壌への影響、さらに人間健康に対する影響があるとしている。EFSAは1998年にMON810と呼ばれる遺伝子(トウモロコシを補食する虫を防ぐ)の使用を認めていたが、フランスはMON810の国内使用を2008年に禁止にしている。

Senate Committee Wants to Sink Military’s Biofuels Program
アメリカの議会は軍のバイオ燃料使用プログラムを沈めたいらしい

防衛省はエネルギー資源の調達先を多角化するためにバイオ燃料を50%従来の化石燃料に混ぜる、新たなバイオ燃料精製用の工場を建設するなどのプログラムを進めていたが、議会は予算の関係からそれらの計画を棄却した。

Test Crop Survives Protest
試験作物が抗議に耐える

イギリスにおいて、小麦の遺伝子組み換えの試験生産に対する抗議運動が起こった。警察の協力で抗議運動は平和に終わったが、一方でインターネット上では試験を行う研究機関のウェブサイトが落ちる騒ぎとなった。

Random sample
Hitchhikers From the Deep
深海からのヒッチハイカー
通常深海に生きる生物は圧力差があまりに大きいことから表層では生きられないと考えられていた。しかし、深海の熱水付近に住む巻貝の一種はフランスの潜水艇Alvinに乗ってはるか2,200mから表層まで運ばれ、その後635km運ばれたのちも生きていたらしい。同位体分析から由来が分かったようだ。

Bivalve Digging Inspires ‘RoboClams’
二枚貝の穴掘りが「ロボットの貝」のアイデアを生む

カミソリガイは1cm/sという驚くべき早さで砂に潜ることができるが、MITの研究グループはその潜り方を詳細に観察し、メカニズムを解明することで、穴に素早く潜るロボットの試作機を開発した。将来は錨への応用などが考えられているらしい。

No New Neurons in Adult Olfactory Area
成人の嗅覚野には新たなニューロンはない

成人の神経組織においてニューロンは生成されないというのが長く常識になっていたが、記憶野ではそれが起こることが1990年代に分かった。放射性炭素のボムピーク(1960年に明瞭なピークがある)を利用することで検死体の脳の神経細胞の年代測定を行ったところ、嗅覚野のニューロン(他の動物では活発に生成されているらしい)はすべて同じ年代(それらが取り出された年)を示した。

Findings
Tippy-Top Target for Next Mars Rover
次の火星探査機の不安定な頂上を持った標的

次の火星探査機が8月6日に火星に着陸するが、その第一候補の調査対称はGaleクレーターの中心に位置する高さ5kmの謎の高まりである。地質学者の中にはそれは古代の火星(38億年ほど前?)において噴火した火山ではないかと考えている人がいる。

News and Analysis
ARCHAEOLOGY: Early Dates for Artistic Europeans
考古学:芸術的なヨーロッパ人の始まり
Michael Balter
ドイツ南西部で発見された壁画の放射性炭素年代から、初期の人類の芸術行動はアフリカというよりもむしろヨーロッパで発現したことが示唆される。

News Focus
Mysteries of Astronomy
天文学の謎
Robert Coontz
近いうちに解ける謎ではなく、簡単な説明では記述できそうのない謎を8つまとめてみたそうだ。

1、What Is Dark Energy?
ダークエナジーとは何か?
Adrian Cho
2、How Hot Is Dark Matter?
ダークマターはどれほど熱いのか?
Adrian Cho
3、Where Are the Missing Baryons?
失われたバリオンはどこにあるのか?
Yudhijit Bhattacharjee
4、How Do Stars Explode?
どのようにして星は爆発するのか?
Yudhijit Bhattacharjee
5、What Reionized the Universe?
何が宇宙を再びイオン化させたのか?
Edwin Cartlidge
6、What's the Source of the Most Energetic Cosmic Rays?
最もエネルギーの大きな宇宙線の由来は何か?
Daniel Clery
7、Why Is the Solar System So Bizarre?
何故太陽系はこんなにも変わっているのか?
Richard A. Kerr
8、Why Is the Sun's Corona So Hot?
何故太陽のコロナはこれほど熱いのか?
Richard A. Kerr

Letters
Biosecurity on Thin Ice in Antarctica
南極の薄い氷の上での生物保全
Philip E. Hulme, Petr Pyšek, and Marten Winter
南極を訪れる人の数は10倍にまで膨れ上がり、南極固有の生態系が侵されつつある。調査によると、観光客よりも科学者の訪問の方が一人当たりのリスクは大きいらしい。南極の生態系を保護するための機関を設立し、訪問者から徴税することが第一のステップになると考えられ、イニシアチブはニュージーランドやオーストラリアがとるべきだろう。

Perspectives
GEOCHEMISTRY: Tracking the Fukushima Radionuclides
地球化学:福島の放射性元素を追う
Naohiro Yoshida and Jota Kanda
福島第一原発から放出された放射性元素をモニタリングする試みに関して。

GEOLOGY: Understanding Sediments—Reducing Tsunami Risk
地質学:堆積物を理解する、津波のリスクを減らす
Robert Weiss and Joanne Bourgeois
津波堆積物の堆積と浸食のプロセスの理解が津波のリスク低減に繋がる。

GEOPHYSICS: A Rogue Earthquake Off Sumatra
地球物理学:スマトラ沖地震のゴロツキ
Jeffrey J. McGuire and Gregory C. Beroza
海洋地殻内部で起きたスマトラ沖地震(M8.6)のメカニズムは地震物理学の基礎に対する疑問を投げかけている。

ASTRONOMY: Evidence of Things Not Seen
天文学:見えないものの証拠
Norman W. Murray
ケプラー宇宙望遠鏡は遠くの星の周りをまわっている見えない惑星の質量や周期を見ることができる。

Reports
The Detection and Characterization of a Nontransiting Planet by Transit Timing Variations
David Nesvorný, David M. Kipping, Lars A. Buchhave, Gáspár Á. Bakos, Joel Hartman, and Allan R. Schmitt
ケプラー望遠鏡は系外惑星の恒星前の通過をモニタリングしている。3つの有力な星が発見された。特に3つ目の惑星は地球半径の1.7倍の半径を持ち、6.8日の周期で恒星の前を通過している。太陽系の最初の頃の惑星配置を想起させる?

Evolution of a Vertebrate Social Decision-Making Network
Lauren A. O’Connell and Hans A. Hofmann
脊椎動物の遺伝子解析から、適応行動に関する脳の部位は4億5千万年間そのままであることが分かった。どの遺伝子が保存されているかで、脊椎動物の社会的な行動を一部説明できるかもしれない。

2012年6月2日土曜日

新着論文(Nature#7400)

Nature
Volume 485 Number 7400 pp547-672 (31 May 2012)

Research Highlights
Dating with rare earth elements
希土類元素を用いた年代決定
J. Vertebr. Paleontol. 32, 708–716 (2012) 
セリウムのような希土類元素を用いて考古学遺跡の遺物を年代決定。地下水から希土類元素が化石に取り込まれるのが時間依存(?)という原理を利用しているらしい。

Partners for the sunshine vitamin 
日光のビタミンのパートナー
Sci. Transl. Med. 4, 135ra66 (2012)
日光を受けることで皮膚で生成されることで知られるビタミンD。さらに免疫力も強化すると考えられていたが、どうやらビタミンDだけでは免疫は強化されないらしい。PTHと呼ばれるホルモンがビタミンDの作用を助けていることがマウスの実験から分かった。

Explosions created big sandpit
爆発が大きな砂だまりを作った

Geology 40, 467–470 (2012)
ノルウェー沖の海底地震波探査と堆積物採取から、最終氷期の始まりに圧力によって海底下の割れ目から急激に吹き出したと考えられる世界最大の砂場(125m厚で260km2)があることが分かった。

Lost photos reveal glacier shifts
失くしていた写真が氷河の変遷を明らかにする

Nature Geosci. http://dx.doi. org/10.1038/ngeo1481 (2012)
グリーンランド氷床の変動は1960年以降の衛星写真によってのみ議論が可能であったが、コペンハーゲン郊外の城から発見された1930年代の写真から、1930年以降の氷床の変動が明らかになった。海に接する氷河は1930年頃よりも2000年に入ってからのほうが後退が加速しているが、一方で陸の氷河は昔の方が後退が早かったらしい。

News in Focus
Fracking boom spurs environmental audit
'Fracking'(水圧を利用してガスを回収する技術)の流行が環境検査に拍車をかける

新たなガス田がFrackingの技術を利用して開発されるごとに健康被害に関する関心が高まる。

Anarchists attack science
アナーキストが科学を攻撃する

極端論者が原子力とナノテクノロジーの労働者を攻撃している。

News and Views
Evolutionary anthropology: Homo 'incendius'
進化人類学:ホモ・’火付け役’
Richard G. Roberts & Michael I. Bird
南アフリカにある100万年前の洞窟内の堆積層の特徴を顕微鏡と分光学の手法によって分析したところ、ヒトの祖先は従来考えられていたよりもずっと早くから火を使っていたことがわかった。

Letters
Hafnium isotope evidence for a transition in the dynamics of continental growth 3.2 Gyr ago
T. Næraa, A. Scherstén, M. T. Rosing, A. I. S. Kemp, J. E. Hoffmann, T. F. Kokfelt & M. J. Whitehouse
グリーンランド南西部で得られた岩石のジルコン中のウラニウム–鉛、ハフニウム、酸素同位体の分析から、35〜32億年前の変遷期以降は現在のプレートテクトニクスの状況になっていたことが分かった。現在のテクトニクスの状況は初期の地殻が形成されたときにはすでに稼働していたことになる?