Main contents


☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English

2012年5月27日日曜日

新着論文(CG, MG, PALAEO3)

☆Chemical Geology
Volumes 310–311, Pages 1-148 (5 June 2012)

Experimental quantification of the effect of Mg on calcite–aqueous fluid oxygen isotope fractionation
Vasileios Mavromatis, Mark Schmidt, Reiner Botz, Laia Comas-Bru, Eric H. Oelkers
Mg-カルサイトの沈殿実験。d18Oは温度だけでなく、Mgの濃度にも依存していることが分かった。換算式は以下の通り。
103 ln αMgcalcite–H2O= 18030/T−32.42+(6*108/T3–5.47*106/T2+16780/T-17.21)*CMg
化石のd18Oから温度を復元する際に注意する必要がある。
Mavromatis et al. (2012)を改変。Mg-Calciteのd18Oは温度だけでなくMgの濃度依存性がある。

Oxygen and carbon isotope fractionation of marine ostracod calcite from the eastern Mediterranean Sea
André Bornemann, Claudius M. Pirkenseer, Patrick De Deckker, Robert P. Speijer
貝形虫はカンブリア紀の地層からも産出するため、地質学における重要なアーカイブの1つである。エーゲ海から採取した貝形虫(ostracod)の殻のd18Oとd13Cを調査したところ、サイズ依存性はないが、種間で差異が確認された。d13Cの変化は食餌の違いを反映?
Bornemann et al. (2012)を改変。
先行研究の非海棲貝形虫のデータに比べ、本研究の海棲貝形虫のデータは低い方へずれている。


☆Marine Geology
Volumes 307–310, Pages 1-122 (15 April 2012)

High resolution climatic records of the past ~489 years from Central Asia as derived from benthic foraminiferal species, Asterorotalia trispinosa
Rajani Panchang, Rajiv Nigam
アンダマン海(ミャンマー南部)の堆積物から489年間の底性有孔虫の群集組成の変化と環境変動を復元。淡水に敏感な種に注目することで、湿潤-乾燥状態が分かる。ヨーロッパの小氷期に当たると思われるシグナルが捉えられた。
Panchang & Nigram, (2012)を改変。小氷期は比較的乾燥していた?


☆ Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology
Volumes 337–338, Pages 1-216 (15 June 2012)

High-precision U-series ages of transported coral blocks on Heron Reef (southern Great Barrier Reef) and storm activity during the past century
Kefu Yu, Jianxin Zhao, George Roff, Matthew Lybolt, Yuexing Feng, Tara Clark, Shu Li
津波石ならぬ嵐石?GBRにおいてリーフに打上ったのちに固着した110個のサンゴについてU/Thで年代測定。サンゴが集中する年代は大きな嵐があった時期とみなすことが出来る。100年間の嵐の履歴が分かるかも?
Yu et al. (2012)を改変。
年代測定によってサンゴが打ち上げられた年代が分かり、その頻度分布から嵐の頻度分布を復元することができる。

2012年5月25日金曜日

新着論文(Science#6084)

Science
VOL 336, ISSUE 6084, PAGES 949-1068 (25 May 2012)

Editor's Choice
GEOPHYSICS: Yellowstone’s Deep Roots
イエローストーンの深い根源
イエローストーンの間欠泉の下にはマントルのプリュームが存在するらしい。下部マントルが起源?

AROUND THE WORLD
British Team Cancels Geoengineering Experiment
イギリスのチームが地球工学の実験をキャンセル
成層圏に硫化物エアロゾルを注入することで地球を寒冷化させることができると考えられている。硫化物の代わりに150リットルの水を長さ数キロのパイプで上に持ち上げる実験がイギリスで行われようとしていたが、特許の関係で中止になった。

Supervolcano Drilling Plan Gets Green Light 
スーパー火山の掘削計画が青信号を得た
イタリア・ナポリからわずか数キロのところに位置するCampi Flegreiカルデラの掘削プロジェクトがスタートした。500m掘り、中にセンサーを設置する計画である。しかしながら掘削によって地震が起こる恐れや、噴火してしまう恐れがあるという科学コミュニティーや一般市民からの危惧の声が上がっている。

Dueling Over a Mongolian Dinosaur
モンゴルの恐竜を巡る決闘
Tarbosaurusのほぼ完璧な化石がオークションに出され、問題を巻き起こしている。というのも、この恐竜はモンゴルからしか産出しないはずで、モンゴルは脊椎動物の骨格を国外に出すことを禁じているからである。オークションの代表者はイギリス産だと主張しているが…とりあえず法の問題が解決するまで売却は成立しないようだ。

News & Views
ARCHAEOLOGY: Dams Along Sudanese Nile Threaten Ancient Sites
考古学:スーダン・ナイル川沿いのダムが古代遺跡を脅かしている
ナイル川に沿ったダム建設によって、未発掘の遺跡が破壊される恐れがある。

PLANETARY SCIENCE: Homegrown Organic Matter Found on Mars, But No Life
惑星科学:火星で見つかった自家製の有機物、しかし生命はいない
火星の隕石のかつて溶解していた物質の中に有機物が見つかった。生命が作ったものではないが、火星はかつて有機物を合成できた時代があったらしい。

ALTERNATIVE ENERGY: Military's Plan to Buy Biofuels Hits Roadblock in U.S. House
代替エネルギー:軍隊が生物燃料を買う計画がアメリカの議会の壁に当たっている
議会は防衛省が従来の化石燃料に代わる燃料を購入することを阻止した。より費用がかさむためらしい。


2012年5月24日木曜日

新着論文(Nature#7399)

Nature
Volume 485 Number 7399 pp415-540 (24 May 2012)

Editorial
A charter for geoengineering 
地球工学に対する不正認可
先週行われる予定だった、地球工学の一種である成層圏へのエアロゾル注入による寒冷化に先立って行われた、高度1kmへの水滴のばらまき実験も抗議運動によって中止せざるを得なかった。地球工学は様々な道が提唱されていながら、そのほとんどが実現されていない。一般市民の意見との擦り合わせや、インフォームドコンセントなど、実現には様々な障壁が存在する。

Research Highlights
Groundwater down, sea level up
地下水位は下がり、海水準は上がる
Nature Geosci. http://dx.doi.org/10.1038/ngeo1476 (2012)
海水準上昇の原因として考えられるのは「氷床融解による淡水流入量の増加」「温暖化による海水の熱膨張」「人間による陸水利用の変化」であるが、モデルシミュレーションから、1961-2003年にかけては3番目の陸水利用の変化が海水準の上昇の50%を説明することが示された。特に灌漑やダム建設などが原因らしい。

Viruses as power generators
発電機としてのウイルス
Nature Nanotechnol. http:// dx.doi.org/10.1038/ nnano.2012.69 (2012)
圧電力の原理を利用してウイルスの一種から発電を行うことができるらしい。液晶を灯すくらいの発電力があるのだという。このウイルスは環境には極めて無害であるため、環境に優しい発電法として期待が寄せられている。

Outpaced by climate change
気候変動に追いつけない

Proc. Natl Acad. Sci. USA http://dx.doi.org/10.1073/ pnas.1116791109 (2012)
ほ乳類は思っていたより気候変動について行けないかもしれない。493種のほ乳類に対し気候変動に対する生息地の変化をモデリングしたところ、9.2%の種は気候変動に追いつけない可能性が示唆された。霊長類が特に危機的だという。

Cooling effects of white roofs
白い屋根を使った寒冷化効果
Environ. Res. Lett. 7, 024004 (2012)
都市部の屋根や舗装道路を太陽光を反射しやすい白などの色にすることで、全球の気温に対して300年間で0.1℃ほどの寒冷効果があることが気候モデルを用いたシミュレーションから分かった。自然の気温の変動に比べればわずかであるが、節電やヒートアイランド緩和策としては低価格で有効な手段らしい。

News & Views
Flowering in the greenhouse
温室効果のなかで花開く

This Rutishauser, Reto Stöckli, John Harte & Lara Kueppers
温室効果によって温暖化した世界で植物がどのように対応するかはよく分からない。温暖化実験では必ずしも植物の応答を捉えきれないかもしれない。

Astrophysics: Startling superflares
宇宙物理学:驚くべきスーパーフレア
Bradley E. Schaefer
我々の太陽にきわめてよく似た恒星では、太陽でかつて見られた最大のフレアよりもエネルギーが100万倍以上高いフレアが発生することがある。このようなスーパーフレアを詳しく調べることが、ケプラー衛星によって初めて可能となった。Maehara et al. (2012)の解説記事。

Geochemistry: Portrait of Earth's coming of age
地球化学:成人式当時の地球の肖像
William M. White
25億年前にマグマの組成が突如変わり、この時期は地球の大気と気候が激変した時期と一致している。Keller & Schone (2012)の解説記事。

Letters
Superflares on solar-type stars
Hiroyuki Maehara, Takuya Shibayama, Shota Notsu, Yuta Notsu, Takashi Nagao, Satoshi Kusaba, Satoshi Honda, Daisaku Nogami & Kazunari Shibata
フレアは多くの恒星で観測されており、さらに大規模な「スーパーフレア」はさまざまな星で見られ、それらの星には高速自転しているものや、標準的な太陽型のものがある。120日にわたって観測された約83,000個の星の365例のフレアの観測から、特に高速自転する恒星でスーパーフレアがより多く発生していることが分かった。またホットジュピターの存在は必ずしもスーパーフレアの発現には必要ないかも?

Statistical geochemistry reveals disruption in secular lithospheric evolution about 2.5 Gyr ago
C. Brenhin Keller & Blair Schoene
約70,000個の大陸火成岩試料の地球化学的データベースに統計的標本抽出法を適用し、地球史における地球化学的進化の記録を復元した。約25億年前に広範にわたって地球化学的な不連続が生じていることが分かった。この時期に大気の酸化が起きていることから、地球深部の化学が大気の酸素濃度上昇に関係していたことを示唆している。

Warming experiments underpredict plant phenological responses to climate change
E. M. Wolkovich, B. I. Cook, J. M. Allen, T. M. Crimmins, J. L. Betancourt, S. E. Travers, S. Pau, J. Regetz, T. J. Davies, N. J. B. Kraft, T. R. Ault, K. Bolmgren, S. J. Mazer, G. J. McCabe, B. J. McGill, C. Parmesan, N. Salamin, M. D. Schwartz & E. E. Cleland
温暖化実験で将来の植物の応答に関して意味のある予測を得るには、花成および展葉の時期の前倒しなどの、気温変動および近年の温暖化に対する応答の実証的記録が実験に反映されていなければならない。しかしながら、温暖化実験では気候変動に対する植物の生物季節学的応答が過小に見積もられている可能性が示唆された。この結果は、モデルを用いて予測された、気候変動への生物応答を再評価すべきであることを示唆している。

2012年5月23日水曜日

新着論文(Geology)

Geology
Vol. 40 No. 6 (1 June 2012)

Convection of North Pacific deep water during the early Cenozoic
Ashley M. Hague, Deborah J. Thomas, Matthew Huber, Robert Korty, Stella C. Woodard, and L. Blake Jones
新生代初期(Cretaceous-Paleogene境界)における太平洋の深層水循環を復元するために、深海堆積物に残された魚の遺骸と岩砕性のケイ質鉱物に残されたεNdを測定(水塊ごとに違う値をとるため、水塊形成場の変化の指標になると考えられている)、また気候モデルを用いたシミュレーションも併せて行った。深層水循環は太平洋の北と南で発生し、新生代の寒冷期で強化され、温暖期(Eoceneの始め、52Maころ)に先立って弱化していたことが分かった。
Hague et al. (2012)を改変。
魚の遺骸の採取位置。太平洋の広い範囲にわたる試料を採取している。

Fluid-mineral reactions and trace metal mobilization in an exhumed natural CO2 reservoir, Green River, Utah
Max Wigley, Niko Kampman, Benoit Dubacq, and Mike Bickle
アメリカ・UtahにあるGreen Riverの赤砂岩は天然のCO2リザーバーとして注目されている。二酸化炭素の貯留技術にはこうした天然のCO2吸収帯にCO2を取り込ませ、数万年〜数百万年間安定に固定させておくことが重要だからである。鉱物学的な組成と流体の挙動について。

Growth of subtropical forests in Miocene Europe: The roles of carbon dioxide and Antarctic ice volume
N. Hamon, P. Sepulchre, Y. Donnadieu, A.-J. Henrot, L. François, J.-J. Jaeger, and G. Ramstein
Miocene中期は猿の進化に重要な時期であり、それはヨーロッパの森林が拡大したことに原因が求められることがある。気候モデルと植生モデルを組み合わせて、同時期における南極の氷床の量とヨーロッパの気候及び植生を再現。ヨーロッパにおいて森林が拡大するためには、南極氷床が少ない(東南極氷床は現在の25%程度)こととpCO2が現在よりも高いことが必要だった?

2012年5月20日日曜日

新着論文(Ngeo#May 2012)

Nature Geoscience
Volume 5 No 5 pp301-363 (May 2012)

Editorial
Climate change dialogues
気候変動の討論
’Human influence on the planet is undeniable. Making a switch from exploitation to maintenance of natural resources depends on a step change in communication, to convince the Earth's population of the necessity for a fundamental change of course.’
「地球への人類の影響はもはや否定できない。根本的な変化の必要性を地球上に住む人類に確信させるためにも、自然資源を「搾取すること」から「維持すること」への転換をすることはコミュニケーションの段階的な変化次第である。」

Research Highlights
CLIMATE CHANGE: Agricultural impacts 
気候変動:農業の影響
J.Clim. http://doi.org/htt (2012)
食料需要の増大から中国においては農作物の2期作が広がりつつある。それによって気候が変化している。1996-2005年にかけて調査をしたところ、2期作が行われている地域は1期作の地域に比べて地表面気温の高く、乾燥していることが分かった。特に中国北東部で顕著。

PALAEOCLIMATE: Southern extent 
古気候:南の範囲
Geophys. Res. Lett. http://doi.org/htw (2012)
西南極氷床のアイスコアを調べたところ、南極にも小氷期が訪れていたことが示唆された。南北両半球で同じく寒冷化が起きていることを考えると、小氷期の原因はAMOCの低下ではなく、太陽放射量の減少と火山噴火が頻繁に起きていたことであったことが示唆される。

News and Views
Glaciology: No ice lost in the Karakoram
氷河学:カラコラムの氷は融けていない
Graham Cogley
ヒマラヤ氷河が温暖化によってどう変化するかはまだよく分かっていない。カラコラムの氷河はほとんど融けておらず、従来考えていたよりも海水準上昇に寄与していないことが分かった。

Palaeoclimate: Hot spells on land
古気候:陸上が暑かった頃
Ross Secord
PETMを含めて、Paleocene-Eoceneには3回の温暖期があった。陸上の記録を詳細に調べてみると、これら3回の温度上昇は全て同一のメカニズム(大気への二酸化炭素、メタンなどの大量注入)によって起こっていたことが分かった。

Planetary science: Earth's ancient catastrophes
惑星科学:古代の地球の大災害
Tamara Goldin
地球形成初期には大量の小惑星が地球に衝突していたことが知られている(重爆撃期)が、地球は従来考えられていたよりも長期間小惑星の衝突に見舞われていたかもしれない。

Marine microbiology: Evolution on acid
海洋微生物学:酸の中の進化
Sinéad Collins
海洋酸性化に対して生物がどう適応するかを調べるために、実験室で進化を再現することが有効な方法である。石灰化を行う光合成植物プランクトンは進化によって適応できる可能性がある。

Sherry Rowland: Ozone and advocacy
シェリー・ローランド:オゾンと支援運動
Paul Crutzen
オゾン層の破壊を初めて発見し、世に広めたローランドの貢献について。

Letters
Response of the North Atlantic storm track to climate change shaped by ocean–atmosphere coupling
T. Woollings, J. M. Gregory, J. G. Pinto, M. Reyers & D. J. Brayshaw
温暖化によって熱帯低気圧の通り道がより北上する予測がなされているが、シミュレーションで北大西洋の熱帯低気圧の通り道の変化を予測したところ、北上かつ東寄りになる可能性が出てきた。ヨーロッパに大きな被害が出る可能性がある。モデルは不確実性が大きく、海洋循環場がうまく再現できると予測精度も向上することが期待される。

Atmospheric observations of Arctic Ocean methane emissions up to 82° north
E. A. Kort, S. C. Wofsy, B. C. Daube, M. Diao, J. W. Elkins, R. S. Gao, E. J. Hintsa, D. F. Hurst, R. Jimenez, F. L. Moore, J. R. Spackman & M. A. Zondlo
北極にはガスハイドレートや永久凍土として大量のメタンが蓄積されており、しかも北極海の海水はメタンに関して過飽和の状態にある。航空機を用いて北極のメタン濃度を計測したところ、海氷の割れ目や海氷量が変動しやすい地域でシベリアの大陸棚に匹敵するほどの大量のメタン放出が見つかった。一酸化炭素の量の変動は見られなかったため、燃焼由来のものではないと考えられる。

Slight mass gain of Karakoram glaciers in the early twenty-first century
Julie Gardelle, Etienne Berthier & Yves Arnaud
カラコラムの氷河は1999-2008年にかけて融解しておらず、むしろやや拡大していることが分かった。これは下流の河川流量が低下しているという観測事実とも整合的である。

Terrestrial carbon isotope excursions and biotic change during Palaeogene hyperthermals
Hemmo A. Abels, William C. Clyde, Philip D. Gingerich, Frederik J. Hilgen, Henry C. Fricke, Gabriel J. Bowen & Lucas J. Lourens
アメリカ・ワイオミング州のBigHorn盆地から得た古土壌の炭酸塩ノジュールからPaleoceneとEoceneにおける陸域のd13C記録を復元。PETMに似た温暖期であるETM2(Eocene Thermal Maximum 2)とH2 (Hyperthermal 2)はPETMと同様のメカニズムによって引き起こされた(大気への大量の炭素注入)ことを示唆している。また陸域の記録と海の記録は同程度の変化を記録しており、この変動が全球規模であったことを示唆している。PETMの時とは違い、陸域ほ乳類の種の激変には繋がらなかったようだ。

Abels et al. (2012)を改変。
PETMは詳細に観察すると、ETMとH2と呼ばれる2回の温暖化に分けることができる。炭素同位体の負の急激な変動はメタンハイドレートの崩壊を示唆しており、海と陸の両方にその記録が残っている。


Articles
Adaptive evolution of a key phytoplankton species to ocean acidification
Kai T. Lohbeck, Ulf Riebesell & Thorsten B. H. Reusch
円石藻の重要種(Emiliania huxleyi)をpHを低下させた(pCO2を上昇させた)海水化で飼育実験を行った(500世代に渡って無性生殖させ、進化を再現した)ところ、海洋酸性化に適応し、現在よりも石灰化量が増加することが示された。円石藻は海洋酸性化した海洋においても食物連鎖の礎を支えるかもしれない。

Pulses of carbon dioxide emissions from intracrustal faults following climatic warming
Niko Kampman, Neil M. Burnside, Zoe K. Shipton, Hazel J. Chapman, Joe A. Nicholl, Rob M. Ellam & Mike J. Bickle
炭素捕獲・貯留技術の発展には、地層中で二酸化炭素がどのように移動しているかを知ることが必要不可欠である。中でも関心を集めているのは、「二酸化炭素を注入したことで断層にどのような地球化学的な変化が起こるか、地震や断層の安定性にどう影響するか」などである。アメリカ・Utahにある天然の二酸化炭素貯蔵域を調べたところ、過去135kaを見ても変動が大きく、特に退氷期に大量のCO2が放出されていたことが分かった。氷床解放による地殻変動や地下水面の変化が原因で蓋が空いた?

2012年5月19日土曜日

新着論文(PNAS)

Proceedings of National Academy of Sciences
Vol. 109, No. 20 (15 May 2012)

Letters
Capturing CO2 from air
大気中の二酸化炭素を捕らえる
Roelof D. Schuiling
Schellnhuber et al. (2011, PNAS)の紹介記事。地球温暖化を食い止める最良の手段は大気中の二酸化炭素を科学技術によって固定してしまうことである。しかしそのコストは二酸化炭素1トンあたり1,000ドルという高額なものであることが指摘されている。しかし、かんらん岩の風化を利用した方法の場合、1トンあたり10ドル程度に抑えられるかもしれない。

Earth, Atmospheric, and Planetary Sciences
Nanodiamonds and wildfire evidence in the Usselo horizon postdate the Allerød-Younger Dryas boundary
Annelies van Hoesel, Wim Z. Hoek, Freek Braadbaart, Johannes van der Plicht, Gillian M. Pennock, and Martyn R. Drury
YDの原因に隕石衝突説が唱えられているが、その根拠の一つとなっているのはナノダイヤモンドの広い分布である。Allerod/YD境界に相当するオランダの地層を調べたところ、衝突があったとされる時期の直後に大規模な火災があったことが示唆される(多数の炭が検出された)。またナノダイヤモンドやガラス状の炭素も同層準から発見されたが、これらは衝突があったとされる時期よりも後に堆積したものであり、火災によって作られた可能性が高い。従って、隕石衝突説に否定的な証拠である。

Greater India Basin hypothesis and a two-stage Cenozoic collision between India and Asia
Douwe J. J. van Hinsbergen, Peter C. Lippert, Guillaume Dupont-Nivet, Nadine McQuarrie, Pavel V. Doubrovine, Wim Spakman, and Trond H. Torsvik
インド亜大陸がアジア大陸に衝突したタイミング、メカニズムについて。衝突時(5,000-2,500万年前)に大陸地殻、海洋地殻ともに引き延ばされ、そして沈み込んだ?

Environmental Sciences-Physical Sciences
Climate change impacts of US reactive nitrogen (Open Access)
Robert W. Pinder, Eric A. Davidson, Christine L. Goodale, Tara L. Greaver, Jeffrey D. Herrick, and Lingli Liu
化石燃料の燃焼や肥料の使用によって活性窒素、アンモニア、二酸化窒素などが放出され、窒素循環及び地球温暖化に影響する(温暖化する効果と寒冷化させる効果がある)。寒冷化効果は主に化石燃料燃焼の副産物であるが、短期的である。また農業による二酸化窒素放出は温暖化の効果がある。現在は寒冷化の効果と温暖化の効果が打ち消し合っている状態にあるが、燃焼による寒冷化の効果は年々減少傾向にある。従って、農業による二酸化窒素放出を抑える努力が必要である。

2012年5月18日金曜日

新着論文(Science#6083)

Science 
VOL 336, ISSUE 6083, PAGES 761-948 (18 May 2012)

Editor's Choice
Where Carbonate Comes From 
炭酸塩はどこから来たのかPLoS ONE 7, e35171 (2012).
Rhodolith(紅藻の一種)は浅い熱帯の海に広く分布する底性生物であるが、 特にブラジル沖のAbrolhos大陸棚に多く棲息している。その石灰化量を見積もったところ、GBRに匹敵するほど大量であることが分かってきた。

Reports
Aerobic Microbial Respiration in 86-Million-Year-Old Deep-Sea Red Clay
Hans Røy, Jens Kallmeyer, Rishi Ram Adhikari, Robert Pockalny, Bo Barker Jørgensen, and Steven D’Hondt
微生物群集は新しい有機物の供給がなくても、数百万年という年代を持つ深海堆積物中で生き延びることができる。North Pacific Gyreの深海堆積物においては、深さ30m(8,600万年前に相当する)においても微生物の呼吸が観察される。群集のサイズは有機物の酸化速度にコントロールされている?

新着論文(Nature#7398)

Nature
Volume 485 Number 7398 pp279-410 (17 May 2012)

Reseach Highlights
Less biodiversity, more allergies 
生物多様性が少ないほど、アレルギーになる
Proc. Natl Acad. Sci. USA http://dx.doi.org/10.1073/ pnas.1205624109 (2012)
ノルウェーの青年を対象にした実験をしたところ、皮膚上により細菌がいるほどアレルギーに対する耐性があることが分かった。アレルギーの原因の1つとして「自然に触れる機会が減ったこと、皮膚上に細菌が少ないこと」が考えられているらしいが、今回の実験はこの説を支持する結果となった。アレルギーがない人ほど、皮膚上の多様性に満ちた細菌が免疫に関するタンパク質を頻繁に生産しているらしい。

Planet-like asteroid 
惑星のような小惑星
Science 336, 684–686; 687–690; 690–694; 694–697; 697–700; 700–704 (2012)
小惑星の1つであるVestaは200万年後に形成されたが、衛星を持つ、クレーターを多数持つ、太陽系で2番目に大きい小惑星であることなどからより惑星に近い存在として注目を浴びている。南極に2つの巨大なクレーターがあるが、Vestaのコアが鉄に富むことが巨大な天体衝突後も原型を留めていたことを説明するかもしれない。

Exoplanet signals ring true 
系外惑星のシグナルが真実を告げている
Astrophys. J. 750, 112 (2012)
恒星の前を惑星が通過する時に、光を遮断することで、地球上から系外惑星について知ることができる。従来考えられていたよりも多く、ケプラー望遠鏡から観測される3分の1以上の恒星が多数の惑星を持つことが分かった。

Ancient Mayan wall calendar 
古代のマヤ文明の壁に刻まれた暦
Science 336, 714–717 (2012)
マヤ文明の遺跡の壁に刻まれた壁画は、当時のマヤ文明の人々が金星、月、火星、そして水星さえもその再来周期を正確に見積もっていたことを物語っている。

News in Focus
Malaria surge feared
マラリアの恐怖が巻き起こる
殺虫剤に耐性のある蚊の蔓延を防ぐためのWHOの取り組みについて

Comments
Transit of Venus: Last chance to see
金星の横断:見る最後の機会
6月に起きる金星の太陽横断は我々が系外惑星が恒星の前を横断する現象の良い鑑となる。

Books and Arts
Astronomy: On the track of the transit
天文学:横断の軌跡の上で

Review of Chasing Venus: The Race to Measure the Heavens The Day the World Discovered the Sun: An Extraordinary Story of Scientific Adventure and the Race to Track the Transit of Venus
Andrea Wulf & Mark Anderson

過去の金星横断時における2つの物語の紹介。1つはJames Cookによるタヒチ訪問。

Biology: Mammary chronicles
生物学:乳房の変遷史

Review of Breasts: A Natural and Unnatural History
Florence Williams

人類の母乳の歴史について。母乳には乳児の脳を大きくするための栄養分が豊富に含まれるが、同時に現代人の母乳には種々の毒物が含まれている。

Correspondence
Don’t let furore over neutrinos blur results
ニュートリノに対する曖昧な実験結果を出すことで騒動を招いてはならない

素粒子学者はセンセーショナルな実験結果を一刻も早く世に出す姿勢を改め、まずは実験結果を疑うことからはじめるべきだ。

Control electronic waste in India
インドにおける電子部品の廃棄物を制御する

インドにおいては法的規制がないことから電子部品の製造において出てくる毒性のある廃棄物が河川や海にそのまま捨てられている。新たな方の制定と汚染監視機関による監視が必要だ。

Preserve Brazil’s aquatic biodiversity
ブラジルの水生生物の多様性を守れ
ブラジルの水生生物の生物多様性は危機に瀕しているが、外来種を養殖することを認める法律が議会に通れば、さらなる危機にさらされるだろう。

Research Highlights
Planetary science: Martian sand blowing in the wind
惑星科学:火星の砂は風に舞っている
Jasper Kok
従来考えられていたよりも火星の表面はアクティブに変化し続けているかもしれない。高解像度の人工衛星の観測より。

Earth science: Geomagnetism under scrutiny
地球科学:検査中の地磁気
Bruce Buffett
従来考えられていたよりも、地球のコアの電気抵抗は小さいかもしれないことが計算より分かった。

Letters
Earth-like sand fluxes on Mars
N. T. Bridges, F. Ayoub, J-P. Avouac, S. Leprince, A. Lucas & S. Mattson
火星のNili Patera砂丘の変化を人工衛星で観測したところ、砂丘はほぼ定常状態にあり、予想以上に高いフラックスを持っていることが分かった。火星の表面は地球と似た地形変化の速度を持っていると考えられる。

Recent Northern Hemisphere tropical expansion primarily driven by black carbon and tropospheric ozone
Robert J. Allen, Steven C. Sherwood, Joel R. Norris & Charles S. Zender
ここ数十年、世界が温暖化するにつれて熱帯域の幅が広がっているが、特に北半球の熱帯域の拡大の駆動因はよくわかっておらず、この拡大はこれまで気候モデルで再現されていなかった。新しい素過程を組み込んだモデルでシミュレーションを行ってみると、温室効果ガス以上にブラックカーボンや対流圏オゾンがこの拡大に大きく寄与していることが分かった。
「ブラックカーボンと対流圏オゾンによる中緯度域大気の加熱→対流圏ジェットの極側への移動→熱帯気団と温帯気団の境界の移動→熱帯域の拡大」
というメカニズムらしい。

Thermal and electrical conductivity of iron at Earth’s core conditions
Monica Pozzo, Chris Davies, David Gubbins & Dario Alfè
地球磁場は固体の内核が成長する際の冷却と凝固によって放出される熱と、凝固の際に液体から押し出される軽元素による化学的対流によって駆動されるダイナモにより、液体鉄の核中で生成される。密度汎関数理論を用いて第一原理から核の条件下での液体鉄混合物のこれらの伝導率を計算したところ、外核・内核ともに現在使われている見積もりよりも2~3倍大きいことがわかった。核の最上部は熱的に成層構造をしており、核上部は逆向きの熱的浮力やCMB熱流束の水平方向の変動に抗して、化学的対流によって駆動されている?

2012年5月16日水曜日

新着論文(QSR#41-43)

Quaternary Science Reviews


☆Volume 41, Pages 1-146 (18 May 2012)
Deglacial changes of the southern margin of the southern westerly winds revealed by terrestrial records from SW Patagonia (52°S)
P.I. Moreno, R. Villa-Martínez, M.L. Cárdenas, E.A. Sagredo
パタゴニア南西部の泥炭地から堆積物を採取し、様々な間接指標を用いて最終退氷期における古環境を復元。特にACRのときの乾燥化(湖水面の低下)とその後のYDの時の湿潤化が顕著。原因としては南半球の偏西風の位置が変化したため?

Timing and structure of the Younger Dryas event in northern China
Zhi-Bang Ma, Hai Cheng, Ming Tan, R. Lawrence Edwards, Hong-Chun Li, Chen-Feng You, Wu-Hui Duan, Xu Wang, Megan J. Kelly
北京近郊で得られた鍾乳石から14-10.5kaの古環境を復元。YDは12.85kaから始まり、シフトするのに340yrを要し、YDからの脱却は11.56kaからだった。他の中国の鍾乳石の記録と整合的。
Ma et al. (2012)を改変。
U/Thと年縞のカウントから詳細な絶対年代が求まっている。復元記録は他の中国の鍾乳石のものと整合的であった。

☆Volume 42, Pages 1-86 (24 May 2012)
Multi-proxy analyses of a peat bog on Isla de los Estados, easternmost Tierra del Fuego: a unique record of the variable Southern Hemisphere Westerlies since the last deglaciation
Svante Björck, Mats Rundgren, Karl Ljung, Ingmar Unkel, Åsa Wallin
Tierra del Fuego(アルゼンチン・チリ南部)の泥炭地の堆積物から過去14kaの古環境を復元。花粉や胞子など様々な間接指標を使用して、偏西風の位置や強度を議論。ACRの時に偏西風が強化。12.2-10kaの間は偏西風は南下していた?


Volume 43,  Pages 1-102 (8 June 2012)
特になし

新着論文(BG)

Biogeosciences
20 March 2012 - 15 May 2012

Simulation of anthropogenic CO2 uptake in the CCSM3.1 ocean circulation-biogeochemical model: comparison with data-based estimates
S. Wang, J. K. Moore, F. W. Primeau, and S. Khatiwala
産業革命以降海洋が吸収した炭素の量を正確に見積もることは将来の炭素循環を予想する上でも非常に重要である。「ΔC*法」「TTD法」「GF法」の3つのデータに基づいた推定手法とGCMを用いた循環モデルを用いて炭素吸収量を推定し、比較を行った。全体としてはよく一致したが、ローカルな差異が最大で50%生じてしまった。モデルシミュレーションでは特に北太平洋と南大洋で海水混合と気体交換が弱く再現されてしまったため、少なく見積もってしまっている。全球スケールではGF法が最も良く再現できる。しかし将来予測に使用するには注意が必要。

Threshold of carbonate saturation state determined by CO2 control experiment
S. Yamamoto, H. Kayanne, M. Terai, A. Watanabe, K. Kato, A. Negishi, and K. Nozaki
海洋酸性化によってサンゴ礁の炭酸塩に関する不飽和が低下しつつあるが、飽和度が1を切るより先に炭酸塩の溶解が始まる可能性が指摘されているものの、野外の砂がどのように応用するかはよく分かっていない。そこで自然のサンゴ礁を模した環境を作り、人工的に酸性化した状態でアラゴナイトや高Mgカルサイトの溶解量を測定した。炭酸塩で出来たバルク堆積物はΩ = 3.7 - 3.8で溶解し始め、有孔虫や石灰藻はΩ = 3.0 - 3.2で溶解し始め、アラゴナイトでできたサンゴ骨格はΩ = 1.0で溶解し始めた。特に夜間の溶解が顕著(呼吸由来のCO2で飽和度が低下するためか)。

A hypothesis linking sub-optimal seawater pCO2 conditions for cnidarian-Symbiodinium symbioses with the exceedence of the interglacial threshold (>260 ppmv)
S. A. Wooldridge
氷期間氷期スケールのpCO2変動と珊瑚礁の共進化と併せて、褐虫藻とサンゴの共生関係の安定性を議論。温度上昇・pCO2増加・栄養塩の過剰は褐虫藻の増殖に負の影響を与える?

Calcification in the planktonic foraminifera Globigerina bulloides linked to phosphate concentrations in surface waters of the North Atlantic Ocean
D. Aldridge, C. J. Beer, and D. A. Purdie
浮遊性有孔虫(G. bulloides)の殻のサイズで規格化した重量と[CO32-]や水温、栄養塩濃度などを比較。[PO42-]が最も相関があり、[PO42-]が高いと殻の重量は低くなるらしい。[PO42-]は従来考えられていたより有孔虫の石灰化に重要な要素?

2012年5月15日火曜日

新着論文(PNAS, MM, MG)

☆Proceedings of the National Science of America
Volume 109, No 19 (8 May 2012)
Accumulation of impact markers in desert wetlands and implications for the Younger Dryas impact hypothesis
Jeffrey S. Pigati, Claudio Latorre, Jason A. Rech, Julio L. Betancourt, Katherine E. Martínez, and James R. Budahn
ヤンガードリアス(YD)の原因として、’隕石衝突説’があるが、筆者らが南西アメリカやアタカマ砂漠に分布する黒色マット層(YDの始まりに相当するもの)を詳しく調べたところ、’Impact Marker’として考えられている特徴(イリジウムの濃集、磁性鉱物の小球など)が確認されたが、これらはむしろ低湿地の特徴であり、隕石衝突説を否定するものである。

☆Marine Micropaleontology
Volumes 88–89, Pages 1-76 (May 2012)
Multiple early Eocene benthic foraminiferal assemblage and δ13C fluctuations at DSDP Site 401 (Bay of Biscay — NE Atlantic)
Simon D'haenens, André Bornemann, Peter Stassen, Robert P. Speijer
DSDP401(北東大西洋のBiscay湾)の底性有孔虫からEocene初期の温暖期(Hypsithermal)の原因を調査。d18O、d13Cがともに~0.75‰ほど低下し、12Cに富む(δ13Cが低い)温室効果ガスの注入とわずかな温度上昇があったことが示唆される。同時に底性有孔虫の種組成も短期的に変化し、原因としては表層からの有機物輸送の変化が考えられる。また陸源の物質輸送も同時期に増加しており、低層流の再編成があったことが示唆される。

☆Marine Geology
Volumes 303–306, Pages 1-192 (15 March 2012)
Carbonate saturation dynamics during the Paleocene–Eocene thermal maximum: Bathyal constraints from ODP sites 689 and 690 in the Weddell Sea (South Atlantic)
D. Clay Kelly, Tina M.J. Nielsen, Stephen A. Schellenberg
PETMにおける南大洋のリソクラインの深度や水平分布はよく分かっていない。南大洋の2本のコアから復元。ハイエタス多い。


新着論文(JGR, GBC)

☆Journal of Geophysical Research -Oceans-
8 May 2012 - 15 May 2012

Biological production in the NE Pacific and its influence on air-sea CO2 flux: Evidence from dissolved oxygen isotopes and O2/Ar
L. W. Juranek, P. D. Quay, R. A. Feely, D. Lockwood, D. M. Karl,5 and M. J. Church
北東太平洋において、3つの酸素同位体とO2/Ar法を用いて光合成生物活動による酸素生成率を推定。クロロフィル濃度が劇的に変化する「transition zone chlorophyll front (TZCF)」で酸素濃度が2-4倍に劇的に変化。この海域におけるCO2の収支において生物活動が非常に重要な寄与をしていると考えられる。

The equatorial Pacific cold tongue simulated by IPCC AR4 coupled GCMs: Upper ocean heat budget and feedback analysis
Yangxing Zheng, Jia-Lin Lin, and Toshiaki Shinoda
赤道東太平洋の冷舌がSSTに与える影響をIPCC AR4のときに用いられたモデルの結果から評価。観測よりもより西側に冷舌が広がることがモデルのバイアスとして確認された。水平・鉛直方向の熱輸送が過大に現れていることが原因と考えられる。またBjerknes feedbackもモデルの中では弱く再現されている。

☆Global Biogeochemical Cycles
20 March 2012 - 12 May 2012

Decrease of dissolved oxygen after the mid-1980s in the western North Pacific subtropical gyre along the 137°E repeat section
Takatani, Y., D. Sasano, T. Nakano, T. Midorikawa, and M. Ishii
北西大西洋の137º線の1967年から現在にかけてのDO(溶存酸素量)の測定値について。北太平洋亜熱帯水や北太平洋中層水で特に1980年中頃以降のDOの低下が確認された。温暖化による酸素溶解度の低下が最も大きな原因と考えられる。水塊形成場のDOの低下もかなり寄与していると考えられる。

13C constraints on ocean carbon cycle models
Sonnerup, R. E., and P. D. Quay
海水のδ13C分布をモデルで再現。北太平洋と南大洋における深層水の形成が大きく寄与。観測される14CやAOUの分布を再現するには、両地域の深層水形成をより増やすことが必要。南大洋を除いて、人為起源のδ13Cの分布は概ね再現できた。河川からの陸上炭素の流入、風の分布などが重要な因子。

新着論文(GRL)

Geophisical Research Letters
8 May 2012 - 15 May 2012

The thermal threshold of the Atlantic meridional overturning circulation and its control by wind stress forcing during glacial climate
A. Oka H. Hasumi and A. Abe-Ouchi
氷期においてAMOCはより弱化し、浅く沈み込んでいたと考えられているが、AMOCに熱的な閾値があり、それがモデルがうまくAMOCを再現できない原因になっている可能性があることが分かった。ある程度北太平洋を寒冷化させると沈み込みは強化されるが、大きく寒冷化させると海氷の形成が沈み込みを弱化させるらしい。Natureに解説記事あり。

Reactive greenhouse gas scenarios: Systematic exploration of uncertainties and the role of atmospheric chemistry
Michael J. Prather, Christopher D. Holmes, and Juno Hsu
温室効果ガスの大気化学的な振る舞いを理解することは地球の温室効果を考える上で重要である。人為起源の温室効果ガスの寄与を見積もるための方法を提示。

Past and future contribution of global groundwater depletion to sea-level rise
Yoshihide Wada, Ludovicus P. H. van Beek, Frederiek C. Sperna Weiland, Benjamin F. Chao, Yun-Hao Wu, and Marc F. P. Bierkens
近年地下水の量が低下しているが、一つの原因は人間活動である(特にダム建設の影響)。地下水の量の変化が海水準に与える影響をモデルから推定。2050年までに30mmほどの寄与が考えられる。

Drivers of the projected changes to the Pacific Ocean equatorial circulation
A. Sen Gupta, A. Ganachaud, S. McGregor, J. N. Brown, and L. Muir
CMIP3の結果はNew Guinea Coastal UndercurrentとEquatorial Undercurrentの強化を示唆している。一方でMindanao currentとthe Indonesian Throughflowは弱化している。一つの原因は南大洋の風応力のcurlの変化にあると考えられる。

Response of the Atlantic Ocean circulation to Greenland Ice Sheet melting in a strongly-eddying ocean model
Weijer, W., M. E. Maltrud, M. W. Hecht, H. A. Dijkstra, and M. A. Kliphuis
北太平洋への淡水流入がAMOCに与える影響の不確実性は気候システムの中でも最も重要なカギの一つである。グリーンランド氷床からの融け水とAMOCの安定性をモデルから評価。より強い循環場を再現した海洋循環モデルだと、特に冬期のAMOCの弱化がよりゆるやかに・長期になるらしい。

Forcing, feedbacks and climate sensitivity in CMIP5 coupled atmosphere-ocean climate models
Andrews, T., J. M. Gregory, M. J. Webb, and K. E. Taylor
CMIP5の結果から、二酸化炭素濃度が4倍になったときの気候感度をAOGCMから推定。2.1-4.7℃の温度上昇となることが推定される。気候感度のばらつきは雲のフィードバックがモデル間で異なることが原因。すぐに平衡に達した状態を実現するような実験よりも、Transientに平衡状態を実現するような実験の方が重要だと思われる。


2012年5月12日土曜日

アイスコア中の気泡から最終退氷期の炭素循環を解明する

Carbon Isotope Constraints on the Deglacial CO2 Rise from Ice Cores
Jochen Schmitt, Robert Schneider, Joachim Elsig, Daiana Leuenberger, Anna Lourantou, Jérôme Chappellaz, Peter Köhler,Fortunat Joos, Thomas F. Stocker, Markus Leuenberger, and Hubertus Fischer
Science 336, 633-760 (2012)

とその解説記事
CLIMATE CHANGE:The Ice Age Carbon Puzzle
Edward Brook
より。

新着論文(Science #6082)

Science
VOL 336, ISSUE 6082, PAGES 633-760 (11 May 2012)

Editor's Choice
HYDROLOGY:Groundwater Maps for Africa 
水文学:アフリカの地下水マップ
Environ. Res. Lett. 7, 024009 (2012).
アフリカの地下水利用は今後増えることが予想されるが、肝心の地下水資源の知識は乏しいと言う問題がある。新たに作成された地図によると、地下水は今のところ地表の水資源をはるかに超える量が存在することが分かったものの、アフリカ大陸内部でも不均質に分布している。今後の質管理と枯渇に注意する必要がある。

CLIMATE SCIENCE:The Climate of the Apes
気候科学:猿の気候
Geology 10.1130/G32990.1 (2012).
Miocene中期(〜1500万年前)は猿の進化を考える上で非常に重要な時代である。従来この次期に概して温暖であったことが猿がユーラシアへ広がり、多様性が増したことの原因だと考えられてきた。しかしこの時代における化石証拠は少ない。気温上昇が熱帯雨林の拡大に貢献し、猿の生息域拡大に貢献した可能性があることが気候モデルシミュレーションから示された。

News & Analysis
ASTRONOMY:Venus's Rare Sun Crossing May Aid Search for Exoplanets
天文学:稀にしか起きない火星の太陽横断現象が系外惑星の研究の一助となるかもしれない
今世紀最後のイベント、火星の太陽横断に天文学者の注目が集まっている。

News Focus
PALEOBOTANY:Primeval Land Rises From the Ashes
古植物学:古代の土地が灰の中から出てくる
中国西部で発見された、火山灰の中に埋もれたペルム紀の植物化石群’vegetational Pompeii’が過去の気候と生態系に光を当てる。

INVASIVE SPECIES:Researchers Set Course To Blockade Ballast Invaders
浸入生物種:バラストに侵入する生物を食い止める研究計画が始まった
科学者は船のバラストに侵入する生物を防ぐ装置の開発に取り組んでいる。

INVASIVE SPECIES:A Foul Problem
浸入生物種:詰まるという問題
バラストに侵入する生物以外にも船の表面に付着する生物(イガイ、フジツボ、藻類など)の脅威もまた問題である。

Letters
Conservation Concerns in the Deep
深海の保全への関心

チャレンジャー海溝と同程度の深さに棲息するヨコエビの胃の内容物から牛の遺伝子が検出された。これは海上を航行する船から捨てられた食料の一部であると推定される。今後の気候変動による深層水の温度、酸素濃度、pHの変化も大きな影響を与えると考えられるが、深海の生態系の謎を明らかにするとともに、保全もより一層考える必要がある。

Perspectives
GEOPHYSICS:Understanding Earthquakes
地球物理学:地震を理解する
洗練された物理モデルでサンアンドレアス断層の一部の地域における地震を再現できるらしい。

CLIMATE CHANGE:The Ice Age Carbon Puzzle
気候科学:氷期の炭素のパズル
Edward Brook
アイスコア中の二酸化炭素のd13Cが最終退氷期の炭素循環を考える上で助けになる。

Reports
Under the Hood of the Earthquake Machine: Toward Predictive Modeling of the Seismic Cycle
Sylvain Barbot, Nadia Lapusta, and Jean-Philippe Avouac
コンピュータを用いたシミュレーションで、サンアンドレアス断層の一部で発生する地震の長期的な再来を再現。

Carbon Isotope Constraints on the Deglacial CO2 Rise from Ice Cores
Jochen Schmitt, Robert Schneider, Joachim Elsig, Daiana Leuenberger, Anna Lourantou, Jérôme Chappellaz, Peter Köhler,Fortunat Joos, Thomas F. Stocker, Markus Leuenberger, and Hubertus Fischer
3本の南極アイスコアから過去24kaの二酸化炭素中のd13Cを復元。最終退氷期のd13Cの変化は南大洋における深層水湧昇の強化によって説明可能。またHoloceneのd13Cのわずかな変動は陸上の炭素リザーバーの変化、海洋循環の変化、海水温によって説明される。またLGMにおいては炭素循環は平衡に達していて、それ以前に深層への炭素の移動が完了していたことが示唆される。

2012年5月10日木曜日

新着論文(Ncom)

Nature Communications

☆01 May 2012
Two centuries of limited variability in subtropical north Atlantic thermocline ventilation
Nathalie F. Goodkin, Ellen R. M. Druffel, Konrad A. Hughen and Scott C. Doney
[PDF]
バミューダに棲息するサンゴを用いて1780-1940年にかけてのΔ14Cを測定。過去200年間、亜赤道大西洋の水塊は安定して形成されており、人為起源のCO2は安定して海水に吸収されているらしい。

☆08 May 2012
Potential regime shift in decreased sea ice production after the Mertz Glacier calving
T. Tamura, G.D. Williams, A.D. Fraser and K.I. Ohshima
[PDF]
南極周辺における海氷の形成は濃い塩分を形成するため、AABWの形成に非常に重要である。George V Land polynya systemにおける海氷形成を人工衛星から観測したところ、2000年から2009年にかけて、海氷やAABWの形成速度が低下していることが分かった。

新着論文(Nature #7397)

Nature
Volume 485 Number 7397 pp147-272 (10 May 2012)

Research Highlights
A check on speeding glaciers
氷河融解加速の停止
グリーンランド氷床は従来考えられていたほど加速的に融解しておらず、むしろ安定していることが近年の観測から分かった。

North Sea starved of oxygen
酸素が枯渇した北極海
1990年以降、温暖化による表層水の成層化とブルーミングを起こした植物プランクトンの腐食に酸素が消費されることで、北極海の酸素が少なくなっている。

Features
Climate forecasting: A break in the clouds
気候予測:雲の隙間
モデラーを悩ませる、雲とエアロゾル、そして気候への影響について。

Comments
Nuclear proliferation: Time to bury plutonium
核の蔓延:プルトニウムを埋めるとき
プルトニウムを再利用するには多額の出費と危険を伴う。

News & Views
Climate science: A grip on ice-age ocean circulation
気候科学:氷期の海洋循環の制約
Jochem Marotzke
最終氷期の海洋循環をモデルで何故再現できないのか?

Articles
Twenty-first-century warming of a large Antarctic ice-shelf cavity by a redirected coastal current
Hartmut H. Hellmer, Frank Kauker, Ralph Timmermann, Jürgen Determann & Jamie Rae
Filchner–Ronneの棚氷が近年加速的に融解しており、その原因は暖水の流路の変化にあるらしい。この棚氷は南極全体の氷の収支の80%を占めており、将来の南極氷床の安定性と海水準上昇の予測に重要である。

2012年5月9日水曜日

新着論文(Nature #7396)

Nature
Volume 485 Number 7396 pp5-142 (3 May 2012)

Research Highlights
Wetter, drier with warming
温暖化とともにより湿潤に、より乾燥に
J. Geophys. Res. http://dx.doi. org/10.1029/2012JD017499 (2012)
将来の予測シミュレーションから、温暖化した世界では現在湿潤な地域はより湿潤に、乾燥した地域はより乾燥することが分かった。しかしながら同じモデルで1979-2008にかけての降水量と温度変化を比較したところ、明瞭な繋がりは確認されなかったという。

Features
Peopling the planet
地球を人間化する
これまでの古典的な考え方では、「人類は5万年前にアフリカを出発し、アジアへ広がった。途中ヨーロッパにも分岐し、先住のネアンデルタール人を滅ぼした。さらにその後ベーリング海を渡り、アメリカ大陸に至った」と考えられているが、ここ5年程度の研究から様々な矛盾点が浮き彫りになってきた。10万年前にアラビア半島で人類が居住していた証拠が見つかるなど、面白くなってきた。

Human migrations: Eastern odyssey
人類移動:東への放浪の旅

人類のアジアへの広がりについての我々の従来の考え方が議論の的になっている。

Archaeology: Date with history
考古学:歴史に基づいた年代
新しい放射性炭素年代測定結果がヨーロッパに人類が到達した時代を刷新することになった。

Ancient migration: Coming to America
古代の人類移動:アメリカにたどり着く
Clovisを狩る人々がアメリカに到達した初めての人類だったという従来の考えは間違いだった?

Comment
Evolution: What makes a modern human
進化:何が現代人を作るのか
我々は古代人(ネアンデルタール人など)の遺伝子を引き継いでいる。何故遺伝子の違いではなく類似点が重要なのか?

Books and Arts
How a world came to be
どのように世界は形成されたのか?固体地球と生命の相互進化について<書籍の紹介>
 The Story of Earth: The First 4.5 Billion Years, From Stardust to Living Planet
  Robert M. Hazen, Viking Books: 2012. 320 pp. / $27.95, £17.50 / ISBN: 9780670023554

News & Views
Solar System: Focus on ancient bombardment
太陽系:古代の爆撃に着目する
太陽系形成後4億5千万年後に開始したと考えられている「重爆撃期(頻繁な小惑星衝突)」は従来考えられていたより長く起こっていた?

Earth science: Lower mantle may be rich in silica
地球科学:下部マントルはシリカに富んでいたかもしれない
従来の考えでは下部マントルがシリカが少ないと考えられていたが、上部マントルよりもシリカに富んでいる可能性がある。

LETTERS
Impact spherules as a record of an ancient heavy bombardment of Earth
B. C. Johnson & H. J. Melosh
全球に渡ってスフェリュール層を形成した小惑星の大きさと衝突時の速度を推定。また年代測定から35億年前に頻繁に小惑星衝突が起きていたことを示唆している。

An Archaean heavy bombardment from a destabilized extension of the asteroid belt
William F. Bottke, David Vokrouhlický, David Minton, David Nesvorný, Alessandro Morbidelli, Ramon Brasser, Bruce Simonson & Harold F. Levison
後期重爆撃(LHB)は37-38億年前に月のオリエンタル盆地の形成を最後に終結したと考えられている。しかし地球上にはそれよりも後に形成された小惑星衝突の証拠が多数残っている。LHBが従来考えられていたよりも長期間継続しており、さらにその元となった小惑星はEベルトと呼ばれる、現在はほとんど消失した小惑星帯から飛来したものと考えられる。37-17億年前にもチチュルブクレーターに相当する規模の小惑星衝突が起きていた可能性がある。

A perovskitic lower mantle inferred from high-pressure, high-temperature sound velocity data
Motohiko Murakami, Yasuo Ohishi, Naohisa Hirao & Kei Hirose
ブリルアン散乱分光測定を用いて、下部マントル深部の圧力温度条件下におけるケイ酸塩ペロブスカイトとフェロペリクレースのS波速度を決定した。上部マントルと比較して下部マントルはケイ素に富んでおり、コンドライト的地球モデルと一致することを示唆している。マントルは層状に対流している?

2012年5月7日月曜日

海洋酸性化とサンゴ礁生態系への影響

Coral Reefs and Ocean Acidification
Kleypas, J. A. & Yates, K. K. (2009)
Oceanography 22 (4) pp. 108-117

海洋酸性化がサンゴ礁の生態系に与える影響をレビューした論文をまとめつつ、聞知っていることを追加してまとめてみたい。

2012年5月6日日曜日

新着論文(JGR, CP)

Journal of Geophysical Research - Oceans-
30 April - 6 May 2012

Seasonal coupling and de-coupling of net calcification rates from coral reef metabolism and carbonate chemistry at Ningaloo Reef, Western Australia
Falter, J. L., R. J. Lowe, M. J. Atkinson, and P. Cuet
北西オーストラリアのNingaroo Reefにおいて総生産速度、石灰化、栄養塩の摂取を測定。季節間の水温変動が1℃と小さく、総生産速度、石灰化、栄養塩はそれほど顕著には変化しない。日周期では光量というよりはむしろpH(アラゴナイトの不飽和度)と栄養塩が石灰化を律速している。

Antarctic icebergs distributions, 2002–2010
Tournadre, J., F. Girard-Ardhuin, and B. Legrésy
これまで観測の対象とされていなかった、南極周辺の小規模(100-2800m)の氷山を高解像度の高度計で人工衛星から観測(2002-2010年)。かなりの量の淡水が南大洋に供給されている模様。巨大氷山とともに流出するものもあれば、小規模の氷山のみが流出する地域もあり、地域的・時間的な変動が大きい。


Climate of the Past
30 April - 6 May 2012

Precipitation variability in the winter rainfall zone of South Africa during the last 1400 yr linked to the austral westerlies
J. C. Stager, P. A. Mayewski, J. White, B. M. Chase, F. H. Neumann, M. E. Meadows, C. D. King, and D. A. Dixon
温暖化した世界では偏西風が極側に移動することが予測されているが、南半球の古気候記録はニュージーランドや南米などに限定されており、評価の妨げとなっている。堆積物中の珪藻の変化から過去1400年間の南アフリカの降水量を復元。湿潤期は偏西風が赤道側に移動した時期に対応し、フンボルト海流の変化を通して南極周辺の子午面循環に影響したと考えられる。しかしながら、ニュージーランドや南米の記録との食い違いも明らかに見られ、南半球全体の記録としてみなすには難しい。

新着論文(GRL)

Geophysical Research Letters
30 April - 6 May 2012

Recent weakening of northern East Asian summer monsoon: A possible response to global warming
Zhu, C., B. Wang, W. Qian, and B. Zhang
東アジアの夏モンスーンをシミュレーション。近年のGHGの増加がバイカル湖周辺の気温を上昇させ、特に1970年以降の東アジアモンスーンの弱化を招いている?また、GHGのforcingなしでは温暖化のトレンドは見られないらしい。

Late Miocene upward and outward growth of eastern Tibet and decreasing monsoon rainfall over the northwestern Indian subcontinent since ∼10 Ma
Molnar, P., and B. Rajagopalan
インド亜大陸の衝突とそれに伴うチベット高原東部の隆起によって北西インドの気候が乾燥化した?

Climate models produce skillful predictions of Indian summer monsoon rainfall
DelSole, T., and J. Shukla
AOGCMでインドモンスーンの降水をうまく再現できた。カギになったのは徐々に上昇する海水温の扱いらしい。

The role of summer surface wind anomalies in the summer Arctic sea ice extent in 2010 and 2011
Ogi, M., and J. M. Wallace
2007年夏には北極海における過去最低の海氷の量が観測されたが、原因は夏の高気圧性の風の強化らしい。

Greenland ice core evidence for spatial and temporal variability of the Atlantic Multidecadal Oscillation
Chylek, P., C. Folland, L. Frankcombe, H. Dijkstra, G. Lesins, and M. Dubey
グリーンランドとカナダのアイスコアの660年分のd18O記録を周期解析したところ、AMOの周期と同じ周期(〜20年)が確認された。例外的にLIAとMWPにはそれぞれ20年、43年(11.5年も?)の周期が確認されたとのこと。

A 21st century shift in the relationship between ENSO SST and warm water volume anomalies
McPhaden, M. J.
1980年から2010年にかけての赤道太平洋のSSTと表層水の熱容量(暖水域の体積)との間の関係が、21世紀に入ってから変化しているらしい。赤道太平洋中部のENSOの強化が原因?

Improving tsunami warning using commercial ships
Foster, J. H., B. A. Brooks, D. Wang, G. S. Carter, and M. A. Merrifield
2010年のチリ沖地震によって発生した津波を船舶のGPSで捉えることができた。将来リアルタイムに船舶(商船含む)のGPSを衛星などで中継し、津波の伝播をモニタリングできるようになるかも。スマトラ沖地震の津波も1時間以内に検出できた可能性がある。

Did we see the 2011 summer heat wave coming?
Luo, L., and Y. Zhang
2011年には熱波がアメリカの中部を襲ったが、現在の気候予測モデルで熱波の到来をどの程度予測できるかについて。NOAAのNCEP(National Centers for Environmental Prediction)のモデル(CFSv2)を使うと夏が近づくにつれて予測精度は向上するらしい。


2012年5月5日土曜日

新着論文(Science #6081)

Science
VOL 336, ISSUE 6081, PAGES 509-632 (4 May 2012)

Editor's Choice
Fluctuating Forests
変動する森林
Ecology 93, 219 (2012).
現在気候が急速に変化しており、生態系がそれに合わせて変化しているが、将来を予測するために過去の復元が役に立つかもしれない。Booth et al. (2012)は中世温暖期(AD960-1410)における五大湖周辺の植物相を花粉から復元した。特に干ばつに敏感なブナ類は急激な乾燥化と山火事のときに存在度が激減した。現在湿潤な環境でも、気候の振幅が大きくなる温暖化した環境下では生態系が激変する可能性がある。

Perspectives
Regional Sea-Level Projection
地域的な海水準上昇の予測
Josh K. Willis and John A. Church
将来の適応・二酸化炭素削減戦略を考える上でも、将来の海水準変動予測をより確かにすることが重要である。

Willis & Church (2012)を改変。
氷床崩壊の結果、淡水流入や重力場の変化に起因して海水準が上昇するが、南極・グリーンランド氷床からの距離などによって地域ごとに様々な海水準変動が予測される。

Modeling Ice-Sheet Flow
氷床の流れをモデリングする
Richard B. Alley and Ian Joughin
Full-stress flowモデルと呼ばれる氷床モデルが将来の海水準変動予測を向上させるのだとか。

Impacts of Biodiversity Loss
生物多様性を失うことの影響
Bradley Cardinale
生態系の生産性を維持するためには、どれほどの多様性が必要なのだろうか?

Reports
Ancient Impact and Aqueous Processes at Endeavour Crater, Mars
S. W. Squyres, R. E. Arvidson, J. F. Bell III, F. Calef III, B. C. Clark, B. A. Cohen, L. A. Crumpler, P. A. de Souza Jr.,W. H. Farrand, R. Gellert, J. Grant, K. E. Herkenhoff, J. A. Hurowitz, J. R. Johnson, B. L. Jolliff, A. H. Knoll, R. Li,S. M. McLennan, D. W. Ming, D. W. Mittlefehldt, T. J. Parker, G. Paulsen, M. S. Rice, S. W. Ruff, C. Schröder, A. S. Yen,and K. Zacny
Opportunity探査機による火星のEndevoir隕石孔の調査から、クレーターの縁の堆積岩をジプサムに富んだヴェインが貫入しており、ジプサムは低温の液体から沈殿した。生命存在の可能性を示唆する低温の水が存在した?

21st-Century Evolution of Greenland Outlet Glacier Velocities
T. Moon, I. Joughin, B. Smith, and I. Howat
10年間に渡る人工衛星や地上観測のデータから、グリーンランド氷床の氷河口における氷河の流出速度を求めたところ、空間的・時間的な変動が非常に大きいことが分かった。予測されているほど融けない??

新着論文(Science #6080)

Science
VOL 336, ISSUE 6080, PAGES 381-508 (27 April 2012)

Editor's Choice
The Way They Were
彼らの本来の姿
Eoceneには北極のArctic Circle以北にも針葉樹が広がっていたと考えられているが、その針葉樹が現在でいう東アジアの植物相に似ているか、或いは北西太平洋の植物相に似ているかが不確かだった。化石の木のδ13Cの分析から、夏の降水量が冬のそれに比べて三倍もあり、北西太平洋寄りの植物相であったことが示唆される。

News & Analysis
The Greenhouse Is Making the Water-Poor Even Poorer
温室効果は水が乏しいところをより乏しくする
Durack et al. の解説記事。海水の塩分の観測から、温暖化した状態下ではもともと降水が多いところはより降水が多くなり、乏しいところはより乏しくなることが示された。

Perspectives
A Hard Life for Cyanobacteria
シアノバクテリアにとって辛い生活
Couradeau et al. の解説記事。

Reports
Ocean Salinities Reveal Strong Global Water Cycle Intensification During 1950 to 2000
Paul J. Durack, Susan E. Wijffels, and Richard J. Matear
50年間の海洋の塩分観測から、温暖化によって水循環が強化されていることが示された。強化の速度は従来のモデルの予測結果の2倍であり、将来の2〜3℃の温暖化によって16-24%水循環が強化されることを示唆している。

An Early-Branching Microbialite Cyanobacterium Forms Intracellular Carbonates
Estelle Couradeau, Karim Benzerara, Emmanuelle Gérard, David Moreira, Sylvain Bernard, Gordon E. Brown Jr.,and Purificación López-García
メキシコのAlchichica湖から採取されたシアノバクテリアが、細胞’内’で石灰化を行っていることが発見された。約270nmの直径を持つCa, Mg, Ba, Sr-CO3でできた炭酸塩鉱物らしい。従来石灰化は細胞外で起こっているとされていた。