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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English) おまけTwilog

2012年3月10日土曜日

新着論文(Science)

Science
VOL 335, ISSUE 6073, PAGES 1137-1268 (9 March 2012)

EDITORIAL:
Worldwide Lessons from 11 March
Koji Omi
3.11の津波から学んだこと。1995年の阪神淡路大震災時には建物の崩壊によって多くの人々が犠牲になったが、そこから学んだ耐震技術の甲斐あって、3.11のときには建物の崩壊による被害が少なかった。その代わりに津波が多くの命を奪ったが、この教訓を将来へ生かさなければならない。またそれは原発事故についても同様で、将来の工業に生かさなければならない。原発に対する世界の人々の考え方が変わりつつあるが、今後のエネルギー需要の増加を考えても、重要な原子力発電のより安全な設計・運用などに対して理性的に考える必要がある。

Editors' Choice
CLIMATE SCIENCE
Seasonal Subtleties
Geophys. Res. Lett. 39, L04705 (2012)
地球温暖化は確実に進行している。しかし温暖化は冬期に顕著で、年平均だけで見るとある年には温暖化が停止しているように見えたりと、不信感を生むきっかけともなっている。観測もシミュレーションもすべて温暖化の傾向を確実に示している。

TOXICOLOGY
What’s Fed to the Fish
Environ. Sci. Technol. 46, 10.1021/ es2043728 (2012).
汚染物質の魚類への蓄積について。直接魚を採って時間変動を負うのは時間がかかるので、モデルシミュレーションを用いるのが一般的らしい。これまでモデル間の比較はあまり行われてこなかったが、ニジマスとファットヘッドミノーに対して出されたこれまでの結果をまとめたところ、モデルが違ってもよく再現できていることが分かった。

News & Analysis
ENERGY RESEARCH
Report on Future of Fusion Research Says U.S. Should Hedge Its Bets
Daniel Clery
アメリカの今後の核融合研究について。50年間研究はなされているものの、未だ’ignition(太陽のように自立的に核融合反応が進行し、発電用のエネルギーを取り出せるようになること)’には至っていない。

News Focus
MARINE BIOLOGY
Light in the Deep
Elizabeth Pennisi
イカや魚類をはじめとする海洋生物の視覚の不思議さについて。

JAPAN DISASTER
One Year After the Devastation, Tohoku Designs Its Renewal
Dennis Normile
日本の地震と津波を受けて、次の災害に備えて、専門家が再建計画を模索している。

JAPAN DISASTER
Radioactive Limbo
Dennis Normile
福島第一原発の周辺は人の住めない砂漠のような土地になるだろう。

JAPAN DISASTER
Nuclear Ambivalence No More?
Dennis Normile
福島第一原発の事故を受けて、世界の工業の将来が変わろうとしている。

Letters
Asian Medicine: Exploitation of Wildlife
Xiuxiang Meng, Deguang Liu, Jinchao Feng, and Zhibin Meng
麝香は高価な漢方薬の一種であるが、その原料となる鹿の保全との関わりについて。

Asian Medicine: Exploitation of Plants
Shixiong Cao and Qi Feng
中国産の薬草の需要の増加と植物の保全との関わりについて。

Perspectives
GEOCHEMISTRY
Moonstruck Magnetism
Gareth S. Collins
月の磁気異常は過去の巨大隕石衝突の名残?Wieczorek et al. の解説記事。

ECOLOGY
The Human Factor
Lydie Dupont
3000年前のアフリカの熱帯雨林の危機は気候由来ではなかった?Bayon et al. の解説記事。

Reviews
Nuclear Fuel in a Reactor Accident
Peter C. Burns, Rodney C. Ewing, and Alexandra Navrotsky
原発事故の際、原子炉の中でどのような反応が進行しているか、またそれを予測するためのモデルに存在する問題点は何か、に関するレビュー論文。

Reports
An Impactor Origin for Lunar Magnetic Anomalies
Mark A. Wieczorek, Benjamin P. Weiss, and Sarah T. Stewart
月の南極に存在する最大・最古のクレーターであるAitken盆地における磁気異常は、過去にコア近くで磁性を帯びた岩石が衝突したことでもたらされた可能性がある。イジェクタ(衝突後の放出物)が周囲に分布していることからもこの説は支持される。

Intensifying Weathering and Land Use in Iron Age Central Africa
Germain Bayon, Bernard Dennielou, Joël Etoubleau, Emmanuel Ponzevera, Samuel Toucanne, and Sylvain Bermell
堆積物コアから3000年前のアフリカ熱帯雨林の風化速度を調べたところ、気候変動だけでは説明できない風化の促進が見られた。人類の移住と森林破壊が風化を促進させたと考えられる。

A Bruce Effect in Wild Geladas
Eila K. Roberts, Amy Lu, Thore J. Bergman, and Jacinta C. Beehner
新たなオスの登場とともにメスが妊娠を中絶することを’Bruce effect’と呼ぶが、元々はげっ歯類の飼育実験から分かったことで、野外調査でそのような振る舞いが生物界で起こっているかは分かっていなかった。長期間にわたる観察から、ジェラダヒヒのメスは妊娠中にボスが変わると妊娠を中絶することが分かった。出産後の子殺しのリスク、それに伴う新しいボスの子を妊娠し、出産するまでの時間のロスを回避するための適応の一種であると考えられる。
今回は非常に盛りだくさん。3.11から1年という契機だけ合ってNature, Scienceともに地震・津波・原発事故に対する記事が多い。
原子炉内の化学反応についてのReviewはそのうち解説記事を書きたい。