Main contents


☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English

2012年3月31日土曜日

新着論文(NCC#Apr2012)

Nature Climate Change
Vol. 2, Issue 4 (April 2012)

Research Highlights
Open water and cloudy skies
北極海の海氷が近年減少傾向にあるが、モデルシミュレーションは雲のフィードバックを考慮できておらず、減少速度を過小評価している可能性がある。改善するには北極海の雲の形成プロセスをよりよく理解する必要がある。

Moral dimension
気候変動問題は個人の道徳観と関係がある?哲学者の関心が集まっているが、証拠を提示することは難しそう。

Climate and health
気候変動は人の健康に直接的に提供する場合と間接的に影響する場合がある。後者は疫病、食料問題、紛争など。

Skating on thin ice
近年の温暖化でカナダのアイススケート上の管理は困難に直面している。

High Arctic carbon
将来の気候変動を考えることは種々のフィードバックプロセスを考えることと等しい。しかしながら高緯度のツンドラの炭素循環に関する理解はまだまだ乏しい。

News & Views
Climate modelling: IPCC gazes into the future
2013年にIPCCは新たな排出シナリオを作成し、危険な気候変動を避ける新たな道を提案する。

Health: A new measure of health effects
気候変動と人々の寿命との関わりについて。極端な気候が人の死亡率を増加させる。

Soil science: Fungal friends against drought
菌類が支える草原の生態系のほうが、バクテリアが支える農耕地の生態系よりも干ばつに強い。

Sociology: Shaping US climate opinion
アメリカにおいては一般の人々の気候変動に対する関心は科学的な情報の量には比例せず、むしろ政治活動に影響される傾向がある。

Perspectives
Climate change-driven species' range shifts filtered by photoperiodism
気候変動によって生態系が変化するが、緯度方向の移動は1日の日照時間の変化も招き、生態に影響する可能性がある(高緯度域は日が短い)。

Review
Climate change and moral judgement
行動学・脳科学の研究から、気候変動は迅速な対応をとるのに強い刺激を与えられていないことが分かった。適切なコミュニケーション戦略を取ることで、道徳観を刺激し、迅速な対応へと繋がるきっかけができるかもしれない。

新着論文(GPC)

Global and Planetary Change
Volumes 80–81, Pages 1-272 (January 2012)
Sea level projections to AD2500 with a new generation of climate change scenarios
S. Jevrejeva, J.C. Moore, A. Grinsted
将来の地球温暖化に伴う海水準変動をモデルシミュレーションから予測。2100年までに0.57-1.10m上昇。2100年以降温室効果ガスの寄与がなくなったとしても2500年までに1.84-5.89m上昇。海水準の変化は応答が遅いため、地球工学(geo-engineering)なしには、数世紀の間は上昇速度が20世紀のレベルに戻らないと考えられる。
Disturbances with hiatuses in high-latitude coral reef growth during the Holocene: Correlation with millennial-scale global climate change
Nozomu Hamanaka, Hironobu Kan, Yusuke Yokoyama, Takehiro Okamoto, Yosuke Nakashima, Toshio Kawana完新世における千年スケールの気候変動と、鹿児島県子宝島のサンゴ礁形成との関連を調査。気候擾乱の際に、サンゴ礁形成が停止したり、種組成の変化が見られた。完新世中期に見られた3度の不整合は、北大西洋の擾乱がアジアモンスーンに(+黒潮に)影響した結果と考えることができる。


North Atlantic Deep Water and Antarctic Bottom Water variability during the last 200 ka recorded in an abyssal sediment core off South Africa
S. Krueger, D.C. Leuschner, W. Ehrmann, G. Schmiedl, A. Mackensen 
Agulhas海盆から得られた堆積物コアの底性有孔虫(F. wuellerstorfi)の殻の酸素・炭素同位体、K/C比、粒度分析から過去20万年間の深層水の状態を復元。NADWの寄与は間氷期で強化され、氷期で弱化。一方AABWは2つのモード(Polynya mode⇄Ice shelf mode)があり複雑に変化。T1、T2、MIS3/4境界において特にAABWの形成速度が弱化し、原因は氷床融解による淡水供給が淡水キャップを形成し、密度が低下したことがメカニズムとして考えられる。

Volumes 82–83, Pages 1-128 (February 2012)
Volumes 84–85, Pages 1-84 (March 2012)
特になし

新着論文(DSR1)

Deep Sea Research Part Ⅰ ~Oceanographic Research Papers~
Volume 58, Issue 12, Pages 1147-1226, December 2011
First observations of jelly-falls at the seafloor in a deep-sea fjord
Andrew K. Sweetman, Annelise Chapman
深海底に運ばれるクラゲの残骸の量を定量化。深海への炭素・窒素の寄与と、底性生物への栄養の運搬に寄与していると考えられる。

Hypoxia by degrees: Establishing definitions for a changing ocean
A.F. Hofmann, E.T. Peltzer, P.M. Walz, P.G. Brewer
沿岸部などで低・無酸素の水塊が新たに観察されるなど、世間の関心を集めているが、'hypoxia'や'dead zone'などの単語で表される酸素状態の正確な定義はこれまでになかった。深層水は一般に酸素濃度が低下しているため、その環境に合わせて生物種は適応している。従って単に酸素濃度で'dead zone'などと表現できない。特に沿岸部では貧酸素の水の湧昇などによって生物種の絶滅などが起こるが、環境と生物の適応の度合いでもって’dead zone’などと定義すべき。


Volume 61, Pages 1-140, March 2012
Ontogenetic vertical migration of grenadiers revealed by otolith microstructures and stable isotopic composition
Hsien-Yung Lin, Jen-Chieh Shiao, Yue-Gau Chen, Yoshiyuki Iizuka
ソコダラ6種の耳石の酸素・炭素同位体測定から生息水深・回遊履歴・生理状態を推定。

Decreasing pH trend estimated from 35-year time series of carbonate parameters in the Pacific sector of the Southern Ocean in summer
Takashi Midorikawa, Hisayuki Y. Inoue, Masao Ishii, Daisuke Sasano, Naohiro Kosugi, Gen Hashida, Shin-ichiro Nakaoka, Toru Suzuki
1969年から2003年にかけての夏の南大洋の海洋表層水のpCO2を測定。全炭酸またはアルカリ度と併せてpHを計算(アルカリ度を測定していない場合はSST、SSSから計算)。酸性化の傾向が見られ、80年後には夏においてアラゴナイトに関して不飽和の状態になると予想される。pHの低下は人為起源の二酸化炭素の溶解と深層水の湧昇の強化が原因。

Volume 62, Pages 1-122 (April 2012)
Dynamics and stoichiometry of nutrients and phytoplankton in waters influenced by the oxygen minimum zone in the eastern tropical Pacific Jasmin Franz, Gerd Krahmann, Gaute Lavik, Patricia Grasse, Thorsten Dittmar, Ulf Riebesell
赤道東太平洋には大きな湧昇が原因で酸素極小層(OMZ)が存在する。OMZの栄養塩に富んだ水が湧昇し、その水がプランクトンにどのような影響を与えるのかをチリ沖で調査。一般にN/P比が小さく、シリカの濃度が珪藻の成長の規定要因になっている。硝酸の大部分はレッドフィールド比に従わない比率でほとんどが消費される。

ウラン系列年代測定の238/235U問題

Keeping Time with Earth’s Heaviest Element
Claudine H. Stirling
Science 30 March 2012: 1585-1586.
より。
ウランの物質循環とウランの放射改変を利用した年代測定に付随する問題について。

2012年3月30日金曜日

新着論文(Science)

Science
VOL 335, ISSUE 6076, PAGES 1533-1660 (30 March 2012)

Editors' Choice
Extreme melting
Geophys. Res. Lett. 39, L06801 (2012).
温暖化した世界では気象現象がより頻繁に・強く起こることが予測されている。また温暖化の速度は北極海が最も大きい。北極海の海氷の後退が大気海洋の熱バランスに影響し、気象現象の西から東への伝播が遅くなる、つまりそのもたらす影響が増すことが北半球の中・高緯度のデータから分かった。

Around the World
World’s First Solo Dive To Challenger Deep
チャレンジャー海溝にジェームズ・キャメロンが単独潜行に成功。独自の潜水艇(Deep Sea Challenger)は生物・堆積物コア採取器、CTD、ビデオカメラを搭載しているらしい。1960年の潜行以来2度目の快挙。

Commentary
Letters
Protecting Brazil’s Coastal Wetlands
ANDRE SCARLATE ROVAI, RICARDO PALAMAR MENGHINI, YARA SCHAEFFER-NOVELLI, GILBERTO CINTRÓN MOLERO, CLEMENTE COELHO JR. 
世界で3番目に大きい、ブラジルの沿岸部の湿地帯(マングローブ林など)は豊かな生態系を擁護しているが、海老の養殖地の開発などによって環境悪化が進んでいる。こうした湿地帯は炭素の吸収源としても重要で、地球全体の海洋・海洋沿岸部生態系で吸収される炭素のうちの50%を占めている。さらに海洋性堆積物による炭素除去(大気の二酸化炭素を固定し、埋没)の71%を占める。

Perspectives
Keeping Time with Earth’s Heaviest Element
Claudine H. Stirling
Heis et al. の解説記事。

Brevia
Integrated Electromicrobial Conversion of CO2 to Higher Alcohols
Han Li, Paul H. Opgenorth, David G. Wernick, Steve Rogers, Tung-Yun Wu, Wendy Higashide, Peter Malati, Yi-Xin Huo,Kwang Myung Cho, and James C. Liao
微生物を使って二酸化炭素を液体燃料(アルコール)と電気エネルギーに変える手法について。

Reports
238U/235U Systematics in Terrestrial Uranium-Bearing Minerals
Joe Hiess, Daniel J. Condon, Noah McLean, and Stephen R. Noble
U-Pb壊変系列を用いた年代測定は現在の238U/235Uが一定であることを仮定することが多いが、高精度の測定から岩相によって広い値をとることが分かった。

新着論文(Ncom, Nature)

Nature Communications
27 March 2012

Past daily light cycle recorded in the strontium/calcium ratios of giant clam shells
Yuji Sano, Sayumi Kobayashi, Kotaro Shirai, Naoto Takahata, Katsumi Matsumoto, Tsuyoshi Watanabe, Kohki Sowa and Kenji Iwai
飼育したオオジャコガイの殻のSr/CaをSIMSで5μm間隔で測定することで、Sr/Caの変動が太陽光の日周期に対応していることが分かった。過去の日射量の間接指標になる可能性。


Nature
Volume 483 Number 7391 pp509-642 (29 March 2012)

Research Highlights
Venice: sliding down, tilting east
ヴェネツィアは徐々に沈降しているが、また東に傾斜していることが分かった。テクトニクスと堆積学的に説明可能らしい。

Correspondence
Peak oil is affecting the economy already
石油の生産量は2005年以降上昇はストップしたが、価格は上がり続けている。経済活動そのものが時を同じくして停滞し始めてきている。EUの金融危機は石油価格の高騰が原因とも言われている。

True value of climate fund’s contribution
Adaptation Fund(適応基金)は発展途上国が京都議定書で定められた二酸化炭素排出量削減基準を満たせるように先進国からの支援や、気候変動に対してどう適応するかを技術支援する立場にある。

News & Views
Tahitian record suggests Antarctic collapse
ROBERT E. KOPP
Dechamps et al. (2012)の解説記事。

Articles
Ice-sheet collapse and sea-level rise at the Bølling warming 14,600 years ago
Pierre Deschamps, Nicolas Durand, Edouard Bard, Bruno Hamelin, Gilbert Camoin, Alexander L. Thomas, Gideon M. Henderson, Jun'ichi Okuno & Yusuke Yokoyama
MWP-1A(Melt Water Pulse-1A)は最終退氷期における最も大きな融氷イベントであったが、その源となった氷床がどの氷床であったか、その規模時代については様々な指標で食い違っていた。IODP310航海@タヒチで得られたサンゴ礁掘削試料のサンゴの棲息深度とU/Th年代を詳しく調べることで、過去の海水準変動を復元。MWP-1Aは14,650年前(B/Aの前)に起こり、南極の氷床の寄与が最も大きかったことが分かった。年間40mmという速度で海水準が上昇したと考えられる。

2012年3月29日木曜日

全球の海洋表層の二酸化炭素の収支(放出vs吸収)

Climatological mean and decadal change in surface ocean pCO2, and net seas-air CO2 flux over the global oceans
T. Takahashi, R. A. Feely,  M. Ishii, et al.
Deep-Sea Reserch Part Ⅱ, vol. 56, (2009) pp. 554-577
より。
Takahashi et al. (1993, 1995, 1997, 2002)に続く、全球の海洋表層の海水の二酸化炭素分圧(pCO2)と二酸化炭素の収支(海が二酸化炭素を吸収しているか⇄放出しているか)をこれまでの40年間にわたる海洋観測で得られた測定値から計算。

2012年3月26日月曜日

南大洋の海洋循環と全球の気候とのコネクション(Marshall & Speer, 2012, Ngeo)

Closure of the meridional overturning circulation through Southern Ocean upwelling
John Marshall & Kelvin Speer
nature geoscience vol. 5, pp. 171-180. (March 2012)
のレビュー論文より。

いわゆる子午面循環(MOC)において重要な役割を果たしているのは北大西洋における冷たく・高密度の海水の沈み込みであると考えられてきた。
しかしながら、南大洋のMOCにおける役割の大きさが認識され始めてきている
また技術の進展と観測の充実により、これまで捉えることのできていなかった深層水のゆっくりとした流れも分かるようになってきた。

2012年3月23日金曜日

海洋酸性化の現状(レビュー)

Ocean Acidification -A critical emerging problem for the ocean sciences-
Scott C. Doney, W. M. Balch, V. J. Fabry and Richard A. Feely.
Oceanography vol. 22, No. 4
より。

現在進行中の「海洋酸性化」についてのレビュー。だいたい和訳。

新着論文(Science)

Science
VOL 335, ISSUE 6075, PAGES 1397-1532 (23 March 2012)

News Focus
Learning How to NOT Make Your Own Earthquakes
Richard A. Kerr
地殻に水を注入することで断層の摩擦が低下し、ローカルな地震が発生する。シェールガス掘削の際に発生する水を地下深部に注入することが地震を招いている可能性がある。

Perspectives
At the Bottom of the Oceanic Plate
Hitoshi Kawakatsu
リソスフェアの下に横たわるアセノスフェアの謎について。特に地震波速度が急激に変わるLVZ(Low Velocity Zone)について。プレートテクトニクスが広く受け入れられるようになってから40年が経過したが、海洋地殻の下部で何が起こっているかすらまだよく分かっていない。Schmerr (2012)の解説記事。

The Hunters Did It
Matt McGlone
45,000年前にオーストラリアに人類が達してから、55種の大型ほ乳類は人類の狩猟がもとで絶滅した。Rule et al. (2012)の解説記事。

Reports
The Gutenberg Discontinuity: Melt at the Lithosphere-Asthenosphere Boundary
Nicholas Schmerr
リソスフェア-アセノスフェア境界(G層)は深度40-75kmにあり、最近できた火山のメルトが存在する深度と一致。リソスフェア直下にメルトが存在する。

The Aftermath of Megafaunal Extinction: Ecosystem Transformation in Pleistocene Australia
Susan Rule, Barry W. Brook, Simon G. Haberle, Chris S. M. Turney, A. Peter Kershaw, and Christopher N. Johnson
Lynchクレーターの堆積物から得られた過去13万年間の記録(花粉、木炭など)から、古環境と生態系の変化を復元。気候変動よりも人類の到達が大型ほ乳類の絶滅に繋がった。またほ乳類による捕食圧が低下した結果、植物相にも変化が起こり森林火災が増加した(木炭量の増加)。

「環境革命〜人類生存のための緊急提言〜」(柴野たいぞう、2009年)

著:柴野たいぞう
出版社:国書刊行会
出版年:平成21年(2009年)

2012年3月22日木曜日

新着論文(CP)

Climate of the Past
14 - 20 March 2012

Persistent influence of ice sheet melting on high northern latitude climate during the early Last Interglacial
A. Govin, P. Braconnot, E. Capron, E. Cortijo, J.-C. Duplessy, E. Jansen, L. Labeyrie, A. Landais, O. Marti, E. Michel, E. Mosquet, B. Risebrobakken, D. Swingedouw, and C. Waelbroeck
Climate of the Past, 8, 483-507, 2012

北大西洋、ラブラドル海、ノルウェー海、南大洋から得られた堆積物コアから最終間氷期(MIS5.5; MIS5e; LIG)の環境復元。LIGの始まりは北大西洋が寒冷で、淡水が多く、AMOCが弱化していた。南大洋に比べると間氷期のピークが遅れていた。モデル結果からは日射量の変動及び氷床融解に伴う淡水流入が遅れの原因らしい。

Quantifying the ocean's role in glacial CO2 reductions
M. O. Chikamoto, A. Abe-Ouchi, A. Oka, R. Ohgaito, and A. Timmermann
Climate of the Past, 8, 545-563, 2012

最終氷期の炭素循環を大気海洋大循環モデルを用いて感度実験。1つはNADWを現在よりも強化。もう1つはNADWを弱めて逆にAABWを強化。2つとも観察されている大気中二酸化炭素濃度の低下を再現できなかった。海氷の張り出しの強化で南大洋ではAABWの形成が促進され、効果的に深層の炭素リザーバーが強化され、一方で北大西洋では深層水形成による二酸化炭素の取り込みが減少した。また海水温の低下で20-23ppmvの二酸化炭素濃度の低下は説明できた。海洋循環だけで「氷期の大気中二酸化炭素濃度の100ppmの低下」に対するシンプルな説明を与えるのは難しい。

Systematic study of the impact of fresh water fluxes on the glacial carbon cycle
N. Bouttes, D. M. Roche, and D. Paillard
Climate of the Past, 8, 589-607, 2012
氷期のDOサイクルに伴う北大西洋への淡水擾乱と炭素循環の変動をCLIMBER-2モデルで再現。北大西洋への淡水注入の期間、程度、擾乱の与え方のすべてが大気中の二酸化炭素濃度に影響。南大洋における塩水(brine)形成をモデルに組み込むことでうまく炭素循環が再現できるらしい。また南大洋に淡水を撒くとアイスコアの指標とは逆に大気中の二酸化炭素濃度が低下する現象が見られる。

赤道太平洋は世界最大のCO2放出場だがEl Nino時には抑制される

Influence of El Nino on the equatorial Pacific contribution to atmospheric CO2 accumulation
Feely et al., 1999
Nature vol. 398, 597-601 (15 April 1999)

Seasonal and interannual variability of CO2 in the equatrial Pacific
Feely et al., 2002
Deep Sea Research Ⅱ vol. 49, 2443-2469

Decadal variability of the sea-air CO2 fluxes in the equatorial Pacific Ocean
Feely et al., 2006
Journal of Geophysical Research vol. 111, C08S90
より。赤道太平洋の海洋表層における二酸化炭素放出に関する論文3本のまとめ。

新着論文(Nature)

Nature
vol. 483 No.7390 (22 March 2012)

This week
Research Highlights
Hydrogen can be stored as acid 
二酸化炭素を放出しない燃料として水素が注目されているが、可燃性であることや輸送・貯蔵しにくいことが課題となっている。イリジウムの触媒を用いて二酸化炭素と反応させて蟻酸とすることで、液体の状態で貯蔵することができる。水素貯留の手法として期待。

Predicting realistic rains
イギリスの Hadley Centre の研究チームが新たな降水モデルを開発。1.5kmメッシュで豪雨もうまく再現できるように改善されたらしい。

No sweetness for meat-eaters
肉食動物の多くは甘みを感じる受容体を進化の過程で失ったらしい。例えばイルカやアシカは旨味の成分も感じることができないらしい。イルカやアシカは餌を丸呑みするので、味を感じる必要がないせいかもしれない。

Coming surge in storm surges 
温暖化した世界では海水準が上昇することで、嵐による沿岸部の高潮の危険性が高まる。アメリカの沿岸部において将来の高潮の危険性をモデル予測したところ、これまで100年に一度しか起こらなかった規模の高潮が10年に一回、或いは毎年起こる可能性が出てきた。

Comment
Think big for marine conservation 
目に見える沿岸部だけでなく、深海や外洋など、広く海洋生物を保護する必要がある。

A century of cosmic rays
太陽系外からやってくる宇宙線を通して宇宙を観察することができる。これからの100年の間に宇宙線の科学は進展するだろう。

Careers
Postdoc or not?
アカデミックな世界に残る?永久就職を探す?或いはポスドクになる?

Research
Letters
Collapse of polar ice sheets during the stage 11 interglacial
Maureen E. Raymo & Jerry X. Mitrovica
2つ前の間氷期であるMIS11のときの海水準変動について。テクトニクス的に安定なバハマとバミューダの地形を解析することで、MIS11の海水準は現在よりも6-13m高かった可能性が示唆される。これまで考えられていた20mというのは大きく見積もり過ぎている可能性がある。グリーンランド氷床、西南極氷床が融けていたことが海水準上昇の原因で、東南極氷床は海水準の上昇にはほとんど寄与していなかった?

2012年3月18日日曜日

新着論文(EPSL, BG)

Earth and Planetary Science Letters
Volumes 327–328, in progress, 15 April 2012

Evaluation of atmospheric carbon dioxide concentrations during the Cretaceous
Sung Kyung Hong, Yong Il Lee
古土壌から白亜紀中期の大気中二酸化炭素濃度を復元。白亜紀の二酸化炭素濃度が高かった(温暖化も起こっていた)のは海洋地殻形成が早かったことが原因として考えられていたが、今回韓国から得られたデータからは、二酸化炭素濃度上昇期と地殻形成量上昇期のタイミングがずれているので、カリブ海とマダガスカルの火山活動(RIPs)が活発化していたことも二酸化炭素濃度の増加に寄与していたものと考えられる。

Biogeosciences
15 Feb 2012 - 16 March 2012

The metabolic response of pteropods to acidification reflects natural CO2-exposure in oxygen minimum zones
A. E. Maas, K. F. Wishner, and B. A. Seibel
Biogeosciences, 9, 747-757, 2012

翼足類の殻はアラゴナイトでできており、海洋酸性化に対して非常に脆弱であると考えられている。5種類の太平洋熱帯域に棲息する翼足類を1000ppmの二酸化炭素濃度の海水にさらして生理学的な応答を検査。もともと酸素極小層に回遊をする4種には特に変化が見られなかったが、回遊をしない1種は酸素消費量とアンモニア排出量に変化が見られた。

Use of a process-based model for assessing the methane budgets of global terrestrial ecosystems and evaluation of uncertainty
A. Ito and M. Inatomi
Biogeosciences, 9, 759-773, 2012

全球の陸域のメタン収支をモデルシミュレーション。陸域のメタン放出量は合計で308.3 ± 20.7 Tgと見積もられ、そのうち湿地と家畜の反芻が主な放出源であった。メタンの吸収源・放出源は地域ごとにバリエーションがあり、季節変動・経年変動も見られた。温度とメタン放出量との相関がみられることから、温暖化した世界ではメタン放出量が増加すると考えられる。

Revisiting four scientific debates in ocean acidification research
A. J. Andersson and F. T. Mackenzie
Biogeosciences, 9, 893-905, 2012
「海洋酸性化」が広く科学者や政策決定者の関心を集めているが、誤解も多い。これらの研究について、以下の4つが要点として挙げられる。
  1. 沿岸域の表層海水は大気中二酸化炭素濃度よりも高い二酸化炭素分圧が見られるが、これは生物活動の寄与が原因である。
  2. 酸・アルカリ添加やCO2バブリングなどによって海水の炭酸系を変化させることは、海洋酸性化した世界の炭酸系を研究するのに有用である。
  3. 石灰化量や溶解量の見積もりは、両方の影響の総合計を見ていることに注意が必要である。
  4. 準安定な炭酸塩結晶の溶解によってアルカリ度が増すとpHのバッファーとして働くことが期待されるが、10年とか100年とかいう時間スケールでこれらの効果を期待することはできない。
A model study of the seasonal and long–term North Atlantic surface pCO2 variability
J. F. Tjiputra, A. Olsen, K. Assmann, B. Pfeil, and C. Heinze
Biogeosciences, 9, 907-923, 2012
モデルで大西洋の海洋表層水のpCO2変動を再現。海域によって季節変動・経年変動が見られるが、主にNAOなどの変動によって水温・DICの異なる水塊が混合することが原因として考えられる。

新着論文(GBC, PO)

Global Biogeochemical Cycles
14 - 18 March 2012

Atmospheric constraints on gross primary productivity and net ecosystem productivity: Results from a carbon-cycle data assimilation system
Koffi, E. N., P. J. Rayner, M. Scholze, and C. Beer
Global Biogeochem. Cycles, 26, GB1024, doi:10.1029/2010GB003900

2つのモデルを組み合わせて陸域の炭素循環をモデリング。GPP(総一次生産量)とNPP(全生態系生産量)を推定。熱帯域の大気中二酸化炭素濃度の測定データが不足しているという問題がある。NEPは二酸化炭素の輸送モデルに大きく依存。

Paleoceanography
8-16 March 2012

Antarctic Isotope Maxima events 24 and 25 identified in benthic marine δ18O
Caballero-Gill, R. P., S. Clemens, and W. Prell
Paleoceanography, 27, PA1101, doi:10.1029/2011PA002269

南シナ海の堆積物コアの浮遊性・底性有孔虫のd18OからMIS5d(118.5-105.9ka)の変動を復元。中国南東部で得られた石筍(Sanbao & Hulu 洞窟)のd18Oの変動と合わせることで年代モデルを作成。LRの底性有孔虫d18Oのスタックには見られていなかった、Antarctic Isotopic Maximaイベントの24番目と25番目が見られた。
Caballero-Gill et al. (2012) Fig. 4を改変。
上が中国南東部の石筍のd18O、下が南シナ海で得られた堆積物コアの底性有孔虫のd18O。DOとAIMがそれぞれ北極、南極の変動に対応している。


Alkenone unsaturation in surface sediments from the eastern equatorial Pacific: Implications for SST reconstructions
Kienast, M., G. MacIntyre, N. Dubois, S. Higginson, C. Normandeau, C. Chazen, and T. D. Herbert
Paleoceanography, 27, PA1210, doi:10.1029/2011PA002254
赤道東太平洋において堆積物コアトップのアルケノン不飽和度とSSTの観測データとを比較することでアルケノン温度計の有用性をチェック。有為な回帰曲線が得られた。「アルケノン生産の季節性」「アルケノンの輸送」「表層の栄養塩濃度」「塩分」などに対するバイアスは見られなかった。高温ではアルケノンの不飽和度が飽和し、水温計として機能しなくなることが知られているが、そのような有意な変化は見られなかった。ペルー沖のアルケノン温度計は実際の水温よりも高い水温を見積もってしまうが、El Ninoの変動を拾っていることが原因?
Kienast et al. (2012) Fig. 1を改変。
アルケノン不飽和度とSSTの間に有為な相関が得られた。

2012年3月16日金曜日

新着論文(EPSL, MC, MG)

EPSL
Volumes 325–326, Pages 1-126, 1 April 2012
Ventilation of the deep ocean constrained with tracer observations and implications for radiocarbon estimates of ideal mean age
S. Khatiwala, F. Primeau, M. Holzer
放射性炭素、CFCs、温度、塩分などの分布から深層水の年代と形成場所をモデルからシミュレーション。40%の深層水は南大洋、26%の深層水は北大西洋から沈み込んだ。北太平洋の深層水は表層水に比べて1360±350年古いことが分かった。

Marine Geology
Volume 288, Issues 1–4, 1 October 2011, Pages 61–78
Geomorphology of submerged reefs on the shelf edge of the Great Barrier Reef: The influence of oscillating Pleistocene sea-levels
Elizabeth Abbey, Jody M. Webster, Robin J. Beaman
グレートバリアリーフの沈水サンゴを音波探査で精密に調査。

Volumes 295–298, Pages 1-136, 15 February 2012
Assessing subsidence rates and paleo water-depths for Tahiti reefs using U–Th chronology of altered corals
Alexander L. Thomas, Kazuhiko Fujita, Yasufumi Iryu, Edouard Bard, Guy Cabioch, Gilbert Camoin, Julia E. Cole, Pierre Deschamps, Nicolas Durand, Bruno Hamelin, Katrin Heindel, Gideon M. Henderson, Andrew J. Mason, Hiroki Matsuda, Lucie Ménabréaz, Akitoshi Omori, Terry Quinn, Saburo Sakai, Tokiyuki Sato, Kaoru Sugihara, Yasunari Takahashi, Nicolas Thouveny, Alexander W. Tudhope, Jody Webster, Hildegard Westphal, Yusuke Yokoyama
IODP310@タヒチのサンゴ礁掘削コアの続成を被ったサンゴのU/Th年代決定法(全溶融、部分溶融法)から古水深を復元。独立に求めた古水深と整合的。タヒチの沈降速度は最大で0.39m/Ka、最も近いのは0.25m/Kaであると考えられる。

Marine Chemistry
Volume 127, Issues 1–4, 20 December 2011, Pages 64–75
Calcification and organic production on a Hawaiian coral reef
K.E.F. Shamberger, R.A. Feely, C.L. Sabine, M.J. Atkinson, E.H. DeCarlo, F.T. Mackenzie, P.S. Drupp, D.A. Butterfield
ハワイのKaneohe湾で生態系全体の石灰化速度と光合成量を海水の炭酸系の測定から見積もり。光合成量がサンゴ礁の海水のpCO2とΩaragoniteを支配している。

Volumes 128–129, Pages 1-100, 20 January 2012
First measurements of methane and its carbon isotope ratio in the Japan Sea (East Sea)
Toshitaka Gamo, Urumu Tsunogai, Akinari Hirota, Noriko Nakayama, Dong-Jin Kang, Kyung-Ryul Kim
日本海の海水のメタン濃度とメタンのδ13Cを測定。表層、中層ともに大気よりも濃いメタン濃度が見られた。またメタンのδ13Cも大気中のメタンに比べて低く、貧酸素の状態が寄与していると考えられる。海域ごとに深度分布が違うのは、メタンプリュームの存在が原因?

Volumes 130–131, Pages 1-74, 20 February 2012
Conservative behavior of uranium vs. salinity in Arctic sea ice and brine
Christelle Not, Kristina Brown, Bassam Ghaleb, Claude Hillaire-Marcel
外洋において海水中のウランの濃度は塩分に依存しないことが知られているが、北極海のデータはこれまでほとんどなかった。塩分が0-135まで大きく変化する北極海の海水中のウラン濃度と同位体を測定。ともに塩分にはそれほど依存性は見られなかった。

Influences of two air–sea exchange schemes on the distribution and storage of bomb radiocarbon in the Pacific Ocean
Yangchun Li, Yongfu Xu
モデルを用いて核実験由来の太平洋の14Cの分布をモデリング。風を考慮した海水-大気の二酸化炭素交換を考えるとより正確になるらしい。またNPIWのパラメタリゼーションも重要。

新着論文(Science)

Science
VOL 335, ISSUE 6074, PAGES 1269-1396 (16 MARCH 2012)

Editors' Choice
Preserving the Burgess Shale 
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 109, 10.1073/pnas.1111784109 (2012)
バージェス頁岩は非常に良い状態で過去の生物の軟体組織を保存しているが、それには貧酸素+酸化物が少ないという条件の他に、海水の組成も重要であったと考えられる。

Perspectives
Monitoring Volcanoes
技術は進歩しているが、世界の火山のモニタリングは十分とは言い難い。

Review
Human Evolution Out of Africa: The Role of Refugia and Climate Change
J. R. Stewart and C. B. Stringer
最初の人類がアフリカで生まれたことは広く受け入れられているが、その後人類がどのように広がり、絶滅を経験したかについてはまだよく分かっていない。またネアンデルタール人やデニソワ人との交配も最近分かってきて、事態をより複雑にしている。人類はLGMの始まり頃(100ka)から広がり始めたらしい。

 

新着論文(Nature)

Nature
vol. 483 No. 7389 pp. 245-368 (15 March 2012)

This week
Research Highlights
Geophysics:
Rain slows seismic waves
地震波は雨によって伝播速度が低下する?水圧が関係している模様。

Palaeoecology:
What killed the big beasts?
大型ほ乳類の絶滅には気候の要素と人間の狩猟の要素の2つが原因であることがモデルから示された。

News in Focus
Forecasters look back in time
JEFF TOLLEFSON 
IPCC AR5に向けて6,000年前(軌道要素が現在と違い、概して温暖だった時代)の古気候を復元するモデリングが着々と進められている。モデルの解像度の改善を受けて、AR4に比べおよそ100倍のデータが集まっているらしい。

Water under pressure
NATASHA GILBERT
世界の「水資源」の現状と今後について。人口増加とともに水の需要は増す一方である。

Japan fails to settle university dispute
DAVID CYRANOSKI   
現・東北大学総長である井上氏に対する不正論文疑惑(東北大学新聞)について。研究倫理を審査する第三者機関を設立すべき。

Research
LETTERS
Uncovering the Neoproterozoic carbon cycle
D. T. Johnston, F. A. Macdonald, B. C. Gill, P. F. Hoffman & D. P. Schrag
新原生代における炭素循環について。モンゴル、北西カナダ、ナミビアから得られたδ13Cの記録から、表層システムの炭素循環に擾乱があったことが示唆される。

世界の「水資源」事情

Water under pressure
NATASHA GILBERT
nature vol. 483, 256-257
より。

今後ますます加速する人口増加とともに「より安全な水資源の確保」の問題が出てくる。

試算では数億人の人間が安全な水を確保できなくなるという。

現在世界で水を多く消費している国は
  1. インド
  2. 中国
  3. アメリカ
で、中でもインドの水資源の利用の増加は大きく、地下水を汲み上げ続けている。しかし表面を流れる水と違い、地下水は再生可能ではなく枯渇する恐れがある

水資源と食料生産には密接な関係があるが、例えば農業によって7割が消費される
その中でも畜産が最も多くの水を消費する。
つまりより多くの人口を養うにはより多くの水が必要になる
現在でも水資源の3分の2はすでに食料生産に消費されているが、人口増加によって2050年までに食料需要は7割上昇すると考えられている。

水は他にもアルコール生産、果物、野菜、砂糖、油、穀物の生産に主に使用されている。

また汚水の問題も存在する。世界で出される汚水のおよそ8割は処理されることなく川などに捨てられ、疫病などによる多くの死を招いている。
また汚水は特に都市部から出されるが、2050年には都市部の人口は現在の2倍の63億人に膨れ上がると考えられている。

作物生産の効率を上げたり、干ばつに強い作物の開発など、ますますの研究が必要となる。
農業・工業・飲料をうまくバランスさせることが必要になってくるが、そのためには国際間協力が必要である。


2012年3月14日水曜日

新着論文(CP)

Climate of the Past
29 NOV 2011-30 JAN 2012

Heinrich event 1: an example of dynamical ice-sheet reaction to oceanic changes
J. Álvarez-Solas, M. Montoya, C. Ritz, G. Ramstein, S. Charbit, C. Dumas, K. Nisancioglu, T. Dokken, and A. Ganopolski
Climate of the Past, 7, 1297-1306, 2011

H1(ハインリッヒイベント1;北大西洋に氷河性砕屑物がばらまかれた)がAMOCの弱化よりも後に起きた可能性が指摘されている。「H1がAMOCの弱化を引き起こした」のではなく、逆に「AMOCの弱化がH1に影響した」ことをモデルから検証。Nordic海とLabrador海の中層水の温暖化が棚氷の崩壊を招き、海水準の上昇に寄与した可能性。

Quantifying sea surface temperature ranges of the Arabian Sea for the past 20 000 years
G. M. Ganssen, F. J. C. Peeters, B. Metcalfe, P. Anand, S. J. A. Jung, D. Kroon, and G.-J. A. Brummer
Climate of the Past, 7, 1337-1349, 2011
ソマリア沖の堆積物コアの浮遊性有孔虫(G. ruber, G.bulloides)の殻のδ18OとMg/Caを用いて過去20万年間の水温史を復元。LGMには最高水温はやや低く、最低水温は高かった。

The role of orbital forcing, carbon dioxide and regolith in 100 kyr glacial cycles
A. Ganopolski and R. Calov
Climate of the Past, 7, 1415-1425, 2011

更新世において気候システムが10万年の周期を持って変動することが謎とされている。EMICsを用いてシミュレーションしたところ、北アメリカの氷床圏の特に氷床量と露出岩石が大きく効いていることが分かった。二酸化炭素濃度の変動なしに10万年の周期は出てくるが、二酸化炭素濃度も重要であることが分かった。

Reconstruction of a continuous high-resolution CO2 record over the past 20 million years
R. S. W. van de Wal, B. de Boer, L. J. Lourens, P. Köhler, and R. Bintanja
Climate of the Past, 7, 1459-1469, 2011

モデルの逆計算を行うことで過去2000万年間の大気中二酸化炭素濃度を復元。NHG(Northern Hemisphere Glaciation; 2.8-2.6Ma)が起こったのはCO2濃度が265ppmvを下回ってから。MPTを挟んでCO2濃度は23ppmvほど低下しただけであった。

Ventilation changes in the western North Pacific since the last glacial period
Y. Okazaki, T. Sagawa, H. Asahi, K. Horikawa, and J. Onodera
Climate of the Past, 8, 17-24, 2012

北太平洋西部のコアの浮遊性有孔虫と底性有孔虫の14C年代を比較することで、見かけ上のventilation年代を求めることができる。22万年前から現在にかけて見かけ上のventilation年代は現在と同じで、この海域は氷期における深海の炭素リザーバーの増加に寄与していなかったことが分かった。

Tropical climate and vegetation changes during Heinrich Event 1: a model-data comparison
D. Handiani, A. Paul, and L. Dupont
Climate of the Past, 8, 37-57, 2012

Earth System modelを用いてH1の時の大西洋赤道域・亜赤道域の植生の変化を再現。花粉から復元された結果と概ね一致。H1において(主に北半球の寒冷化を伴っていた)西アフリカと南米北部地域の熱帯雨林の砂漠化と広葉樹林の後退が進行した。

Change in dust variability in the Atlantic sector of Antarctica at the end of the last deglaciation
A. Wegner, P. Gabrielli, D. Wilhelms-Dick, U. Ruth, M. Kriews, P. De Deckker, C. Barbante, G. Cozzi, B. Delmonte, and H. Fischer
Climate of the Past, 8, 135-147, 2012
26,600年前から現在にかけての南極のEDMLアイスコア中の高時間解像度(数10-100年スケール)の風成塵のREE分析結果。15,000年前までは風成塵はほぼすべて南米起源であったが、以降はオーストラリアやニュージーランド起源の寄与が増加した。15,000年を挟んで南半球の大気循環の変化が起こったと考えられる。

Impact of oceanic processes on the carbon cycle during the last termination
N. Bouttes, D. Paillard, D. M. Roche, C. Waelbroeck, M. Kageyama, A. Lourantou, E. Michel, and L. Bopp
Climate of the Past, 8, 149-170, 2012

最終退氷期の炭素循環をシミュレーション。南大洋の高塩分水の形成に着目。18Kaに高塩分水の形成が妨げられたことが南大洋の成層化を解消し、深層の溶存炭素を大気にもたらした?大気CO2のδ13Cは陸域の炭素リザーバーの変化が効くので、最終退氷期における植生の変化をより制約する必要がある。

2012年3月12日月曜日

新着論文(GBC)

Global Biogeochemical Cycles
27 SEP 2011-10 MAR 2012
たまっていたものを消化。

Changes in South Pacific anthropogenic carbon
Waters, J. F., F. J. Millero, and C. L. Sabine
Global Biogeochem. Cycles, 25, GB4011, doi:10.1029/2010GB003988

南太平洋のWOCEの測線(P18とP06)の海水炭酸系の人為起源の二酸化炭素の与える影響の評価。数10年の変動では考えられないpHの低下は海洋酸性化の影響と考えられる。結果はP16のものと概ね整合的だが、P18のほうがやや大きい影響が見られる。pHの低下の割合はHOTによるハワイ周辺の結果と整合的。

Subsurface tropical Pacific nitrogen isotopic composition of nitrate: Biogeochemical signals and their transport
Rafter, P. A., D. M. Sigman, C. D. Charles, J. Kaiser, and G. H. Haug
Global Biogeochem. Cycles, 26, GB1003, doi:10.1029/2010GB003979
赤道太平洋の海洋表層水の硝酸のδ15Nの測定結果について。測定結果を説明するためには(1)高緯度を起源とする水塊(AAMW)とEEPにおける脱窒を経験した水塊が混合すること、(2)深さ方向に栄養塩濃度が上昇することが必要らしい。
南太平洋西部の中層水がSouthern Subsurface Counter Current (SSCC)によって運ばれた?

Identification and characterization of abrupt changes in the land uptake of carbon
Beaulieu, C., J. L. Sarmiento, S. E. Mikaloff Fletcher, J. Chen, and D. Medvigy
Global Biogeochem. Cycles, 26, GB1007, doi:10.1029/2010GB004024
モデルシミュレーションから1988年の大気二酸化炭素濃度の上昇率の低下は陸域の炭素吸収が劇的に変化したことが原因と考えられる。ENSOでも火山活動でもない、別の要因が究極の原因?

Variability of primary production and air-sea CO2 flux in the Southern Ocean
Wang, S., and J. K. Moore
Global Biogeochem. Cycles, 26, GB1008, doi:10.1029/2010GB003981
海洋の生物地球化学も出るを用いて南大洋の数十年間の炭素循環(大気-海洋のCO2交換、一次生産)を再現。南大洋は近年二酸化炭素の吸収が少なくなっていると考えられているが、一次生産量(POC)の低下が原因として考えられる。変動を考える上で、「混合層の深さ」「鉄の濃度」「プランクトンの群衆組成」「海氷の張り出し具合」などが重要な因子。

Interconnection of nitrogen fixers and iron in the Pacific Ocean: Theory and numerical simulations
Dutkiewicz, S., B. A. Ward, F. Monteiro, and M. J. Follows
Global Biogeochem. Cycles, 26, GB1012, doi:10.1029/2011GB004039

太平洋の鉄の濃度と光合成植物の関係をモデルシミュレーションから説明。鉄と硝酸がプランクトンの群衆組成とそれぞれの物質循環をコントロールしている。鉄の供給量によって3つのグループに大別できる。

Diatom resting spore ecology drives enhanced carbon export from a naturally iron-fertilized bloom in the Southern Ocean
Salter, I., A. E. S. Kemp, C. M. Moore, R. S. Lampitt, G. A. Wolff, and J. Holtvoeth
Global Biogeochem. Cycles, 26, GB1014, doi:10.1029/2010GB003977

南大洋のうち、インド洋の南部に位置するCrozet海域において、鉄の供給量とPOCの関係を議論。珪藻のブルーミングが起こる地域と、深海のセディメントトラップの炭素フラックスが多い地域との相関は良い(R=0.83)。Si/CとSi/N比は隣接するHNLC海域のものと比較しておよそ2-3.5倍高い値を示す。この海域の生物生産の高さはわりとローカルで、南大洋全体に応用できる特徴ではなさそう。

2012年3月11日日曜日

新着論文(Geology, GCA, EPSL)

Geology
1 March 2012; Vol. 40, No. 3

Global decline in ocean ventilation, oxygenation, and productivity during the Paleocene-Eocene Thermal Maximum: Implications for the benthic extinction
Arne M.E. Winguth, Ellen Thomas, and Cornelia Winguth
PETMにおける底性生物の大量絶滅の原因をモデルシミュレーションを通して検証。10,000年以内という短期間に表層に炭素が大量にもたらされたことにより、温暖化及び海洋酸性化が進行した。それと同時に熱帯では成層化が強化されて深層からの栄養塩の供給が減少、南極周辺では逆に湧昇が強化された結果低層の酸素濃度が減少した。様々な要因(炭酸塩不飽和、無酸素、酸性化など)が重なって大量絶滅に至ったと考えられる。


Geochimica et Cosmochimica Acta
Volume 82, Pages 1-200, 1 April 2012

Radiocarbon and stable isotopes in Palmyra corals during the past century
Kevin C. Druffel-Rodriguez, Desiree Vetter, Sheila Griffin, Ellen R.M. Druffel, Robert B. Dunbar, David A. Mucciarone, Lori A. Ziolkowski, Joan-Albert Sanchez-Cabeza
Palmyra Atollの2つのハマサンゴの110年間のδ18O、14Cを測定。1954年にMarshall Islandsで行われた核実験由来の14Cが大きく影響している。一部二次アラゴナイトも見られたが、14Cは続成に強いことが分かった。

Earth and Planetary Science Letters
Volumes 319–320, Pages 1-306, 15 February 2012

Influence of test size, water depth, and ecology on Mg/Ca, Sr/Ca, δ18O and δ13C in nine modern species of planktic foraminifers
Oliver Friedrich, Ralf Schiebel, Paul A. Wilson, Syee Weldeab, Christopher J. Beer, Matthew J. Cooper, Jens Fiebig
様々な海域から採取された浮遊性有孔虫殻の地球化学的トレーサーを測定することで、プロキシの有用性を検証。特に殻のMg/Caは温度指標として知られているが、殻のサイズに応じて異なる値を取る。生息水深を成長段階によって変えていることが原因として考えられる。続成作用も特に見られない。

Volumes 321–322, Pages 1-208, 1 March 2012

Onset of ‘Pacific-style’ deep-sea sedimentary carbonate cycles at the mid-Pleistocene transition
Philip F. Sexton, Stephen Barker
太平洋と大西洋でこれまでに得られた堆積物コア中の炭酸塩量を比較すると、MPT以前は同位相だが、MPT後は逆位相となる。熱塩循環の強弱と関連がありそう。

2012年3月10日土曜日

海洋学における水圧の定義

通常、水圧は「dbar : decibar」で表現されるが、1 dbarはおよそ0.1 atm(気圧)に等しい(正確には0.0987atm)。
水圧は水深(m)とほぼ1対1で対応するため、便宜上海洋学では「dbar」が圧力の単位として用いられることが多い。

本来なら海水面での気圧は約1気圧なので、海水面の水圧は10 dbarになるはずであるが、実際には気圧の影響は無視され、海水面の水圧は「0 dbar」と定義される

これが僕が感じた違和感であった。
スキューバダイビングの講習を受けると、

  • 海面は1気圧、10 m潜ると2気圧、20 m潜ると3気圧になる
  • 従って空気は海面で「1」あったものは10 m深では「2分の1」に、20 m深では「3分の1」になる

というように教わる。

従ってこの感覚が身に付いてしまっていたために違和感を感じたのだろう。

実際には海洋学の定義では

水深  0 m は 0 dbar
水深 10 m は10 dbar
水深 100 m は100 dbar
水深 1,000 m は1,000 dbar
水深 10,000 m は10,000 dbar

である。深さが増すごとに海水の密度が変化するので、水深10,000mでは水深と水圧との差が3%ほど変化するとのこと。まぁほんのわずかということだ。
一般的な海洋データベースでもやはりこの定義に基づいてCTDなどの測定結果が報告されている。

扱いには気をつけなければならない。

CO2SYSでもこの定義に基づいてプログラムが組まれているとのこと。
しかし高地で淡水を採水する場合、圧力はマイナスになる??

新着論文(Science)

Science
VOL 335, ISSUE 6073, PAGES 1137-1268 (9 March 2012)

EDITORIAL:
Worldwide Lessons from 11 March
Koji Omi
3.11の津波から学んだこと。1995年の阪神淡路大震災時には建物の崩壊によって多くの人々が犠牲になったが、そこから学んだ耐震技術の甲斐あって、3.11のときには建物の崩壊による被害が少なかった。その代わりに津波が多くの命を奪ったが、この教訓を将来へ生かさなければならない。またそれは原発事故についても同様で、将来の工業に生かさなければならない。原発に対する世界の人々の考え方が変わりつつあるが、今後のエネルギー需要の増加を考えても、重要な原子力発電のより安全な設計・運用などに対して理性的に考える必要がある。

Editors' Choice
CLIMATE SCIENCE
Seasonal Subtleties
Geophys. Res. Lett. 39, L04705 (2012)
地球温暖化は確実に進行している。しかし温暖化は冬期に顕著で、年平均だけで見るとある年には温暖化が停止しているように見えたりと、不信感を生むきっかけともなっている。観測もシミュレーションもすべて温暖化の傾向を確実に示している。

TOXICOLOGY
What’s Fed to the Fish
Environ. Sci. Technol. 46, 10.1021/ es2043728 (2012).
汚染物質の魚類への蓄積について。直接魚を採って時間変動を負うのは時間がかかるので、モデルシミュレーションを用いるのが一般的らしい。これまでモデル間の比較はあまり行われてこなかったが、ニジマスとファットヘッドミノーに対して出されたこれまでの結果をまとめたところ、モデルが違ってもよく再現できていることが分かった。

News & Analysis
ENERGY RESEARCH
Report on Future of Fusion Research Says U.S. Should Hedge Its Bets
Daniel Clery
アメリカの今後の核融合研究について。50年間研究はなされているものの、未だ’ignition(太陽のように自立的に核融合反応が進行し、発電用のエネルギーを取り出せるようになること)’には至っていない。

News Focus
MARINE BIOLOGY
Light in the Deep
Elizabeth Pennisi
イカや魚類をはじめとする海洋生物の視覚の不思議さについて。

JAPAN DISASTER
One Year After the Devastation, Tohoku Designs Its Renewal
Dennis Normile
日本の地震と津波を受けて、次の災害に備えて、専門家が再建計画を模索している。

JAPAN DISASTER
Radioactive Limbo
Dennis Normile
福島第一原発の周辺は人の住めない砂漠のような土地になるだろう。

JAPAN DISASTER
Nuclear Ambivalence No More?
Dennis Normile
福島第一原発の事故を受けて、世界の工業の将来が変わろうとしている。

Letters
Asian Medicine: Exploitation of Wildlife
Xiuxiang Meng, Deguang Liu, Jinchao Feng, and Zhibin Meng
麝香は高価な漢方薬の一種であるが、その原料となる鹿の保全との関わりについて。

Asian Medicine: Exploitation of Plants
Shixiong Cao and Qi Feng
中国産の薬草の需要の増加と植物の保全との関わりについて。

Perspectives
GEOCHEMISTRY
Moonstruck Magnetism
Gareth S. Collins
月の磁気異常は過去の巨大隕石衝突の名残?Wieczorek et al. の解説記事。

ECOLOGY
The Human Factor
Lydie Dupont
3000年前のアフリカの熱帯雨林の危機は気候由来ではなかった?Bayon et al. の解説記事。

Reviews
Nuclear Fuel in a Reactor Accident
Peter C. Burns, Rodney C. Ewing, and Alexandra Navrotsky
原発事故の際、原子炉の中でどのような反応が進行しているか、またそれを予測するためのモデルに存在する問題点は何か、に関するレビュー論文。

Reports
An Impactor Origin for Lunar Magnetic Anomalies
Mark A. Wieczorek, Benjamin P. Weiss, and Sarah T. Stewart
月の南極に存在する最大・最古のクレーターであるAitken盆地における磁気異常は、過去にコア近くで磁性を帯びた岩石が衝突したことでもたらされた可能性がある。イジェクタ(衝突後の放出物)が周囲に分布していることからもこの説は支持される。

Intensifying Weathering and Land Use in Iron Age Central Africa
Germain Bayon, Bernard Dennielou, Joël Etoubleau, Emmanuel Ponzevera, Samuel Toucanne, and Sylvain Bermell
堆積物コアから3000年前のアフリカ熱帯雨林の風化速度を調べたところ、気候変動だけでは説明できない風化の促進が見られた。人類の移住と森林破壊が風化を促進させたと考えられる。

A Bruce Effect in Wild Geladas
Eila K. Roberts, Amy Lu, Thore J. Bergman, and Jacinta C. Beehner
新たなオスの登場とともにメスが妊娠を中絶することを’Bruce effect’と呼ぶが、元々はげっ歯類の飼育実験から分かったことで、野外調査でそのような振る舞いが生物界で起こっているかは分かっていなかった。長期間にわたる観察から、ジェラダヒヒのメスは妊娠中にボスが変わると妊娠を中絶することが分かった。出産後の子殺しのリスク、それに伴う新しいボスの子を妊娠し、出産するまでの時間のロスを回避するための適応の一種であると考えられる。

2012年3月8日木曜日

新着論文(Nature)

Nature
vol.483, 7388 (8 March 2012)

Reserch Highlights
ENVIRONMENTAL SCIENCE
Oil-sands pollution quantified
Geophys. Res. Lett. http://dx.doi.org/10.1029/2011GL050273 (2012)
カナダの有名な石油砂(crude oil sand)の採鉱場で、都市部に匹敵するほどの大気汚染(二酸化窒素および二酸化硫黄)が衛星観測から検出された。

VIROLOGY
Bats can carry flu too
Proc. Natl Acad. Sci. USA http://dx.doi.org/10.1073/pnas.1116200109 (2012)
21種のコウモリのゲノムを読むことで、コウモリも鳥インフルエンザの運び屋になり得る可能性が指摘された。人間に直接影響はなさそうだが、他の生物に感染する可能性はある。

Features
The Japanese tsunami: After shock
日本の3.11津波特集

Japan's nuclear crisis: Fukushima's legacy of fear
原発事故で1万人が避難を余儀なくされたが、一部は帰ることができた。しかし政府へのッ不信感から未だ帰ろうとしない人も多い。

Rebuilding Japan: After the deluge
巨大津波の再来に備えて、最大の津波にも堪えうる都市の建設が進む。

Tsunami forecasting: The next wave
津波予測に科学者はどれだけ貢献できるか。そして今後の予測に備えた計画は?

Comment
Earthquake hazards: Putting seismic research to most effective use
現在ある技術と知識をより上手く使うことで地震学は進む。

Seismology: Why giant earthquakes keep catching us out
何故巨大地震をこれほどまでに予測できないのか。

Energy policy: The nuclear landscape
福島第一原発の事故を受けて、各国政府が原発からの撤退を決定し始めている。

Correspondence
Degraded ecosystems: Keep jellyfish numbers in check
近年クラゲの数が増加していると言われるが、そもそも観測がほとんどなされておらず、共通認識に達しているとは言えない。迅速な対応が望ましい。

Features
Retirement: Sticking around
定年を遅らせる科学者の存在が若手科学者の邪魔となっている。

News & Views
Geochemistry: A rusty carbon sink
堆積物中において鉄分は炭素を安定化させる働きをしているらしい。Lalonde et al. の解説記事。

Articles
Preservation of organic matter in sediments promoted by iron
Karine Lalonde, Alfonso Mucci, Alexandre Ouellet & Yves Gélinas
海水中、土壌中などで鉄は有機炭素と密接に関わっており、生物地球化学において重要な要素の一つとなっている。様々な環境の堆積物について反応性の高い鉄と結びついた炭素の量を定量化したところ、堆積物中の有機炭素の2割ほどは鉄と密接に結合した形で存在することが分かった。鉄と結合した有機炭素は地質学的な時間でも非常に安定であるため、この結合の存在は炭素、酸素、硫黄などの循環において重要な役割を負っていたと考えられる。

地質時代の海洋酸性化の記録

The Geological Record of Ocean Acidification
Bärbel Hönisch, Andy Ridgwell, Daniela N. Schmidt, Ellen Thomas, Samantha J. Gibbs, Appy Sluijs, Richard Zeebe, Lee Kump, Rowan C. Martindale, Sarah E. Greene, Wolfgang Kiessling, Justin Ries, James C. Zachos, Dana L. Royer, Stephen Barker, Thomas M. Marchitto Jr., Ryan Moyer, Carles Pelejero, Patrizia Ziveri, Gavin L. Foster, and Branwen Williams
Science 335, 6072 (2 March 2012)
の解説。

現在進行中の海洋酸性化が生態系にどう影響するかの将来予想のため、種々の酸性化飼育実験や野外調査が行われている。
しかしながら酸性化した海水下で飼育実験を行う場合、生態系的な複雑性が非常に小さくなっており、現実離れしているという欠点がある。
また野外調査ではここ最近の限られた記録しか得られない。

そこで地質学的な過去の海洋酸性化の記録を復元し、そのメカニズムを理解することと、その生態系へのインパクトを復元することが将来予測の上でも重要である。

漁業の今後

昨日大気海洋研で行われたシンポジウムにおける渡邊先生のお話で、日本の(世界の)漁業がこれまでどう発展してきて、そして今後どうなるかについて簡単にまとめ。

これまで漁業は基本的に狩猟採集型で、畜産・農業と比べると幾分原始的で「周回遅れ」という表現がなされるほど遅れていた。
最近になり栽培漁業(養殖)が発展し始め、畜産・農業に肩を並べ始めたかと思いきや、実はやっていることはやはり原始的である。

栽培漁業の内訳は5割が藻類で3割が軟体動物(ホタテ、カキ、ムール貝)で、魚類は1割程度に過ぎない。

藻類の場合、施設を用意するだけで、生育の場は完全に海である。つまり餌も環境も自然任せ。

軟体動物もしかり。幼生をロープにつるす、砂地にばらまくなどしかしない。

魚類だけ特殊で、いけすを用意し、餌を与え、管理する。
しかしながら例えば大型魚の養殖の場合、餌(主にイワシ類)は通常海から取ってきたものを与える。つまり結局自然依存型である。

また畜産の農業とで最も大きな違いは一次生産者から食肉までのエネルギー段階の違いである。

畜産:太陽光エネルギー→牧草による光合成エネルギー→牧牛
漁業:太陽光エネルギー→植物プランクトン→動物プランクトン→小型の魚→中型の魚→大型の魚

というように、畜産の場合一次生産を行う植物から牧牛へのエネルギーの輸送距離が非常に短く、管理することで生産をうまく循環させることができる。
一方で漁業の場合は生態的な階層構造があるためにエネルギーの輸送距離が非常に長い。

例えば今のスタイルの魚類の養殖は生産効率が非常に悪く高級魚向け。今後汎的に発展するとは思えない。

そこで渡邊先生が提案されているのが「適応」への道。

人間が自然を管理するのではなく、変わりゆく自然に人間がどう適応していくかが重要だということだ。

例えば自然界ではレジームシフトなど海洋環境の変化によっても生態系が複雑に変化し、漁獲量も安定しない(当たり年、外れ年がある)。

地球温暖化・海洋酸性化をはじめとする種々の気候・環境変動によっても今後当然生態系が変化し、漁業にも大きく影響してくるだろう。
シミュレーションによる気候変動予測結果などをもとに10年程度のスパンでもって漁獲計画を練る必要がある。経年変動があるので数年先でも予測は困難だという。



2012年3月6日火曜日

新着論文(Science)

Science
02 March 2012 (Volume 335, Issue 6072)

Perspectives
MINERAL RESOURCES
Is the World Tottering on The Precipice of Peak Gold?
RICHARD A. KERR
金の需要は増しているが、金採掘はこれまで以上に効率が上がるわけではない。

ECOLOGY
Facing Extinction in Real Time
David B. Wake
両生類の40%が絶命の危機に瀕している。原因は種々のストレス(気候変動、疫病ほか)。

Review
The Geological Record of Ocean Acidification
Bärbel Hönisch, Andy Ridgwell, Daniela N. Schmidt, Ellen Thomas, Samantha J. Gibbs, Appy Sluijs, Richard Zeebe, Lee Kump, Rowan C. Martindale, Sarah E. Greene, Wolfgang Kiessling, Justin Ries, James C. Zachos, Dana L. Royer, Stephen Barker, Thomas M. Marchitto Jr., Ryan Moyer, Carles Pelejero, Patrizia Ziveri, Gavin L. Foster, and Branwen Williams
地質時代の過去の海洋酸性化について。飼育実験では複雑な生態系や時間を再現できない。だからこそ過去の復元は重要。しかし過去3億年を見ても現在のような速度での海洋酸性化は起こっていない。

Reports
High-Latitude Dust Over the North Atlantic: Inputs from Icelandic Proglacial Dust Storms
Joseph M. Prospero, Joanna E. Bullard, and Richard Hodgkins
風成塵は気候にも影響を与える重要な要素であるが、これまで低緯度域しか風成塵の起源として注目されていなかったが、高緯度の寒冷地域からも北大西洋にもたらされる大量の風成塵があることがアイスランド南部の島における6年間の観測から判明。起源は氷河のoutwash平原らしい。温暖化した世界では氷河の後退によって風成塵が増えることが期待される。

新着論文(GPC)

Global and Planetary Change
Volume 79, Issues 3–4, Pages 157-322 (December 2011)

Reconstructing North Atlantic deglacial surface hydrography and its link to the Atlantic overturning circulation
David J.R. Thornalley, Harry Elderfield, I. Nick McCave
北大西洋の堆積物コアのG. bulloides、G. inflata、N. Pacyderma殻のMg/Ca、δ18Oから最終氷期から現在にかけての熱史・水循環史を復元。H1とYDに淡水化。海氷の形成、河川流入の変化、brineの形成など様々な影響あり。


Modelling abrupt glacial North Atlantic freshening: Rates of change and their implications for Heinrich events
Grant R. Bigg, Richard C. Levine, Clare L. Green
氷期に起きたハインリッヒイベントは北大西洋への氷山(淡水)流入を指し、AMOCの弱化を招いたと考えられている。EMICsを用いてハインリッヒイベントを再現し、メカニズムを考察。H1とH2はローレンタイド氷床、H3はフェノスカンジアン氷床起源と考えられる。


Sea-level probability for the last deglaciation: A statistical analysis of far-field records 
J.D. Stanford, R. Hemingway, E.J. Rohling, P.G. Challenor, M. Medina-Elizalde, A.J. Lester
最終退氷期には代表的な融氷(海水準上昇)イベントが2回起こった。1つ目はMWP-1aで500年間に20m上昇したと考えられているが、時期がまだはっきりしていない(B/Aの前?Older Dryasの始まり?)。MWP-1bは存在したかどうかが今なお議論されている。これまでの6つのfar fieldの記録を統計処理することで確度の高い海水準変動曲線を復元。MWP-1aはB/Aと同じタイミング(〜14.6ka)、MWP-1bはYDの終わり頃(〜11.3ka)に起こったと考えられる。



Quantifying rates of change in ocean conditions with implications for timing of sea level change
S.J.A. Jung, D. Kroon
北大西洋とインド洋の底性有孔虫のδ18Oを比較することで、氷期の千年スケールの変動を議論。それぞれAABWとGAAIWが大きな変動要因で、ともに南大洋起源であることを示唆。AMOCの熱輸送システムにおいてGAAIWが重要な働きを負っていたと考えられる(bi-polar seesawの一環として両極間の熱輸送に寄与)。底性有孔虫δ18Oからもハインリッヒイベント時の海水準の上昇が見られた。


North Atlantic reservoir ages linked to high Younger Dryas atmospheric radiocarbon concentrations
William E.N. Austin, Richard J. Telford, Ulysses S. Ninnemann, Louise Brown, Lindsay J. Wilson, David P. Small, Charlotte L. Bryant
15ka以降大気Δ14Cに最も大きな変動が見られたのはYDの頃であるが、その原因はまだ不確かなままである。北大西洋の堆積物コアからΔR(見かけのリザーバー年代)を復元。YDにΔRが1000年に増加し、YDが終わると現在の400年へと戻った。AMOCの強弱とventilation ageとの間に強いリンクがあると考えられる。



Holocene temperature evolution of the subpolar North Atlantic recorded in the Mg/Ca ratios of surface and thermocline dwelling planktonic foraminifers
Elizabeth J. Farmer, Mark R. Chapman, Julian E. Andrews
北大西洋から得られた堆積物コアからG. bulloides(表層)とG. inflata(温度躍層)を拾い出し、Mg/Caとd18O分析。4ka以降表層と温度躍層の温度差が大きくなる。数十年、数百年スケールの変動はどちらにも記録されている。

Deep water flow speed and surface ocean changes in the subtropical North Atlantic during the last deglaciation 
I.R. Hall, H.K. Evans, D.J.R. Thornalley

堆積物コアの陸源シルトの粒径から最終退氷期の亜赤道大西洋深層水の流速を復元。

The 8200 yr BP cold event in stable isotope records from the North Atlantic region
Timothy J. Daley, Elizabeth R. Thomas, Jonathan A. Holmes, F. Alayne Street-Perrott, Mark R. Chapman, Julia C. Tindall, Paul J. Valdes, Neil J. Loader, James D. Marshall, Eric W. Wolff, Philip J. Hopley, Tim Atkinson, Keith E. Barber, Elizabeth H. Fisher, Iain Robertson, Paul D.M. Hughes, C. Neil Roberts
8.2kaの北大西洋の寒冷化イベントについて、北大西洋周辺の陸域の記録をまとめ、さらにモデルシミュレーションからメカニズムを考察。モデルは現実よりも短く8.2kaイベントを再現。融氷水の注入と海氷の形成が複雑に関与しているらしい。


Modeling the 8.2 ka event using a coupled atmosphere–ocean GCM    
Julia C. Tindall, Paul J. Valdes    
8.2kaイベントをモデルで再現。やはり継続期間が短くなった。継続時間は淡水ばらまき実験開始時のAMOCの初期状態に依存するらしい。




放射性炭素年代測定の新手法

Ultra Sensitive Radiocarbon Detection
Richard N. Zare
Nature vol. 482 (16 Feb 2012)
より。分光法を用いた放射性炭素年代決定の新しい手法の解説。

2012年3月3日土曜日

モデルシミュレーションで最終間氷期-現在の炭素循環を再現する

Glacial CO2 cycle as a succession of key physical and biogeochemical processes
V. Brovkin, A. Ganopolski, D. Archer, and G. Munhoven
Climate of the Past 8, 251-264 (2012)

中程度の複雑性を持つ地球システムモデル(EMICs)で最終間氷期-現在(+1万年)にかけての炭素循環を再現。

2012年3月1日木曜日

新着論文(Ngeo#March 2012)

Nature Geoscience 
(March 2012, Volume 5 No 3 pp157-228)

News and Views
OCEANOGRAPHY
Arctic freshwater
Cecilie Mauritzen
Giles et al.の解説記事。

BIOGEOCHEMISTRY
Ancient organics reign on glaciers
Martyn Tranter
Stubbins et al.の解説記事。

Review Article
Closure of the meridional overturning circulation through Southern Ocean upwelling
John Marshall and Kevin Speer
南大洋の湧昇の重要性についてのレビュー記事。深層水と表層水の熱・炭素を交換しているのは北大西洋だけではない。

Letters
Western Arctic Ocean freshwater storage increased by wind-driven spin-up of the Beaufort Gyre
Katharine A. Giles, Seymour W. Laxon, Andy L. Ridout, Duncan J. Wingham and Sheldon Bacon
ここ数十年間、北極海の淡水量は増加傾向にある。風によって駆動される渦が特に西部への淡水の蓄積に関与しているらしいことが1995-2010年の衛星観測から分かった。こうした淡水は大西洋に流入している。

Anthropogenic aerosols as a source of ancient dissolved organic matter in glaciers
Aron Stubbins, Eran Hood, Peter A. Raymond, George R. Aiken, Rachel L. Sleighter, Peter J. Hernes, David Butman, Patrick G. Hatcher, Robert G. Striegl, Paul Schuster, Hussain A. N. Abdulla, Andrew W. Vermilyea, Durelle T. Scott and Robert G. M. Spencer
アラスカの氷河に含まれる有機物は一部人為起源の炭素であることが放射性炭素年代測定から判明。こうした有機物が下流へと流れ込むことで肥沃化が起こる?